英雄の仲間から神の眷族へと改帰する   作:時雨シグ

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シリアスが続くので、ちょっとほのぼの会的な話です。

あ、アストレアレコード突入です。




0巻 (アストレアレコード編)
第七話 序章


 

 

無窮の夜天に鏤む無限の星々

それらは変わることなく見つめている。

大地の記憶を、人類の歴史を。

怪物の出現。

英雄たちの台頭。

神々の降臨。

そして.....

秩序の象徴たる最強の二柱が堕ち、

怪物を屠るため鍛えられた武器、練られた魔法が

同じ人類を排するために使われた

後に【暗黒期】と呼ばれる時代も。

星々は変わらず見つめていた。

無数の生命の煌めきを。

暗闇に宿る正義の輝きを

 

遠き森より出でし 妖精の少女(ともがら)の戦いを (公式抜粋)

 

 

____________________________________________

 

 

人智を超える力を手にしたとき何かしらの代償が課せられ、欲すれば欲するほど代償は重くなる。また、力度合いによっても大きく変わる。

 

例えば、当時十五歳にしてとある事(割愛)をきっかけに強力な身体能力を手に入れた少年は、不老という代償を受けた。人によっては良いと思えるかもしれないが、''別れ''というものを知ってしまったベルにとっては辛いものだった。

 

また、神話時代以降最も才能に愛されたアルフィアという女性は、治すことの出来ない大病を代償として生まれつき持ってしまった。

 

 

覚悟なんかする間もなく縛られる。このことを多くの者は知らないだろう。なぜなら、人智を超える力を手にできるのはほんの一人握りなのだから。

 

 

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side:ベル

 

 

「今月まだ中頃なのに、もう二十件近い闇派閥(イヴィルス)による無差別攻撃が起きている。ベルがいち早く駆けつけているとはいえ、同時に仕掛けられては対処が遅れ少なくない被害者がいるのは紛れもない事実だ。そして、無差別に思える攻撃には明らかに自分達の意図を隠そうとしている。はぁ...一体何を隠してる?」

 

 

団長室にて、報告書を読むフィンが顎に手を当て問題に悩まされていた。

八年前、二大派閥が壊滅してからというもの、闇派閥(イヴィルス)の存在が顕となり対処が行き届かず多くの被害がでた。そして今、その当時程ではないが活発化、付随して被害が出ている。

 

 

「ベル、大丈夫か?」

 

「うん。全く問題ないよ」

 

「だが...」

 

 

ベルの隣にいたリヴェリアがベルへと目を向け、心配しているといった表情を浮かべ様子を聞いた。

リヴェリアが心配するのには理由がある。

 

守護者(アレグサンダ)』という存在に勝手に過度な期待をよせ、勝手に裏切られたという思いをする人によって恨まれ苛まれている。ただ、それに関してはあまり気にしていなかった。古代のときからそれは日常茶飯事で、他人の思い込みからの非難だからだ。

 

ベルが暗い表情を浮かべるのは、護れなかった救えなかったという後悔と自責である。これは古代からずっと抱えている苦い想い。決意した想いをまるで否定されているかのように現実が打ち寄せてくるのだ。

 

 

「お主はいつ寝とるんじゃ?一日中警備にあたっておるが」

 

「ずっと巡回してるわけじゃないよ?時間があれば休んでる」

 

「それは休んでるとは言えないよ。それと、近年は共に食事をすることが少なくなってきてることを自覚してるかい?団員が、ベルさんとの食事が減ってきて悲しいですって言ってたよ」

 

「それは悪いことしてるなぁ、って自覚してる」

 

 

朝昼晩時間場所を問わず動く闇派閥(イヴィルス)。室内に居れば、その分時間をロスしてしまう。

よって、寝るときは外で座って寝たり、食事も週に一回共に出来ればいいというぐらいまで減っている。

 

 

「まぁ僕のことはおいておくとして、フィン、何がそんなに気になるの?」

 

「シャクティ達の連絡によると、襲撃された工場から魔石製品の『撃鉄装置』が奪われているらしい」

 

「そんなもの何の材料にもなりえんだろうに。意味がわからん」

 

「.......」

 

「ベル、どうかした?」

 

「...いや、なんでもないよ。ただ、爆弾かぁと思ってね」

 

 

僕は個人で『撃鉄装置』を何故盗んでいるのか情報を集めていた。しかし、核心に迫る手がかりを見つけることは出来なかった。

でも、一つの思惑に気づく。『撃鉄装置』、エルフの森の『大聖樹』、デダインでの暗躍。普通に考えれば点と点が繋がらないように思えるが、少し視点を変えれば分かることもある。

だけど、これを言うならもう少し情報を精査してからにしとこう。それはあまりにも絶望きわめているから。

 

 

「話は変わるけど、ベル、君は一体ライラに何をしたのかな?」

 

「え?なんの事?」

 

「へぇ、しらばっくれるんだ。なかなか勇敢なことするね」

 

 

しらばっくれているが、バリバリ心当たりがあるベル。これはいつもの嫌がらせなのだ。

僕は以前、ヘルメス様から強制的に渡された''男を活性化させる薬''を、ライラに『フィンと頑張れ』と言って渡したのだ。

彼女は黒い笑みを浮かべ喜んでいた。玉の神輿を狙う彼女にとってアレは都合のいいものだったからだ。

 

ヘルメス様もヘルメス様で何であんな物を渡して来るのか分からない。本当にやめて欲しい。何かの間違いでアストレア様の耳に入って、勘違いされたらどうするんだ!

 

ここで悲報だが、アストレアには普通にバレている。眷属であるライラに渡しているのだから耳に入らないわけがなかった。ただ、アストレアはベルの事情を把握しており、ヘルメスを(なみ)すんでいる。

 

 

「さて、これはなんでしょうか?」

 

 

すると、フィンはヒラヒラと束の羊皮紙を見せてきた。

そ、それは....!?

 

 

「えぇとなになに...愛しのアストレ「せぇえええええええええええええええぃいっっ!!!!」おっとっと。危ないじゃないか」

 

「なんでそれを持ってるの!?」

 

「部屋に入った」

 

「プライバシーっ!!」

 

 

フィンが持っているのは、時間があった時夜な夜な綴っていた、『愛しき者への愛の手紙(ラブレター)』だった。

ぐぁああぁ、見つからないよう引き出しの奥にしまってたはずなのにぃぃぃぃっ...!

 

 

「手紙って...案外子供みたいなことするんだね」

 

「仕方ないでしょ!?どうすればいいか分かんないんだから!」

 

「というか、これいつから書いてるの?何回も書き直してるようだけど。それに見た感じ、渡してないよね」

 

「...だって、アストレア様の素晴らしさを表そうとしても僕の稚拙な語彙力じゃ言い表せないんだもん!」

 

「キモイよ。言動が」

「醜いな。全てが」

「愚かじゃのぉ。思考が」

 

「皆して酷くない!?」

 

 

残念な子をみるような目で見下ろしてくるフィンとガレス。リヴェリアに至っては完全に軽蔑していた。

そんなとき、コンコンと扉のノック音がなった。

 

 

「会議中すまn...なんで崩れ落ちとるんや?」

 

「グスン...なんでもないです」

 

 

断りをいれながら入ってきたロキ様は僕をみて不思議そうに問いかける。一通り見渡してから、「ああ、いつもの(嫌がせ合い)か」と納得する。

 

 

「フィン、それを儂にも見せて貰えんか」

 

「私も見させてくれ」

 

 

あのベルがどんなことを書いてあるのか気になる二人はフィンから羊皮紙を受け取る。

少し読んでから呆れたようにガレスは呟いた。

 

 

「拗れとる。拗れに拗れまくっとるわ」

 

「...そうか?私はいいと思うが」

 

「...ここにも拗れとるやつがおったわい...」

 

「なぁ、さっきから行き遅れ四人で何しとんや?」

 

『あ?』

 

「すんませんっ!!」

 

 

ロキは腰を120度曲げた。

 

 

「で、ライラとはどうなったの?」

 

「親指の疼きに感謝だね」

 

「チッ...!」

 

「はっ倒すよ」

 

 

 

____________________________________________

 

 

 

「アストレア様!これはどうします?」

 

「それは細かく切っておいて」

 

___________

 

「アストレア様!これは?」

 

「それはもう鍋に入れておいて」

 

___________

 

 

「アストレア様!もうそろそろですか?」

 

「ええ、そうね。助かるわ」

 

___________

 

 

「アストレア様!好きです!」

 

「ありがとう。私も好きよ。''子供''として」

 

「ぐはぁっ!」

 

 

ですよねぇ...!と言いながら撃沈するベル。

現在、《アストレア・ファミリア》《デメテル・ファミリア》主催のもと、炊き出しの準備が行われている。

子供たちが頑張っているのに、神である私が何もしないでどうする、という意志のもと定期的に開かれているこの炊き出し。

 

それで、だ。

何故ベルがいるかと言うと、アストレア大好き人なベルにとって、逢える、アピールできる数少ない機会だからだ。

 

 

「『守護者(アレグサンダ)』様は相変わらずアストレア様のことが好きでございますなぁ」

 

「くっ...あの『守護者(アレグサンダ)』様とはいえ、私たちの主神である愛しきアストレア様の隣を独占するのは許せないわ!べェルゥ〜っ!!アストレア様にアピールし過ぎよ!するなら私にしなさい!」

 

「貴方は何を言ってるのですか、アリーゼ」

 

 

《アストレア・ファミリア》主催なのだから当然眷属達もいる。

 

極東出身で、着物を着ており黒の長髪をした少女。名を、ゴジョウノ・輝夜。お淑やかな見た目や言葉遣いだが、それは猫かぶりであり裏はかなりイカつい(現実主義)

 

緑の瞳を持ち、滑らかな赤髪をしたポニーテールの少女。名を、アリーゼ・ローヴェル。非常に活発で底向けに明るく、周りを呆れさせるも笑顔にする天賦の才を持っている。そして、残念美少女と呼ばれてたりする。

 

蒼の瞳に翠色の髪をしたエルフの少女。名を、リュー・リオン。排他的かつ他種族への蔑視や見下しに嫌悪を抱いるようだが、自分もその者達と変わらない という悩みを持っている。

 

 

「アリーゼはホームで幾らでも一緒にいられるじゃん。だから、今ぐらい僕に譲ってくれてもいいと思うんだけど。ていうか、最後のはちょっと何言ってるか分かんない」

 

「いつなんどきも居たいのよ!それと最後のは、あの『守護者(アレグサンダ)』様に好意を抱かれてるってなったら評価爆上がりするじゃない?それに憧れの人と共に人生を歩んでいけるなんて、なんて素敵なのかしら!」

 

「最低なネームバリューだよ」

 

「ほら二人とも、手を動かしなさい」

 

『イエスマム!』

 

 

この二人、アストレアのことになるととても相性がいい。

 

 

「ねぇ、ベル。本当にアストレア様って美しいわよね。もし私が男だったら絶対襲ってたわ。女である人生でも、たまに襲いかかろうとしてしまうもの」

 

「君が男じゃなくて良かったと心の底から思えたよ。まぁ、僕も我慢出来ないね。あれはヤバい」

 

「おい、誰かコイツらの手足縛るから手伝ってくれねぇか。ガネーシャんとこ突き出すからよ」

 

『やめてください、ライラさん!!』

 

 

こんなことを言われていても、軽く流しているアストレア様は流石と言うべきだろう。まぁ、神界に居たときの方がよりやばい男神がいただろうから慣れているというのもあると思うが。

 

 

それからもワイワイと言いながら炊き出しを進めていった。その間、住人は笑顔であり、今となっては数少ない笑顔が咲きあふれている光景だった。

 

 

ああ...やっぱりみんなの笑顔を見るのは好きだなぁ...

 

 

____________________________________________

 

 

炊き出しが終わり、いつものように巡回していると『ごあぁぁー!』という悲鳴が響いた。

僕は闇派閥(イヴィルス)か!と思い、音源へと全速で駆けつける。

やがてその場所に着くとそこに居たのは、拳を血で染めたアスフィさんと、血を流して壁に突っ込んでいるヘルメス様だった。

面倒を感じ取った僕は直ぐに反転して歩みを進める。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれベル君!オレを見捨てないでくれっ!!」

 

 

今日も相変わらず曇天だなぁ。

 

 

「ベルくぅうううううんんんん〜っ!!!」

 

 

___________________

 

 

「変な冗談を言うからそんなことになるんですよ」

 

「それがオレだからね」

 

「胸を張ることではないですよ」

 

 

何故ボコられていたのか経緯を聞いた僕は呆れ返る。まぁ、これがヘルメス様クオリティだから今更だけど。

 

 

「で、アスフィはなにが気にかかっているんだい?」

 

「...最近の闇派閥(イヴィルス)は妙に活発です。略奪に信者による強奪を抜きにしても限度があるはず...」

 

「簡単さ。豊富な資源を沢山持っている者たちの協力があればな」

 

「まさか...商人!?」

 

 

オラリオに数多の資源を届けてくれる商人達。そんな人達が今、悪を援助し絶望の欠片を都市へと運び込む密輸人となっている。

 

 

「で、ですが、何故商人達が...?」

 

「オラリオではダンジョンに関わる商売は制限されている。権利を独占するギルドが落ちれば、自分たちが牛耳れるイェイ!、とでも思っているのかもしれない。だが、ここで一つの疑問が生じる」

 

「何故、商人達は闇派閥(イヴィルス)に投資しているのか、ということですね」

 

「ああ、そうだ。今になってこぞって支援し始めた真意が分からない」

 

「確かに...」

 

 

この状況下、アスフィ一人だけが置いてけぼりを食らっているかのように話が進む。

 

 

「推測になるが...『冒険者に代わる勢力』が加わった、からじゃないだろうか」

 

超硬金属(アダマンタイト)の壁をぶち破った剛腕の人物。とある上級冒険を一瞬で戦闘不能にした高位の魔法使いの存在」

 

「そう、ベル君の言った通り闇派閥(イヴィルス)の背後には、確かな『強大な存在』がいる。これならば強引だが、商人達が投資する気になった理由に理屈が通る」

 

「僕は二つの話を聞いてから確信したことがあります」

 

「ああ、そうだなぁ。ベル君とオレ達(神々)とでは思考は同じだろうけど、思い当たっている人物が違うだろう」

 

「お二人共、何を言って...?」

 

 

どんどんと話が進み、自分勝手に納得 完結する二人にアスフィは戸惑う。何を考え何を口にしているのか全く理解出来ない。

 

 

「見え隠れしているんだよ、裏で全ての糸を引いている」

 

 

 

 

「厄介な『神』の影が」

「堕ちた最恐(二人)の亡霊が」

 

 

 

____________________________________________

 

 

とある建物の屋上。そこには一人の男が居た。

巡回を一度切り上げ、休憩している最中だった。

 

 

「はぁ...闇派閥(イヴィルス)は本当に''それ''をするつもりなのかな?もししたとして、世界が破滅に向かうのは必至だと分かっている筈なのに」

 

 

今までの経験や情報を精査し、導き出した解。

ただ、闇派閥(イヴィルス)の真意が分からず疑問が悶々と頭を埋め尽くす。

 

と、その時。

僕の背後でふわりと誰かが舞い降りた。

 

 

「こんにちは」

 

「こんにちは、アサナシアさん」

 

「また悩んでいるのね」

 

「解を導けても、相手の真意が掴めないので」

 

 

可愛らしく微笑まれ、顔を逸らしてしまう。

美人なんだけど、笑ったら可愛いというスペックは本当にずるい。と内心呟くベル。

 

三年前に知り合い正体を知った今、気兼ねなく話し相談したり助け合ったりと支え合う間柄となった二人。かなり良い関係が築けている。

 

 

「でも、それも分かる事じゃない。だって''もう少し''で起こるんでしょ?」

 

「ええ、''あと少し''で始まります」

 

 

 

 

『悪と正義の戦争が』

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。

アストレアレコードという神作をなるべく穢さないよう励みますので、ご了承ください。

次回、大抗争

では、さようなら
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