幼女に厳しい世界で幼女になった   作:室戸菫はかわいい

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七夕だった。





つまらない悩み

 

 

 

「先生ぇ、朝ですよ~」

 アルの朝は日も差し込まぬ地下で、昼夜を忘れた部屋の主を叩き起こすことから始まる。

「あぁ~……」

「寝ぼけてないでお着替えしましょうね~」

 未だ朝に弱い――単に自分の世話をする気がない菫を洗面台に輸送し、鏡を見ながら歯磨き、洗顔、化粧を済ませた後は研究室の椅子に座らせた。

 このころになると菫の意識も覚醒をはじめ、現在が次の日だと自覚しだす。

 一方のアルは今日の朝食――ごはんとワカメなどを入れた味噌汁、厚切りベーコンと野菜を和えたサラダをプレートに乗せて机に運ぶ。

 

 目の前に出された食事の匂いに刺激されて、回転数を増した菫の頭脳。

 

「毎度思うが、食事にそんな手間と時間をかける価値があるかね?」

 彼女の脳内では時間効率からゲル状>弁当>手作りの図式が成り立っているらしい。

「先生ぇ、寂しいこと言わないでよ~。愛をこめてるんだから☆」

「精神論を持ち出すのは技術が追いついてない奴の常套句だぞ」

「なによ、アタシの愛情が受け取れないっていうの?」

「急に面倒くさい女になったな、キミ」

 

 初めて菫を見たアルは驚いたものだ。何をどうしたらこんな不健康になれるのかと。ゆえにこのナイスバディを大事に扱わない女の敵たる女医の意識改善を試みている。

 視線に晒された菫は不本意だという表情を隠さずに食事を始めた。

 

 

 食後。

「アル知ってるか。今ギリシャ神話として語られている8割以上はローマの同人誌なんだとな」

「急にどうしたの~?」

「いやなに。そもそもが創作とはいえ、正しさより人受けを優先する人間の感性は愚かだと思わずにはいられないだろう?」

「それが今日の人間批判なんだね☆」

 アルは日課を聞き流し、暴れに暴れた菫の髪をとかしていく。

 菫もまた真に受け取られなかったことにさしたる感情を持たず、パソコンを立ち上げて映画を見始めた。

 

「ちなみに今日は宝生(ほうじょう)先生から解剖依頼が2件、刑事課からも殺人事件の検死が1件入ってるよ☆」

「嘘つけ。君が勝手に持ってきたんだろうが」

「だって先生ぇ暇しちゃうでしょ~?」

「金持ちの暇はいいんだよ」

 

 

 

 

 

 

「やぁ里見くん、さっき君の後援者(パトロン)が来てたぞ」

「あいつが来てたのか?」

「酷く不機嫌だったがね。生徒会室でも教室でも会えないからつまらないんだと」

「まぁ……あいつの本性が乱射魔だと知ればおいそれと近づけねぇよ」

「なんでぇ? 未織ちゃん可愛いじゃん☆ おっぱいあってお金持ちで好意を抱いてる女の子を邪険にする男がいるってマジぃ?」

「どこかの誰かは幼馴染に夢中だからな。おお、可哀そうに。貢いでいるにも関わらず見向きもされないなんてとてもとても……」

「アンタらふざけてんだろ!」

 

 実際、万年金欠の天童民間警備会社がやってこれてるのはパトロンが武器弾薬を無償で提供してくれてるからに他ならない。

 あいさつ代わりのひとことは蓮太郎の耳に痛かった。

 

 それはそれとして。

 咳払いをひとつ。

 

「先生、相談がある」

 

 うす暗い地下室で部屋の主を前に、蓮太郎は語った。

 曰く、少女が警官に撃たれた。

 曰く、延珠が家出した。

 曰く、外周区と自分との生活はどちらが延珠にとって幸せか。などなど。

 

 だが、菫はそれをつまらない話と断じる。

 

 差し出されたコーヒーをひとくち胃に納めて言った。

 

「なぁ蓮太郎くん、君が信じる()は酷く不安定なものだと気が付いているのかい? いつ何を原因として滅びるか、我々はその時になるまでわからないんだよ。予言者すら失敗したほどだからな。そう、我々は死を避けられない。私は死ぬし、君も死ぬ。みんないつか死ぬんだよ。だから人間にできることは好きに生き、理不尽に死ぬ――ただそれだけだ。それ以上を望むべきじゃあないんだよ」

 

 躁鬱の患者が時折見せる笑顔の仮面に、蓮太郎は恐怖する。

 

「そもそもだ。いつ、誰が、どこでガストレアを殺すべき存在などと言った?」

「は?」

 蓮太郎は虚を突かれた。ガストレアは殲滅しなければならない。それは、彼にとって10年前から当たり前の常識。

「おいおい、まさか言えないのか? 自分が戦う理由すらないのか君は」

「それは……ガストレアが人類種の天敵だからだ」

教科書通り(テンプレ)だな、里見くん。私を失望させないでくれ」

「……」

 黙り込んだ蓮太郎に菫は教授する。

「原始地球で水蒸気が水になって以来、植物(藻類)は光合成で次代の生き物が育つ礎を作った。その後多様な生物が生まれ様々な支配者が世を謳歌するが、どの支配者も氷河期、火山噴火、隕石の衝突によって滅びた。存外人間はしぶとい生き物だが、3度の絶滅を乗り越えた三葉虫ですら現在は確認されていないことを思えば大したものではない」

 

「……何を、言ってるんだ?」

 天才にとっては一連の話らしいが、凡人の蓮太郎は話が逸れたことに困惑する。

 

「つまりだよ、蓮太郎くん。地球の支配者を気取る人間は、ガストレアに優越していると本気で考えているのか? いい加減、人間の時代は終わりだとは思わないか?」

「先生……本気でそんなこと言ってるのか?」

 そういったものの、目の前の女医が冗談で語る雰囲気ではないことに気づいていた。

 蓮太郎の緊張を伝播したカップの水面が揺れ動く。

 

「本気か正気かは問題じゃない。事実、世界にガストレアを神の使者だと見る宗教が存在している。彼らに言わせれば人類など地球に百害あって一利なしの寄生虫なのさ」

「『地球は皮膚を持っている。その皮膚はさまざまな病気も持っている。その病気の一つが人間である』ニーチェくんもこんなこと言ってたしね。まぁ、彼はこれ(ニヒリズム)を克服すべきものとしてたけど☆」

「おい」

「……えへ☆」

 アルは菫に睨まれてすごすごと首を引っ込める。

 

 一方で、腹立たしさが増してきたのは蓮太郎だ。

 

「そんなディープ・エコロジストが言いそうな理論で生きるのを諦めろと? ふざけんな。大体、人間がいらないというなら『呪われた子供たち』もいらねえってことじゃねえか。そんなの認められるか!」

「いいや、彼女たちは別で神の代理人だと。よかったな? 我々が滅びても彼女たちは生きていいそうだ。ガストレアに満ちた世界でどれほどの余命が残されているかは知らんが」

「狂信者の方がアタシたちの扱いがいいのはとんだ皮肉だよね☆」

 

 蓮太郎は我慢の限界だった。

 

「延珠は人間だッ! 人間でたくさんだ! 神だかなんだか知らねえが、余計な肩書を載せて『藍原延珠』を得体の知れないナニカに変えんな!」

 カップがカタン、と音を立てて倒れる。

 

 菫は我が意を得たりと笑みを深めた。

 

「そうだ、その通りだよ蓮太郎くん。彼女は彼女だ。私でもなければ君でもない。ただひとつの生命だ」

「は……」

 蓮太郎は悟った。嵌められた、と。そう思うと途端に気勢がそがれた。

「もう一度聞くぞ、里見くん。君が戦う理由はなんだ? 復讐か? 金か? 名声か?」

「俺は――――」

 

 脳裏によぎる、少女が笑っている顔。

 あの晴れやかな表情を曇らせたくない。

 

「俺は……ッ!」

 

 確かにいつも面倒や手間をかけさせてくれるので邪険にしてしまうところはある。

 けれど、その思いだけは真実だった。

 

 

 

「――――君たちは家族だろう」

 

 菫のひとことが決め手となり、蓮太郎は保護者としての責務を果たしに向かった。

 

 

 そんな少年の姿を見て何を思ったか。

 アルは椅子の背中越しに問いかける。

「先生ぇ先生ぇ、アタシたちも家族だよね? ね?」

「さて、どうだか」

「そこは嘘でも言ってほしかったな☆」

 

 

 

 

 

 

「意気揚々と出ていった蓮太郎くんだったが、即落ち2コマもびっくりなスピードで病院送りにされましたとさ」

 受話器を置いて菫は溜息を吐いた。

「後先考えない3人が集まると大変なことになるな」

 口調はともかく、その声音は心配の色が含まれていた。

「お見舞いどうする~?」

 片付けを終えて手術室(キッチン)から出てきたアルが問いかける。

「……私はやめとくよ」

 菫はぶっきらぼうに答えて椅子に深く腰を預けた。

 ええ~、とアルが声を漏らす。

「らしくないなぁ、先生ぇ。蓮太郎くんの手術を他人に取られて不貞腐れてるの?」

「馬鹿な。手術など結果さえ伴えば誰がやっても同じだよ」

「あは☆ 本気でそう考えてるの? 天才さんが?」

「…………」

 菫の目が細められる。

「今なら多分間に合うと思うよ~? 蓮太郎くんが運ばれるってことは結構重症だろうし☆」

 なんでお前がそんなことわかるんだ。

 言いかけた口を菫は閉じた。

 どうせ()()で戦わなかったのだろう。新人類創造計画の最高傑作である彼はちょっとやそっとの戦いで死にかけたりしないが、彼本人がその力を忌み嫌っているので現在まで十全に発揮されたのは片手の数ほど。真の意味で言えば皆無だ。

「本気で戦わない人、むかつくよね☆」

「……アルくん、今日の君はずいぶん不躾だな」

「先生ぇだってそう思うでしょ~?」

「……ともかく、手術が始まれば横から介入などできないんだ。私はここで待つよ」

「お可愛いこと。先生ぇって変な所で真面目だよね。少しは素直になった方がいいよ~? ほんとに死んでからじゃ遅いんだからさ☆」

「善処するよ」

「ほんとかなぁ……すっごい不満そうな顔してるよ? 私が一番蓮太郎くんの体を知り尽くしてるんだ、って」

「黙れ、今すぐ(バラ)してやろうか」

「図星だぁ☆ あ、ちょ、ちょっと待って? じょ、冗談だよぉ~!」

 菫が立ち上がるそぶりを見せれば、アルは慌てて合わせた両手を頬の横に運び――『ごめんね』のポーズで許しを乞うた。

「はぁ……」

 2度目の溜息。呆れて言葉もでない。

 この死体モドキと話しているとどうも最近、感情的になることが増えた気がした。

 

「それで、蓮太郎くんのことだけじゃなかったんでしょぉ? 電話☆」

 今しがた本気でビビってたはずが、すぐ別の話題を振る。

 こいつの心臓は鋼で出来ているのか?

 菫は否定の言葉を浮かべながらもそう思わずにいられない。

「キミは変な嗅覚だけ優れてるな」

「褒めても愛しか出ないよ☆」

「いらないから仕舞っておけ。まぁ、聖天子様からの出勤要請だよ。肩が凝りそうだ」

 実に退屈そうな話だった。

 東京エリアが滅びるかもしれないから()()()()の力を貸してほしい、なんて。今更そんな話をするなら最初から言えばいいものを。そうできないのは柵のせいだろうな。国家元首サマも大変そうだ。もっとも、言われたとして動いたかは微妙であるが。

 菫は溜息の代わりに足を組み替えた。

 

 一方のアルは面白いおもちゃを見つけたといわんばかりの笑顔を浮かべている。

「じゃあ先生ぇ。ひとつ頼み事があるんだけど、いいかなぁ~?」

「はぁ?」

 面倒そうだ、と言われる前から菫は予感した。

 

 

 

 

 

 

 諸所の用事を終えてアルが病院へ向かうと、夜半の待合室でただひとり、両手を合わせて祈るような恰好の少女を見つけた。

 窓から差し込む光が少女の横合いだけを照らし出す光景は、そこに神秘の存在を思わせる。

 少女はスカートを改造したお嬢様高校――美和女学院の制服を身に着けていた。

 アルは彼女を知っているが、彼女はアルを知らない。

 

「こんばんは☆」

「あなたは確か……」

「室戸菫の助手をしてるアルって言います、天童木更社長☆」

「ああ、先生の……天童木更よ。よろしく……お願いします?」

「ふふっ☆ 10歳児だからタメ口でいいよ」

「なら……よろしくね」

「うん☆」

 

 木更は祈りの姿勢を解き、握手を申し出た。

 アルは差し出された手を握り返した後、木更の隣に腰を下ろす。

 

「だいぶ疲れてるっぽいね」

「ああ……そう見えちゃうかしら」

「ロメロゾンビみたいな顔になってるよ☆」

「そこまで酷いの……?」

 

 冗談だよ、とアルが言えば木更は安心したように肩を落とした。

 しかし実際、木更の表情は芳しくない。

 目は虚ろで視線をどこに合わせているか分からず、口も閉じ切らないで半開きだ。両手はよく見れば爪がところどころボロボロになっていて、足さえ神経毒に侵されたように震えている。

 忘我とまではいかないが、自分を保っているとも言い難い。

 

 天童式抜刀術の免許皆伝の姿か? これが……?

 アルは知識とのすり合わせに混乱した。

 不安定になること自体は知っていても実物を見ると相当危うい、というのが感想だ。

 

「これは蓮太郎くんとくっつけないとやばたにえん」

 

「何か言ったかしら……?」

「ん~ん。なんでもないよ☆」

「そう……」

 声には反応する。しかしそれ以上は気力がないのだろう。眠気もあるだろうが。

 

「あ、そうだ。素直じゃない先生の代わりに差し入れ持ってきたんだ☆」

 はい、とバスケットを手渡した。中身は果物がいくつか入っている。

「ん……ありがとう。菫先生にはお世話になってるわ」

 マナー講師が聞いたら怒り出しそうなタイミングだが、木更は気にする余裕もないのか受け取った。

「どういたしまして~」

「…………」

「…………」

 

「ん~……」

 アルは沈黙も別に嫌いじゃないが、とりあえず話を振ってみることにする。

「蓮太郎くんは木更ちゃんが好きみたいだけど、木更ちゃんはどうなの~?」

「えっ?」

 おや。と思った。

 瞳に色が映る。

 チョイスは変だが、乗ってくれるらしい。

「いや~。この前、蓮太郎くんが木更ちゃんにどうしたら振り向いてもらえるのか先生ぇに相談してたんだよ~」

 平気で嘘をついた。

「わっ、わ、わ、わ!?」

「わ?」

「わたしは……お姉さんよ」

「ん?」

「私は、お姉さんなの」

 これは、語りだしそう。

 アルは聞き手に回ることにした。

 

「私はお姉さんだから……里見くんを守らなきゃ。なのに、里見くんはいつも強がって。私より弱いのに、前に出て、傷ついて……どうして私の前に立つの? おとうさんとおかあさんもやめろって言ってたじゃない。なんで、まだ立ち上がろうとするの? 私が言ったから? 私のせいなの? 私のせいで里見くんは死にかけたの? 死にかけてるの? 死に向かうの? 私が天童を殺したらやめてくれるの? お願いを聞いてくれるの? 早く殺せっていうの? 傷ついてほしくない……だから斬らなきゃならない? 私は誰から斬ればいい? 教えてよ里見くん。裏切らないでいてくれる? 私の言うこと聞いてよ。私から離れないで? 私が斬るまで待っててよ。どこにいくの? どこにいるの? そこにいるの? ねぇ、答えなさいよ

 

 木更は豹変した。

 瞳孔は限界まで開かれ、伸ばされた手にアルは両肩を押さえつけられる。

 ソファに背中から倒れ、肺から息が逃げた。

 

 見つめ合う両者。

 

「ごめんね、アタシは蓮太郎くんじゃないよ」

 

 聞きなれない声に正気を呼ばれ、木更は手を離した。

 

「あ……ごめんね、急に意味わからないこと……」

 初対面の相手を押し倒した羞恥心からか、木更は縮こまる。

 

「ううん、平気平気。蓮太郎くんが大事なんだねって微笑ましくなったよ☆」

「あはは……そっか……」

 

 藪をつつくとはこういうことか。アルは賢くなった。

 一拍の間。

 

「大丈夫、蓮太郎くんは帰ってくるよ」

「そう、かしら」

「うん。オトコノコって好きなオンナノコを残して死なないんだもの☆ 第一、木更ちゃんもそう信じてるんでしょ?」

「そうね。私は里見くんが……いなくなるなんて思えない。思いたくない」

「なら大丈夫だね☆」

「ん……」

 

 沈黙が訪れる。

 お互いに話すことは何もなかった。

 ただ、付きっぱなしの赤ランプを見つめるだけ。

 

 そしてどれくらいの時間が過ぎたのか。

 ついに集中治療室(ICU)のランプが消えた。

 手術が終わったのだ。

 

「先生、里見くんはっ!」

 飛び出した木更を安心させるよう、医者はゆっくり、笑顔で宣言した。

「大丈夫……成功だよ。最後の最後で彼は生きたいと願ってくれた」

「そう、ですか……ッ」

 (まなこ)から雫が滴り落ちる。

「お馬鹿……心配ばかりさせて」

 夢でも見てるのか、呑気に寝ている蓮太郎の手を握る。

 木更は確かな人の温もりを感じた。

 生きてる。

 そう実感できれば、ふと力が抜けた。

 

 感動的な再会を果たしたふたりを見つめる。

 これ以上は無粋かな。なんかこっちに来てるし。

 アルは判断した。

「それじゃ、蓮太郎くんも無事みたいだし。アタシは行くね~」

「え、あ、うん。ありがとう……ね」

「どういたしまして☆ 蓮太郎くんの目が覚めたら研究室に来るよう言っておいてね~」

 言うだけ言ってアルは病院の外に出た。

 

 

 しばし歩き、夜空を見上げる。

「なんで、蓮太郎くんの心配をしたんだろう」

 いびつな復興を遂げた東京の夜で星々を見つけるのは難しそうだった。

「蓮太郎くんが死んでも東京エリアが滅びるだけでしょ?」

 むしろ、心情としてはその方がいいまである。

 だが、何か違和感を拭えない。

「やだなぁ……存外地下室暮らしが気に入ってるの?」

 言ってから、あれ? と思う。

 何が嫌か、言語化できない。

 けれどこれも違う気がする。

「何か、忘れてる」

 断言した。

 数多の自分が積み重ねた脳から特定の何かをロードするのは意外と時間がかかる。

 なので、声に出した。

「この後は……ハレルヤくんの追跡作戦があるよね。それで蓮太郎くんが覚醒して倒す。ついでにスコーピオンくんも出てくるけど超電磁砲で倒す。東京は救われる。新たな英雄の誕生だ!」

 しっくりこない。

 何かが飛んだ。大事なことが途中に挟まってたはずだ。

 

 

 

――――あなたはどうして生きているんですか?

 

 

 

 脳裏に響く、火のない灰な(やなぎ)色の声。

 

「あは」

 

 瞬間。理解した。

 

「あはは」

 

「あはははは」

 

「あはははははは!」

 

 笑いが収まらない。

 深夜でよかった。昼間だったならば、好奇の目に晒されていただろう。だからなんだという話だが。

 どうして忘れていたのか、自分ですらわからない。

 まぁ、もはや理由なんてどうだっていい。

 

 ああ、もうそんなところまで来ちゃったんだ!

 止まれない。止まる必要もない。

 なら、好き勝手にしてもいいよね?

 

 

 

 





・天童木更
漫画版の泣きそうな顔がかわいい。つよい。けどメンタルボロボロ。体もボロボロ。

・スコーピオン
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