幼女に厳しい世界で幼女になった 作:室戸菫はかわいい
先にできた。
拘ると大体エタるから原作にある描写はカットしていく
とある社宅に、凹凸なコンビの姿があった。
「将監さん、まさか
「は? 悪ぃかよ」
「ダメです、下着くらいつけてください。その凶悪なモノがどれだけ周囲の視線を集めるか未だに理解できていないようですね」
「知るか。手ェ出す度胸もねぇクソ童貞どもに気ィつかってられっかよ」
「モラルの問題です。隣を歩く私が恥ずかしいんです。いいからつけてください」
「誰が――おい! 無理やり脱がせるんじゃねぇ、クソが!」
どうしてこんな会話が起きるのか。
時は遡る。
薄く瞼を開いた伊熊将監は突然の光に目を焼かれ、急速に意識を取り戻した。
いつものルーチンで肉体の確認を行う。
痛みはある。が、死ぬほどじゃない。
周囲を確認。
場所は室内。ベッドに寝かされている。自宅でも会社でもない――ならば病院か。
そう考えて窓から差し込む朝日を眺めていたとき、意識の外から声が届いた。
「おはよう、将監くん☆」
「なんだァ? テメェ……」
彼に声をかけてきたのはパイプ椅子に腰かける小さな少女。
知らないガキだ。胡散臭い笑みを浮かべている。
このタイプに碌な奴はいないと警戒を強める将監。
対して少女――アルは自然体だ。
「ああ、警戒しないでいいよ☆ といっても無理だろうけどね~」
そう、無理な話だ。将監は意識を取り戻してから一時たりとも気を抜いてない。なのに声を掛けられるまで気が付かないなど異常だ。それに、この感覚は一度味わっている。
故に敵意の有無に関わらず先手を取ろうとして――体が動かなかった。
「……ッ!?」
何度動かそうとしても反応がない。
それは鎖で縛り付けられているというよりも、水の中で自由が利かないものに近かった。
目線を上げればガキの瞳が赤く染まっている。
――こいつ、イニシエーターか!
将監の心拍数が高まる。
敵か味方かもわからないイニシエーターを前に動けないのは悪夢だ。筋力も速度も人間を凌駕する奴らに初動が遅れたら何されるかわかったものじゃない。しかも能力はこの様子だと肉体に干渉してきているのだろうか。ほぼ詰みだ。
事実、ガキが胸に手を伸ばしてきたのを止めることが出来ない。
そして。
ふにゅり。
「んっ……」
媚びるような女の声がした。
――なんだ? 今の声は……。
「よかった、感度は普通みたいだね☆ もしダメだったらと思うと不安だったんだぁ」
――コイツ、何を言っている……?
「急に触られてびっくりしちゃった? ごめんねぇ、立派なものだからつい☆」
「テメェ、ごちゃごちゃ何を……」
そう声に出して、はたと気づく。
なにかおかしい。俺の声はこんな感じだったか? 微妙に変じゃないか? それこそ、相棒のような。
嫌な予感がした。生物本来の危機感である。しかし逃れる術はない。
「ああ、ごめんね。まだ見てないんだっけ。ほら☆」
ただ睨むしかできない将監を前に、アルは懐から手鏡を取り出した。
そして
フェイススカーフをしていれば誤魔化せたかもしれないが、ここは病院。当然素顔を晒すわけで、そこには紛れもない女の顔があった。目は相変わらずの三白眼だが髪は伸びているし、口元だって潤みがある。自分が表情を変えれば鏡の女も表情を変えた。
何より意識を向けさせられたのは病衣を押し上げている胸元の膨らみ。
クソガキ改めエロガキがまた触って来る。
声はこらえたが、その感触までは誤魔化せず。
聴覚だけでなく視覚や触覚まで使われた将監は、いよいよ認めざるを得ない。
「んだよ、これは……」
困惑する将監へ、アルは愉快そうに告げた。
「改めておはよう、将監くん☆ いや――将監ちゃんかな?」
――俺が、女だと……?
伊熊将監は、性別が変わっていた。
「俺になにしやがった!」
叫ぶ将監だが、少女は表情を崩さない。
「何って、助けてあげただけだよ? 薬の副作用で女の子になっちゃったけど☆」
覚えてないの? と聞かれれば、将監にも心当たりがあった。
――仮面野郎を見つけて、夏世が遅ぇから奇襲をかけたんだったか。
記憶が開始から結末までをフラッシュバックする。
「思い出したみたいだね☆ そう、君は
「ッ! クソがッ!」
結局、インチキなんとかに手も足も出なかった。負けたのだ、2度も。
そして、他人に指摘されたのが余計に将監をイラつかせる。
それは怒りに身を任せて女になった動揺を誤魔化したい思いもあった。
「死に体の君をアタシが見つけて助けてあげたんだ☆ よかったね? 君は生きているよ。ハレルヤ☆」
「それ以上喋ったらぶっ殺してやるッ」
人を小馬鹿にしたような物言い。
将監は目の前の小五月蠅いガキを黙らせんと掴みかかろうとする。
しかし体は動かない。
アルは涼しげに笑った。
「も~、せっかくイケメンお姉さんになったんだから怒らないでよ☆」
「あァ!?」
「おお、こわ。仮にも命の恩人を脅かすなんて酷いなぁ」
「つか誰なんだよ、テメェは」
「ああ!」
そういえば自己紹介がまだだったね、と。
少女は名乗った。
「アタシはアル。夏世ちゃんの友人だよ☆」
「夏世、だと……?」
自身のイニシエーターの名が出てきて将監は少し冷静になった。
同時にこのガキがなぜここに来たかという疑問も浮かぶ。
真っ先に候補に挙がったのは殺された片割れの敵討ち。
だが、どうもそういう獣の気配はしない。
いや、それ以前に。
「夏世は生きてんのか?」
「生きてるよ☆」
「……そうか」
仕事道具が壊れていないようで将監は安堵した。
そもそもこの状態で
将監の態度が変わった所でアルは本題を切り出した。
「君にとって夏世ちゃんってどんな存在~?」
「テメェ、俺をおちょくってんのか?」
将監の表情が再び強張る。
それは直近で、自分に啖呵を切った
その様子を理解しつつ、アルは笑顔をやめない。
「いやいや、大真面目だよ~。だってさ、人間って道具にも感情移入するじゃない?」
――特に、自分を認めてくれる人ってさ。
「テメ、ッ……!」
人の懐に入り込んでくる気持ち悪さから反射的に右手を振り上げようとして――痛みで手を戻した。
いつの間にか体は動くようになっているが、そちらに気は回らない。
「で、実際どうなの?」
子供の気配が変わったからだ。
おもちゃの骨に病的な執着を見せる犬が、回収しようとしてきた飼い主に威嚇するようなものに。
「なんでンことを聞く」
「友達のことが気になるのは当然じゃないかな?」
――ほんとにそれだけかよ。
将監は直観的にそれが答えの半分だと判断した。もう半分はもっと気持ち悪いものだ。
将監は誰かに従うつもりはないが、さりとてやぶ蛇を突きたいとも思わない。
彼は確かに相棒を道具として扱っていたが、それでも自分が人間らしい感情まで無くしたとは思っていない。
社会からドロップアウトした自分を拾ってくれた社長には感謝しているし、夏世に対しても他の奪われた世代ほど嫌っていない。
だから彼なりに彼女のことは気遣っていた。なまじ考えが巡る奴だから気づかなくてもいい真実まで気づく。その度に落ち込んで距離を取る。それが何度も続くから将監は夏世を道具として扱ったし、夏世もそれに従った。
――俺たちは正しい。
――テメェが俺と夏世の何を知ってやがる。
口に出そうとした言葉を飲み込む。
――今、俺は何を思った?
これまでのスタンスからは出てこない言葉だった。
否。
出てきても黙殺してきた言葉だった。
「…………」
無意識に奥歯を噛む。
ガリ、と音がした。
その態度に満足したのか、アルは頷きを返す。
「ちゃんと夏世ちゃんのことを考えてたんだね☆」
とはいえ。
訳知り顔でペラペラしゃべる目の前のクソガキにイラつかないかと言えば違う。
――気に食わねぇ。
将監はアルを睨みつける。
それに怯えることもなく、
会話が終わる。
そんなタイミングを見計らったように、第三者が病室の扉を開いた。
「起きたようだな、将監」
「
三ケ島ロイヤルガーダーの代表取締役、三ケ島
そこで将監は自身に降りかかった異常を思い出した。
「三ケ島さん。俺はどうなってんだ、これは?」
エロガキよりも信頼できる三ケ島に問いかける将監。
三ケ島はアルに目配せをした後、将監に無情な事実を告げる。
「そこのお嬢さんから話は聞いただろう、将監。今の君は――女だ」
「なん……だと……」
「医者にも確認はとった。不可思議だが、染色体の組み合わせから変わっているらしい」
三ケ島はカバンから書類を取り出して将監に手渡すが、将監は何が書いてあるのかよくわからなかった。
とりあえずわかるのはひとつ。
「おい、ガキ。本当に俺に何しやがった」
暫定被疑者がムカつくということである。
「だから助けただけだってぇ。あ、成分表については企業秘密だよ☆」
「それでどうしてこうなるって言ってんだよバカガキ」
「副作用だって言ってるじゃん☆ それともあのまま死んでた方がよかった?」
「誰もンなこと言ってねぇだろうが。それより――」
「いい加減にしたまえ」
話が脱線しそうになったのを三ケ島が止める。
「けどよ三ケ島さん!」
「思うところがあるのはわかる。私だってそうだ。しかし、今彼女に何を言っても解決はしないし、不毛な争いで時間を無駄にするわけにもいかないだろう」
「ちっ……」
三ケ島はとにかくだ、と話をまとめる。
「将監、君は死んだ」
突然の宣告。将監は本当に心臓が止まった気がした。
「は…………?」
「ああ、いや。すまないな。戸籍上は、という意味だ。君は今生きているだろう」
「あ、ああ……そういうことかよ、三ケ島さん。驚かせがって……」
「これからの君は戸籍上『伊熊将監の妹』として扱われる。年齢差はひとつにしておいた。そしてこれは既に決定されたものであるから変更ができない。君のいないところで決めたことについては詫びよう」
将監は戸籍抄本を手渡された。
住所は特に変わらず社宅のままだが、氏名は「伊熊 ショーコ」となっている。
――安直すぎんだろ。
文句のひとつも浮かんだが、戸籍まで変わってしまったことで将監は本当に後に引けないのだと実感した。
気が重い。
「本当に女として暮らさなきゃいけねぇのか……」
「そうだ。そしてこのことは他言するな。いいな?」
「なんでだよ、こいつのやったことを許せっていうのか!?」
またも頭に血が上った将監にアルは言った。
「馬鹿だなぁ、将監くんは。性転換する蘇生薬とかどう考えても厄ネタじゃん☆ これ、外部に漏れたら君は良くて解剖、悪いと一生モルモットだよ?」
「は? んなこと」
ない、とは言い切れなかった。将監自身、人体実験がこの東京エリアでも行われていることくらいは知っている。そして奴らは珍しいものに寄って集ることも。
思えば、将監のいる病室は個室だ。言っては何だが、1000番台のプロモーターひとりにわざわざ個室を当てるというのは考えにくい。そして今まで近くの患者の声もしなければ看護師も医者も来ていない。突然ガキがひとり現れただけだ。ベッドにもナースコールはない。
どう考えてもおかしい。
――ならなおのこと俺に使ってんじゃねぇよ。
文句がまた増えた。
「それでだ、将監。君に聞きたいことがある」
三ケ島が神妙な顔をして問うてきた。
「このまま何も知らない一般市民として生活するか、民警を続けるか。どちらがいい?」
「将監くん、もといショーコちゃんの見た目は良いからね~。働き口は困らないと思うよ?」
自分の進退。なるほど、外見が変わったのならそういう話もあるか。
将監は考えた。
確かに、民警になったのはやらかして後がなくなったからだが、それだけで1000番台まで進んだわけでもない。
故に、その答えはひとつ。
「俺は……三ケ島さん、あんたについていくよ。民警はやめねぇ」
三ケ島はそうか、とだけ言った。
「まぁ、登録は済んじゃってるんだけどね☆ ペアは夏世ちゃんのままにしておくから、いろいろお世話して貰えばいいんじゃないかな~?」
「なっ、あんなガキにッ……!」
お世話がいわゆる女の子の生活の仕方だということに思い至って将監は声を荒げる。
しかしそれすら面白がった様子で、少女は手を振って去ってしまった。
病室に取り残されたふたり。
「三ケ島さん、アイツは一体……」
「神医、室戸菫の助手だそうだ。私から見れば……悪魔の子に見えるがね」
・三ケ島 影似
さらっとやばいことに巻き込まれた。
・伊熊 ショーコ
蘇生薬鬼つええ! このまま逆らうやつらみんなTSさせていこうぜ!
TS後の容姿についてはいろいろ派閥がある。
姫様みたいに可愛くなるのもいいが、筋肉はそのままいろいろデカくなるのも作者は好き