ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~   作:Z-LAEGA

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銃よ、剣よ! 其の七

「"弦月"の野郎……ヤりやがった!」

 

 剣闘大会もいよいよ決勝戦、私がちまちま賭けていってある程度増えたところで勝負に出たところ当てが外れて直視しがたい数字になった収支を歯ぎしりしながら見つめる横で、相も変わらず謎のモブっぽいプレイヤーは独り言を発している。

 

「そうだ、剣闘大会では()()()()()()()()()()ことが前提!"雷撃"の弓にしても、剣とセットで使用するからこそ認可された特例に過ぎない!しかし……そうだ、()()()()()()()()剣以外も使えるんだ!あいつ、ベヒーモスのオンラインショッピングを使いやがったァーーッ!」

 

 会場は大荒れだ。何せ決勝戦にもなったところで、これまで重大剣を鈍器運用して勝ち上がってきたプレイヤーがサブマシンガンを取り出したのだ。その砲口から飛び出すけたたましい銃声に対しては、ブーイングを飛ばすものもあればエールを送るものもある。要するに混乱状態だ。

 

「剣闘大会は神聖な場なんだッ!銃なんて汚らわしいモン持ち込んでんじゃねーよォ!」

 

「フン!銃を持ち込めたとすれば……神聖さが()()()()だっただけのことッ!やれ、そのまま脳天に撃ち込んじまえ!」

 

 なんでもいいですけど、ここから収支をプラスに持っていく方法ってないんですかね?

 なさそうだった。

 私は頭を抱えた。

 "弦月"氏の対戦相手で、なんかトゲトゲした感じのソードを二本使っている……そう、"荊棘"氏のアバターが宙を舞う。闘技場の隅々に位置する数多の照明が、しなやかに躍動する彼の肉体を影として切り取り、茶色の床に落としている。右手のトゲトゲソードが勢いよく突き出されるけど―――"弦月"氏は大剣を盾代わりに展開、継続してサブマシンガンによる弾幕も張り続ける。

 渦巻く熱気は、留まるところを知らない。

 

 

 ま……まあ、暇つぶしくらいにはなった、かな?うん。

 システムメニューからプロフィールを開くと、そこにはプレイヤーとしての()()が表示されている。その数字とにらめっこをしながら、自分に言い聞かせている。

 ……う、うん。別に金なんて無くてもぜんぜん困らないよね、もうすぐ新大陸にも行けるわけだし。ちょっと賭けに負けたくらい、全然悔しくなんかないよ。うん!そう!そうなんだよ!別に悔しくはない!そう!

 

「はぁ……」

 

 私は溜息をついた。まあ……懐が極めて寂しくなってしまったのはともかく、時間を潰せたというのは紛れもない事実ではある。今は12月17日の正午前、フィフティシアに出発するのは今くらいがちょうどいいだろう。

 

「……よし」

 

 無くなった金につべこべ言っても仕方ない。とにかく、前を向いてやろうじゃないか。

 私は閃霆万里の坂道に向けて、新たな一歩を踏み出した。

 

 

「ギャハハーッ全員くたばっちまえやァ~~ッ!」

 

()()()()()に人権はねェ~んだよゥ!」

 

「オラッ爆ぜろ!オラッ!」

 

 ところどころに雑草が巣食う坂道の上で、ガラの悪いプレイヤーたちに狙われている。より具体的に言うと―――彼らの一人が肩に抱えた巨大なグレネードランチャーが、さっきからその標的(ターゲット)を私に設定しているらしい。発射音が聞こえる、【空蝉】発動、真横から爆発音。このゲームの爆薬特有の匂い。本気で殺しに来てるよこれ!

 新王陣営の本陣都市はサーティード、イレベンタルやトゥエルレムスやフォルティアンまで直接道が繋がっておらず、移動するにはフィフティシアを経由する必要がある。そのため戦争中でも()()()()()みたいなプレイヤーはある程度存在し、そのほとんど全員が新王側陣営だ。例外の一つが私で、どちらの陣営にも参加しておらず、どちらの陣営からもスパイだと疑われる存在である。

 

「にしても爆破はやりすぎじゃなあい!?」

 

 私の叫びを言葉なくして否定するかのように、もう何発目かわからないグレネード弾が宙を舞って迫ってくる。えーっと【瞬間転移(アポート)】、しまった爆風でカスダメが入った。もう避けるのめんどくさいし殺しちゃおっかな?どうせレッドネームにはならないし。よし、それでいこう!

 

「刃隠心得!」

 

 印を組む。エフェクトが舞い散る。

 

「【追鼠火花(ツイソノヒバナ)】ァーッ!」

 

追鼠火花(ツイソノヒバナ)】はホーミング性能を持っている。こういう複数人と戦うような状況ではもってこいの忍術だ。

 

「うわっ何だァ!?」

 

「落ち着け!目くらましみたいなモンだ!大したダメージは無い!」

 

 おや、相手に忍術について把握してるプレイヤーがいるんだ。とはいえ……()()()()()()()()のことでは、私の戦いに影響が及ぶことはない。

 

「よっ」

 

 隙をついて地面に展開した自走竜砲が、予めセットしておいた水をごうごうと吐き出していく。それを【潮躱し】で踏みしめて前進、相手と一気に距離を詰めて印を組む。

 

「な―――」

 

「【不知火蕾(シラヌイツボミ)】」

 

 狙うはグレネードランチャー使いだ!

 走り出した火球が拡大しながら彼を追い、灼熱の中にその装備を飲み込んで―――()()を起こさせる。【空蝉】で後退すれば、目の前には爆音が上がるのみだ。はい3キル!私の勝ちで~す!

 

「ヒャッハァ~ッ!」

 

 装備は貰ってくよ!地面に散乱した銃だの鎧だのを片っ端からチェストリアに収納する。ラインナップとしては……量産品(テンプレ)って感じだ。クソアプデが適用されてからというもの、プレイヤーたちは奥の手を隠すようになってしまった。私の目の前に転がった銃火器たちのデザインはどれもこれもひどく画一的で、それこそが彼らのとった安全策の象徴のようなものだったのだろう。要するに、クソアプデはクソということだ。

 まあ……ごたごた言っても装備は装備だよね。私は一通りのドロップを仕舞い終えると、チェストリアを改めて確認することに……あれ?

 

「……これは」

 

 半透明に浮かび上がったウィンドウの隅で、何やら見慣れないアイコンが輝いている。これは……アイテムの取得通知?何だろう、タップしてみよう。

 

人臓恒星赤晶(たいようにほえる)を取得しました』

 

 えーっとなになに……ああ、焠がる大赤翅の討伐参加報酬か。ほとんど水蒸気爆発で遊んだだけなんだけど、あれって討伐参加と呼んでいいのかな……?まあいいや。装備アイコンは……()()()()()()らしい。

 効果は……へえ、解除不能のアクセサリー枠なんだ。喚起するとHP・STM・MPが2倍になって魔法のリキャストが0.8倍、ただし1時間後に確定で死亡してなんとかかんとか……うーん、解除不能って言うのがちょっとアレだね。というかあんな意味わからんモンスターから落ちた装備を心臓に埋め込むって大丈夫なのかな?正直言って怖すぎるでしょ。

 

「ニコロ~」

 

 こういう時は聞いてみるのが一番だ。戦闘に当たり退避させておいたニコロを呼び出す。

 

「参上:」

 

「これってどう思う?」

 

思案(んー……):」

 

 整った顔をしばらく傾げたあと、彼女は答える。

 

「装備するのは非推奨かな」

 

「なんで?装備枠を一つ潰す以外は結構良い気もしたんだけど」

 

「解答:始源に由来する肉体拡張装備は重複装備できないから」

 

「要するに?」

 

「一人で始源関係物品を二つ以上使用すると、肉体構成魔力が崩壊する(体が破裂して死ぬ)

 

「怖」

 

 とりあえず装備はしない方が良さそうだ。

 まあ使えるかはともかくとして、とりあえず通知の正体はわかった。邪魔するやつも爆殺した。合間合間にログアウトを挟んでも、この調子で移動すれば今日中にフィフティシアに着けるだろう。

 

「じゃ、行こうか」

 

同伴(うん):」

 

 そうして私たちは改めて、フィフティシアへの……ツチノコ杯への道を歩み始めた。

 ……これ問答無用で破裂して死ぬんだったら、誰かを暗殺するのに使えたりしないかな?




次回でラスボス戦始められるといいな……
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