英雄の仲間から神の眷族へと改帰する   作:時雨シグ

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作者はこの話を書いているとき、何かを失った気がします。





第四話 二大派閥の壊滅 カオスな神会(デナトゥス)

 

 

side:ベル

 

突然だが、《ゼウス・ファミリア》と《ヘラ•ファミリア》が壊滅した。

理由は、『隻眼の黒竜』討伐クエストにて失敗したからだ。

 

 

ヘビーモスにリヴァイアサンを倒したことで、盛りに盛り上がった世界各国。このまま黒竜も討伐できるのではっ!?といった矢先の出来事だった。

 

ヘビーモスではザルドが。リヴァイアサンさんではアルフィアが。それ以外も少なくない犠牲を払ってようやく討伐出来た二体。

もし、万全の状態なら黒竜倒せたのかもしれない。そんな話はチラホラと出ている。だけどそれはタラレバで、信じたくないと思う心情から来るものだったかもしれない。

 

 

民は改めて知ることになった。黒竜の恐怖を。

 

そして、民は求め始めた。『英雄』を。

 

 

____________________________________________

 

 

「ゼウス様...」

 

「おお、ベル。来てくれたのか」

 

「この度のことは、なんと言ったらいいのか...」

 

「無理する必要はない。笑って送り出し貰えれば、それでいい」

 

 

ゼウス様の方が無理に笑い、僕に心配をかけまいといつも通り接してくる。だけど、ほんの少し悲しみが見え隠れしている。

 

黒竜の討伐失敗とファミリア壊滅の訃報が届きまわって、数週間後、オラリオに戻ってきたゼウス様達は、追放させられた。

追放したのはロキ様とフレイヤ様だが、ロキ様は内心悲しかっただろう。

 

 

「ロキ様からの伝言です。『今までようやったんやから、ゆっくりしとけ。これからのことはウチらに任せとき』と」

 

「そうか...それは頼もしいのぉ」

 

 

穏やかな表情で空を見たゼウス様。一体何を思い何を考えているのだろうか。

 

 

「ところで、ヘラ様とアルフィアはどこ行ったんですか?」

 

「二人はもう出てったぞ。ベルに会ったら迷ってしまうってのぉ」

 

「そうですか...最後に挨拶はしておきたかったです」

 

「もし何か言うことがあるのなら、ワシから言っておこう」

 

「ありがとうございます」

 

 

別れの時間はもう間近。

沈みゆく夕陽は、僕の心情を表すかのように空を黒く染めていく。

 

 

「また会いましょう、ゼウス様」

 

「おお、またいつかじゃな。ベルたちの活躍を楽しみに過ごすとしよう」

 

 

天界に帰るわけじゃない。あの人達(団員)のように天に還るわけじゃない。ゼウス様には、いつかは会える。だけど、あの人達(団員)には会えない。

 

 

この日、改めて実感することとなった、他者への想い。

僕は自分の全力を持ってして、大切な者を『護る』ことを再び決意した。

そのとき、ベルの背中が熱を発したのは気の所為だろうか。

 

 

ああ...、もっとみんなと酒を酌み交わしたかったなぁ...

 

そう静かに心内で吐露した。

 

 

____________________________________________

 

 

 

ゼウス様達が追放されてから数年。現在、厄介な問題に直面していた。

 

 

「最近、闇派閥(イヴィルス)が活発化しているのを知っているかい?」

 

 

幾許か前に完成した黄昏の館(たそがれのやかた)の団長室にて、ロキ様、リヴェリア、ガレス、僕にそうといてきたフィン。僕たちは頷いた。

 

 

「ここの団員に直接的な被害はないが、零細ファミリアから一般市民まで多くの人が被害にあっている」

 

 

一般市民の住宅への不法侵入から、冒険者をダンジョンでの殺害。卑劣な犯罪はさることながら重罪をも染める行動は、何を目的としているのか分からない程にバラバラだ。

 

 

「これからは治安維持を視野に入れつつ、新人の教育に力を入れていこう」

 

 

闇派閥(イヴィルス)対策の行動が決まった。

 

 

闇派閥(イヴィルス)はまた考えるとして、ベル、最近何やら面白いことになってるそうだね」

 

 

真剣な表情から一変、意地の悪い笑みを浮かべ、その顔を僕へと向けてくる。

 

 

「なんや、なんかあったんかいな?」

 

「最近巷で噂になってるんだよ。《ロキ・ファミリア》のベルが、嫁探しをしているとね」

 

「...なんだそれは?」

 

「フィン、僕知ってる。それ、君が流したんだよね」

 

「さぁ、なんのことかな」

 

 

澄ました顔でしらばっくれるフィン。どうやら、僕が以前したことを相当根に持っているらしい。ふん、心の狭いやつめ。

 

 

「その言葉はそっくりそのまま返すよ」

 

 

何故か考えてることがバレた。「顔に出てるよ」 ポーカーフェイスは完璧なはずなのに...おかしい。

 

 

「こりゃあうかうかしてられへんなぁ、リヴェリア」

 

「黙れ駄女神」

 

「駄女神!?」

 

 

女性陣は何やら話していたが、フィンと言い合っていたベルは知る由もなかった。

 

 

「ワシだけ、蚊帳の外じゃのぉ...」

 

 

ガレスは寂しげにそう呟きながらも、その光景を楽しそうに見ていた。

 

 

____________________________________________

 

 

side:神々

 

 

「第??回、神会(デナトゥス)を開催しま〜すっ!!」

 

『イェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッゴホッゴホッ!!...イェ〜イッ!!』

 

 

三ヶ月に一度行われる別名『神々による定期情報交換会』。

大層な名前をしているが、ただ暇を極めた神々が駄弁るために開かれているものだと思ってもいい。

 

 

「さぁさぁやってきました!本日のメインイベンツッッ!」

 

『待ってました!!』

 

 

ワクワクっと騒ぎながら、昇格(ランクアップ)者の一覧表をパラパラと捲っていく。

 

 

「うわっ、またロキのとこの四人が同時にランクアップしてるぞ」

 

「ああ!ベルきゅんだ!...はぁはぁ、ああ...わたしを食べて欲しい...」

 

「ねぇ!誰かコイツを牢獄へぶち込んどいて!私のベルちゃんを奪おうとしてるわ!!」

 

「おいおい、お前ら気持ち悪いこと言ってる自覚あるか?それとだ、ベルたんは俺のだから」

 

「お前が一番きめぇよ」

 

「自分ら好き勝手言いよるけどな、ベルはうちのもんや!変なこと抜かしとったらシバくぞ!!」

 

 

ベルは神々にとって大人気なのだ。あの愛くるしい姿に仕草。ヒューマンなのに、変わらない姿形。興味の対象だった。

 

 

「ロキのとこは最後にして、他の子達から決めていこうぜ」

 

『さんせぇ〜い!』

 

 

この命名行事はある意味畏怖されていた。あまりにも恥ずかしい『二つ名』を付けられることがよくあるからだ。

高レベルに上がれば上がるほど、まともな名やいい感じの名を付けられるのだが、零細ファミリアやLv.2、3は恥ずかしい名をつけられる傾向にある。

 

悲鳴や嘆きが何度か響いたが、つつがなく命名行事は進められていき、ベル達の番になった。

 

 

「では、残り四人の命名を行おうとしよう。何か意見のあるものは?」

 

「それに関してウチからちょっとええか。希望があんねん」

 

「おいおい、ロキ、それはなしだろ。ずるいじゃねぇか」

 

「別にずるいことやない。自分らに任せとったらええ加減なもんになるからな。それに、これは本人の希望もあんねん」

 

 

ロキが行おうとしてるのは、フィンとベルについてだ。

フィンはLvが上がったら、パルゥムの希望となる二つ名をつけようと決めていた。

ベルについては、ロキが話し合った結果そうしようとなった。また、オラリオの大半に容姿が一つも変わらないことを疑問に思う者が多くなってきたからというのもある。

 

 

「フィンには【勇者(ブレイバー)】、ベルには...【守護者(アレグサンダ)】で頼むわ」

 

「フィン・ディムナに関しては良いが、ベルについてはどういうことだ?」

 

「もう勘づいとるやつもおるやろう。ベルは、子供らに人気の『冒険譚』に出てくる、『守護者』''アレグサンダ''や」

 

 

息を呑む音がなる。

違和感はあった。Lvが上がれば寿命が伸び老化しにくくなるというが、あまりにも変わらなすぎる。

そこで、もしかしたら?と思う神もいた。

 

 

「....お前が嘘をついている可能性は?」

 

「ゼウスが証人や」

 

 

ザワザワと喧騒が広がる。

 

 

「あの爺さん、俺らが忙しく働いてるってときに悠々と下界を見てたな...」

 

「ああ...」

 

 

たしかにゼウスだけは楽しそうに下界を鑑賞していた。一柱だけ、仕事もせずにゆっくりしていたゼウスを妬んでいた。

 

 

「ゼウスが証人か....それはそれは...それはなんとも...」

 

 

『欲しくなってきたあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっっ!!!』

 

 

今まで何度も神会(デナトゥス)は開かれてきたが、今回が今までで一番の絶叫だった。

 

 

「さすがはワタシのベルだわ!見込んだ通りね!!」

 

「ベルきゅんベルきゅん....ッ!ハァハァハァハァハァハァっ....ああ..食べたいぃ...」

 

「ベルちゃんの危機っ!?ねぇ、誰かコイツを封印してっ!!...クッ、誰も動いてくれないっ!...いっそのこと、わたしが仕留めるべき...っ?とうとう手を染めるときがっ...!」

 

「ええいっ!黙れお前ら!自分が気持ち悪いことを言っている自覚はないのか!神の矜恃をちゃんと持て!そしてもう一度言うが、ベルたんをなでなでハムハムクンカクンカするのは俺だ!誰にも渡さねぇ!!」

 

「だからお前が一番キモくて神の矜恃を捨ててんだよ!」

 

「俺が!ガネーシャだっ!!!」

 

「うるせぇよ!だからなんだよ!?」

 

「...フフっ、みんなしてベルばっかり。フフフン、もっとベルに夢中になりなさい。そして、わたくしはフィンを独り占めっ」

 

「残・念★オレもいる!」

 

 

カオスはカオスを呼ぶと言うが、これはあまりにも酷い惨状だ。その光景はまさにパニックを起こしたジャングルの動物である。

そして、とうとう堪忍袋の緒が切れた神がいた。

 

 

「うっさいねん貴様ら!!静かにせぇ!話が進まんやろ!ほんでさっきも言うたが、ウチの子らや!自分らなんかに絶対に渡さんからな!!」

 

『だが断るっ!!』

 

「断んなや!!」

 

 

そして、カオスはカオスを呼び、またカオスを呼ぶ。

 

 

「あら、ベルをくれるって言うなら私が欲しいわぁ」

 

「だから、渡さん言っとるやろ!てか、貴様には絶対あげん!!それとおい年中発情駄女神。ベルにちょっかいかけんな。困っとるやろが」

 

「別に困らせることはしてないわ。ただ、ファミリアの勧誘と夢のお供の誘いをしてるだけよ」

 

「それが困っとるって言ってんねん!ああーしんどっ。もうフィンらはウチが勝手に決める。フィンは【勇者(ブレイバー)】。ベルは【守護者(アレグサンダ)】。リヴェリアは【九魔姫(ナイン・ヘル)】。ガレスは【重傑(エルガルム)】や。ほら、もう終わったで。解散や解散」

 

『えぇぇええええええええ〜!』

 

「解散!!」

 

 

不満の声が上がるが、やっと終わった神会(デナトゥス)。今まで一番苛烈の極めたものだった。

そして、二つ名で一つ二つ三つと波乱が起きたが、もう疲れたので話もここで終わるとしよう。

ただ一つ簡単に言うなら、ベルの人気が爆上がりし、反対に恨む者妬む者が増えたことを追記しておく。

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうこざました。

今週は一話出します。

次回、アイズ

では、さようなら。
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