英雄の仲間から神の眷族へと改帰する   作:時雨シグ

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今回はほのぼの回と言うか日常回です。




第五話 とある少女

 

 

side:ベル

 

 

とある日、団長室に“六人”(一人、神)いた。六人中四人は、神妙な顔つきで残り二人を見ていた。

 

 

「ロキ...とうとう犯罪に手を染めてしまったのか...」

 

「ロキ様...《ガネーシャ・ファミリア》へ今すぐ自首しましょう。今ならまだ刑は重くはならないはずです...多分」

 

「二人して何や!?ウチが犯罪犯したみたいに!てか、とうとうやと!?おい、リヴェリア、ガレって自分らもそんな目で見てくんな!?ウチはやってへん!!」

 

『そう言うやつに限ってしてるんだよ』

 

「被せてくんな!」

 

 

何故このようなやり取りをしているのかと言うと。

ふらっとホームを出ていったロキ様。帰ってきたと思ったら、幼子(おさなご)の手を引いていたのだ。

犯罪臭がした僕はすぐさまフィン達を招集。そして、現在に至るわけだ。

 

 

「で、どういう経緯でその子を連れてきたんだい?」

 

「ん〜、まぁ色々あってなぁ。もしかしたら、ベルにも関係があるかもしれん」

 

 

どういう事だろうか?疑問に思っ思いながら、ロキ様の話に耳を傾ける。

 

 

「この話は後で話す。...が、おるでな」

 

 

一瞬、アイズへと目をやるロキ様。その僅かな行為に意味を汲み取ったフィンはゆっくり頷いた

 

 

「...うん、分かった。よし、じゃあ自己紹介でもしようか。僕は、フィン・ディムナ。ここ《ロキ・ファミリア》の団長だ」

 

「私は、リヴェリア・リヨス・アールヴだ。...ん?この耳か?これは王族を表すものだが、気にする必要は無い」

 

「ワシはガレス・ランドロックじゃ。よろしくな」

 

「僕は、ベル。よろしくね」

 

 

僕達の自己紹介を終えたのち、その少女、アイズ・ヴァレンシュタインは僕へと目を向けてくる。その虚ろな瞳には何が映っているのだろうか。まだまだ関わりのない僕達には分からなかった。

 

 

「....ベルは、怪物に復讐したいって、思ってる?」

 

 

その瞬間、はっきりと瞳に憎悪が宿った。それはあまりにも強く危なっかしい。

 

 

「なんか急だね。ただ、その問いに答えるなら、別に思ってはないかな。でも、倒すべきだとは思ってる」

 

 

ダンジョンモンスターなら兎も角として、地上にいるモンスターは必ず倒さないといけない。ほっとけば、そこの住人に危害をあたえるからだ。

 

 

「私は、早く強くならないといけない。...そして、母さんと父さんを殺した''アイツ''を、私は殺す」

 

 

フィン達に聞いたときとは、別の意味での強い意志だ。それは危険であり、誰かが見ておかないと何をしでかすか分からない。

僕達五人は頭を抱えるのだった。

 

 

____________________________________________

 

 

アイズに神の恩恵(ファルナ)が刻まれ、ロキ様、フィン、ガレスに僕は、ステータスを写した羊皮紙を覗き考え込んでいた。

ちなみに、リヴェリアはアイズの連れ添いでギルドに行っている。

 

 

「魔法とスキル、両方初っ端から発現しとるのを見たのはベル以来やな。やっぱ、''精霊''が関係しとんか?」

 

「それはどうか分からないですけど、問題は...この【復讐姫(アヴェンジャー)】っていうスキルですね」

 

「スキルに影響するほどの憎悪、か。竜種というのは、やはりそういうことなんだろうね」

 

「...はぁ、なんでウチのとこにはこんな奇怪な子が集まってくるんやろなぁ。まぁ、面白いから歓迎やけど」

 

「...類は友を呼ぶ、という言葉がありましてですね」

 

「おい、言われてんで二人」

 

「うん、大丈夫だよ。それは君たちのことだから」

 

「心外じゃな」

 

 

四首領とロキ様が話し合いをしたとき、ときどき話が進まないことがある。不毛ないじり合いが始まるのだ。

と、ここでロキ様が疑問を抱く。

 

 

「それにしても、リヴェリア遅いなぁ。結構な時間経ってんで」

 

「アイズの相手に手を焼かせてるんじゃない?」

 

「あの様子なら、早速ダンジョンに行くって駄々をこねとるかもしれんのう」

 

 

苦笑する、僕たち。

そして、やっと帰ってきたリヴェリア。その姿は疲労が見え、僕達は今後の対策を考えるのだった。

 

 

__________________________________________

 

 

夜。

自室にて、僕はパチリと目を覚ました。何かを感じ取ったのだ。

 

ベットから降り、素早く着替える。念のため武器も携え、部屋から出る。

みんなが寝静まった静寂な時間。月明かりが窓から差し込み、暗い廊下を小さく灯す。

そんな廊下を【隠密】を使いながら歩いていく。

 

 

(やっぱりね...)

 

 

小さな気配を追いかけて確認してみれば、アイズがコソコソと館を出ようとしていた。

行く先はダンジョンだろう。バレないように出て行く姿は、何とも可愛らしい。

 

僕と同じように、それぞれ違う場所で動向を見ていたフィン達に、任せてと手を上げる。フィン達はやれやれと苦笑し、任せると返してくる。

 

 

当分の間アイズを泳がし、もう大丈夫だと油断していたとこで、声を掛けた。

 

 

「何処に行こうとしてるのかな、アイズ」

 

「っ!?」

 

 

ビクッ!と体を跳ねさせ硬直するアイズ。

ギギギとまるでサビついたロボットみたいに首を回す。

 

 

「...ベル」

 

「うん、こんばんは。こんな夜中に外なんて出てどうかしたの?」

 

 

僕は穏やかに詰めていく。

視線を逸らすアイズ。

 

 

「...さ、散歩」

 

「ダンジョンに行こうとしてるよね」

 

「.....」

 

 

まぁ、予想通りだなと小さく笑う。絶対抜け出してダンジョンに行くだろう、とフィン達と話していたのだ。

しかし、そんな悠長なことは思っていられない。本当に行動に出た以上、これから大変になることは確定したというわけである。

不満そうに俯いているアイズを見る。

 

 

「じゃあ、行こっか」

 

「...え?」

 

「行きたいんでしょ?」

 

 

少しの間呆然としていたのち、コクっと頷くアイズ。相変わらず無表情だが、内心は嬉しがっているのだろうか。先程よりも僅かに足取りが軽い。

 

 

____________________________________________

 

 

夜中ということもあって、冒険者はほとんど居なかった。たまに、帰還してきた冒険者とすれ違うくらいだ。...その際に、僕をガン見するのは辞めて頂きたいですね。なんか変な勘違いしてないといいけど。

 

アイズは初めてのダンジョンということもあって、視線をキョロキョロと彷徨わせている。

 

 

「アイズ、君は初めてモンスターと戦うだろうから、まず僕の戦いを見てね」

 

「...私が倒す」

 

「僕の後ならいいよ」

 

 

ちょうどタイミングよく三体のゴブリンが現れた。

今にも走り出そうとするアイズを抑え、前に立つ。

ゴブリンは僕たちを見つけると卑下た笑みを浮かべ駆け出す。

 

 

「最初の相手としては申し分ないね。ゴブリンはあまり戦闘能力はない。基本的に棒を振り回すくらいかな。だけど、それで侮ってはいけない。アイズがまともにやり合えば負ける可能性だってある」

 

「...じゃあ、どうするの?」

 

「戦闘に大事なことは、自分の間合いを知ること。仕掛けるにしても避けるにしてもこれを把握しておかないと、浅かったり避けきれなかったりする。まぁ、間合いのことはフィンが一番知ってるから聞いてみるといいよ」

 

 

ゴブリン三体を利用し、実演したり解説していく。

 

 

「そして次は、力の入れ方、抜き方、逃した方だね。と、その前に一つ。モンスター相手には少ないけど、剣を交差するとき、交差点を考えるんだ。剣先と刀で言ったら鍔に近いとこで交差するとき、どちらが力を扱いやすいか」

 

「...ねもと?」

 

「そう、鍔に近いとこだよね。例えるなら、長い棒を振るより短い棒の方が振りやすいように。で、さっきの話に戻るけど、こうやって振り下ろされた棒を鍔に近い方で受け止め、そして...流す」

 

 

小さく横に身を動かし、押し込んでくる力を横に流す。すると、ゴブリンは前のめりに倒れそうになり、その隙を利用して斬り伏せる。

シュゥと音を立て灰に変わる。

 

残り二匹のゴブリンは僕を警戒してか、アイズに狙いを変えた。

 

 

「ちょうどいいね。アイズ、倒してみて」

 

 

いきなり戦闘に持ち込ませて大丈夫だろうかと思うだろうけど、もともと一人で行こうとしていたのだ。このくらい出来てもらわないと、ダンジョンに行かせないように軟禁でもしないといけない。

 

ただいきなりこんなことさせて、リヴェリアにでも見られたら怒られるだろうな。

そう考えていると、アイズは最後の一体にトドメをさした。

 

 

「うん、よく頑張ったね」

 

 

褒めながら優しく頭を撫でる。

相変わらず無表情だ。一瞬アルフィアを思い浮かび体を強張らせてしまったけど、杞憂だったようだ。

 

 

「息が切れるてるけど、もう終わる?」

 

 

フルフルと横に振り、拒否される。

 

 

「ふむ...じゃ休憩しよっか」

 

 

そこからは、戦闘しては休憩を繰り返していった。戦闘していくにつれ、力の入れ方抜き方を学んでいっているのだろう。少しずつ息切れしなくなっていた。

戦闘能力も高く、僕が言ったことはすぐに吸収していく。

 

 

「アイズ、そろそろ体に限界がきてるでしょ?もう、終わるよ」

 

「...まだ、やれる」

 

「うーん...僕と勝負して勝てたらいいよ」

 

「...帰る」

 

「うん、素直で宜しい」

 

 

動けないアイズをおぶさり、ホームへと帰る。

 

 

「アイズ、疲れたでしょ?それが今の君の体力と身体疲労の限界だ。次からは、限界の7割程に抑えるんだよ。守れる?」

 

「.....」

 

 

うん、これは絶対に守らないやつだ。まぁ、あの三人ならちゃんとしてくれるだろう。うん。と全力で他人任せする。

 

 

「あ、そうそう。あの三人はいろいろ厳しいと思うから、今日みたいな自由さはないと思ったほうがいいよ。特にリヴェリアはね」

 

「...ベルが、来てくれないの?」

 

「僕も僕ですることがあるからね。それに、一人の指導者より複数の指導者がいた方がいろいろ身につくからさ」

 

 

正直、初日に甘やかしずきたかなと思った。けど、とう過ぎたことなので今更考えても仕方ない。

 

 

「だけど、次からはちょっと厳しくしていこうかな」

 

「.....」

 

「そんな雰囲気を出しても変えないよ」

 

 

おぶさっているのでアイズのことは見えないが、不満げな空気を出しているのを感じ取る。基本的に無表情だが、感情はちゃんとあるらしい。

 

 

アイズが館を飛び出してから、もう長い時間が過ぎている。ホームに帰ったら、なんか怒られそうだなぁと予感する。

 

 

『遅い』

 

 

ホームの扉を開けると、仁王立ちで三人が立っていた。

冷や汗を流しながら、掻い摘んで今回のことを説明する。当たり前だが、こってり怒られた。もし全部言っていたら、これだけじゃあ済まなかっただろう。

 

 

「今日のことは二人だけの秘密だよ」

 

 

口に人差し指をあて、アイズにコソッとそう言う。

アイズもアイズでこってり怒られており、特にリヴェリアの怖さを知ったこともあって、コクコクと頷いた。

 

僕はそんなアイズの頭を撫でる。

 

 

「かなり汚れてるから洗ってくるといいよ。リヴェリア、頼める?」

 

「...分かった」

 

「ありがとう」

 

 

リヴェリアと女浴場へと向かっていったアイズ。ビクッとなり、僕を縋るような目で見てきたけど、どうにも出来ないので手を振って送り出す。

そして、僕も自分の汚れを落とすため男浴場へと向かった。

 

 

三人が居なくなり、部屋には二人が残った。

 

 

「...アイズの面倒を見てるときのベルって、完全におじいちゃんだよね」

 

「全くじゃ。女からしてみれば、あの見た目で祖父のような包容力は反則じゃろうな」

 

「庇護欲を掻き立てられ近づくと、逆にあの包容力にやられる。狙ってやってないんだから余計にタチが悪い」

 

「ここの団員もやられとるやつがおるしのぉ」

 

「さっきの場面で、リヴェリアにも頭を撫でてたら、僕は最高の酒を奢ってただろうなぁ」

 

「あんまりにもやりすぎると搾られるぞ」

 

「そのときはそのときだよ」

 

「全く...まだまだ子供じゃな」

 

「もう30代だけどね」

 

 

そんな会話をしていたなど、ベル達三人は知る由もなかった。

 

 

____________________________________________

 

 

 

今日も今日とて、前回のように自由にさせていた。

もちろん、戦うモンスターや同時に相手する数など問題の起こる可能性が低いようには選別を行っている。

 

僕、フィン、リヴェリア、ガレスと一周し、また僕へと戻ってきたわけだが、三人によるとなかなか大変だったようだ。

話を聞かずに特攻したり、限界ギリギリあるいは越えるまでしようとしたりと制御がきかないと。

 

今回を含め、僕のときはそれほど頭を抱えるような事態には陥ってない。何でかは分からないけど、手間が省けるのでありがたいことだ。

 

 

現在、ダンジョンから帰宅途中、グゥグゥゥウッとお腹が鳴る音がする。

音源の方を向くと、お腹をおさえるアイズが映る。

 

 

「お腹が減ったの?」

 

 

コクッと頷いたアイズ。僕は周りを見渡す。

お、ちょうどいいのがあった。

 

 

「なら、あれを食べに行こうか」

 

 

繋いでいた手をゆっくりと引いてその場所へ赴く。

 

 

「すみません、じゃが丸くん二つください」

 

「あいよ!」

 

 

それから少しばかり待ち、じゃが丸くんが渡される。

 

 

「熱いから気をつけてね」

 

「.....」

 

 

初めて見たのだろう。じゃが丸くんをずっと見つめている。

やがて食べる気になったのか、口へと運び食すアイズ。

 

その瞬間、ピクッと少し肩が跳ねた。相変わらず表情が乏しいのいので何を思ったのか分からない。

それからはもくもくと食べていき、あっという間になくなった。もしかしたら気に入ったのかもしれない。

そして、なぜか僕を見つめてきた。

 

 

「どうかした?」

 

 

そう聞くと、アイズの視線が僕の持っているじゃが丸くんに注がれる。

 

 

「もう一つ欲しいの?」

 

 

コクコクコクと、いつもより多い頷きが返ってきた。

この後は夕食がある。なので、あまり腹を満たしたくはないんだけど、アイズがこんなにも何かに興味を示すのは後にも先にもないかもしれない。

そう思い、もう一つ購入した。

 

 

ベルはアルフィアもといアイズにあまい。まるで孫のように接してしまっているのだ。

 

 

そしてまた、食べ終わったアイズは僕を見つめる。

 

 

「もう買わないよ?」

 

 

そう言っても見つめてくる。

うーん、どうしようか...

 

 

「じゃあ、ダンジョンで危ない事しないって言うなら、今日はもう無理だけど、また買ってあげる。守れる?」

 

 

...コク

 

 

長めの思考に落ちたが、ゆっくりと頷いたアイズ。

 

 

「うん、よろしい。じゃ、帰ろっか。みんなが待ってる」

 

 

帰る道中、僕は黒い笑みを浮かべた。

僕含めフィン達は、アイズを制御できる何かを探していた。

そして、見つけたのだ。

 

ホームに帰ってからこのことを伝えると、四人は笑みを浮かべるのだった。

しかし、使い過ぎては効果が落ちてくるので、ここぞ、という場面で使おうとなった。

 

 

 

 

 

 




ありがとうこざました。

次回、??

では、さようなら。
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