魔女に洗礼詠唱(偽)は効きますか?   作:素人目

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深夜テンションです!!!


魔女にはどのようにして対抗すれば良いか

切られた。

 

死んだ。

 

生まれた。

 

自分の大きな出来事といえば、この3つが主なものだろうか。輪廻の輪というのに詳しくはないが、死んだ記憶を保持したまま生まれ変わるものでは無かった気がする。これではライトノベルによくある転生ではないか。まあ、正しくそうなのだろう。

 

自分の前世は理不尽に終えられた。街中を出歩いているときに、鉈をもった通り魔に襲われたのだ。

もちろん、自分は抵抗した。持っていたカバンを盾にして、誰かが通り魔を取り押さえるまで耐えようとした。

だが、相手の方が上手だった。考えてみれば、いつの間に壁際に追い込まれていた時点で気づくべきだった。襲撃犯には武術の心得があったのだ。

後は簡単だ。ひざ下を蹴られ、うずくまる自分の頭に鉈が降ってきた。あの衝撃と感覚は一生忘れまい。

 

 

この世に生まれ落ちたのを自覚したとき、自分は心に決めた。誰が襲い掛かろうが、絶対に生き残れるようにすると。二度と他人の都合で人生を終わらせまいと。

がむしゃらに鍛え、全力で学んだ。相手に押し勝てるように。相手を翻弄できるように。相手から生き残れるように。

自分はいつしか背は伸び、教育課程を修了し、今では道場で働くようになった。まさか武術で金を稼げるようになるとは思わなかった。

 

 

というわけで、現世はそれなりに安泰な生活を送っている。

 

 

 

『キャハハハハハハハハッ!!』

 

 

………あいつらがいなければ。

 

声は聞こえない。だけど甲高い笑い声をあげている気がした。

目を凝らして、やっとぼんやり見える魔女。しかも戦闘力が高いうえに、大抵は手勢まで引き連れている。

今回の魔女は、腕らしき部分が一本、異様に大きく見える。何も飛んで来ないところを考えるに、接近戦タイプらしい。

 

化け物退治も今日で1年だ。

 

 

手に持ったスリングを回し始める。

 

距離がそれなりにあるためか、昔を思い出す余裕があった。

 

//////////

 

 

とある暖かい日

 

 

きっかけは路地裏に入ったことだった。

薄暗い中、通勤や買い物をする近道がどこかにないかと歩き回っていたとき、妙に派手な格好をした女の子が裏路地に倒れていた。慌てて介抱しようとするが、その少女は苦し気にうめくばかり。

ひとまず表まで連れて行って救急車でも呼ぼうと、その子を抱えたとたん、胸にガツンと衝撃が走った。

 

反射的に力を抜き、衝撃を逃がした。いつの間にか少女は消え、あたりには嫌な気配が漂っていた。

しかも、それでとどまらなかった。腕、足、腹、背中、頭。立て続けに見えない何かに攻撃された。いや、注意して見れば、見間違いかと思えるほどに、うっすらと異形の怪物が見える。ただ痛みと嫌な空気が、ただの幻覚であることを否定している。

 

パニックになった。

 

無茶苦茶に手足を振り回し、手近なものを無作為に投げまくった。

 

そのときだった。

宙で何かを掴んだとたん、無意識に口が動いた。

 

 

"神様、助けてください!!"

 

 

傍から見たら滑稽だったろう。だが、確かに効果があった。攻撃してくる何かが、少しひるんだことがわかった。後はその繰り返し。

何かが殴ってくる。それを何度も失敗しながらつかみ取り、神に助けを求める。馬鹿の一つ覚えだった。

 

 

終わったころには真っ暗だった。体全体が一回りか二回り腫れあがったようにおもえた。自分でも動けそうにないことがわかり、近くに転がっていた携帯に119番を打ち込む。

 

電話の声に唸り声で答えながら思った。

 

 

 

_________これ、洗礼詠唱の出番だったのでは?

 

 

 

 

 

 

~搬送中~

 

 

 

前世には、Fateという作品があった。主な内容として魔術師がドンパチする物語だ。そこに登場する魔術に、洗礼詠唱というものがある。

これがどういったものかというと、人々の信仰のエピソードを基に、強引に周囲を浄化して、信仰というルールを押し付けるというものだ。物理的な効力こそ持たないが、霊体などには笑えるほど強く効く。

 

 

この世界では、それと似たようなことができるのではないか?

もしそうなら、わざわざ血みどろにならなくても、あの見えにくい存在に対抗できるのではないか?

 

 

病院のベットに寝ながら、手の中でアクセサリーのようなものを転がす。どうやら、ここに運ばれて来た時に、手に握っていたらしい。十中八九、あの化け物関係の代物だ。

それはどういう原理か、生えてるトゲで自立し、なにやら精巧な細工で飾られている。そして、あの嫌な雰囲気を纏っている。恐らく同じ雰囲気をたどれば、そこにあの見えにくい何かがいるのだろう。

 

 

「……まずは相手を見ることに慣れるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

//////////

 

 

 

 

 

 

あの時は運がよかった。弱い魔女だったし、生まれたてで、使い魔もいなかった。

それでもギリギリだった。少しでも状況が違えば、死んでいたのはこちらだっただろう。

 

 

 

ヒュンッと鉛玉を打ち出す。

 

弾丸は一番近かった使い魔に命中し、頭らしき部分が弾ける。あまり硬くはないようだ。

続けて次弾をセットし、打ち出す。またヘッドショットだ。今日はついているらしい。

 

もちろん使い魔共も黙ってやられはしない。距離を詰めてきたようだ。

囲まれたら一方的にやられるだけなので、障害物を盾に逃げる。時々振り向きざまに棒手裏剣を打ち、相手を疲弊させる。

 

普段ならここで結界を離脱して、また再度仕掛けるの繰り返しだが、この結界は予想以上に使い魔が少ないらしい。これならもう突撃して大丈夫だろう。

 

 

近くまで迫っていた使い魔に、鉛玉をセットしたスリングで殴りつける。その流れのままスリングを回し、本命の魔女に弾丸を飛ばす。回り込んで接近するつもりだったらしい。気が付いてよかった。これだから半透明どころかほぼ透明な奴は厄介だ。

 

 

『キャハハッ!ハハハ!!』

 

 

次は手裏剣をスリングにセットする。打つ。鉛玉より貫通力の高いそれは、見事に端から端までを魔女の大きな腕に収めた。これでしばらくは攻撃できまい。

 

直後に走って接近しながら、スリングを鞭のように振るう。使い勝手の向上のために、ごてごてと部品がついているスリングは、それ単体で高い威力を発揮する。更には反対の手に持った手裏剣を直接魔女に突き刺す。

 

 

抵抗のために、暴れようとする魔女。

だが、自分の手が直接触れた時点で、こちらの勝ちだ。

 

 

 

”聞く耳のある者は聞くがよい。”

 

 

『キャハッ、キャ、キ__』

 

 

ピタリと、抵抗が止まる。

 

 

”すべて外から内に入り、人を汚しうるものはない。

 不品行、盗み、殺人、姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、謗り、高慢、愚痴。これらはすべて自らの内より出て、人を汚す。”

 

 

『___ッ、__』

 

 

もはや抵抗はないに等しい。

 

この洗礼詠唱は元ネタとは違って、自分の手で直接触れなければ使えない。何故かはわからない。そもそも詠唱だって、この言葉が効くという経験則から編み出したものだ。どういう理屈が働いているかなんてわからない。確かなことは、魔女に有効。今はそれが最も重要だ。

続けて唱える。

 

 

”しかし、悔い改める者はだれであろうと、清められる権利を持つ。”

 

 

体の末端は崩れ始めていた。腐り落ちるというより、燃えカスと化している感じか。

 

 

”飢えている者は幸いである。あなたは満たされる。

 泣いている者は幸いである。あなたは笑うようになる。

 人々に憎まれ、ののしられ、汚名を着せられたとき、あなたは幸いである。

 あなたは良き隣人を知るであろう。

 夕暮れに涙が宿ろうと、朝と共に喜びがくる。

 

 _____今も、そしてとこしえに。”

 

 

遂に体が崩れた。

しかし、崩れた体は消え、残ったものは小さな宝石だけだ。

 

結界が崩れる。硬いアスファルトと電柱の街頭が、元の世界に戻ったことを裏付けていた。

 

 

 

「おい!アンタ!!」

 

 

グリーフシードを拾った時、声を掛けられた。

顔を上げる。

 

見上げた先には少女がいた。

中学生ぐらいだろうか。身長は160かそれより少し低く、長い赤髪をくくっている。そして乱暴な口調。

 

見知った相手だった。

 

 

「あ~、佐倉さんだったか?」

 

 

「そうだよ忘れんな。もうボケたのか?」

 

 

まだ20代なんだがな……

 

 

「それよりグリーフシードよこせ。アンタには必要ないだろ?」

 

 

確かに自分が持っていてもしかたない。

先ほど拾い上げた宝石を、佐倉さんに投げ渡した。

佐倉さんはホクホク顔で受け取りながら、会話を続ける。

 

 

「ホント何者だい、アンタ。魔法少女でも無いのに魔女に対抗できるなんて。___しかもあんな呪文で」

 

「キリスト教にどんな恨みがあるか知らないけど、あれが一番よく効くんだよ。あと言っておくが、そちらの魔法のほうが俄然使い勝手がいいからな」

 

 

魔法少女。思春期の女子がキュウべえとやらと契約して生まれる存在。その名の通り、マジで魔法を使って魔女を倒せる、とても羨ましい存在だ。

まあ、無条件で魔法を使えるわけではないそうだし、自分の初めての戦闘の経緯を考えるに、かなり黒いところもあるようだ。

 

 

「あ、そうだ。チョット奢れ」

 

「……食事をか?いったい何の義理があって」

 

「アンタがどっかに出かけている内に、魔女が出てな~。しかも大通りのすぐ脇でな~。アタシがいなきゃどうなっていたかな~」

 

 

……この前の出張か。

 

 

「___ラーメンとかでいいか?」

 

「へへっ、じゃあ早速……」

 

「てか、親御さんはいいのかよ?」

 

「ん?どーだって良いだろ?んなことはさ」

 

 

そう言うと、とっとと前を歩き出した。行きたいところはもう決まったらしい。

 

 

 

 

 

 

_____________

 

 

主人公:左部 弥一(さべ やいち)

 

 

何故か転生した人。

スリングと棒手裏剣で武装する。幼い頃から鍛えており、強さは下手をすればYAMA育ちレベル。

ただし、因果は一般レベルであり、転生した分の因果によって辛うじて魔女が見えるようになっている。魔女が半透明に見えるのもそのため。

 

スリング:いわゆる投石紐。鉛玉を飛ばした時の威力は拳銃弾レベル。また、棒手裏剣も飛ばせるようになっている。しかし、狙いをすばやく変更できないし、連射なんて以ての外。ねじれ防止のためのより戻しがついている。

 

棒手裏剣:鉄筋を削って作られた、けっこう大型な手裏剣。後ろに安定用の布切れがついており、もはやダーツに近い。先端にバーナーで焼き入れがなされている。

 

 

詠唱

 

聞く耳のある者は聞くがよい。

 

すべて外から内に入り、人を汚しうるものはない。

不品行、盗み、殺人、姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、謗り、高慢、愚痴。これらはすべて自らの内より出て、人を汚す。

 

しかし、悔い改める者はだれであろうと、清められる権利を持つ。

 

飢えている者は幸いである。あなたは満たされる。

泣いている者は幸いである。あなたは笑うようになる。

人々に憎まれ、ののしられ、汚名を着せられたとき、あなたは幸いである。

あなたは良き隣人を知るであろう。

夕暮れに涙が宿ろうと、朝と共に喜びがくる。

 

_____今も、そしてとこしえに。

 




改めて見ると、かなり中二くさい詠唱。
こんな駄文で神の名を連呼するわけにはいかないので、その要素は極力排除させていただきました。

できればコメント、高評価お願いします。
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