ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
【SF-Zoo】はかなり高精度なリュカオーンの出現場所予測を実現させた。その情報をコウガイガー氏が私の提供したスクショで買い取って、さらに私に流した。
「23分経過ぁ!」
展開した時計ウィンドウを一瞥し、後方でフローティングディスクに乗って誘導を行っているジュゲッキに向けて、片手に握ったメガホンを通じて叫ぶ。メガホンでも使わなければ、八十一丁のライフルが吐き出す豪雨のような銃声に掻き消されてしまうのだ。
背後で巨大化を続けるファイアが帯びる灼熱はあまりに強く、月光と合わさって相当量の輝きを生み出しており……深夜帯にもかかわらず、地面にはうっすらと私の影が描き出されている。火の粉みたいなのもたまに飛んでくるし、既にファイアはかなり危険な存在だ。あと2分で、影はよりいっそうくっきりとし、銃声も更に激しさを増すのだろう。まったく、本当に規格外すぎるモンスターだ。
「強すぎないこれ!?」
私はメガホン越しに愚痴を言った。
円盤の上で物理的に身を削り続けているジュゲッキは、それでもなんとか思考入力を行ったようで、返答は
『私たちもここまで強いとは想定してなかったよ!「銃への恐怖」だけでこうなるのはデカいテロでも起きない限り無理!たぶん「
納得感のある説明ではあるけど、レイドモンスターがちょっと目覚めたくらいでここまで強化されるのはダメでしょ!
とはいえ、ジュゲッキに文句を言っても仕方ない。そもそも
「なるほどね!24分経過!」
こう伝えることしかできない。
残り1分。できればライフルが二百四十三丁になる前にリュカオーンにこすり付けたいんだけど……どうだろう。無果落耀の古城骸には平原フィールドと古城フィールドがある。今視界の端で段々見え始めているのは古城だ。リュカオーンのマーキングポイントは平原フィールドの端の方にあるって話だけど、そこまで……いけるかな?微妙だ、非常に微妙なところだ。
走りながらジュゲッキのほうを振り向けば、ちょうどこれ以上分離する部位がなくなったらしく、いったん蘇生アイテムで肉体破壊状態をリセットしているところだった。
「ちょっと行ってくる!返信不要!」
メガホンでそう伝えると、視線を反転させながら更に速度を上げる。時間内にリュカオーンまでたどり着けないなら、リュカオーン側を引っ張ってくればいい!
「ニコロぉ!」
「
「フルパワーで噴かして!」
「
「
「
モーターだの何だのが駆動する無機質な音。そして―――加速感!
「よぉし!」
前方からこれでもかと吹き付ける夜風に耐えながら
その不可思議な、明確に単なる炎とは異なる
「そこか」
エフェクトは呟きすら変換し、なんだか不気味な聞こえ方にする。虚ろに吹き荒ぶ風の中、私は声を張り上げた。
「ニコロ!7秒後に反転して!」
「御意:」
7秒。6秒。5秒!1秒1秒を数えるたびに、ブースターが生み出す加速度が、少しだけ弱まっていくのが分かる。
4秒、3秒、2秒!障害物はなさそうだ、マップ的にも問題ない。このまま突っ込めば確実に
1秒!
「今っ!」
私は闇夜にそう叫び、アバターに襲い掛かった逆向きの加速度に圧迫され―――。
『ユニークモンスター「夜襲のリュカオーン」に』
そして、アナウンスを聞いた。
『遭遇しました』
その良く通る、「象牙」のものと同じパラメータで生成されたと思しき合成音声は……つい1秒後には残響も無く、再び猛煙を吐き出し始めたブースターの噴出音と、再び背後から聞こえ始めたファイアが奏でる銃声の嵐と、その時聞こえた
「グルルルァァッ!」
私とニコロに迫りくるリュカオーンは、鋭利な犬歯をむき出しにして、確かに大きくそう吠えた。ふと、月がずいぶんきれいだと思う。
でもそれより、衝突が近い。
「ニコロ、エスケープ」
「わかった」
彼女は本当に物分かりがいい。二つ返事でニコロは消えて、あれだけの爆炎を吐き出していたブースターも消え、ただ私が相応の加速度を有し、冷たい夜を突っ切っていくのみとなった。銃声と咆哮が接近していく。
「【
だったら、むしろ
ばさりと手拭いを展開。落下速度を遅めた私の肉体が、ファイアの体表で進行する
「その必要はないよ、クグリンちゃん」
真横から声が聞こえた。
首をそちらに向けてみれば、そこには当然のように円盤に乗ったマッド・サイエンティストがいた。
「……転移魔法?」
「自分の腕を切り落として蘇生アイテム括り付けて投げると、本体が死んだ時点で腕の側から
それってバグじゃないかな?いや、このゲームにバグはない。あるとしてもせいぜい調整ミスで、それが一番厄介なところなんだ。だから10秒が経過して、バグじゃないかってくらいのスペックのボスがさらに強くなるのも、止めることはできない。
眼下で。
夜狼と銃竜は激突する。ちょうど二百四十三丁になった長銃たちが、炎に包まれながら一斉に同じ方向を向く。影でできているかのような漆黒の狼が、繰り出した爪撃でそのうち数本を塵に帰す。銃声。咆哮。炎症がさらに強まったことを示す通知。
「ニコロ」
「
ここから離れなきゃならない。私は黒夜に人形を取り出し、その衣装にひかれた蛍光色のラインが、ひときわ目立って光を放った。ブースターの展開音を聞きながら、私は隣の狂人に聞く。
「ジュゲッキ、今のあいつにフルオートでブリューナクを撃ち込んだら倒せるかな?」
「……三人しかいないんじゃ無理だね~」
「銃を撃つ人数が足りないってこと?」
「うん、全員が片手銃を二本持つと考えても六丁でしょ?体力を削り切る前に五分経つと思う」
「つまり、もっとたくさん
「そうなるね~」
「よしニコロ、
「……へぇ~?」
ジュゲッキが興味深げに私の顔を見る。彼女はフィフティシア方面からファイアを誘導してきた。そしてその反対からリュカオーンを誘導してきたのが私で、それが
私は知っている。念押しとして、相棒に伝える。
「古城骸の終端を目指すよ」