ロンギング・フロンティア~居残り組、新大陸に挑まんとす~   作:Z-LAEGA

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ポイントを振ろう!

「……うーん」

 

 悩んでいる。

 最終的に生き埋めになったものの、あのカブトムシは一応倒した。実は生きていたパターンもこのゲームならありうる……気がするけど、流石にないと思いたい。アナウンス流れてたしね。仮にアナウンスが嘘だったとして、報酬?らしきスキルも素材も手に入っている。実質的には同じなのだ。

 今悩んでいるのは、それとはまた別……というほどでもない、少しばかり関連した事柄についてだ。

 私の目の前に展開したウィンドウが、蛇の林檎(カルマ高めでも入れてくれる店)に差し込む陽光を透かしている。

 

————————————

PN:クグリン

LV:99 Extend (20……EXB:20)

JOB:錬金術師

SUB:上忍

332,189マーニ

HP(体力):60

MP(魔力):146

STM (スタミナ):35

STR(筋力):40

DEX(器用):90(90)

AGI(敏捷):105

TEC(技量):90(-45)

VIT(耐久力):25(600)

LUC(幸運):80

スキル

敏速解錠(ラピダンロック)Lv.MAX

迅速開錠(ファストロヴェージ)Lv.MAX

・リフレクス・フォクションLv.8

・アサシンピアスLv.5

・剣踊【匕襲(どくろづき)

潜翳尾行(センエイビコウ)

・アンブラ・ブラクネス

・ベルトベスト・ビックル

 

──【不世出の奥義(エクゾーディナリー・スキル)】──

戦砕琥示(ウォールフェン)

 

魔法

・【ファイアボールLv.6】

・【サンダーボルトLv.4】

・【エンチャント:サプライズアップ】

・【瞬間転移(アポート)

・【急速錬成(ブリッツアルク)Lv.MAX】

・【魔練幻撃(トリックビート)Lv.MAX】

・【律刃魔装(トリックブート)Lv.6】

・【融合錬成(フュージャルク)Lv.MAX】

・【分解錬成(ディフュージャルク)Lv.7】

・【創造錬成(プロデューサルク)Lv.9】

・【ミラクルマイニング】

 

――【刃隠心得】―――

【刃隠心得】

・【空蝉】

・【朧隠(おぼろなばり)

・【鼯衣(むささびのころも)

・【荒嵐潮足(あらしおあし)

・【鎖縛帷子(さばくかたびら)

・【不知火蕾(シラヌイツボミ)

・【追鼠火花(ツイソノヒバナ)

【刃隠心得奥義】

・【水滑り】

 

装備

右:無し

左:無し

頭:無し

胴:多技の白衣(デクセット)(DEX2倍、TEC0.5倍、VIT+600)

腰:多技の白衣(デクセット)

脚:多技の白衣(デクセット)

アクセサリー:刃隠六具【三尺手拭(サンシャクテヌグイ)

アクセサリー:刃隠六具【印籠(インロウ)

アクセサリー:爆蟹の腕輪(エクラブロード・リング)(爆発物接触耐性:中)

アクセサリー:毒鰐魚の手袋(トクシゲート・グローブ)(毒物接触耐性:中)

アクセサリー:不立荒の足音(ステルステップ)(足音軽減:小)

————————————

 

 私は平静をどうにか保ち、忍者用の巻物に錬成インクでメモを書き始める。地味だけど、私の就いている双方の職業が交わる瞬間だ。太めのペン先が紙上を踊り、黒の太字を滲ませる。

 

 一つ、レベル。

 随分長い間レベル99だった私だが、今回でレベル99……E()x()t()e()n()d()に変わっている。前にwikiで見たけど、確かExtendはレベル100以上のモンスターの討伐が条件のはず……戦災孤児はエクゾーディナリー、それくらいの強さはあったと言う事だろう。

 正直、嬉しい。かなり嬉しい。小躍りしたい気分だ。何ならする。私はおもむろに席から立ち上がると、静寂の中に白衣をはためかせてよくわからない舞いを踊った。多技の白衣(デクセット)は私が持っている中で一番いい装備で、確か何度目かに実験台にされたときにジュゲッキから貰ったものだ。表裏切替可能(リバーシブル)の装備で、裏返すと逆の効果を持つ一義の黒衣(テックスド)になる。裏地の黒が見え隠れして、私の舞いに独特な雰囲気を与える。

 しかし舞っている場合ではない。

 しかし舞っている場合ではなかった。私は椅子に座りなおすと、少し乾いてしまったペンのインクを補充しなおし、巻物への箇条書きを再開する。

 

 二つ、()()()()()()()()()

 

「……20かぁ~~~……」

 

 EXB、と名乗る謎の20ポイントが、レベルの横にくっついている。多分エクゾーディナリー……ブレイク?ボーナス?、またはエクストラボーナスの略だろう。

 これが、相当な悩みどころであり、舞いが中断された原因でもある。

 

「……20かぁ~~~……」

 

 私は同じことを二回言った。

 なんとなく拝んだ天井には、気品を纏った、それでいて飾りすぎもしない、例えるなら花びらのような形のシャンデリアが、蝋燭の光をさらさらと振りまいている。ずっとその様を見ていたくもあったが、きっとそれでは永久に解決に至らないのだろう。惜しみつつ、私はステータスウィンドウに視線を戻す。

 ……20、そう20だ。ものすごく微妙なラインと言っていい。これが1なら何も考えずMPか何かに突っ込むだろうし、100ならSTRとSTMを補強したうえで余りをTECとDEXに突っ込むだろう。でも、実際に私の舞いを妨げているのは20……何かを成すには少なすぎる、しかし端数と切り捨てるには多すぎる数だ。

 

「……20かぁ~~~……」

 

 二度あることは三度ある。

 そしてこの調子だと、きっと四度目もあるのだろう。

 

「……よし」

 

 これじゃダメだ、机に突っ伏すのをやめて、もう少し真面目にステータスについて考えてみよう。私は巻物をしゅるしゅると引き伸ばすと、ペンのインクを改めて補充した。零れ落ちた数滴の黒が、薄く明るい巻物に模様を描いた。

 

 

・HP

 正直そんなにいらないっていうか、これが必要になる時点で終わってる感あるよね。ジョブ構成的に、私の戦闘はだいたい「忍術で危機回避しながら錬金術の搦め手で倒す」って感じになるわけだけど……危機回避できるならHPいらなくない?っていう。まあ、DoT使いとかを対策する分には良いのかもだけど……実際、DoT使い対策できたところで新大陸行けなくない?つまりそういう事なんだよね。

 

・MP

 かなりいるよ、かなりいる。最近ちょくちょく【水滑り】を使って思うんだけど、やっぱこの忍術ってゴミなんだよね。燃費悪いし。応用性は多少あるし、実際ポーションを足場にジャンプ!とかやってはいるけどさあ。ポーションを足場にジャンプしてるのを横目に放たれる【竜威吹】に勝てるか?って言うと。勝負にすらなってない。地味さについてはもう仕方ないとして、せめて燃費の悪さは解決したいよね。そうなると、MPに振るのはアリなんじゃないかな。

 

・STM

 正直、AGIや忍者職の平均と比べてもちょっと低すぎる気はしてる。ただ、低すぎる気がするだけで実際のところ何とかなってる現状もあるんだよね……。そもそも私、走り回るよりは転移魔法で詰める方が好きだし。じゃあなんでAGIに振ったの?って言うとまあ正直事故に近いんだけど。忍者になったぞイエーイ!じゃん?ついでにレベルアップ!ポイントめっちゃ入った~!じゃん?忍者ってどのポイントがいいんだろう……うーん、なんとなく走ってる感あるしAGIかな!じゃん?舐めてんのかっていう。自分がポイントを振ってる相手はその辺の忍者じゃなくて自分自身が操作するアバターなんだ、っていうのを失念してるよね。走るのってダルいな……みたいな。思わなかったのかな?思わなかったんだよなあ……。

 

・STR

 あんまりいらない。同じ忍者でもビルドはいろいろあって、特に手裏剣とか投げまくってクナイとか刺しまくるタイプでは結構必要になるんだけど……まあ、たまにしか投げないし刺さないよね。いちおうメイン武器のダガーですら、攻撃より誰もいない空間に投げ込んで注意を引く使い方のほうが多いし。……この前ドリルを使ったみたいに、人から重い武器を借りる場面を想定する必要はあるかもしれないけど。

 

・DEXとTEC

 この二つについては、私の場合セットで考える必要がある。DEXは主に生産に要求される、要するに錬金術師の仕事で必要になるステータスだ。それに対しTECは……手先の動作が素早くなる。それはつまり()()()()()()()()()()ってことだ。上忍の仕事で必要になる。私はDEX二倍・TEC半減の多技の白衣(デクセット)とTEC二倍・DEX半減の一義の黒衣(テックスド)を使い分けてるけど、それにしても錬金術師と上忍には同じくらいのリソースを入れたい。この二つの片方に振るときはもう片方にも同じくらい振るべきだろう。つまり、20ポイントあるなら10ポイントずつ振ることになる。10ずつかぁ……。

 

・AGI

 書くのめんどいからSTM参照

 

・VIT

 書めんHP参

 

・LUC

 これが一番の問題だ。もともとドロップ率増加のため80まで上げてあったけど、この間【乱数転移】に挑戦した時に助けられたこともあって、もっと上げようかななんて思ってる。そして……20ポイント全てつぎ込めば100、確定食いしばりラインに届くのだ。それに加え、基本的に私の運が悪いというのも重要だ。抽選枠には毎回外れるし、【乱数転移】したらなぜか空にいるし、トンネルを掘るとエクゾーディナリーが出てくるし、ボルクネスにはおみくじで負ける。正直、こういうのがなければとっくに新大陸で活発で頼れる仲間たちと冒険の毎日を送れていると思う。実際のところは旧大陸で陰湿で近寄りがたい仲間たち(裏切りあり)とトンネルとか掘ってるだけだ。このゲームのLUCが実際的な()に影響するとは聞いたことが無いが、この運営のことだしなにかがあるような気がする。

 

 

「……20かぁ~~~……」

 

 四度目はあった。

 窓の外の太陽が少し傾いているのが、日光の感じからなんとなくわかった。少し橙を強めた太陽は、いつまでも旧大陸でこんなことをしている私への当てつけみたいに、眩しいにも程がある光で双眸を突き刺してくる。

 やってらんねえ……。

 私は太陽の残像が焼き付いた瞼を擦りながら、綺麗に掃除された窓ガラスと、そこに映りこんだ自分を見た。随分、弱々しく見えた。……今日はもうログアウトしようかな。そう、考え始めた時だった。

 がちゃり。

 入口の方からノブを回す音が聞こえる。何となく視線を飛ばしてみれば、一人のプレイヤーが茶色のドアを引いている。ドアが閉まる()()()という音に背を向けて、プレイヤーはどこかぎくしゃくとした様子で歩みを進め、私の隣……の()()()()()に座り、言った。

 

「マ、マス、マスター……カフェ、カフェオレを、一杯」

 

 ボルクネスだった。

 

「……ねえボルクネス」

 

 とりあえず声をかけてみる。

 

「あ、……あ?」

 

 今更気づいたらしいボルクネスは、空席を一つ挟んでおろおろしている。彼はカードゲームを遊んでいない間は極端に陰気なのだ。

 私は紙切れの束(デッキ)を取り出し、彼に言葉をかける。

 

「……ジェネレーション」

 

 ボルクネスの顔つきが変わった。

 

「……先攻は君のものみたいだな、クグリン。奇遇じゃないか、何の用だ?」

 

「実は……」

 

 私は事情を話した。

 オリジンマスのアンデッドモンスターを任意の数スティミュレーターマスの《喪失骸将(ジェネラルデュラハン)》の下に重ねることで特殊行動のトリガーを引き、運ばれてきたカフェオレを飲みながら、ボルクネスは私の話を聞いた。

 そして聞き終わると、真っ先にこう言った。

 

「レベルキャップ解放してもっとポイント増やせばいいだけでは?」

 

 そういうことになった。

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