幼女に厳しい世界で幼女になった   作:室戸菫はかわいい

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里見君、依頼の確認よ。
依頼主は室戸先生のところのアルちゃん。
なんでも農家の人のお手伝いをして欲しいんですって。
いつ農家の人と知り合ったかはわからないけど、とりあえず報酬としてお金と農家の人からもらえる食材が提示されているわ。
これはもやし生活から抜け出すチャンスよ。
だいたい、もっと里見君がビシバシ私のために働かないのが悪いと思わないかしら?
ティナちゃんも事務所に入ったことだし、里見君にはこれから馬車馬の如く働いてもらうからね!
また下請けみたいなことになっちゃって悪いけど、今回は身元が分かってるから大丈夫よ。
頑張って頂戴ね。



×××Connection

 

 時刻は昼。

 電車に揺られる蓮太郎は出発前、木更に言われた言葉を反芻していた。

 

 ティナが――おそらく他国の技術を知りたがった研究者から守るべく――聖天子預かりになったのは1週間も前のこと。無事彼女は蓮太郎の元へやってきて――社長権限を濫用した木更によって事務所の職員となっていた。今は木更と事務所で待機しているはず。

 

 これまでの間にいろいろあったものの、結局あの機械化兵士から情報は得られず仕舞いだ。せいぜいがバラニウム義肢の残骸程度。

 ティナにも事情聴取が行われたが、彼女が語ったことは末端の人間である蓮太郎まで降りて来ることはなかった。結局、誰がティナを東京エリアに送り込んだのだろうか。

 菫も何か知っているように見えたが、話してくれそうにない。

 

 また未織は本気で蓮太郎のことを広告塔として利用しようとしているみたいだ。というか抱き着いてきたものだからまた木更と一戦交えている。

 

 なんにせよ、この件に関して聖天子には感謝すべきところもある。

 暗殺騒ぎもそうだが、内部のかなり中枢から離反者が出たことで聖居はてんてこ舞いの最中だろう。帰って来た菊之丞が声を荒げたとも聞く。そんな中で対応してくれたのだ。

 彼女曰く「功労者には相応の便宜を図るべきです。確かに今回の会談は理想とはいきませんでしたが、斉武大統領と正面から向き合えたのは貴方のおかげです」だと。本当に気に入られたのだろうか。しかしどうも自分の疑り深い部分が発言の裏を探ろうとしてしまう。

 主に面倒ごとに巻き込まれる方向で。

 今回は延珠が無事だったからいいものの、彼女の身に何かがあったらと思うと正気を保っていられる自信がない――。

 今でも彼女たちを戦わせることに迷いがある。しかしその迷いを振り切るにはもっと自分が強くならねばならない。

 そうだ、もう迷っている場合ではないのだろう。聖天子が言っていたことが真実ならかつての戦乱か、それ以上がこれからやってくるはずだ。その時に戸惑えば――今度こそ失いかねない。それは断固として許容できない。絶対に。

 聖天子から護衛とリンクス撃退を功績としてIP序列を上げる提案を受けるべきだろうか。

 

「れんたろー、もうすぐ着くぞ?」

 

「ああ、ありがとう延珠」

 

 隣で笑う少女の頭を撫でれば、向日葵のような笑顔を向けてくれた。

 携帯を閉じて立ち上がる。

 

 

 

「やっほ~☆ 蓮太郎くん、延珠ちゃん。遅かったねぇ」

 

 集合地点は駅からバスを使って30分ほどの住宅街から少し離れた場所だった。

 すでにアルが居り、手を振ってくる。

 返事をしてから、蓮太郎は彼女の隣に髪を編んだ少女と長身の女性も帯同していることに気が付いた。

 同時に、蓮太郎と延珠は少女に見覚えがある。お互い見合わせ、これが夢でないと確かめてから声をかける。

 

「お主、息災であったか!」

 

「千寿夏世……だよな?」

 

「はい、お久しぶりです。蓮太郎さん、延珠さん」

 

 夏世は感情の読めない表情で笑うという器用をする。

 

 延珠が手を掴んで上下に振っているのを見て、蓮太郎は当時の気がかりのひとつが取れたことに胸を撫でおろし、同時に罪悪感が湧いてきたのを感じた。

 後ろ首をかいてしまう。

 

「よく無事だったな……その……あん時は助かったよ。そんで悪かった。お前らの事情も考えるべきだったな」

 

「いえ。私はあの場の最善手を選んだだけです。それに……私から見ても将監さんは不器用でしたから」

 

「やっぱり、アイツは……」

 

「……はい」

 

 夏世が目線を落とし、肩を震わせているのを見て蓮太郎は将監が結局助からなかったのだと察した。

 同時に疑問が浮かぶ。

 

「なぜここに?」

 

「アタシと夏世ちゃんが昔なじみだからだね~」

 

 話に入って来たアルに顔を向ける。

 

「……アル。どういうことだ?」

 

「ふふふ。蓮太郎くんをびっくりさせてあげようと呼んだの☆」

 

「アルちゃんとはIISOに居たころの知り合いなんですよ」

 

「もしや、今日は一緒に行動するのか?」

 

 延珠の問いにアルが頷く。

 

「そう、か。つまり民警、続けてたのか」

 

 蓮太郎は頭脳に優れる彼女ならまた別の生き方もあったのではないか――そう思うも、現在の世界で子供たちが民警以外のまともな職に就けると言えないのも事実だった。

 

 深刻そうな雰囲気に、アルは夏世の腰を抱いて茶々を入れた。

 

「なになに、蓮太郎くん。行く当てなかったら俺のハーレムに入れてやるぜグヘヘ、とか思ってたの~? でも残念、夏世ちゃんはあげないから☆」

 

「誰がそんなこというか!」

 

 突っ込みを入れながら、蓮太郎はアルが菫と同類だということを思い出す。

 しかし驚くべきは、夏世まで顔を赤らめて乗って来たことだろう。

 

「そんな、蓮太郎さん……あの夜(未踏査領域で)、情熱的に私を押し倒したのに……」

 

 おい馬鹿、そんなこと言ったら!

 蓮太郎の懸念は正しく、延珠が過剰反応する。

 

「お、押し倒しただと!? れ、蓮太郎、お主その女と何をしていたのだ!」

 

「お、おい、違わねぇけど違うんだよ!」

 

「違わない!? 違わないのか蓮太郎! ならば今すぐ妾も押し倒せ、それで許してやるのだ。さぁ!」

 

 両手を広げて待ちわびる延珠を宥めていれば、クスクスと笑い声が夏世から届く。

 

「おい……わかっててふざけないでくれよ」

 

「ふふ、すみません。でも、これくらいお返しはしてあげようと思いまして」

 

「お返しっておい……」悪意じゃねぇか。と蓮太郎は嘆く。

 

「変わらず仲がよろしいようで安心しました」

 

「……まぁな。それより、民警続けてるんだろ。その女が相棒(プロモーター)か?」

 

「はい。将監さんの妹さんとペアを組んでいるんです。紹介します、ショーコさんです」

 

 水を向けられた先に目を向ければ、なんとも言えない表情で立っている、ダークグレーの肩だし(ノースリーブ)ハイレグ・サマ―ニットに前面の布がないスカートというやや過激な出で立ちの長身女性。

 

「……おう」

 

 首にドクロスカーフを巻いているのを見ると、会ったのは数回だが確かに彼の面影を見られる。特に目つきの悪さが。MK-ⅳジブラルタル(バスタードソード)もあれば完璧だろう。

 蓮太郎としては彼にいい思い出はないが、妹だというならあえて目くじらを立てることもない。無難に挨拶をする。

 

「その、まぁ……よろしく」

 

「ああ……」

 

 しかしショーコが気のない返事をした瞬間、「んひぃっ!」という艶めかしい声が彼女の口から飛び出した。

 思わず蓮太郎も背が伸びてしまう。高校生には刺激が強い。

 蓮太郎からは見えないが、背後から夏世の手がショーコの臀部に伸びている。

 そのまま、夏世は隣で蠱惑的な声を出した。

 

ダメですよ、ショーコさん。教えましたよね?

 

 ショーコはぷるぷると何かに悶えるような仕草をした(のち)、俯きがちに声を絞り出す。

 

「…………よろしく、お願いします」

 

「お、おう……」

 

 蓮太郎は戸惑いの声をあげるほかない。

 よくできましたね、と褒める夏世に悪女の雰囲気が混ざっているように見えた。

 

 お前、そんなキャラだったか……?

 

 しかし困惑しながらも健全な高校生の蓮太郎は強調された果実に目を向けてしまう。

 そしてそれを目敏く見つけるのが延珠である。

 

「むぅ……蓮太郎、またおっぱいに目を奪われてはおるまいな?」

 

「う、奪われてねぇし」

 

 慌てて言い訳するも、時すでに時間切れ。

 閻魔の審判は逃れられまい。

 

「嘘だな。いやらしい目で見ておったぞ。そんなに触りたいなら妾のを触ればよいというに!」

 

「誰が触るか年齢制限を考えろ!」

 

「そんなもの、妾たちの愛でどうとでもなる!」

 

「ならねぇから法律なんだろ……ッ」

 

「ええい、ならば無理やりにでも触らせてやる!」

 

 自身のソレに誘導したい延珠と触るわけにはいかない蓮太郎の抵抗が始まった。

 しかし力は蓮太郎に不利。故に応援を頼むことになる。

 

「なぁ、お前らも笑ってないで延珠を止めてくれ!」

 

「正直、これを見ていたい私もいます」

 

「…………くだらねぇ

 

「アタシもそうだけど、話進まなくなっちゃうからね☆ 延珠ちゃん、今度蓮太郎くんを悩殺する水着、一緒に買いに行ってあげるから、今は我慢しよっ?」

 

 蓮太郎を悩殺、というワードに延珠の耳が反応した。

 

「本当か?」

 

「ほんとほんと☆」

 

 延珠は力を弱め、思案した。

 

「……なるほど、機は別にあるということだな」

 

 蓮太郎の手が解放される。

 

「……なんでもう疲れてんだ俺」

 

若妻(延珠ちゃん)の横でアタシたちのオンナに色目使うからだよ~」

 

「使ってねぇしどういうことだよ……」

 

 どこからツッコミを入れればいいんだ。

 10歳児から普通でない言葉に蓮太郎は脳がバグりそうだった。

 

 

 

 それから一行はアルの案内で足を進めた。

 細い道に入り斜面を登れば、庭園のような場所にたどり着く。

 病院が立ちそうなくらいの敷地には、ビニールハウスや田畑が広がっていた。

 

「おじちゃ~ん、来たよ~」と声をあげれば、建物から初老の男性が杖を突いて出てくる。

 

「おや、いらっしゃい。……後ろの方々は?」

 

「おじちゃんが言ってた人手って奴☆」

 

「こんにちは、三ヶ島ロイヤルガーダーの者です」

 

「おお、これは丁寧に……ありがとうねぇ」

 

 夏世が名刺を出して頭を下げれば、男性も受け取ってお辞儀で返す。

 

「……天童民間警備会社の(モン)だ」

 

 男性は蓮太郎の言葉を聞くと、おや、と言った。

 

「もしかして、聖天子様の護衛をしていた人かい?」

 

「ああ、まぁ……」

 

「うむ、如何にも蓮太郎と妾が聖天子様の護衛をしておったぞ!」

 

 歯切れの悪い蓮太郎に対し、延珠は胸を張った。

 老人は記憶を探る仕草をし、思い出す。

 

「蓮太郎……ああ、里見蓮太郎くんだね。いやぁ、ありがとうねぇ。聖天子様が狙われたと聞いた時は生きた心地がしなくてねぇ。今もご存命であられてよかったと思っていたところなんだよ。まさかこんな若い子が大任を果たしたとは思わなかったけどねぇ」

 

「は……はは」

 

 物腰の低い年上の人間から感謝され、さらに手まで握られた蓮太郎はなんと返せばよいかわからず、あいまいな笑いで返した。

 なんだか、直接褒められるというのはこそばゆい。

 固まった蓮太郎に代わり、アルが話を引き継ぐ。

 

「おじちゃん、お話もいいけど先にお仕事を済ませておいた方がいいかも☆」

 

「ああ、そうだねぇ。そうしようか」

 

 老人が語るに、仕事とは最近足腰が悪くなったので収穫を手伝って欲しいとのことだった。

 そしてそれは蓮太郎たちにとって大した苦に……なった。

 特に蓮太郎は農業初心者ともあって収穫の仕方に混乱があったのだ。これは単に収穫すればよいというわけではなく、商品として最低限の見栄えも要求されるため。それでも老人に話を聞き、逆に手伝いを受け、ぎっくり腰になりかけながらもなんとかやっていたのだ。

 一方、子供たちはフィジカルのごり押しでなんとかしていた。ずるい。

「でっか」「蓮太郎! これすっごい柔らかいぞ!」「こっちは2つくっついてますね」

 ふざけていないよな?

 蓮太郎は対照的に黙々と作業するショーコを見ながら思った。

 兎角、結果として夕方には目標分の収穫を終えることが出来たのである。

 それから聖天子の熱心なファンらしい老人の、聖天子が先代にそっくりだのという思い出話を聞き、やがて帰る時間がやってきた。

 

「いやぁ、今日はありがとうねぇ。本当に助かったよ」

 

 老人は感謝として、一行(いっこう)に大きな段ボール1つ分の夏野菜をくれた。

 これに喜んだのは延珠である。

 その量に蓮太郎もおっかなびっくり。

 

「れ、蓮太郎! すごい量のお野菜がははは、入ってるぞ!」

 

「そ、そうだな……こんなに貰っちまっていいのか?」

 

「いいのいいの、若者への感謝と老骨の話に付き合ってくれお礼だとも」

 

「それなら……ありがたいけどよ」

 

 ふと、夏世たちを見る。

 

「お前らはいいのか?」

 

「私たち、そこまで困窮してはいませんので」

 

「同じく☆」

 

「そ、そうか……」

 

 なんだか悪い気分になりつつ、老人に別れの挨拶をしてから帰路に向かう。

 

 その道中。

 

「腰がいてぇ……」

 

「どうした蓮太郎、おんぶしてやろうか?」

 

「いらん……さすがに屈辱的すぎるだろ」

 

 「ちぇー」と不貞腐れる延珠を無視し、蓮太郎は夏世の横で歩くアルに目を向けた。

 

「なぁ、どうして俺たちを誘ったんだ? あの仕事、民警でなくてもできんだろ」

 

 声をかければ、顔を向けてう~ん、と喉を鳴らしてから言う。

 

「そうはいうけどさ、民警でもああいう何でも屋みたいなことするんだよ。特に戦いたくない人とかは」

 

「……戦いたくないのに何で民警になったんだよ」

 

「らしくない言い方するね☆ 決まってるじゃん、守りたい人がいるからでしょ」

 

 ハッとして延珠を見ると同時、理解した。

 抑制薬を貰いながら子供たちを安全に育てるには民警という肩書が一番堅い。

 さすがにエリアの危機ともなれば動員されるだろうが、そんなこと滅多にないだろう。

 つまり、試験さえ突破する実力があるならそれ以降は個人に任せられるのだ。

 相棒との関係は千差万別。正直、盲点だった。

 

「そういう道もあるのか」

 

「そそ。知り合いに民警と会社員を両立してるおにーさんがいるんだよね。実はあのおじちゃんはそのおにーさんから紹介してもらったの」

 

「へぇ……会社員ってよく副業が許可されたな」

 

「『副業・兼業のモデル就業規則』67条その2で例外扱いされていますよ」夏世の言。

 

「相変わらずなんでそんなこと知ってんだか……」

 

 パラベラム(戦に備えよ)といい、蓮太郎はこの腹ペコだけじゃない少女の知識に驚きを覚える。

 

「夏世ちゃんは学習に勤勉だからね☆ ちなみに農業の手伝い、結構大事なんだよ」

 

「一次産業は産業の基本だからだろ? それは知ってる」

 

「そうだけど、東京エリアの食料事情、けっこうやばいんだよ☆」

 

 はて、と思う。

 

「ミラクルシードが外周区で育てられてるだろ?」

 

 小面積で大量生産可能な食料。現在の食事事情を支えているはず。

 

「あの味しない奴? それでも自給率は4割ってところかな☆」

 

「そんなに低かったのか?」

 

「東京の食料生産は多摩に頼ってたからねぇ。ちょっとの外周区で100万人を支えようってのが無理な話なんだよ」

 

 夏世が引き継ぐ。

 

「世界的に見ても雑穀地帯であったウクライナやアメリカが機能していないのはかなり厳しいと言えます。特に小麦や米はいつなくなるかわかりませんし、伴って牛や豚も希望は薄いです」

 

「でも、街には食べ物が普通に売っているぞ?」

 

 延珠の問いにアルが答える。

 

「それは東京エリアがバラニウムと優先的に交換してるからだよ。ぶっちゃけ自転車操業なんだよね☆ バラニウムを掘りつくしたら二重の意味で東京エリアは終わり。これが資源の呪いってやつかな?」

 

「そ、それはまずくはないか?」

 

「今すぐじゃないけどまずいよ~。だから農業してる人を労わろう~って話☆」

 

「そ、そうか……結婚後に食べ物がなくなっては仕方ないな、蓮太郎!」

 

「ナチュラルに結婚させんな」

 

 もともと東京エリアは敷地がさほど多くない。エネルギー問題は外周区の発電所でまかなえているが、食料に不安が残るのは……先行きが良くない。

 ふと、教科書に載っていた2022年の「飢饉の年」というのを思い出す。

 ガストレアが登場してインフラが破壊された翌年である2022年は食料の調達に酷く混乱したという。血で血を洗う……とまではいかないが、世界的に死者が激増した年だった。

 

「さてと。蓮太郎くんを誘った理由に戻るけど、ひもじい生活してる同情と、夏世ちゃんを紹介したかったのと、あとは蓮太郎くんのコネ伸ばしかな☆」

 

「……私利私欲混ざってんなオイ。で、コネ伸ばしってのはなんだよ」

 

「さっきも言ったけど、民警って実質便利屋じゃない? しかも地域密着型の」

 

「……まぁ、そんな気はしてるが」

 

 ここ数か月は例外が多くて忘れかけるが、民間警備会社といえど、本業のガストレア退治は突発的で、大半は市民や企業、国からの依頼を受けて生活することが多い。

 

「普通、民警って個人より企業が部署のひとつとして作るのがオーソドックスなわけだよね。なんでかわかる?」

 

 蓮太郎は思考を回す。

 

「従業員の数と……信頼度、か? 個人より集団の方が心理的抵抗も低いだろうし」

 

「当たらずとも遠からずだね。答えは横のつながりがあるからだよ」

 

「横のつながり?」

 

「そ。つまりコネだよ、コネクション」

 

「コネクションねぇ」

 

 あまりいい印象が湧かないのは政治が汚職だらけだからか。

 

「言っちゃ悪いけど、天童民間警備会社って全然コネないよね。というか避けられてるもん」

 

「……立地のせいだろ」

 

 キャバクラとゲイバーと同じビルにあればそうもなろう。

 もっとも、そこに拠点をなぜ構えたという話だが。

 

「原因はともかく、仕事が来ないんじゃ困るだろうから夏世ちゃんたちに会わせたんだよ?」

 

「なんで夏世が仕事に繋がるんだ」

 

「夏世ちゃん所属の三ヶ島ロイヤルガーダーは大きい会社だからね。いろんな依頼がおりてくるんだよ~」

 

「つまり下請けをしろと」先日の件のせいであまり良い印象がない。

 

「仕事は仕事でしょ。飢えて死んだら世話ないじゃん」

 

「そりゃそうだが……あんな大企業が俺らみたいな弱小に仕事をおろす訳……いや、そういうことか?」

 

 蓮太郎の考えを肯定するように夏世は頷く。

 

「私たちのメリットは英雄と関わりがあるというブランドですね」

 

「結局、肩書かよ」

 

「すねないでよ~。蓮太郎くんは仕事がもらえる。三ヶ島社は仕事が増える。双方win-winでいいじゃん。大企業との縁が大事ってのは司馬重工と繋がってる蓮太郎くんならわかってるはずだよね?」

 

「そりゃ、そうだけどよ」

 

「ね、延珠ちゃん。毎日食べ物に困らない方がいいよね?」

 

「うーむ……ジャガイモ生活には飽きてきたが、それでも蓮太郎と一緒になら妾はどっちでもよいぞ」

 

 悩む蓮太郎を差し置いて姑息な手を使うも、延珠は健気だった。

 

「延珠……」

 

「……わぉ。よかったねぇ、蓮太郎くん。愛されてる☆」

 

「妾の愛は天地鳴動だからな!」

 

「なんか間違えてるだろ」

 

 蓮太郎のツッコミを待って、夏世が言う。

 

「なんにせよ、傘下になれという話ではないのですし、今度仕事を受けてから判断するのも悪くはないと思いますよ」

 

「……まぁ、考えとくよ」

 

 どのみち決定権は社長たる木更が持っている。

 蓮太郎に出来るのは保留だった。

 それでも夏世はそれが聞ければ十分だったらしい。

 

「蓮太郎くんは権力者が嫌い……というか天童が連鎖して嫌いなんだろうけど、国家元首とのコネクションっていうのは君が思うより大事なんだからね」

 

「……面倒ごとを持ってくるから嫌いなだけだ」

 

「だとしてもだよ。それはみんなが喉から手が出るほど欲しい奴なの」

 

「ならタダでくれてやんよ」

 

「そういうことじゃなくてね……コネクションは結局使い手次第なんだって、覚えておいて。変な孤独主義を先生ぇから学ばなくてもよかったのに」

 

「んだよ、説教のつもりか?」

 

「蓮太郎くんより年上だからね☆」

 

 なんのジョークだよ。

 そう言いたかったが、妙な気迫に言葉が詰まった。

 

「君の好き嫌いで延珠ちゃんや木更ちゃん、ティナちゃんが不幸な目に遭ってからじゃ遅いから忠告してるの」

 

 見つめてきた赤い瞳は否定を許さない。

 

「……わぁってるよ」

 

「ならばよし☆ それで水着を買いに行く日程だけどね――」

 

 重要な話は終わったのか、直後に始まった水着の話に落差で風邪をひきそうだった。

 

 

 

 

 

 

 段ボールをひっさげて蓮太郎が事務所の扉を開くと、机で伸びていた木更の表情が喜色に染まった。

 

「蓮太郎くん……それ、もしかして」

 

「ああ、貰ったやつだけど」

 

 段ボールをテーブルに置けば、さっと近づいてきた木更が段ボールの名前を凝視する。

 

「すごいわ! これ、有澤グループの天然ものよ!」

 

「あそこ、そんなにすごいところだったのか」

 

「ええ、まさかこんな大御所が出てくるなんて……アタシも小さいころに食べたことあるけど、野菜なのにちゃんとお腹が膨れるくらいすごいのよ! これで少しはご飯のメニューが増えるわね……嬉しいわ。里見君、ありがとっ!」

 

「うおっ!?」

 

 まさか飛び込んでくるとは思っていなかった蓮太郎の無防備な頭を、豊満な胸部が強襲した。甘い匂いと弾力に思春期の脳みそが破壊されそうになる。

 

 途端、過剰反応した幼女共が混ざってきて、木更が慌てて「あっ、これは違くて……」と言い訳する前に蓮太郎から引きはがそうとしてきた。

 

「うわぁ! おっぱいに触るな蓮太郎! 煩悩退散!」

 

「蓮太郎さん……苦しみ(巨乳)から解き放ってあげます」

 

 それからはもうしっちゃかめっちゃかである。

 せっかく事務所が直ったのに。

 今日も今日とて、天童民間警備会社はいつも通りであった。

 どんぱち騒ぐ彼女たちを直視しまいと、関係ないことを思う。

 そういえばあいつ、輪っかなんて何時から被って……いや、本当に被ってたか?

 

 

 

 

「これで3本……延珠ちゃんはハーレム肯定派かな、否定派かなぁ。うまく蓮太郎くんの気を引けるといいね、ティナちゃん☆」

 

 






 ・アル
一も十も百も千も万が一、蓮太郎くんにとぅんくされたらいやだな~とか思ってたからひとりで会わせなかった独占欲の塊


どちかというとCEOかP7

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