ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~ 作:Z-LAEGA
ブリューナクは竜を屠るけど、使用する人間がいなければ置物でしかない。
竜は人間を簡単に踏みつぶすけど、ブリューナクの前には簡単に刻まれる。
人間はブリューナクを自在に震えるけど、フィジカルの面で竜には負ける。
これらは三すくみの関係にあって、三つの中でどれが最強か、決めることはできそうにない。しかし……どれが最強なのかは決められなくても、
竜と人間が合体して、ブリューナクを使う。
ただそうするだけで、全ての道理は吹き飛んでしまうのだから。
◆
ごうごうという虚ろな音と共に、展開した翼に風が吹きつける感触がある。現実の肉体に翼が生えているはずもないから、『翼に風が吹きつける感触』というのは、人生で初めて体験するものだ。それはなんというか……奇妙で。でも、少なくとも不快ではなかった。
【超転身】。コウガイガーたちに【水滑り】を教えた時に報酬として受け取ったそれは、噛み砕けば……「仲の良いモンスターと合体する」忍術に他ならない。私とユザパが仲良しかについては諸説あるけど、少なくとも装備のロンダリングにはかなり使った。それが内部的にうまいこと判定されたんだろう。
「……あそこ、か」
心なしか上昇したように感じられる視力で、飛翔の果てにあるものを見る。そこには一層拡大した
「よっ」
チェストリアから
……【超転身】は足し算ではない。モンスターと合体する技ではあるけど、合体相手のモンスターが持つステータスがそのまま術者に加算される、というのはちょっと強すぎる。あくまでモンスターをベースにした形態を作り出す方向性だ。しかし、
「
ここで着地!
ずざざ、と。月光を受けて煌めく土埃に包まれ、色々とゴテゴテしたパーツを生やした私は、二体の巨獣の麓に着陸した。舞い踊る火の粉はより一層増加していて、騒音も先ほどの比ではない。とはいえ……ファイアの特徴は集中攻撃、リュカオーンが立っている限り、この幾千の銃口が私の方を向くことはない。そして、リュカオーンはしぶとい。
「【スティール】」
だから炎症に侵されながらも、私は魔法を発動する。
「【スティール】……【スティール】……【スティール】……!」
叫びをあげるたびに課せられる数秒のリキャストタイムが、煩わしく感じられて仕方ない。何か短縮方法は……そうだ、
「装備っ」
よし何ともない!
即座に喚起、ただでさえ幾重にも這っていた私を包むエフェクトの波に、さらに真紅のそれが追加される。
「【スティール】、【スティール】、【スティール】……!」
全てのライフルを奪い去ろう、なんてことは考えていない。最大MPがどれだけ水増しされていようがいずれ魔力は枯渇するし、少し時間を与えればすぐ三倍になる。だからこの行為は……相手の火力を下げるためじゃなく、私の火力を上げるためにやっている。
私が一つライフルを奪うたびに、周囲を旋回するゲーミング弾倉のうち一つが、奪ったライフルへと装着されていく。ゲーミング弾倉の数も相当だ、なかなか枯渇しそうにない。……ジュゲッキは、それだけ本気で作戦に臨んでいたのだろう。
だったら、私もそうするまでだ。
七色の光が濃度を微細に変えて、宙を舞いながら豪華さの演出を続ける。その輝きの中央で、完成していく
「グルァァァァッ!」
リュカオーンが―――四桁に及ぶ銃を前にして、なおも怯まずに炎へと飛び掛かる。剛健たる牙を剥き出しにして、咆哮と共に攻撃を続ける。
「BABABABABABABANNNNN……」
ファイアが―――唯一性の塊のような夜を前にして、なおも怯まずに狼へと射撃する。灼熱と鉄躯を剥き出しにして、銃声と共に攻撃を続ける。
そろそろだ。そろそろ
「ここでケリをつける!」
私はセパレーションの能力を発動して自分の下半身を切り落とした。そうした方が【超転身】の燃費が良くなるからだ。それに、私にはすでに翼がある。脚が無ければ道を駆けられない道理なんてない。
ところどころに鋭利なディティールを持つ翼を上下させる。効果音と共に高度を上昇させ、眼下の眩い光から少しだけ離れる。胴を残したのは翼が生えているからだ。頭を残したのは叫ぶためだ。手を残したのは、印を組むのに使うためだ!
「すぅ―――」
蒼、紅、金、黒。混ぜこぜになったエフェクトは混沌を生み出し、私の頭部の周囲で蔓延っている。私が息を吸い込むほどに、それらはぐるぐると旋回するのをやめ、束ねられた糸のように整列していく。
見下げる先には紅蓮と闇黒。金属音と共に肉体の周囲を舞い踊る無数の銃たちが動き、その数多の砲口を一点に集中させる。それらのほとんどは鹵獲した奴だけど、一部はジュゲッキが落としたり、私がベヒーモスから買ったりした奴だ。何が違うか?
私は肺に溜め込んだ息が漏れないように注意しながら、両手で印を組み、言った。
「刃隠心得、奥義―――【竜威吹】」
【竜威吹】は発動者が叫んでいる間持続する。逆に言うと叫んでさえいれば内容はどうでもいいので、死ねでも通るし殺すぞでも通る。でも、そんな罵詈雑言より有意義な使い方もできる。例えば、音声認証の起動に使うとかだ。
「【
私は叫ぶ。息を吐き出す。銃の竜を打破するために、銃と竜の輝きを撃ち放つために!銃よ、竜よ!私に力を!
「【
炎を吐き出す!
そこにはいくらでも色があった。いつかセパレーションが纏っていた紫のプラズマが再現され、大疫青に由来する青白い瘴気が上乗せされ、
それはもはや銃声かどうかの問題ではなくて、私の鼓膜はとうに敗れていた。無音の中で視界がホワイトアウトする。咆哮を上げるファイアを含め、あらゆるものが光にぼやかされていて……ただ、ゲームのインターフェースだけが普段通りだ。じりじりと最大値ごと減少していたHPバーが、その時ついに底をついて。
そして。
私は、目を閉じた。
『
『
『参加人数:二十一人』
『ユザーパー・ドラゴンさんの
『真なる字名が明かされる:
『ユザーパー・ドラゴンさんが職業【
『Loading………』
『ユザーパー・ドラゴンさんが職業【
『ユザーパー・ドラゴンさんが称号【竜殺の実現者】を獲得しました』
『LEVEL UP:ユザーパー・ドラゴン』
『80→104』
……全部持ってかれてる。
次話で、終わりです