魔女に洗礼詠唱(偽)は効きますか?   作:素人目

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ひとまず過去編です。

___テスト期間中に、自分はなにをやっているのだろうか…………


遭遇

あたしの親父は、正直すぎて、優しすぎる人だった。

 

毎朝新聞を読む度に、涙を浮かべて、真剣に悩んでるような人だった。

 

父はある教会を受け持つ宗教者だった。

そして、今ある教義では救えない人がいるとも考えていた。

新しい時代を救うには、新しい信仰が必要だって、それが親父の言い分だった。

 

 

だからある時、教義にないことまで信者に説教するようになった。

 

 

もちろん、信者の足はばったり途絶えた。本部からも破門された。

当然だ。傍から見れば胡散臭い新興宗教だ。どんなに正しいことを、当たり前のことを話そうとしても、世間じゃただの鼻つまみ者。誰も親父の話を聞こうとしなかった。

 

納得できなかった。親父は間違ったことなんて言ってなかった。ただ人と違うことを話しただけだ。

5分でいい。ちゃんと耳を傾けてくれれば、正しいことを言ってるって誰にでも分かったはずだ。

 

なのに、誰も相手にしてくれなかった。

 

許せなかった。

誰もあの人のことを分かってくれないないのが、あたしには我慢できなかった。

 

 

だからキュウべえに頼んだ。

みんなが親父の話をまじめに聞いてくれますように、と。

 

 

最後はみじめだった。

 

はじめは良かった。大勢の人が教会に押し掛けた。信者もどんどん増えていった。だけど、魔法の存在が知られたのがいけなかった。信仰に関係なく、ただ魔法の力で人が集まっている事をしって、親父は壊れた。酒に溺れて、最後はあたし除いた一家で無理心中。

 

 

あたしは思い知った。

 

奇跡ってのはタダじゃない。

希望を祈れば、それと同じ分だけの絶望が撒き散らされる。要は差し引きゼロだ。

 

 

だからこそ、この力はすべて、自分の為だけに使い切る。

 

 

 

 

 

//////////

 

 

 

 

"夕暮れに涙が宿ろうと、朝と共に喜びがくる。

 

 

 

_____今も、そしてとこしえに。"

 

 

 

ボロボロになった化け物は、崩れるように消えていった。同時に、嫌な気配も消え去る。

 

オリジナル詠唱は完成でいいだろう。今までの詠唱より強力に思える。

だが、聖句をいじった詠唱っていいのか?本来の意味から乖離してしまったし、入信もしていないのに、聖書を利用しているのは気が引ける。

 

 

「………今日は宝石無し。弱いと出てこないのか?」

 

「見てわかんないの?あれ魔女じゃなくて使い魔だよ」

 

 

キンッと、背後から金属音がする。同時に、刃物特有の圧迫感。話し声の距離間からして、槍の類だろうか?

ひとまず、両手を上にあげる。だが自分の右手は、無意識に棒手裏剣を隠し持っていた。ばれたらどうしよう。

 

 

「あ~、もしかしてですが、あの化け物は退治してはいけないものですか?」

 

「その前に、あんた何者だ?どう見ても魔法少女じゃないよな」

 

「ご覧の通り、ただの一般人ですが?少なくとも、魔法少女という存在が、実際にいると知らなかった程度には普通です」

 

 

話しながら、状況を確認する。

寂れた路地だが、槍をふるうには十分な広さ。数で脅さないことを見るに、恐らくは1人か少数。相手は若く、自分より背が低い。獲物は槍か薙刀の類だが、先ほどの金属音からして、何かしらの仕掛けあり。ただし、銃剣にしては、間合いが広すぎる。______え、咀嚼音?なにか食ってる?

 

 

「ふざけんな。普通の人に使い魔は見えないし、さっきは魔法使っているように見えたぞ?」

 

「少なくとも、魔法少女という存在ではありません。先ほどのは、聖句が化け物に有効であることを利用したものです」

 

「はあ?魔法少女じゃないなら、なんで魔女狩りに勤しんでるのさ?グリーフシード……宝石目当てとかか?___てか、聖句が有効?」

 

「オカルト関係のものを、一般の市場に流せるわけないでしょう。時計塔が黙っているわけない。」

 

「時計塔?」

 

 

よかった。この世界に魔術協会は存在しないらしい。転生者なんて、魔術師が放っておくわけない。封印指定への道はなくなった。いやまて、まさかステッキ型のカレイドな礼装か?

 

 

「えっと、あなたは喋るステッキを知りませんか?」

 

「なにわけわかんないこと言ってやがる!」

 

 

よかった。本当にないらしい。

ただ、今聞くことではなかった。どうやら興奮させてしまったらしい。

 

 

「さっきからなに言ってやがる。てゆうか、グリーフシードが目当てじゃないなら、なんであんたは戦っているのさ?」

 

「自分は以前、この手の化け物が人を襲うのを見ました。そして、周りの人には化け物を認知できないことも知り、放ってはおけませんでした」

 

「へえ……」

 

 

その瞬間、背後からの圧力が強まった。魔法の類か、逃げ道を断つように帯状のものが広がる。これは本格的にまずいか?

 

 

「まさかとは思ったけど、やれ人助けだの正義だの。その手のおちゃらけた冗談をかますために戦っているの?」

 

「見て見ぬふりはっ___」

 

 

先制攻撃を仕掛ける。

半身を翻して、突きの射線から外れる。同時に、右手に隠し持っていた手裏剣を打ち、動きを続けるように、腰からナイフを抜く。一気に間合いを詰めるが、石突を返してきた。慌てて体をずらして回避するが、その隙に間合いを取られる。

 

 

「___気持ちよく眠れないのでね」

 

 

痛がる様子はない。手裏剣はあっさり避けられたようだ。相手の片手には、ほぼ食べ終わっているリンゴ。咀嚼音は聞き違いではなかったらしい。…………片手でさっきの動作をやったのか?

 

 

「ちょっとさ、やめてくれない?あんたの眠りなんて知らないし、軽い気持ちで首突っ込まれるってのはさ、ホントむかつくんだわ」

 

 

ブンッと槍をふるうと、鎖を伸ばしながら、やけに大きな穂先が飛んでくる。まさかの多節棍か!?

体をずらして回避する。しかし、巻き戻される鎖に足を巻かれ、体勢を崩された。そのまま槍先を突き付けられる。

 

 

「ハッ、このうすのっ!?」

 

 

手にあるナイフを投げつける。これもあっさり避けられるが、穂先が揺れた。その隙に槍の柄を掴み、体術の流れで押し倒す。そのまま関節を効かせるが、跳ね飛ばされた。

 

 

「この変態っ!女子を押し倒すなんてな!」

 

「ゲホッ、……純粋な筋力で、成人男性を跳ね飛ばしておいて、なにを言う」

 

 

おかしい、さっきは我ながら上手く決められたとおもったのだが。

関節技をかけられても力勝ちする少女とは、とんだ超人だ。

 

だが、さすがに無理があったらしい。筋を痛めたのか、腕をかばっていた。

 

 

「……なあ、痛み分けにしないか?これ以上戦っても、意味なんてないだろ」

 

「あんたから仕掛けたのにか?」

 

「先に槍を突き付けたのは君だろう?」

 

 

こちとら疲労困憊だ。なにせ化け物から連戦したのだ。心臓はうるさく鳴り、喋るのもおっくうだ。

その様子を感じ取ったのか、彼女は赤い衣装を普通の服に変えた。あのふざけた槍もなくなっている。武装解除したようだ。

 

 

「その早着替え術、羨ましいよ」

 

「それよりあんた、魔女と戦っていたならグリーフシードがあるだろ?」

 

「……何に使うんだよ」

 

「慰謝料だ。魔法少女には、それが必要なんだよ」

 

「なら、もう自分とは戦わない約束が欲しい」

 

「ハッ、これからも回収したグリーフシードをくれるってなら、約束してやる」

 

「…………わかったよ。今ある分は車にある。ついてきてくれ」

 

 

どうせ自分には必要ないものだ。ならば全部やってしまえばいい。いや、保険に2個3個残しておくか。

重たい体を起こし、駐車場に向かって歩く。

 

 

 

今回の戦闘で分かった。

対化け物、魔法少女戦では、ナイフはあまり役に立たない。その分手裏剣を持った方がいい。

 

 

 

 

 

 

//////////

 

 

 

どこか古臭い車の、荷台をあさる男に聞いた

あんたが魔法少女でないなら、なぜ魔女や使い魔を倒せるのか。あの呪文はなんだ。聖句にも聞こえたが、色々違っていた。

 

 

「ああ、聞いていたのか。てか、聖書の内容を知っているってことは、もしかしてクリスチャンか?」

 

 

うるさい。はやく答えろ。

 

 

「っと藪蛇か。あ~と、自分は数か月前に魔女に襲われてね。その時思わず、神に助けを求める言葉を口に出したら、魔女が怯んだんだ。ならば聖書の言葉とかも効くんじゃないかと試行錯誤して、色々いじった結果が今の詠唱ってわけだ。いじりすぎて本来の意味からは離れてしまったけどね。___後で神様に叱られるかもしれないな」

 

 

…………神様って、いると思うか?

 

 

「正直、否定も肯定もできないけど、魔女っていう存在がいる以上、いてもおかしくはないし、自分としては、いてほしいと思う。神様に祈りが届いて奇跡が起きるって、憧れるだろ?」

 

 

奇跡の代償に、その分の絶望が来てもか?

 

 

「あれ、少なくとも聖書では、自分の罪の代償を支払う必要はないってあるが……まあ、おかげでキリストは処刑されたから、ある意味代償か。てか、これは罪の代償か。そうだな…………もし奇跡に代償が必要だとしたら、それはプラスマイナスゼロってことだろ?ならそんなに悲観的にならなくていいだろ」

 

 

…………どうゆうことだ?

 

 

「つまりな、幸せから不幸になるんだったら、不幸から幸せになることもあり得るってことだ。たとえ取り返しのつかない不幸がきても、その分の幸福が来るかもしれないってな。_____鶏と卵のたとえになるか?幸福と不幸、どっちが先か…………まあ、どうでもいいか。なんか違う気がするし。そらっ」

 

 

男から、チャック袋が投げ渡された。中を確認すると、グリーフシードがいくつか入っている。

 

 

「これでいいな?自分はもう帰るよ。達者でな~」

 

 

どこか気の抜ける声を出しながら、男は車で走り去っていった。

 

____ねぐらに戻ろう。このグリーフシードがあれば、しばらくは戦わずにすむ。




こんなものでいいのかね?

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