お久しぶりです。
作者は嘘をつきました。アストレアレコードを出すと言っているのになかなか書けず、気分転換で番外編を出すことにしました。
完全オリジナルなら書けるのにぃ...駄文ですけどね。
それと、作者は疲れているようです。
よって最後の方、ちょっと暴走気味です。ご了承ください。
前話読了後推奨
side:ベル
(アストレアレコードの三年弱前)
この日は調査を兼ねた息抜きをするためダンジョンへと赴いた。ここ近年はファミリアでの攻略以外でまともに潜れていなかったので、少し心馳せらしている。
「ベルさん」
「ん?あ、アサナシアさん。おはようございます」
ダンジョンへと向かう途中、声をかけてきたのは幾分か前に知り合ったアサナシアさんだった。あの『お茶会』で、オッタル以上に気にいられていることを知り興味を抱いた人物である。
「おはようございます。ダンジョンに向かわれているのですか?珍しいですね、ベルさんが巡回していないの」
「そうですね。フィン達に休暇を無理やり取らされまして。特にすることも無いのでダンジョンに行こうかと」
「ふむふむ...''私''もついて行ってもいいですか?ベルさんの戦う姿を見てみたいです!」
キラキラと目を輝かせ、グイッと顔を近づけてくるアサナシアさん。佇まいは美人であるが、こういう時は可愛くなるという『お茶会』での記憶は新しい。
「それは流石に厳しいです」
「何故ですか?」
「えっと、アサナシアさんてLv.1ですよね?今回『下層』もしくは『深層』まで潜るつもりなのでLvが全然足りてないんです」
「ああ、なるほど!」
納得したのか自身の手のひらをポンと叩く。
天然さんなのだろうか...
「それなら大丈夫です!''私''強いですから!」
「ええ...」
「むぅ、信じてませんね。いいでしょう。''私''が強いことを証明する勝負をしましょうか」
「勝負ですか?」
「はい。内容は『ジャンケン』です。あなた達上級冒険者と''私''達新人冒険者なら、新人冒険者が何を出すか瞬時に見極め合法な後出しを可能とさせます」
「それで貴方が勝てば強いことを証明出来ると」
「その通りです!」
確かにその方法は簡単でわかりやすい。実際、団員達とするとき僕やフィン達は負けたことがない。アサナシアさんが言った通り合法な後出しをしているからだ。
え、反則?大人げない?ちょっと何を言ってるか分かりかねますね。
「それでは早速やりましょう。最初はグー、ジャンケン――
『✋』
「...え?」
「...ふふ」
この状況にかなり驚いたベル。説明すると、この一瞬のうちにお互い数回変えたのだ。アサナシアがチョキを出したためベルはグーを出した。だが次の瞬間それを確認したアサナシアがパーに変え、一瞬驚くも直ぐ対応しチョキに変えたベル。あと何回か変え、あいこという結果になった。
「うーむ...やはり身体能力はベルさんの方が上ですね」
呑気に呟いている彼女に対して、ベルはまだ呆けていた。フィン達上級冒険者としたときでさえベルがほぼ勝つのだ。こんなの驚かずにはいられなかった。
「ふふ、驚いてますね。でもこれで証明になりました。なので、ついて行ってもいいですか?」
屈託の無い笑顔で言われ、見惚れてしまうベル。
フレイヤ様はアサナシアさんを特別だと言っていた。そして、先ほどのジャンケンであいこになった。もしかしたら何か事情があって新人だと言うことになっているのかもしれない。
そう整理し少し悩むも、やがて、まぁいいかとベルは折れた。
「思うこともありますけど、分かりました。ですが、危ないようだったらすぐ引き返しますからね」
「ありがとうございます!」
再び眩しいほどの笑みを見せられ、瞬時に顔を背ける。また見惚れてしまってはアストレア様に失礼にあたるからね、うんうん。アストレア様大好きです!
ここで余談だが、ベルは基本的に神にしか敬語を使わない。例外はあるが。
そして、お気づきのようにベルはアサナシアに対して敬語を使っている。これは無意識であり、無意識のうちに年上だと認識しているのだろう。
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現在、僕達は下層にいる。あれから何日か経っており、疲労が溜まってくる頃合いだ。まぁ、僕はそんなことないけど。
それで、だ。アサナシアさんの方は?となるけれど...
「いや〜、楽しいですねぇ」
普通に元気だった。疲労という二文字がカスリもしないほどに元気なのだ。
「それ!」
ゴオォッッッ!!
モンスターを確認したアサナシアさんは腕を軽く振る。すると、業火が猛り狂った。そしてもう一度振ると、今度は津波が押し寄せた。稲妻が降り注ぎ、風が吹き荒れ、土が押し潰す。
一発一発の威力はリヴェリアを越え、加えて繰り出される数が多いため威力が増幅していく。これが軽く腕を振るだけで起きているのだ。
少し前の話だが、天然の
これ崩壊しないかなぁ大丈夫かなぁと思うほどで、不安にもなったが案外心配無用だった。
ダンジョンが頑丈で良かったと胸を撫で下ろした。
それと、一瞬黒いモンスターが見えた気がしたけどなんだったんだろう?
首を傾げるベルは、全身鋭利なモンスターを確認もせず粉々に切り伏せていた。
と、また魔法が激化する。
「アサナシアさん。やりすぎてダンジョン崩壊させないでくださいね」
「手加減してるので大丈夫です!」
これでしてるのか...、と戦慄せずにいられなかった。
とまぁ、これを見せられると当然ながら疑問が浮かぶ。何故、これ程の魔法を連発できるのか。戦闘能力だってオッタルよりも全然強いし、不思議に思うことばかりだ。
「ベルさん、貴方は''私''のことがとても気になってますね」
「ええ。無詠唱かつ威力の高い魔法。見る限り四つ以上あるのは確かです。そして、戦闘能力。少ししか見てませんが、オッタルよりも洗練されています。...あなたは何ですか?」
「流石は数千年を生きる人です。洞察力が素晴らしい。確かに''私''はオッタルや『
ダンジョンに入る前に見せた屈託のない笑みではなく、優雅に
ベルは戸惑った。まるで人が変わったかのように雰囲気が違ったからだ。
妾...一人称は私だったはず...
「ボォーっとしてないで行きますよ。三十八階層まで勝負です!」
「...負けません!」
今どれだけ考えようと答えは出ない。モヤモヤが募るが、のちに教えてくれると言うのでそれを払う。
ただ一つ予想できる。
精霊
今はもう確認されていないが、神が降臨してくるまでの間、民が崇めていた存在である。
常軌を逸した奇跡を扱える存在など精霊しか思い当たらない。
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やがて辿り着いた三十八階層。僕の方が先にゴールし、ふっとドヤ顔を決める。
「ベルさんの方が身体能力は上なんですから勝って当たり前ですええ!」
「そんなこと言ってる割には悔しそうですね。それと足をゲシゲシしないでください痛いです」
めちゃめちゃ悔しがってる姿をみて微笑う。
ゴゴゴゴゴッ!
「あれ?ここってもしかして『
「僕も今気づきましたがそのようですね」
あまりにも広大なこの部屋の中央で、階層主である『ウダイオス』が侵入者を排除するため誕生した。
「ふむ...ベルさん、ここで一休みしましょう。この部屋はモンスターが出現しませんから」
「いいですね。なら、とっととアイツを倒しましょうか」
その瞬間ベルの姿が消えた。【縮地】を使いウダイオスとの距離を詰めたのだ。
それに続くようにアサナシアは腕を振る。
ドッゴッッッ!!
太く大きな閃光が轟音をたててウダイオスを穿いた。四股が焼きちぎれ身動きが取れなくなった。
そしてベルはと言うと、ウダイオスの背後にいた。
ウダイオスはベルの存在にやっと気づき首を動かそうとしたその時、カチッと納刀される音が響く。
無音だった。魔石に一筋の線が入り、 ズレた。
魔石が壊れたことで、やがてシュゥウと灰に変わり消滅したウダイオス。登場時間数秒という悲しき状況にウダイオスちゃん涙目。
「なんかさっきもこんなことありませんでした?」
「さぁ、記憶にないです」
黒い鋭利なモンスターも泣いていたことを追記しておく。
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「では、先ほどの続きを話しましょうか」
休憩に入ってから数時間、とうとう話をする機会が訪れた。
「多分ベルさんは''私''の正体に予想をつけていると思います。はい、それで合ってます。では改めて....''妾''は生命を司る背理精霊。《呪詛》のアサナシア。そして、其方に助けられ負傷した其方を助けるために不老という呪いをかけた張本人じゃ」
「.....え?僕って不老だったんですか!?」
「今更ぞ!?」
寿命が伸びただけだと思ってた!
いつかは普通に死ぬだろうと思っていたので声を上げて驚いたベル。
不老のことも気になるけど、助けられ助けた?その状況は一つしか思い当たらなかった。
「もしかして、''あのとき''怪物に襲われていた女性ですか?」
「うむ。あの時は助かった。其方に助けられておらなんだら、妾は今ここにいなかった。改めて、礼を言わせて欲しい。ありがとう」
アサナシアは深く腰を曲げる。また、その姿勢のまま彼女は続けた。
「そして、謝らせて欲しい。其方に呪いをかけたことを。妾は《呪詛》の精霊。回復の類いを持っておらぬ。故に、瀕死にあった其方を助けるためには''血''を与えるしかなかった...」
「.......」
「恨まれて当然のこと。恩を仇で返したのだから。死ねと言うなら自害する。それで其方に償えるなら喜んで行おう」
アサナシアは今もまだ頭を下げたままだった。
ベルの表情は見えない。もしかしたら怒りで赤くしているかもしれないし、悲しみで歪ませているかもしれない。この沈黙の時間がアサナシアにはとても怖かった。
「頭を上げてください」
それは柔らかな声音だった。
「僕はあなたを恨んでなんかいません。確かに最初の頃は、なんで死なないんだろと戸惑いました。こうして生きてきて辛いこともたくさんありました。だけど、悪いことばかりではなかった。楽しかったこと嬉しかったこと幸せだったこと、両手で数えられないくらい沢山あります。人生は一度きり。僕はこんな経験が出来てよかったと思っています。むしろ、感謝してます。なので、アサナシアさんが気に病む必要はありません。だから、そんな顔しないでください。あなたは笑った顔が一番似合ってる」
アサナシアはゆっくりと顔を上げる。視界に映ったベルの表情は、とても優しい笑みを浮かべていた。
その瞬間、紫がかった桃色の瞳から一粒の雫が流れる。それは次第に増えていき、地面を濡らしていった。
溢れる涙を拭い続けるアサナシアの頭をベルはそっと撫でる。
この数千年間、悩み嘆き苦しみ、自身が《呪詛》であることを恨み続けてきた。
ベルが本当に許してくれているかは分からない。だけど、その言葉で幾分か救われたのは事実。
(ああ....本当に其方はなんて素敵なのだろうか...)
言い訳じみた謝罪でも受け入れてくれた。寿命で死なないという恐怖を受け入れたその寛容さがアサナシアには眩しく見えた。
広い心を持つことは大切である。事柄に対しての寛容さも必要だ。
だってそうだろう。固定概念に縛られる人生なんて狭くて狭くて窮屈で退屈だ。
世界は広い。ならあとは自身の視界を広くするのみ。
''――、――――――――――''。
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十八階層。それはモンスターが発生しない階層で、『
そして、だ。
この階層には幾つか綺麗な水たまり場がある。冒険者達はここで身体を綺麗にしており、それはベルも例外ではない。
「はぁ...なんか濃いダンジョン探索だったなぁ」
自分が不老であったこと。そのきっかけが''本当に''精霊であったこと。
クロッゾが精霊の血で魔剣を打てるようになったことから、もしかしたら自分も精霊が関わっているのでは、と思っていたけども...
人生って何が起こるか分からないもんだねぇ。
「お背中流しますね」
「あ、ありがとうございます.............ん?」
今更だが、ベルは水浴びをしていた。
その最中でいろいろ考え込んでしまっていたわけで、背後から近づく影に気づかなかった。その影が極限まで気配を消していることもあるだろうけど。
「エッチィ」
「貴方がね!?」
後ろを振り向くと、裸のアサナシアさんがいた。そして抱きついてくる。
あの件から僕達の距離は近くなった。物理的にも精神的にも。でもちょっと近過ぎるかなぁと思ったりしてる。ていうか今めちゃめちゃ思ってる!
「んっ...!」
「自分から押し付けておいて悶えないでください!」
吐息が耳にかかりぶるりと身を震わせてしまう。
「女の子の身体なんて沢山見てきたくせに何慌ててるんですかぁ?」
「.......」
まぁ、ね...僕も男ですからやる事やってますけども....だからって慣れるわけじゃない。
「今まで何人もの女性を堕としてきたのでしょう?」
私色々知ってますよ、と言わんばかりに語りかけてくるアサナシアさん。冷や汗が流れる。
「な、なにを...」
「『ベルを知った女性は他の者では満足出来ない』これはとある友人の言葉でしたね」
「!?」
「ベルさんの身体には''私''の血が流れています。色々省きますが、その人の精神世界というものに入ることが出来るんです。だから、その.......お楽しみの場面を見れるわけで......ベルさんって...テクニシャンですね...」
「やめてえぇぇえええええええええええええええええええっっっ!?!?!?」
広い広い夜の十八階層に悲鳴が響き渡る。
お互い顔を真っ赤に染め、いろいろ危ない。
この人今までずっと覗き見してたの!?変態じゃん!!
「アサナシアさんキャラ崩壊し過ぎです!」
「仕方ないでしょう!経験ないんですもん!」
「じゃあその話に触れないで下さいよ!」
「今から貴方とするのだから触れておかないと緊張するんです!」
「ちょっと待ってその話は初耳!?」
「初めてなので優しくしてくださいね...」
「感情の起伏が凄すぎてこっちが情緒不安定になるっ!やりませんからね!僕にはアストレア様という敬愛する――」
「アストレア様が個人を受け入れるわけないでしょ!現実を見てください!」
「グハッ!!」
クリティカルヒット!効果は抜群だ!
「大丈夫です。貴方のことは''私''が一番知ってますから。ほら、ドンと来てください!」
「や、やめっ...!くっ、力強すぎて抜け出せない!」
「恋する乙女は強いことをご存知でないのですか?」
「乙女...?」
「おいキョロキョロすんな目の前にいるだろうが」
「ごめんなさい!今の状況を抜け出すための冗談です!更に悪化したようですけどねぇえ!」
とうとう押し倒され、バシャンっ!と水飛沫が散る。
「ふぅ...やっと押さえ込めました。ふふ、悪く思わないでくださいね♪」
「数刻前まではあんなに申し訳なさそうだったのに、変わりすぎじゃないですか?」
「過去は過去。今は今です。では改めて...ベルさん、好きです。たくさん愛し合いましょうね」
地上の月に代わるクリスタルの光によって、地面に描かれた二人の薄い影が重なる。
この後滅茶苦茶
逃げた。
アストレア様への気持ちは裏切れない!
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side:アサナシア
「残念だったわね。ベルは簡単に靡くような男じゃないわ」
「十年以上振られ続けている貴方様の言葉はそれはそれは重みがあります」
「アナタも私のようになるのでしょうね」
「そんなことありません。''私''はフレイヤ様ほど年増しでは無いですし、ベルのことを一番知っています」
「ベルが惚れているのはその年増しよ」
「...そうだった!」
「それよりもアナタ、神である私に失礼すぎじゃないかしら。精霊の小娘の分際で」
「すみません。敬老の心を忘れてました」
「はっ倒すわよ」
ありがとうございました。
アサナシア
紫色のふんわりした腰まで伸びる長髪に紫がかった桃色の瞳。神にも劣らぬ美人であり、笑った顔は可愛く愛くるしい。
身長はベルと一緒。言い方は難しいが、ベルが一番好きなスタイルをしている。
特に何かのキャラを参考に、という訳では無いです。読書様方の想像にお任せです。
リヴェリアの番外編も書くつもりです。
次こそはアストレアレコードを...
次回、大抗争。
では、さようなら。