幼女に厳しい世界で幼女になった   作:室戸菫はかわいい

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原作描写どこまでいるかはいつも悩む
正直、みんなどこまで覚えてる?

君が代の日






W-B-X

 

 

 

 

ティナちゃんとは会えたみたいだね

 

 片目を抑えていた手をどけると、心配そうに夏世が顔をのぞき込んでいるのにアルは気づいた。

 

「ん、どうしたの?」

 

「……体調がすぐれないのかと思いまして」

 

「あは☆ なんともないよ。夏世ちゃんの顔が近くてドキッとしちゃったくらいかな?」

 

「そう言えるなら、大丈夫そうですね」

 

「む……やっぱり大丈夫じゃないかも。夏世ちゃん、看病して~☆」

 

「調子がいい人ですね……」

 

 呆れた物言いをしながらも、夏世は抱き着いてきたアルを受け止めた。

 そのまま手櫛で髪を梳いてやれば、アルは安心したように胸元に頭を寄せてくる。

 母性らしきものがふつふつと湧き上がってくるのを感じながら、夏世は小さな(わらべ)と戯れた。

 

 夏世とアルがいるのは12区の自然公園。

 ガストレアに破壊されていない緑の景色は2031年現在、かつての時代に思いを馳せる老人やジョギングを楽しむ若者などの憩いの場として、以前より需要が高まっている。

 特にこの自然公園は1kmに及ぶ細長い渓谷や珍しい古墳、大師堂などを売りにしていた。

 実際、川のせせらぎと草木が揺れる音色は都心の喧騒から心を隔離してくれるようで、リラックス効果をもたらしてくれる。

 

 今は緩やかな川の流れに沿って進んだ先の甘味処でひと休みしているところだった。

 

「おい……人をパシリにしといてイイ身分じゃねぇか」

 

 そんな2人に話かけてきたのはお盆を片手に持ったパンツスタイルの長身女性。

 

「ショーコさん、おかえりなさい」

 

「じゃんけんに負けたのが悪いんだよ☆」

 

「あんなのインチキだろうが」

 

「全力だって言ったじゃん、男らしくないなぁ。でも女の子だって言うなら謝ってあげなくもないよ?」

 

「このクソガキ……」

 

 女性改めショーコは青筋を浮かべながらも2人にお盆を渡す。

 

「ありがとうございます」

 

「ありがと~、なんだかんだ言って買ってきてくれるんだね~」

 

「はン……」

 

 和菓子に舌鼓を打つ子供たち。

 ショーコは向かいの椅子にどかっと座った。

 しかしあまりにずぼらな姿勢だったので夏世が小言を浴びせる。

 

「ショーコさん、膝は閉じてくださいね」

 

「あ? 良いだろうがこのくらい」

 

「よくありません。スカートであった場合、見えてしまいますよ」

 

「見ても減るもんじゃねぇだろ」

 

 その発言にアルが過剰反応した。

 

 

「つまり青少年をドスケベボディで誘惑する痴女願望があるってこと!?」

 

「……元凶が何言ってんだよコラ」

 

「副作用だよ、副作用☆ アタシ悪くありまセン」

 

「それでなんでも解決すると思うんじゃねぇぞ」

 

 睨め付けてくる三白眼を受け流し、アルは溜息をひとつ。

 

「あのね、ショーコちゃんの体はドスケベなの」

「あァ?」

 

 アルはショーコの一部に目を向ける。

 

「このおっぱいで清楚は無理があるでしょ。だからドスケベなの」

「おい――」

「ドスケベなの」

「…………」

「ドスケベなの」

「……わかったから続けろよ」

 

 聞き間違いではないらしい。

 夏世を見てもなぜか力強く頷いている。どういうことだよ。

 真面目な顔で低俗な話をするからショーコは遠い目になった。

 

 アルは「だから」と付け加える。

 

「君の体を見て興奮したおっちゃんが()()を立たせてすり寄ってきたらどうするのぉ?」

 

「…………」

 

 性欲で動いているような奴が体を目当てに寄ってくる……実際、この身になってから数回ほど目にしたこともある。

 女は視線に目敏いと言うが、今の体になってショーコはそれを実感していた。

 というか男どもが気にしないだけのような気もするが。

 

「寄ってくるだけならいいかもしれないけど、続きをしようとするかもね」

 

 続きだと?

 50過ぎのおっさんが自分の体で腰をくねらせる(ヘコヘコする)

 その光景を想像すると寒気がした。

 男であろうと女であろうとその光景は見るに堪えない。

 

「……ぶん殴る」

 

「それが偉い人だったら?」

 

「…………」

 

 自分を守る最も原始的な力は暴力だ。

 しかし暴力はその場の回避手段であって、社会では権力の方が勝ることもある。

 その矛先が自分だけならいいが、相棒に迷惑が掛かることを許容できない。

 

 難しい顔をしだしたショーコに夏世は優しく声をかける。

 

「ショ……いえ、将監さん。わざと目立とうとしなくていいんですよ」

 

「あぁ?」

 

「私は大丈夫ですから。頼りないかもしれませんが、私は自分の足で立てますから」

 

「……クソガキがいっちょ前にほざくなよ。テメェはまだ世間を何も知らねえ」

 

「ええ、確かにそうです。それでも私はもう……逃げたりしません」

 

「…………」

 

「世間の目を私に向けたくないから粗暴な態度を取るんですよね。でも、私は今度こそ……辛い現実に立ち向かって見せます。だから、大丈夫です」

 

「……考えすぎだろ。俺はテメェのコトなんざ考えて行動しねぇ」

 

「嘘ですよね。人が大勢いる場合は特に顕著ですが、必要以上にあなたは周囲に自分をアピールしてます。弱そうな子供に突っかかって対比を強調したり、強い相手に自慢をして挑発したり。まぁ……単純にムカついた場合もそこそこあるんでしょうけど」

 

 気づかなくていい事まで気づく。頭脳の良さが面倒な方に働いたようだ。

 ショーコは顔をそらす。

 

「……そう思うんならそうなんだろうよ。()()()()()()()

 

「はい、()()()()()そういうことなんです。だから、それでも辛いときは頼らせてください、私たちは2人でひとつの戦闘員なんですから」

 

「……ガキが背伸びしやがって」

 

「私はもう、何も言わず後悔したくないだけですよ」

 

 強い意志の瞳に見つめられ、ショーコはバツが悪くなった。

――変な影響受けやがって。

 元凶らしき女に目を向けると、「にへらぁ」という表情をしていた。

――ムカつくなおい。

 なんにせよ。

 それが夏世(あいぼう)の出した結論ならちょっとくらい聞いてやらんでも――――

 

 

「だから可愛い服を着ましょう、ショーコさん」

 

「クソが、テメェやっぱそれかよ!」

 

「えっ、そこアタシを頼ってくれないの~!?」

 

 

 盛大にずっこけた。

 

 A few moments later。

 

 

「それで、最近はバラニウム鉱山の護衛をしてるんだっけ?」

 

「そうですね。さすがに要人警護は早すぎますから」

 

「堪え性がないから大変そうだね~」

 

「るっせーなボケ……わかってンだよ」

 

「はい。だからガストレアを見つけたらいつものように出来つつ(バーサーカーして)、普段は大人しくする仕事を選んだんです」

 

 まぁ、そのせいでお淑やかさは身につかなかったのですが。

 夏世はぼやいた。

 

「いつからテメェは俺の母親になったんだ」

 

「その口調もなんとかしないと報酬が高い依頼を受けられないままなんですよ」

 

「俺っ娘は良いと思うけどね~」

 

「……ショーコさんはお嬢様のような口調でギャップ萌えを狙うんです」

 

「見た目と言動が一致してこそ愛らしく見えるんだよ☆」

 

「アルちゃん……」

 

「夏世ちゃん……」

 

わたし(アタシ)たちは一度、話し合う必要がありそうですね(だね)

 

 立ち上がり、謎の構えを取る両者を見て、ショーコは言った。

 

「テメェら俺を出汁(だし)に好き勝手言ってんじゃねぇぞ」

 

「出汁なんてそんな……へ、変態だ~!」

 

「脳内ピンクかよエロガキが!」

 

 冗談だよ。アルはそう言った。

 

「なんにせよ、うまく行ってるようでよかった☆」

 

「はい、その点に関しては社長さんも喜んでいましたから」

 

「あぁ~、あの社長さん。有能そうな人だったよね」

 

「三ケ島さんはスゲェぞ。戦後の混乱期に立ち上げた会社を一代で大手にのし上げちまったんだからな。社会からの爪弾きものを纏め上げる才覚と商売勘定がしっかりしてんだ。言いたかねぇがウチの会社は俺より上位ランクの民警もいるからな」

 

「ふぅん、そうなんだぁ」

 

 どこか自慢げにするショーコ。

 かつて影似に拾われたことが嬉しかった出来事なのだろう。

 一方のアルはあまり興味なさげであった。

 

「さて、そろそろ日が暮れちゃうし帰ろっか☆」

 

「そうですね。今日はお誘いありがとうございます」

 

「どういたしまして。アタシも夏世ちゃんとデート出来てよかったよ☆」

 

「ふふ、デートですか……また誘って貰えますか?」

 

「もちろん! 今度は2人っきりでしようねぇ」

 

「ハッ……テメェの邪魔できたなら俺も楽しめたってもんだよ」

 

「別に君の楽しみとか聞いてな~い」

 

「ハッ倒すぞテメェ」

 

 ショーコが凄めば、アルは「こわいよ~!」などと怯えたフリをして夏世の後ろに隠れてしまう。

 

「あんまりアルちゃんを怖がらせちゃだめですよ。赤ちゃんなんですから」

 

「……オイ、先におちょくって来たのはソイツだぞ」

 

「赤ちゃんはそんなの知ったことじゃないんです」

 

「なぁ……テメェはそれでいいのか?」

 

 ロリを盾にした卑怯者に問いかける。

 しかし当の本人はうっとりとした表情を浮かべた。

 

「夏世ちゃんがママ……それも愛だよっ!」

 

「おい……」

 

 ショーコは引いた。

 アルは気にせず夏世と話をする。

 

「ねね、夏世ちゃん。こういう静かな所はどうだった? 誰かさんは連れてきてくれないような場所だと思うんだけど☆」

 

「ええ、こういう涼しいところも楽しいですね。自然の流れは……安らげます」

 

「よかった☆」

 

 

 

 自然公園の外に出れば、茜色と闇が混ざり合う時間だった。

 途端、自動車のエンジン音や街頭モニターの映像、学校帰りの子供たちやタイムセールに駆け込む主婦など、日常の喧騒が戻ってくる。

 

「ところで夏世ちゃん。いい高収入の仕事があるんだけど、興味ないかな?」

 

「それ、非常に胡散臭いです。いくらアルちゃんでも嫌ですよ」

 

「だよね。だから、普通は受ける人なんていないんだよねぇ……普通は」

 

「……アルちゃん?」

 

 何か妙な気配を感じて夏世はアルを見つめる。

 しかしそれもすぐに霧散してしまった。

 

「なんでもない☆ そういえばデートとは別なんだけど、来週あたり時間貰っていいかな?」

 

「……ええ、大丈夫ですよ」

 

「ありがと☆ 夏世ちゃん大好き。またね!」

 

「はい、また」

 

 夏世の額にキスをして、アルは街の喧騒に紛れ込んでいく。

 手を振って見送った夏世は。

 

「将監さん。社宅に戻る前に、本社で調べ物がしたいです。いいですか?」

 

「……何か気づいたのか?」

 

「確証はありませんが、気になることが」

 

「面倒ごとはごめんだぞ」

 

「わかってます。ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

「ひでぇな……こりゃ」

 

 夕方のタイムセール戦利品をエコバッグにひっさげた蓮太郎と延珠は足を止める。

 視線は周囲のコンクリ壁もろとも破壊された警察車両に向かっていた。

 まるでゴジラに蹴飛ばされたみたいだな。

 そんな感想を抱く。

 

 封鎖テープの外では大量の野次馬が詰めかけて、スマホで写真を撮っていた。

 SNSにでも上げるつもりだろうか。

 蓮太郎は事情を聴くべく、その内のひとりに声をかけた。

 

「なあアンタ……これ、何があったんだ?」

 

「さぁね。犯人は見つかってないらしいが、こんなの『赤目』が犯人だろ。最近取り締まりが強いからって報復なんて考えたのかな? 迷惑な話だよ」

 

 蓮太郎は歯噛みする。確かに人間技じゃないが、それだけで子供たちが一方的に悪いと決めつける現状には異議を申し立てたい気分だ。

 

「でも手がかりはないんだよなぁ。襲われた警官は()()()()()()ようだし」

 

「……ッ。そう、か。ありがとよ……」

 

 これだけ激しい損傷なら乗っていた人間は無事に済まないだろう。

 わかりきったことだ。

 蓮太郎は軽く頭を下げて礼を言うと延珠の元に戻る。

 足元がおぼつかない。

 真にこれが子供たちの復讐だとして、こんなことになんの意味があるのか。

 『呪われた子供たち』が()()()()()を繰り返すほど、『奪われた世代』は彼女たちへの憎悪を募らせる。

 憎悪は振り子のように力を入れた方向とは別方向に帰ってくるのだ。

 その規模すら大きく変えて。

 10歳以下の子供に思慮分別を持てと言うのも酷だが、それでも彼女らの行動で延珠の首が真綿で締め上げられていくようで胸が痛む。

 蓮太郎は事件現場を振り返った。

 どういった理由があるにせよ、蓮太郎はあの犯人を許せないだろう。

 

 ふと、そこで延珠が目を伏せていることに気が付き、蓮太郎の意識は切り替わる。

 

「延珠……やったのはお前じゃない。別の『子供たち』だ」

 

「……蓮太郎は優しいな」つかの間の苦笑。「うむ……童はもう大丈夫だ!」

 

 帰り道、愉快そうに延珠が語るとりとめもない話――住職と尼さんがロボになった寺に乗り込んで戦う奇天烈アニメ(それゆけゼンガー!)――に相槌を打ちながら、蓮太郎は迷っていた。

 お節介を言うべきか、言わざるか。

 しかし結局、蓮太郎は口を開いた。

 

「延珠……気にするな。お前がやったんじゃない」

 

「……? なにを、いってルのだ?」延珠は小首をかしげる。

 

「お前がやったんじゃない」

 

「っ……ど、どうしたのだ蓮太郎? お、お主変だぞ……」

 

 蓮太郎は延珠の肩に手を置いて振り向かせると、一言ずつ切っていった。

 

「だから、()()は、お前がやったんじゃないんだ――延珠」

 

 延珠は百面相を浮かべ、不意にくしゃっと表情が歪んだ。

 

「れ、蓮太郎はすごいな! 妾を妾よりわかっておるようだ……」

 

 蓮太郎は彼女の頭に手を置いて、長い息を吐く。

 

「他でもない、お前のことだからだよ」

 

 その言葉に悲しそうな笑顔を表し、かすれそうな声で延珠は言った。

 

「どうしてみんな、仲良くできないのかな……」

 

 問われた言葉は、蓮太郎にも答えられなかった。

 

あなたはこんな世界で満足なの? アタシは嫌だよ

 

 

 

 

 

 

「たっだいまぁ~☆」

 

 悪魔の門をくぐり、研究室に入ったアルはぎょっとした。

 

 灯りを全く点けない中で、パソコンの液晶光に照らされた菫が亡霊のように浮かんでいたからだ。

 

「ちょ、ちょっと先生ぇ、目が悪くなっちゃうよ!」

 

 慌てて証明を点けたアルは菫の元に駆け寄った。

 

「どうしたの、何があったの?」

 

 珍しく狼狽えた様子の少女に、ふっ、と菫は不気味な笑みを浮かべた。

 

「ここ数日やけに忙しそうだなと思ったら……女と会う用事(ため)とはね。驚いたよ」

 

 アルはドキリとする。

 不倫を咎められた男のように心臓がひゅっと締まる思いだった。

 菫が取り出したのは盗聴器。

 靴底を捲ると確かに小さな機械――送信機がある。

 いつの間に着けた(増やした)んだろ。なんてぼんやりとアルは思った。

 

「困るなぁ……君は私のモノだ。どこぞの馬の骨にやる気はないんだぞ」

 

 首を直角に曲げて、出会ったころのような冷たい瞳で覗き込んでくる菫。

 そこにアルは恐怖を覚え――愉悦も感じた。

 

「あは☆ 先生ぇ、嫉妬しちゃったのぉ? 可愛いなぁ」

 

「アル、私は怒っているんだ。確かに君に自主行動権は認めているが、あまり好き勝手動かれては困るとこの前言っただろう。ここ(地下)よりもっと深いところに閉じ込めてやろうか」

 

 アルは彼女の()()が愛情などではなく、貴重なサンプルを横取りされたくない研究者としての合理性(かんじょう)だと理解している。

 それでも進歩を感じて嬉しくなった。

 

「先生ぇなら大歓迎だよ。アタシを閉じ込めて、アタシだけをバラして……アタシだけで実験してくれるならそれもいいね。そんなところも愛してる☆」

 

 見つめ合う両者。

 やがて両手を広げた狂人(かんじゃ)を前に、医者(マッド)は折れた。

 

「……まったく。少しは心配するこっちの身になって欲しいね。監視があるとはいえ、君を狙う――――」

 

 菫の言葉は興奮したアルに中断させられる。

 

「え! 先生ぇ心配してくれてたの!? やった~!」

 

「おいこら、話は最後まで聞けと言ってるだろうに……!」

 

 菫は抱き着いてきた子供の顔に手を当てて引きはがそうとする。

 

「も~大好き! 今日は一緒にお風呂入ろ☆」

 

「おい、聞こえているならこの馬鹿力をやめろ、おい!」

 

 菫の抵抗もむなしく、暴走幼女にカーテンの向こうに連れてかれてしまうのだった。

 

 

 

 

「馬鹿、なんてところを触るんだ!」

 

「あは☆ アタシのも触っていいんだよ? ほらほら~」

 

 

「無駄な脂肪を寄せるな、離せ。狭いだろうが」

 

「やん☆ 菫ちゃんのえっち~!」

 

「おい、ふざけた声を上げるな!」

 

 





・自動車事故
おや……?

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