超昂大戦 二次創作SS 最高の作戦! ルビー・笑顔の帰投報告 作:環 藍河
※時系列は第一部完結直後となります。こちらもネタバレご注意ください。
※pixiv様にも投稿します。
「癒々香さんっ! セラフィールさんっ! お願いです、どうか、命だけは…!」
「任せて、やってみる!」
「ルビーさん! あなただって重傷じゃないですか! あなたは私が…治します!」
駆け寄る、神騎ユユエルと六の法杖セラフィール。
「い…要りませんっ! 私は大丈夫ですから、二人でアルゴルさんを!」
意識不明のアルゴルを二人に託すと、ルビーは自身への治療の申し出を固辞し、救護室の外へ出る。
(あ…くはっ…! がはっ…)
ダイビート本部、救護室奥の集中治療ユニットに運ばれる、瀕死の神騎・アルゴル。
彼女はルビーと二人、作戦行動で共闘するも、任務完遂直前に神騎の宿敵・ザインの凶刃に倒れる。
彼女を最短最速で搬送するため、ルビーはアステライズ・フォームで全速飛行、敵陣真っ只中を突撃してきた。
だがルビーもまた、帰還を阻もうとする敵コマンダーのガトリング砲に晒され、今やぼろぼろ。
いつもは銀河の煌めきを宿すルビーの最強フォームだが、レオタードのヴァーミリオンレッドと胸のリボンのレモンイエローは、止血しきれなかったアルゴルの血でクリムゾンレッドに染められ、砲撃からアルゴルをかばった背中は、無数の弾痕で煤け、出血も酷い有様だった。
(ぐっ…くうっ、熱いっ、…ああ〜〜っ!!)
無数の火箸で背中全面を灼かれるにも等しい痛みに耐え、廊下の壁に半身を預け、声を殺すルビー。
(わ…私が治療を受けている間に、アルゴルさんに万一のことがあったら…! ダメ、我慢しなきゃ…癒々香さんとセラフィールちゃん、両方、アルゴルさんに集中させないと…。)
歯を食いしばり、冷汗も拭わず、ルビーは痛みと戦い、そして。
「…うっ、ううっ、…〜〜ッ!!」
(私の…ミスだっ! 判断ミスが…アルゴルさんをっ…!!)
背中よりも、心が悲鳴を上げていた。
オルタナスタイン壊滅後も、旧アルダークの残党は野良として散らばるクレイドやザインを拾い集め、奇襲でトキサダや戦士の命を狙い続けていた。
大規模蜂起の情報を得たトキサダは、先手を打ち掃討作戦を開始。情報量の乏しい戦いゆえ、現場で索敵・分析・作戦立案・遂行のすべてが即時可能なアルゴルと、空中からのアタックが可能なルビー・アステライズを組ませ、参謀本部とおぼしき拠点を急襲した。
敵を着実に一体ずつ撃破、頑丈な敵はアルゴルの指揮でルビーの必殺技・スターバースト・エスカレーションを発動し殲滅。間もなく任務完了と思われた。
「ぐふっ…ぶふうっ…がはっ!」
二人を背後から襲う敵、二体。
反応が遅れたルビーを庇い、アルゴルがザインの右拳の仕込み刀に貫かれる。
だが、アルゴルは喉元のザインへの反撃をせず、
「…ラズアルグル・ウォークライ!」
最後の力でルビーに必殺ゲージを与え、今一度の必殺技を促す。
「アルゴルさんっ!?」
(…クレイドを…!)
こっちのザインは後回し。
目線で訴えるアルゴルに従う。
「スターバースト・エスカレーション!」
クレイドを撃破。続けざまにザインに向かい、最後の一撃を繰り放つ。
敵、殲滅完了。
だが、ルビーの拳が届くその前に、アルゴルに振り下ろされた左の付け爪。彼女の生命力は、危険水域まで落とされていた。
(アルゴルさんは…クレイドに襲われる私を護ろうとして、自分を襲うザインを後回しに…! 私、バカだっ! 反撃の力なんて残っているはずのないアルゴルさんを庇わないで、クレイドに突っ込むなんて…! 指示を無視してアルゴルさんを助けていれば、こんなことには…!)
ほんの十数分ですら戻せない、時の神の残酷さに打ちひしがれるルビー。
「ごめんなさい…アルゴルさん…長官…!!」
銃創の痛みと自責に飲み込まれ、ルビーはベンチにすがり、情けない自分に涙を止められなかった。
…
……
「…ルビーちゃん? アルゴルさん、意識が戻ったわよ~。」
ユユエルの声掛けに、失神状態から我を取り戻すルビー。
「えっ…ほ…ホントですか?! ホントですか!!」
「負傷してからの搬送が、速さも状態保持もカンペキだったのが幸いしたわね〜。すっごくお手当て、しやすかったわよ。」
「あ…ああ…っ! ありがとう、ございました!」
痛みも忘れ、安堵の歓声を上げるルビー。
程なくしてルビーもユユエルとセラフィールの治療を全力で受け、1ミリ…いや、1ナノメートルの傷も残さないレベルで全回復した。(その模様は後に記す。)
…
「全く…愚かしい。」
「はい…今後は自分で判断し、行動します。」
「逆です! そう考える今の貴女が『愚かしい』と、私は今言っているのです!」
「…えっ?」
会話ができるまでに回復したアルゴルだが、厳しくルビーを叱責。
「貴女に討伐させたクレイドは、自爆型。ザインを先に潰そうものなら、今頃私達二人はクレイドの自爆に巻き込まれて殉職してます! 貴女は、命令遵守によって、きちんと私を救っているのです。
それを、あの場で一時の情にほだされ、命令違反を侵してでもザインを倒すべきだった、などとは…愚かしい」
「で…でも、結果、アルゴルさんが深手を…」
「私は指揮官です。トロッコの分岐スイッチが全滅か、私一人の重態か、だったら、天秤にかけて後者を選ぶだけ。あなたの思いやりなど、作戦行動の障害でしかないのです。」
…ああ、嘘だ。
ルビーを諭しながら、アルゴルは、ダイビートと…トキサダと共闘を始めて以来の、自身の変容を認めざるを得なかった。
『指し手の思惑を外れて動くチェスの駒があるものか! 余計な情などアサシン団の破滅を呼ぶ、地獄への一歩!』
同じ疑問をぶつける配下がいたとき、かつての私ならきっと、こう切り捨てたはず。
どうして私は、『私を信じてくれ』の一言すら、一度たりとも言わなかったのだろう。
今まで、何の疑問も持たなかった。
私一人が冷血漢となるだけで、アサシン団のかけがえない部下達を守れるなら、不等式は「私<部下」に決まってる。
ならば私は、嫌われ役を喜んで甘受しよう、と。
なのに、今はそれが正しいのか、迷ってしまう。
戦士たちが抱く、指揮官への敬愛。
トキサダの指揮で前線に立ったアルゴルは、軍師に全幅の信頼を置いて戦えることの素晴らしさを、身をもって悟った。
ならば、私が冷血漢のペルソナを被り続けることは、部下の敬愛すら否定してしまうことではないのか…?
何より。
互いを思いながら、戦えることが。
自分が一方的に信じるだけじゃなく、応えてくれる仲間と戦うことが、こんなにも勇気をくれる。
涙ながらに、ザインの二の太刀を防がなかった自分を悔い、その背中を盾にして、私を護ってくれたルビーが、こんなにも温かい。
アルゴルの天秤が、初めて真逆に傾いた。
「…でも、ありがとう。私を救いたいルビーさんの気持ちは、たとえ手段が誤りでも、私の心に強く響きました。」
「は…はいっ!」
「お礼に、あなたの大切な指揮官…戦部トキサダにあなたが報いることができる、最上の計略を3つ、授けましょう。」
「…えっ?」
…
ダイビート司令室では、掃討作戦から帰還した二人の安否の続報が無いことを気に掛けながらも、同時進行の作戦指揮で離席かなわないトキサダがやきもきする心を抑えていた。
「失礼します! エスカ・ルビー、入ります!」
「おっ、待っていたぞ、ルビー。」
そのまま溌剌とした足取りで、長官の前まで進む。
「アルゴルだけでなく、君も相当な負傷だったと聞いたが…その様子、やせ我慢してはいないか?」
「いいえ、癒々香さんとセラフィールちゃんにダブルで治療してもらい…ましたから、その…」
(…あ〜、あの二人に骨抜きにされていたか。)
「と、とにかく! アルゴルさんの作戦通り、これ以上の被害が出ないよう未然に防げたので、良かったです!」
アルゴルがルビーに授けた、3つの計略。
一つ、帰投報告では、長官への感謝と、何より無事であることを告げること。
指揮官が苦しいのは、自分の命令ミスで戦士が無用の傷を負うこと。だから、無事の知らせは何より、貴方の作戦は完璧でした、という賞賛であり、指揮官冥利に尽きることだから。
一つ、どんなときも、長官の指揮を信じること。指揮内容に100%の最善はあり得ない。いかに作戦順調であろうと、もっと損害の少ない戦略はなかったのか、指揮官は常に減点方式で自己評価する。だから、現場に立つ貴女の「これがベストでした!」というメッセージで、1%をしくじったと常に自己嫌悪する長官を、救ってあげなさい。
一つ、喜怒哀楽の感情を豊かに表すこと。
指揮官は、顔をほころばせて油断を生むことも、敵への怒りで冷静を失うことも、味方を傷つけた悲しみに沈むあまり、さらに他の味方への指揮をおろそかにすることも、すべて許されない。だから、長官が感情を表に出せない分、長官の代わりに貴女が2倍、笑って泣いて怒ってあげなさい。
ざっ!
両足を揃え、直立不動となるルビー。
「長官! 今日はアルゴルさんとチームを組ませていただき、ありがとうございました! すっごく勉強になりましたし、いつも長官が、私たちが無事に帰れるよう、とても頑張って指揮してくださっていること、身に沁みてわかりました!」
トキサダを見据える瞳には、謝意と信頼。
「エスカ・ルビー、神騎アルゴル、以上2名、無事の帰投を報告します!」
ルビーの、最高の笑顔での、帰投報告は。
アルゴルと組ませ、二人に重傷を負わせてしまった俺の後悔を少し中和し、
「…ただいま、です!」
「…おかえり。」
(いつも、ルビーの背中を見送るときの不安が忘れられない。絶対に、次も必ず彼女を護れるよう、最高の戦略を立てよう。そして次も、その次も、ルビーを必ずこの司令室で迎えよう。)
俺の中の誓いを、新たにした。
昨日はお休みをいただきました、環 藍河です。
一晩明けると、昨日「すげぇの書けたかも…!?」だった文が、えらく独りよがりのナルシー作文だったり…。ええ、赤面してかみ砕いて書き直しです。うう…!
疲れていると、生煮えの消化不良でお出ししてしまう。
でも楽しみになさってくださる読者様に、何とか早めにお出ししたい。
…世の作家様って、こんなジレンマともせめぎ合っているのでしょうねぇ。
このままIntermission(閑話休題・ちょいエッチ?)、Epilogue(アルゴルさん本領発揮エンド)まで連続投稿いたします。