忌み子の勇者   作:赤宮真琴

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カクヨム、小説家になろうにも投稿しています。


状況把握

 まずはこの世界について、だ。

 

「……まぁ、()()()()がうろついてる時点で日本…地球じゃないよな」

 

 目を向けた先には、俺に背中を向ける緑色の人型生物。

 手には棍棒、衣服は腰布だけで、耳はとんがっている。少なくとも、人間とは思えない。

 

 そう、この生物はゲームでよく見掛ける魔物(モンスター)────ゴブリンである。

 

 今でこそありえない、ファンタジーがすぎると思うが、前世の記憶がなかった8年間はこの世界で生きていて疑問に思った事はなかった。

 

 ──それがこの世界の常識なのだ。

 

 そして、この世界が地球ではないという証拠はそれだけじゃない、俺の身体も……。

 

 モフ。モフモフモフ……。

 

「む、むぅ…自分で触ってもくすぐったいな、()()()

 

 俺が今触っているこのモフモフは、俺の耳だ。

 頭の上についているこの耳は、いわゆるケモミミというやつで……。

 

「あぁ──嫌になるほど知ってるさ、今の俺は『黒猫族』だ」

 

 本当に嫌になるほど聞かされた種族。

 

 ────【黒猫族】。

 

 獣人の亜人の中で力が最も弱く、最も素早い。そして、【魔族】の血も流れているらしい。

 極めつけに──【黒猫族】は、神に見放された種族だということ。

 

 母親から聞かされた俺の種族だ。この世界で【魔族】以上に嫌われている種族だと。

 

『ノア……いい? 黒猫族はどの種族にも嫌われているの。だから、私が死んだらもう一人で、山の中でひっそりと暮らすのよ?』

 

 疲れきった顔でそう言い、その三日後に死んだ母親が脳裏に出てくる。……あれは自分の生に、絶望している人の顔だった。そう確信するほど、母は疲れ切っていたのだ。

 

「……人生ハードモードってレベルじゃないだろ」

 

 あらゆる種族からの信頼信用ゼロ、いや──マイナスなのは、とてつもない痛手だ。

 ……身体を抱き締める。恐怖心(トラウマ)が蘇りかけた。

 

 ──昔、一度だけ他種族に会った事がある。あれは酷かった。

 

『おい、黒猫族だ』

『うわ、最悪だ……黒猫族にあったら不幸が続くっていうじゃねぇか』

『珍しいから奴隷にしようかと思ったが…殺すか』

『や、やめて……』

『黙れ世界の塵。塵は塵らしく消えろよ』

 

 ……そのまましばらく追いかけまわされた。ただ追いかけまわされるのではなく、「お前を殺す」という確かな殺意とともに。

 

「う……いや、慣れろ……もしかしたら、考え方が変わってるかも……」

 

 有り得ない可能性を口にする。あぁ──有り得るはず、ないのに。

 

「……俺の知ってる知識はこれくらいか」

 

 気付けば、ゴブリンは居なくなっていた。……どうやら気付かれていなかったようだ。

 

 もしかしたら、この世界にはよくゲームに出てくるような【スキル】なんてものがあって、俺は隠密系の【スキル】を保有してるのかもしれない。こんな世界なんだ、充分有り得るだろう。

 

 既に【魔法】の存在は確認している。さっきの他種族との回想で思い出した事だが、その内の一人が【魔法】らしきものを使っていた。

 

 だから、地球になかった【魔法】や【スキル】があっても不思議ではないだろう。地球の常識は、あまり当てにならないかもしれない。

 

「お腹空いた…取り敢えず飯になりそうな物を採って帰ろう……」

 

 前世の記憶が戻って忘れていたが、元々ここには食糧を取りに来ていたんだ。

 状況整理もこのくらいにして、食糧を探しにいこう。

 

 ◆◆◆

「いやぁ、もうあれから一年半っすねぇ……」

 

 数々のコネを使い一から築き上げた自らの商店でそう呟く。

 結局商店を得ても、彼を見つける事は叶わなかった。

 

「来てないんすかねぇ……そっちのが望ましいっすけど」

 

 しかし、あの怪我では死は免れないだろう。

 あの時、彼は血塗れで……ぎりぎり原型を留めている程度。とても生きているようには見えなかった……おそらく即死、でなくとも次の瞬間には死んでいただろう。

 

 もしかしたらそれで()()()()()()()()彼は居なかったのかもしれない。死体はこれないんだろう──当たり前のことかもしれないが。

 そもあの時あの人数を召喚出来たのも奇跡に近いどころか、奇跡と言っていいだろうと聖女達は言っていた。

 

 だからこそ素質の多い若者に絞り込み、他を排斥した。死体や大人を入れる余裕なんてなかったのだろう。

 

 けれど、それでも彼にはこの世界に来ていてほしい……生きている可能性が出てくるから。

 願望でしかないが、そうであってほしい。黄昏ながらもそう考えた。

 

「ほんと……どこにいるんすか────カガミン」

 

 ────親友は、未だ見つからない。




 主人公(ノア)

 何気に回想で今世での名前が出ていた。
 本人は気付いていないが、かなり精神的に不安定になっている。記憶が戻るまでは現状を割りきって生活していたが、平和な世界で過ごしていた記憶が戻った事でこの世界の過酷さに心が折れそうになっていた。今はまだ、折れきってはいない。

 喋りが特徴的な商人(?)

「カガミン」という人物を探している。言動からこの商人? も異世界人──この世界から見て──なのかもしれない。

 現状、今の主人公とは面識はない。
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