幼女に厳しい世界で幼女になった   作:室戸菫はかわいい

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見てるか代表!
初めて日間ランキングに乗ったようだぞ
一体何が……

誤字報告助かってる





強襲

 

 

 

「そのようなことが……」

 

 夜の車中。

 蓮太郎が事務所を襲撃されたことを話すと、聖天子は膝の上で両手を合わせた。

 

「すみません、良かれと思って依頼したばかりに……」

 

「お主、気にすることはないぞ! 依頼が来た時、木更はカンテンの雨*1が降ったように喜んでいたからな!」

 

「延珠の言うとおりだ。ウチはそのリスク込みで受けたんだから、アンタの気にすることじゃない。保険は入ってるからな。ただ、相変わらず保脇は俺が気に食わないようだが」

 

 未だ情報漏洩を疑われている蓮太郎は眉をひそめた。

 

「すみません、わたくしも彼がそこまで意固地だとは知らず……」

 

「仕方ねえよ。アイツの精神がまだガキだったってだけだ」

 

「……それでは里見さんは大人ということですね」

 

 微笑を浮かべながら打ち返してきた聖天子に、蓮太郎は口をつぐんだ。

 

 街灯に照らされた夜の街を眺める。

 平和な光景だ。誰も今、聖天子の暗殺が計画されているなんて思わないだろう。

 

 蓮太郎は今回、聖天子の乗り物を職員から借り受けた黒いバンに変更していた。

 リムジンと比べれば何もかも劣っているが、情報が少ない今は少しでも目くらましを用意しておきたい心境だ。

 前後はリムジンのまま変えていない。

 

 問題は、それを聖天子の側近たちがよく思わなかったことだろう。

 聖室の貴人を一般車に乗せるのは酷く常識外れなようだ。

 警備部の責任者はその判断を支持してくれたのが救いか。

 そう、結局聖天子の護衛は警視庁の警備部から護衛ユニットを連れてくることになったのだ。「我々の頭を通さないからそんな無様を晒す」と若干非難を含んだ口調で話していたのが印象的で、蓮太郎は彼がマトモな感性を持っていて安心した。

 

 車は2回目の会談が行われる旅亭へ進み続けている。

 

 この情報すら漏れていると見た方がいいかもしれない。

 どうやら裏切者は聖居内にいるらしいが、聖天子付護衛官でもない限りは早晩逮捕されるだろう。今日を乗り切れば次は大丈夫なはずだ。

 蓮太郎は聖天子と目を合わせる。

 

「聖天子様、この機会だからあえて言わせてもらうが、アンタの側近はクズばかりだ。事件の解決より責任のなすりつけを優先して、政争に夢中でそれ以外はどうでもいいと思ってる連中に見える。アンタも周りの人間くらい選んで置かないと出来ることも出来ないぞ」

 

「耳が痛い話ですね。……先達としてのお言葉でしょうか」

 

「……そんな立派なもんじゃねぇよ」

 

 途中で投げ出した(ドロップアウト)した奴が偉そうに言う。蓮太郎は自虐的に笑った。

 

 

 それからしばらく、バンは高級料亭『鵜登呂(うとろ)亭』に到着した。

 敷地面積は広く、外塀も高い会談に適した場所だろう。

 先着していた護衛ユニットが迎えにやってくる。

 まだ斉武たちは来ていないらしい。

 

 蓮太郎はスライドドアを開くと、聖天子に手を伸ばした。

 

「さぁお嬢様、行くぜ」

 

 お嬢様扱いされた聖天子は小さな声で文句を言いながらも、恥ずかしそうに差し出された手を握り返す。

 

 車外に出ると、冷たい風が通り抜ける。

 聖天子が寒さで身を震わせ、蓮太郎は彼女を反射的に引き寄せた。

 

「れ、蓮太郎さん……」

 

「わ、わりぃ」慌てて離れようとした蓮太郎。

 

「いえ……その、このままで」

 

「お、おう?」

 

 そんなとき、護衛ユニットを押しのけて憤怒の表情を浮かべた保脇がやって来た。

 

「里見蓮太郎ゥ! これはどういうことだ。なぜ聖天子様をそんな粗末な車に乗せた!」

 

「……リムジンは一度狙われたからな。安全策だよ」

 

「なぜ私に報告しないッ!」わなわなと手を震わせている。

 

 蓮太郎は無言の睨みで返した。

 信用なんねぇからだろうが。

 

「貴様ぁ……貴様のような勘違いしたスタンドプレイヤーがチームを崩壊させる! やはり貴様のようなクズはとっとと……」

 

 勢いのまま拳銃を抜こうとする保脇。

 蓮太郎もけん制のために腰のXD拳銃に手をかけるが、誰かに肩を引かれて取りやめた。

 

「碌に警護も務まらん奴が大口を叩くとは、護衛官殿は相当洒落がわかるようだ」

 

「誰だ……? 貴様」

 

 現れたのは30台後半の男。

 

「警視庁警備部警護課第4係の尾形だ。今回の護衛任務の責任者というところだな」

 

 保脇はスーツの左胸を見てあざ笑う。

 

「ノンキャリ風情がデカい口を開くな。目障りだぞ」

 

「そう思うなら自分の職務を果たしてから言って欲しいね。無能ほど口が回って困るよ」

 

「き、貴様……ッ」

 

 トマトのように顔を赤く染めた保脇は口論(レスバ)に負け、逃げるように料亭の方へ去っていった。

 

「……助かったぜ、おっさん」

 

「おっさん……まぁ、君から見たらそうか。せめて尾形と呼んでくれ。君の方が話のわかる人間だっただけさ。私もすぐに戻るからね」

 

「ああ、あんたなら任せられそうだ」

 

 持ち場に戻っていった尾形にあれが本来の警備部だよな、と納得した蓮太郎。

 

 ふと、護衛ユニットのひとりが妙な声を出した。

 

「どうした?」と尋ねれば、「いえ……何か、写った気がしたんですが」と答えてくる。

 

 隊員が見せてきたのはカメラ。しかしただのカメラではなく、赤外線機能の付いたカメラのようだ。いわゆるナイトヴィジョンとでも言うのだろうか。

 

 蓮太郎の心拍が早まった。

 もしや、と思ってカメラを見れば、確かに丸い何かが反応している。

 幽霊などと寝ぼけたことを言うつもりはない。蓮太郎は慌てて周囲を見回した。

 

「蓮太郎……?」その様子に延珠の表情もやや強張る。

 

「延珠……何か、何かがいる……」

 

「っ! どこだ、蓮太郎!?」

 

「わからん、けど見逃しちゃまずい。延珠も探してくれ」

 

「わかった!」

 

 蓮太郎と延珠は聖天子を背中で挟みながら周囲をうかがう。

 人を越えた感覚を持ったイニシエーターが探せば見つかるだろうか。

 一瞬、料亭に入るかを悩んで否定した。内部構造がわからない以上、逃走手段の近くにいた方がいい。

 

 そうして数秒。結果的に、視界の端――巨大ビルの屋上が明滅するのを蓮太郎の瞳は捉えた。

 

 全身が強張る。

 

 光ってから回避行動に入ったのでは遅い。

 つまり初弾は避けられないということであるが、いつまで経っても蓮太郎の体に痛みは訪れなかった。

 

「……なんだ?」

 

 蓮太郎が疑問を呈するのと同時、やや離れた場所――道路上で、ピュン、という音が聞こえた。

 

 その場の全員が目を向けると。

 

 さも初めから居たと言わんばかりに、謎の人型が姿を現した。

 

『ふむ……役者がそろったというわけだ』

 

 蓮太郎は目を見張った。

 間違いない、奴だ。

 しかしなんだ? まさか、奴を……狙ったのか?

 蓮太郎の疑問に答える声はなく、事態は動き続ける。

 

「な、なんだお前は」

 

「とまれ! ここは立ち入り禁止だぞ!」

 

 警護ユニットの数人が警告するも、外骨格はそれを無視して接近してくる。

 尾形の合図でひとりが威嚇射撃を行った。

 

「それ以上近づくと実力行使させてもらう!」

 

 しかし、鎧はやはり無視をする。

 そのうえで、両手のライフルを構えた。

 

「ッ!」

 

 隊員たちが盾を構えるのと同時、鎧が連続発砲。

 蓮太郎と延珠も慌てて聖天子を庇って地面に伏した。

 

 流星のように押し寄せた銃弾は防弾盾をあっさり貫き、隊員の命を容易く奪う。

 

 数秒の斉射の後、料亭前は事切れた隊員の死体と死にかけな隊員の血と臓物に染まっていた。

 

「な、なんだよ……これ……」蓮太郎はあまりの光景に言葉が出ない。

 

 それでもこの場を去らなければと思考を早め、車を探すが――4台すべて破壊されていた。

 

 顔を青ざめる蓮太郎に、鎧はたった一言。

 

『さて、これからだな』

 

 それだけを告げて、蓮太郎たちに襲い掛かって来た。

 

 

 

*1
干天の慈雨

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