英雄の仲間から神の眷族へと改帰する   作:時雨シグ

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タイトル: 激闘 (描写が激闘を記せているとは言ってない

後半になるにつれて適当になっていくのをどうにかしないと。
ですが、言い訳を。
今回、初めてこの創作で一万文字行きました。駄文が一万続くと思ったら笑えますね。

少し長いですが、御付き合い願います。



第九話 激闘

 

side:ベル

 

約八年ぶりに会ったその男は──とてもダンディーなおっさんになっていた。

なんかタイトルっぽく言ってしまっているが、ふざけている訳では無い。漢に磨きがかかっているのだ。

 

僕は勇ましく佇むザルド前に降り立つ。

 

 

「久しぶり。オッタルはどうだった?」

 

「準備運動にもならん」

 

「そう?結構強くなってると思うんだけどなぁ」

 

 

この創作では、原作よりも全体的に強くなっている。その要因はベルにあった。ベルに少しでも追いつこうと皆切磋琢磨しているのだ。

《フレイヤ・ファミリア》の眷族達は主神の寵愛を一身に受けていることへの嫉妬からだろうけども。

 

 

「ベルさん。俺はアンタを喰らう」

 

「...そっか。じゃあ、早速やり合おう。君とは一度本気で闘ってみたかったんだ。当然、この八年間サボってたわけじゃないよね?」

 

「当たり前だ」

 

 

刹那の静寂。

瞬間、二人は同時に姿を消した。

 

 

ギャッッンッッ!!

 

ドゴッッッ!!!

 

 

二人の持つ大剣と刀が交差し、けたたましい音が大気を揺らした。

威力が強過ぎるあまりか、衝撃の余波が地面へと伝わり蜘蛛の巣状にひび割れ、爆弾が爆発したのかという程に衝撃波が吹き荒れる。

まずは小手調べといったものだが、常人からしてみれば厄災とそう違いなかった。

 

 

「なんかさらに力強くなってない?」

 

 

ベルとザルドが最後に戦ったのが十数年も前のことなので、力が強くなっているのは当たり前なのだが、これとは話が違う。Lv.7にしては威圧感がおかしいのだ。

 

 

「オラリオを出てから八年。アンタを超えるため死に物狂いで鍛錬をしてきた。そして今、俺はLv.8となった」

 

「へぇ、凄いじゃん。外でランクアップってなかな................ゑマジでっ!?」

 

 

衝撃の事実に驚きの声を上げるベル。その瞬間、思い描いていたシナリオが一気に瓦解した。

ザルドとオッタルが再びぶつかり、そして、オッタルが勝利し、ランクアップの糧になってもらおうと思っていたのだ。だからこそベルは、

ま、まぁいっか。オッタルも強くなってるし勝てるでしょう!と思いっきり思考を投げ飛ばした。

 

 

再び、激しい剣戟が繰り広げられた。

刀と大剣が交差する毎に莫大な衝撃波が生まれ、燃え盛る炎を消さんとする勢いで大きく揺らす。

 

二人の剣技レベルは世界最高である。

特にベルは数千年という積み重ねてきた膨大な年月がある。歴代最強と謳われる''英雄アルバート''と比べてみても、ステータスなどを省いた単純な剣技なら追随を許さない程に高い。

 

ザルドもまた同じである。生まれ持った天賦の才。そして、血反吐を吐くほど努力した数十年。今までの『英雄』達の中でも最上位に位置する力を持っている。

 

 

「フッ!」

 

「ハッ!」

 

 

振り下ろされた大剣を【反射】をもってして弾く。仰け反るザルド。ベルはそのがら空きとなった胴体に翻した刀で斬りつけ、、ようとしたが、ザルドが身を捻り視界の端から隆々な右脚が迫った。

横から胴体への蹴りに加え、斬りつける体勢であったため容易に避けれなかった。よって、まともに食らう羽目になったベルは不気味な音をたてぶっ飛んでいった。

燃えさかる建物へと衝突し、吹き飛ばされた力が強かったためか幾つもの建物を貫通していく。さらに、ドゴゴッ!と炎上で脆くなっていた建物が崩壊し瓦礫に埋もれてしまった。

 

初めて攻撃をまともに食らったベル。対して、ザルドは鎧にだが多数の斬り傷があった。ベルも斬り傷はあるがザルドに比べれば全然少ない。ただ、鎧を着ている訳では無いため斬られたところからは血が滲んでいる。

ザルドが一つ傷を負わせれば、ベルは五つ負わせる。時間が経てば経つほどザルドは不利になっていく。それは絶対的な技術の壁があるからだろう。

だが、今回ベルの攻撃を逆手に小さくないダメージを負わせることに成功したのだ。

 

やがて、瓦礫から出てきたベルは楽しげな笑みを浮かべていた。だが、下に視線を移せば横腹に手を当てているのが分かる。表情や服で分かりにくいが、蹴られた肋骨下部は粉々になっているほどの怪我を負っている。

 

ベルは負傷していることを意にも介さず地を蹴った。ザルドも付随して距離を詰める。

武器同士が交差し拮抗したところで、ベルが口を開いた。

 

 

「さっきのはやられたよ。まさかザルドが蹴ってくるとは思わなかった」

 

「ベルさんがいつか使ってくることを見越して考えていた。上手くいって嬉しく思う」

 

 

ザルドと会合してから五分強。この数分で何百合と剣を交えた。地面は抉れ、復興に支障をきたす程にボロボロだ。

 

 

「あまり時間もかけられないし次からは本気でいくよ」

 

「...なら、俺もそうするとしよう」

 

 

再度、剣戟が繰り広げられた。だが、先程までとは違って明らかにザルドが押されている。

と ここで、ベルは魔法式を紡いだ。

 

 

『魑魅の遠吠えに震え怯えん民を想いて、今宵、天上は憤怒する。それは、青天の霹

 

 

ああ...''めんどくさい''。''なんで魔法を使うためにわざわざ唱えなければいけないんだろう''。''せっかくこんなにもこの闘いに熱き想いで楽しくなっているというのに。雰囲気崩しにも程がある''。

 

魔法とは『外なる事象』である。到底人の身に使えるようなものでは無い。では、何故詠唱するのか。それは、イメージの定着と''世界とのリンク''を確かにするためだ。

ならばその過程を精霊(アサナシアさん)達のようにすればいい。

 

ベルは想起し強く想う。すると、ベルの背中が熱くなり微かに発光する。まるで、『恩恵(ファルナ)』を更新した時のように。

 

 

「...何故途中で詠唱を辞めた?」

 

 

ベルが詠唱を止めてから約十秒程度。今もなお、激しい剣戟が行われている。魔法を使うのかと警戒したザルドだったが、突然として黙り込んだベルに疑問を持った。

 

 

「僕はアルフィアみたいな超短文詠唱に憧れてたんだ。紡げばすぐに発動される魔法にさ」

 

 

空に魔法陣が描かれる。

 

 

「まさか...っ!?」

 

「『レジナ・サン・ガウェスト』」

 

 

ッドッッゴォッッッッ!!!

 

 

太く鋭い一条の雷がベルへと落下した。

記憶喚起のために言うが、『レジナ・サン・ガウェスト』には雷属性付与の効果がある。だからこそ、自身に直撃する形で魔法を放った。

そうして、雷を纏ったことでバチッバチッと稲妻の弾ける音がベルから鳴る。

 

 

「いくよ?」

 

「っ!」

 

 

雷を纏ったベルは【縮地】に届く速さで移動出来る。その速さをもってして、建物や地面、大気を蹴り立体機動の如く縦横無尽に駆け巡る。あらゆる箇所から攻撃され、ギリギリで対応するザルドだが、手数が多く鎧に少しずつ斬り傷が増えていった。

 

ザルドは苦虫を噛んだ。ベルが本当に殺す気があったのなら、とうにこの鎧は切り刻まれているだろう。だが、されていないということはまだまだ''全力''を出していないということ。それがザルドにとって悔しかった。

 

 

「『レジナ・サン・ガウェスト』」

 

 

幾数もの(いかずち)が場を支配する。

だが直撃こそすれど、Lv.8に加えスキルを発動しているザルドには致命傷になり得ない。ベルもそれは分かっていることなので、牽制程度でしか放っていない。

 

ベルは『袋』から身の丈以上の槍を取り出す。上級冒険者なら普通に買える値段の槍。これは使い捨て用である。

ベルは腕を横に伸ばすと、槍を高速で回転させた。この場は『レジナ・サン・ガウェスト』の影響で数多の魔力電子が漂っているため、槍が高速で回転されていることによって帯電していく。それは次第にバチンッ!バチンッ!と極限まで高まり、稲妻が狂い散る。

 

 

『時雨流 槍術』

 

 

臀部を最大限使った投擲。

 

 

槍耀燦然(そうようせんぜん)

 

 

ッッッッッッッッゴォオオッッッ!!!!

 

 

 

槍を放った瞬間、圧縮したかのように大気が張り詰め、まるで真空状態に陥ったのかと錯覚する。ただそれは0に限りなく近い刹那の時間だった。

そして、それが過ぎると至近距離で落雷した時のような轟音が辺りを震わした。

対黒竜用に開発した槍術奥義の一つ。高すぎる威力のあまり大山に風穴を開けた技。もし使うなら考えないといけない代物だが、テンションが爆上がりしているベルはそんなことすっかり忘れ使用してしまう。

 

避けることが出来ないため、ザルドは大剣を盾のように構え、超高速で飛来する槍を受け止めた。

 

 

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

雄叫びを上げ必死に止めようと試みるザルド。

だが、高威力すぎてその場で勢いを殺せず、足裏を削りながら吹っ飛んでいった。幾つか建物を背で破壊していき、やがてオラリオを囲む壁に激突した。

 

 

「ガハッ...!くっ... やはり俺はまだまだベルさんに届かないというのかっ...!」

 

 

ところどころ鎧が壊れており、正直鎧としての役割を保てているとは思えない。鎧を着ているために外傷は少ないのだが、体内が悲鳴を上げている。無理な動きに幾つもの強烈な攻撃で無理が祟っているのだ。

ただ表情を見れば獰猛な笑みを浮かべているので、悲観しているわけではなさそうだ。

 

 

「っ!」

 

 

ベルの気配を感じ取り、ばっ!と見上げるザルド。先程のものとは違う槍を構え、空から降りてきているところを視界におさめる。

 

 

『時雨流 槍術』

 

 

ベルは槍先を地面に叩きつけるように振り下ろす。

 

 

『雷墜』

 

 

ッッバリバリバリバリバリバリッッッッ!!!

 

 

槍を中心に半径五メートル内に雷電が荒れ狂った。

 

 

「ぐぅっ!」

 

 

横へと飛び退いたザルドだったが、避けきることが出来ず呻き声を上げる。

ベルは槍を仕舞い刀をとりだすと、再び立体機動の如く場を駆ける。

 

 

「おおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあっっ!!!」

 

 

蓄積されたダメージと何百何千と打ち合った剣戟による疲労でボロボロの身体。もうそろそろ膝を着いてしまいそうな身体に鞭を打ち、ザルドは雄叫びを上げ自身を鼓舞する。

 

やがて猛攻を終えると、幾許か距離を開け納刀する。そして、低く構えた。その姿を見たザルドは悟る。次の一撃でこの闘いに終止符を打つのだと。

よって、ザルドも構える。どんどん闘気が膨れ上がり、髪を揺らめかす。

 

 

『時雨流』

 

 

鞘から少し現れた刀身から膨大な光が輝いた。

ザルドの持つ大剣も光り輝き、爆発的なエネルギーが収束されているのが見て取れる。

 

 

『深裂斬』

 

「『ジェノ・ネクタル』ッ!」

 

 

ベルとの決闘のために組み合わせた魔法と剣技の奥義。斜め下から捻り振り上げられた大剣が地面を抉りながら破壊の咆哮を上げる。

対してベルは、刀術奥義の一つ『深裂斬』を放つ。あらゆる武器による技術の中で、最速と評される抜刀術。それにベルの全てを乗せ彼の者に牙を剥く。

 

 

ッ━━━━━━━━━━━━━━━━━━!!!!!!

 

 

瞬間、世界が白く染め上がり音が消えた。

 

 

____________________________________________

 

 

side:アサナシア

(ベルとザルドが会合した頃)

 

 

''私''はあまり人の争い事に関わってはいけません。なぜなら、精霊だからです。ふふっ、当たり前ですよね!

ですが、これからこの争いに加わろうと思います。理由は、ベルさんから頼まれたのと、''恋敵''と一戦を交えたいと思ったからです。

その者はベルさんにとても大事に思われています。なので、''妻''。そう、妻!....えへへー、つ・ま☆(少々お待ちください。

⋯⋯⋯

コホン...妻たる''私''がいながら他の女に現を抜かすとはなんたる屈辱だ、というわけでどんな人か見極めようと企んでいるのです!(妻は彼女の妄想です。可哀想な目で見てあげてください。

 

 

アストレア様?知らない神様ですね。

 

そんな馬鹿丸出しピンクなことを考えたがら、アサナシアはアルフィアの前に降り立った。

 

 

「初めまして、アルフィアさん。''私''はアサナシアと言います。ベルさんのつm『『福音(死ね)』」最後まで言わせてください!」

 

 

余波を受けるだけで、平衡感覚がズタズタになる破壊力を持つ魔法が放たれた。音のため''視ることが出来ない''チート魔法。それがアサナシアを襲う。

 

対して、アサナシアは腕を振るった。

すると、どこからともなく現れた水の盾が魔法を防いだ。

 

 

「...人の身にあらず者。お前は何者だ?」

 

「ふふっ、貴方には特別に教えてあげます。コホン....''妾''は大精霊の一角にして、生命を司る背理精霊。『呪詛』のアサナシア。ただまぁ、汝にはこう言った方が早かろう。ベルに不老の呪いをかけた張本人じゃと」

 

 

いつも閉じている眼をクワッと開く。その眼に宿る感情は困惑。なぜ精霊がいるのかという困惑と、ベルを不老にした原因が現れたことへの困惑だった。

 

 

「貴様、だったのか...あいつは既に知っているのか?」

 

「当たり前であろう。謝りもした。フフ...あんなことをしたというのに、ベルは許してくれた。誠にいい男じゃ。そう思わんか?」

 

「...ふん。そんなこと、言われなくてもずっと前から分かっていること」

 

「汝もベルのことが大好きじゃの。どれ、側室でなら受け入れてあらんこともないぞ?」

 

「『福音(死ね)』」

 

「ふむ...何が不満なのやら」

 

 

再び、音の魔法が襲う。

アサナシアは焦ることなく腕を振るう。すると、地面から土の壁が聳え立った。

 

 

「その雑音を発する口を塞げ。不愉快だ。あいつが貴様なんぞ妻に迎えるわけがない。それとなんだ?私を側室?寝言も寝て言え」

 

「いい案ではと思ったのじゃがな。なら、汝はどうしたいのじゃ?」

 

「.....何故お前に言う必要がある?」

 

「プライドの高い女は嫌われるぞ」

 

「いずれ朽ち果てる命。たとえ嫌われようと構わん」

 

「諦めるのか?」

 

「期待したところで未来は変わらない。ならば、最初からしないほうがいい」

 

「本当は期待しているだろうに。お主の後ろにくたばっている冒険者達を見れば分かる。汝なら殺めることなど造作もないというのに誰一人として殺めていない。絶望、だったか?はっ、片腹痛いわ。素直に助けてと言えば良いものを」

 

「『福音(黙れ)』」

 

「そのような者に、ベルの傍にいる資格はない」

 

「『福音(黙れ)』!」

 

 

空間にいくつもの楔形の氷が浮遊する。軽く腕を振るうと、鋭い氷が飛来し音の魔法とぶつかった。粉々となった氷がまるでダイヤモンドダストのようにキラキラと煌めく。

今現在をもって、世界最強の魔法使いと精霊の闘いが始まった。

 

アサナシアは腕を上へと振るう。すると、地獄を彷彿させる業火が猛き狂った。これだけではないぞ?と言わんばかりにすぐ様振り下ろすと、幾つもの雷が降り注いだ。

上下両方から高威力の魔法がアルフィアを襲う。

 

 

「『魂の平静(アタラクシア)』」

 

 

『福音』とはまた違う超短文詠唱。防護魔法が紡がれた。

リヴェリアの魔法すらも容易く無効化してしまうほどの高い強度を誇るそれは、アサナシアの魔法さえも抑えてしまう。

 

 

「ほぉ...なかなかどうしてやりおる」

 

 

アサナシアは武器を取り出すと、優雅に歩み寄った。

 

 

「汝のその魔法はなかなかに厄介だ。妾の全力をぶつければ易く貫けるであろうが、そんなことをしてしまえばオラリオが壊滅してしまうゆえ出来ぬ。ベルにも絶交を告げられるじゃろう。それが一番の問題じゃ」

 

 

コツコツと石畳が子気味の良い音を鳴らす。

アルフィアは警戒しながら、そばに落ちてあった剣を拾い剣撃に備えた。

 

 

「音の魔法もそうじゃ。精霊であるが故に魔法攻撃は効きにくいが、この妾ですら直撃すれば怯む。人の身にして何故それほどのものを得られたのか疑問に思う。が...なるほど。ベルが気にかけるわけじゃ」

 

「何を言っている?」

 

「いや、すまぬ。聞き流してくれ」

 

 

ギィッンッ

 

 

武器を振るえば当たるほどまで近づいたアサナシアが、突然とした斬りつけた。その所作も美しく優雅であった。

ギリギリで受け止めるアルフィア。

拮抗する武器にお互いグッと力を込めると、どちらからともなく離れ、すぐに距離を詰めた。

 

ベルやザルドのような激しさはない。だが、それでも劣らずな剣戟が繰り広げられた。

高い身体能力とセンスで猛攻するアサナシア。

対してアルフィアは、一目見ただけで相手の動きをほぼ完全に模倣することができる才能を持ってして、ベルの剣技を模倣し迎え入れる。アルフィアもザルドと同じくベルに魅せられた者だ。ベルが剣を振るう姿を眼に焼き付けてないわけがなかった。

 

ただ、彼女らの本領発揮とするのは魔法である。絶えず魔法も放たれている。それが十分ほど続いた。

やがて....

 

 

「息が上がっておるようじゃな?」

 

 

高ランクのため他の者よりも体力はあるが、本来は魔法使いだ。前衛のように駆け回らないので、短い時間で体力が落ちてくる。また、病の影響もあった。

 

 

「これ以上してしまえば、汝の身体がもたない。次で終わらせるとしよう」

 

 

武器同士が交差したタイミングで力を込め、宙へと押し弾く。弾き飛ばされたアルフィアは何とか姿勢を保つと、ソレを視界におさめた。

 

魔力の臨界。莫大なエネルギーが圧縮され、小さな球体に輻輳(ふくそう)されているモノを。

全てを穿ち、全てを無に還す一条の弩が解き放たれた。

 

 

「『エルミネイト・レイ』」

 

「っ!?『福音(ゴスペル)』!」

 

 

一直線に向かってくるソレに対して、少しでも威力を抑えるようと『福音』をぶつける。

だが、嘲笑うかのように効果はなく、防護魔法ごとアルフィアの脇腹を小さく貫いた。

 

 

______________________

 

 

ふっと力が抜けたアルフィアは、ドサッと音を立て落下した。

 

アサナシアは一息つくと、''いつものように''歩き側に座る。そして、懐からある液体を取り出すとアルフィアの口へと流した。これは、ベルから事前に貰っていたアルフィア用ポーションだ。

 

 

「よっこいしょ!」

 

 

ポーションを飲むと、やがて寝てしまったアルフィアを背負う。

 

 

ムニュゥ

 

 

で、デカっ...!''私''のよりもデカい!!くっ...負けた...!

 

 

崩れ落ちそうになる膝を何とか支えるアサナシア。

何故か最後に『試合に勝って勝負に負ける』を体現するという、なんとも締まらない終わりであった。

 

 

 

____________________________________________

 

 

side:ベル

 

 

ドサッ、とだった。砂埃が立ち込める静寂な空間でそんな音が一つあった。

 

やがて砂埃が晴れた頃、戦況が明らかとなる。

横一線に剣筋が入っており、そこから多量の血を流して倒れているザルド。胴体に斜めに斬り裂けられるも立っているベル。どちらも満身創痍であった。

 

ベルは納刀し、ゆっくりと息を吐いたところで、タイミングよく誰かが降り立った。

 

 

「お疲れ様です、ベルさん」

 

「そちらもお疲れ様です。アルフィアは...寝てますか」

 

「はい。ベルさんから貰ったポーションを飲ませたら眠ってしまいました」

 

「なら、効き目があったということですね。よかった」

 

「それにしても、大丈夫てすか?かなりボロボロですけど」

 

「正直言うと、今にも倒れてしまいそうです。最後の攻撃が結構ヤバくて」

 

 

そう言いながら、ベルは袋から『ハイ・ポーション』を三本取り出し、二本飲んで一本身体にかける。ベルは精霊の血の影響からか、回復力が高い。なので、すぐにでも完全回復するだろう。

 

そして、もう一本取り出すと、ザルドの上半身を抱え彼用のポーションを口に流した。

 

 

「これでよし。あとはこの二人をどうするか」

 

「多分ですが、拾いに来ると思いますよ?」

 

「言い方が...っっ!!!!アストレア様っ!!」

 

 

かってない鳥肌が全身を駆けた。

研ぎ澄まされた直感が、アストレア様の危機をはじき出す。

走り出そうとした瞬間───

 

 

 

ッゴゴゴ──

 

ッッゴゴォオオッッッッッ!!!!!!!!!

 

 

 

工場にいた時の揺れが比にならないほどの大地震がオラリオを包む。

 

 

「あ...れは...」

 

「そんな...光の柱...『神の送還』...っ!?」

 

 

ッッゴゴォオオッッッッッ!!!!!!!!!

 

 

「なにが...起こって...」

 

「.................」

 

 

ッッゴゴォッオオッッッッ!!!!!!!!!

 

ッッゴゴォッオオッッッッ!!!!!!!!!

 

⋯⋯⋯⋯⋯

 

 

「まさ..か...い、や、そ..そんな...」

 

「くっ...」

 

 

''神殺し''は禁忌である。例えば、人を何万何十万も亡きものにした者とたった一神を殺めた者なら、後者の方が圧倒的に重罪だ。それほどに神殺しとは罪深い。

そんな起きてはならない現象が今、合計にして11本もの'光の柱'が天上へと昇った。

 

とある者は言った。

 

 

『生贄』は終わった

さぁ、行こう──

 

 

今宵、絶望の二文字がオラリオを支配する。

 

 

____________________________________________

 

 

「『闇派閥(イヴィルス)』の狙いは『神の強制送還』だった。これなら、無差別襲撃に理由がつく」

 

「目的のためなら神をも殺す...こんなことができるのは──?」

 

「アサナシアさん!僕は行きます!神を失った眷族が狙われているはずですので!」

 

「あ、はい。分かりました!この二人は任せてください!」

 

「お願いします」

 

 

幾つもの悲鳴が響き渡るところへ向かおうとしたそんなときだった、

 

 

「どこへ行こうとしている?''守護者 アレグサンダ''」

 

『っ!?』

 

 

圧倒的高密度な威圧が二人を縫い付ける。

鉛のように重くなった身体を無理やり動かし、声がした方へとゆっくり振り返った。

視線の先には高い建物があり、その屋上に、、神威を解放し まるで下界を見下ろしているかのように立っている男神が居た。いつの間に居たのか?という疑問を持つ前にベルは問うた。

 

 

「あな、たは...?」

 

「我が名はエレボス。原初の幽冥にして、地下世界の神なり」

 

「っ!?か...かみ、エレボスっ...!?」

 

「あ、アサナシアさん!大丈夫ですかっ!?」

 

 

心臓に手を当て過呼吸になりながら崩れ落ちるアサナシアさん。表情を見れば真っ青を通り越して真っ白になっていた。

 

 

「冒険者は蹂躙された!より強大な力によって!神々は多くが還った!耳障りな雑音となって!貴様らが『巨正』をもって混沌を退けようというのなら!我等もまた『巨悪』をもって秩序を壊す!あぁ...だからこそ、惜しい」

 

 

オラリオ全域に届けられたその声。まるで唄うかのように紡がれた言葉が、住民を恐怖のドン底に叩き落としていく。

 

 

「旧き二つのイレギュラー。この者らの行いが、絶望から下民共を遠ざけた。だが、安心して待っていて欲しい。今宵は、前菜。メインディッシュを早々に食べてしまうのはもったいないというもの。いずれ、我等『悪』は汝ら『正義』を喰らおう」

 

 

エレボスは優雅に腕を『バベル』へと伸ばすと、嗤った。その後ろで光り輝く『光の柱』が、より恐怖を助長させる。

 

 

「告げてやろう。今の貴様等に相応しき言葉を。

『正義』?いや違う。

 

───脆き者よ。汝の名は『撕戯(せいぎ)』なり

 

 

____________________________________________

 

 

 

冥府へと導く演説をしたのち、陰へと消え去ってしまった神エレボス。

その神が今、僕とアサナシアさんの前に現れた。

 

 

「旧き者、''守護者 アレグサンダ''。背理精霊 アサナシア。貴様等はいつまで現世を揺蕩う?これは、貴様等が介入して良いものではないと思うが」

 

「...ええ、基本僕は人の世迷事に介入しません。ですが、貴方たち神が介入してくるというのなら、それは違います」

 

「.....''妾''はベルと共に歩むゆえ、ベルがそうするなら''妾''もそうするだけのこと」

 

「エレボス様。『英雄』を生み出すためにこの行為を起こしたというのなら、それは必要なことだったのかもしれません。今はあまりに平和過ぎて『英雄』への想いが弱い。ただ漠然となりたいなぁという憧れがあるだけ」

 

「流石は数千年を生きる者。よく理解している。だからこそ、我等は爆弾を起爆した。では、貴様はどうする?''守護者 アレグサンダ''、我と同じ''志し''を持つ者よ」

 

「...僕のすることはずっと前から一つです。民を護る。だだそれだけ」

 

「そうか。なら、我から言うことはもうあるまい。アルフィアとザルドは返してもらおう」

 

 

再び、陰へと消え去ったエレボス様を見届けながら、アルフィアを運ぼうとしていた者を殴った。

 

殴った理由?男性だったから。

 

 

(クソッ!アルフィア様に触れるチャ(殴 蹴

 

 

____________________________________________

 

 

『バベル』へと戻って来てみれば、阿鼻叫喚していた。それはそうだ。都市のほとんどが壊滅し、『神の送還』が起きたことでたくさんの冒険者が亡き者となったのだ。

ただ、事前に避難していたこともあって住民の被害は僅かだった。

 

 

だけど、これはまだ序章に過ぎない。エレボス様は''前菜''と言った。なら、これから起きるのは防衛拠点である『バベル』の陥落。

みんなはこれを乗り越えられるだろうか。いや、愚問かな。あの子達を見れば分かる。

 

今この瞬間、英雄の卵達の想いが昇華した。

 

 

第一部 完

 

 

 




ありがとうございました。

次回からは、飛ばし飛ばしで描きます。

次回、???

では、さようなら。
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