ありふれないクラスメイトと平行世界のクラスメイトのトータス入り   作:ユラシ仮面氏

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生徒達はイシュタルの案内で神山と呼ばれる教会総本山から下り、この国の王が住まう王城へと到着した。

王城は神山よりも兵士が多く勤めているのが確認される。警備兵の索敵範囲も計算した配置がされており、容易な突破等思い付かない布陣となっている。

(フーン。王城を陥落させて、民衆と王族を武力で無理矢理従わせるコースは無理っぽそうかな~?)

クーデターを無邪気な顔で計画していたが、警備の厚さと一人一人の熟練度も素人のハジメでも高いと察する。

(大人しく裏での暗躍ルートに方向は定めるべきだね。)

武力で叶わぬのなら知力で勝負をする。真っ向から和平を結ぶと言う考えはハジメには最初から無さそうだ。

王城に入ると、過去の偉人が来ていた鎧一式を飾っていたり歴代の王族の自画像が描かれた絵画が飾らている光景が見え出す。

外交時において、使者へ以下に自国が歴史溢れる国で名を轟かせた家臣や王が居たかを喧伝する目的で固めているのだろう。

ソレと同時に、自国内の家臣や王子・王女等に先祖達の様に統治すべしと教える為に設置されている様だ。

とはいえ、今ソレを眺めている生徒一同にとっては中世の展示物を置いている博物館に来た様な気持ちで其れ等を眺めるだけである。

「ンホーッ!この世界特有の絵の具かな!?昼間なのにどの角度から見ても、発光してキラキラしている様に見えてるよ!アソコの絵画はまた違った魅力があるし、ココは天国か!?」

絵を描く事をこよなく愛する鈴は絵画にご熱心な様子であった。直ぐ様、紐が通された板に原稿用紙を置いて、紐を両肩で背負って絵を描き始める。

「こんな異世界特有の素材を生かしたモノ作りストーリーを日本に出版して、地球文化で異世界の文化を塗り替える作家の目を覚まさせるのが鈴の使命なのだーっ!!」

また使命に目覚めた鈴は鼻息を荒くしながら最後尾をゆっくりと歩き、時に甲冑が置かれた場所を見たり、時に窓から見える外の風景からインスピレーションを得ながら描く。

「えぇ…?何だあの熱気…。」
「何でそんなに興奮しながら絵を描くの?」
「今、移動中だしコレから王様に会いに行くんだよ?分かってんのかな?」

強個性組とは違う別世界の生徒達からは、鈴の行動全てが余りにも異質過ぎて若干引いていた。

「アハハッ…鈴はもう放置してもらっても良いですか、イシュタル様?絵を描くのを邪魔する方が後々面倒な事になりますので。」

ハジメは苦笑いの表情を作りながらイシュタルに言うが、内心で別の考えを持つ。

(この世界で自由に動き回るには金が兎に角必要になってくる。この世界が、魔法で歪に発展した中世風の世界ならまだ漫画みたいな大衆向けの娯楽が多くない。)

現代ではアニメ、ゲーム、ドラマ等の娯楽ジャンルが充実しているが一昔前にはそんなのは存在していない。

ソコに市民にも手が届く娯楽となる漫画を出せば、得られる利益は地球とは大きく違う額になるのではないか?

その利益を今後の地球帰還への足しに出来ないかと考えるが、即刻その思考を打ち切る。

(駄目だな。教会側にとっては僕達は自分達の指示以外の不信な行動を取る人間じゃなく、操り人形の方が良い。そんな時に勝手な行動は取るべきではないね。)

民衆への影響を与える、という点で教会側が良い顔をするとは思えない。手駒は無駄な思考をせず、反感を持たない状態が望ましいのだ。

受け入れないデメリットが混じったアイディアを全て白紙にし、耳の穴から考え付いた記憶ごと放り出す。  

欠点が見つかれど、人間はどうしても自分が思い付いたアイディアに執着を見せてしまう。

改良をすれば大丈夫だ、欠点を知った上で立ち回れば上手く行くと言い訳を立ててしまう。

欠点を改善しても無理だと理解したから放棄したのに。

故に記憶ごと頭の中から不要なアイディアは追い出して、次の考えを思案する。

(…この世界特有の絵の具、か。)

ハジメとてクリエイターの端くれ。見た事も無い効果を持つ絵の具には興味をそそられるが本命は別である。

この世界特有のアイテムという点にハジメの意識は引き寄せられた。

(この世界の文明は中世レベルだったのにファンタジー文化が加わってイビツな進化をしている。)

例えば、重火器無しでも同じ威力かソレ以上の破壊力を魔力という機能により、そこらの一般人でも出せる点。

(ファンタジーには定番のミスリルみたいな鉱石や魔物からは普通では考えられない効果を持つ素材。)

魔物といった存在がもたらす素材による道具や武器は、実際に炎を刃先から出したり等の派手な物から耐久力を上げたり等の地味なのも多い。


(そんな素材から僕達の世界では最強の一角を誇る重火器を作れば?)


(銃の弾丸を自動でリロードさせる効果をエンチャントみたいな魔法で付与をして、当たれば爆発したり出血多量とかのバフを盛り込み、当たった敵には能力低下を付与するだけでも十分強い。)


よく、異世界に銃器を持ち込んでも撃った弾丸を異世界人の超人的な身体能力なら視界で捉えれるとの発言がある。

だからミリタリーで異世界を征服するなんて無駄だと語る者が何と多い事やら。しかしだ。

まず前提が間違っている。銃の弾丸をもっと高出力で加速させるには、銃身や効率の良くて良品質の火薬とソレに耐えれる弾丸が必要となる話だ。

超人的な身体能力を持つ者が戦闘を行うには、ソレに見合った鉱石で加工された武器でないと戦闘中に容易く破損してしまう。

では、この異世界の最高品質の鉱石は地球と同程度の硬質のみしか持ち合わせていないのか?

有り得ない。ソレこそ、地球産の銃の弾丸を避ける怪物達が平気で生息する魔境なのだ。

鉱石や、武器に付随する素材達は遥かに性能が違う。


(銃のパーツ一つ一つに耐久性アップの付与を込めさせ、銃の欠点だった発射音を遮断効果のある付与で掻き消す。)


ソレだけでこの世界のどんな武器にも優位性を取れる。

どんな強敵でも気配を察知されない遥か遠距離から狙撃銃で狙撃をし、弾切れになれば自動的な補充で速攻にリロードが終わり。

どんな大軍勢相手でも近付く間もなくマシンガンやミニガン等の一斉射撃で羽虫の如く蹴散らす。

(アハッ、良いね。問題は製造過程を見られて爺さん達に気付かれる可能性だけどコッチは心配いらない。だって、僕達しか知らない銃って言う存在の姿形を見て誰が気付けるって話だしね。)


そう。この世界の住人はまだ知らない。銃がどんな効果を持つのか、そもそも武器なのかも。

引き金を引けば瞬く間に拡散されるだろうが、では、その一発の前に必要な量を用意するだけで充分。


(大量生産をするには多分、相当な労力がいるだろうし僕が思案した最強の銃から幾つも機能を失くさないと行けないかもしれない。でも、)


でも、この世界のパワーバランスは崩壊する。全ての優位性や伝統、研鑽、達人達の苦悩さえ全て消し炭だ。


(使い勝手の良い駒がある日、自分達では制御しきれない力を持って逆転されたら?ソレも一日で?)

誰も予想しなかった勢いで濁流に呑まれ、打ち上げられた時にはもう全てが終わっていました。そう知った時、イシュタルの顔はどう歪むのか?

(あの最高の権力と経験値を持っていて、今まで負け知らずだった爺さんはどんな顔をする?絶望するか?驚愕するか?恐れるか?)


自分とは違い、本当に失敗をすれば命を失いかねない修羅場を何十回も潜ってきた老獪な格上を見下ろす。

想像するだけでも心臓の鼓動が早まり、頬が高揚して今にも荒い息を上げて興奮してしまいたくなる。

(駄目だ。今は冷静に、そして至って人畜無害な顔で接しなきゃ)

今、自分が居るのは敵地のど真ん中。落ち着かなければ異常を悟られてしまう。そうなれば計画はご破算だ。

だから先程までの気持ちを捨て、ゆっくりと元の人畜無害な仮面を被って何事も無いかの様に廊下を進む。

そして、計画をしっかりと理詰めで組み立てていく。


(付与みたいな効果を持つ魔法使いの人材を僕達が確保するには…まず教会の思想に染まってないってのが重要だけど、もっとも難関だな。)

日本は無宗教の人間が多いのでピンと来ないかもしれないが、アメリカ等の海外では国民の大多数が何かしらの宗教に所属しているし、その宗教の思想に大きな影響を受けている。

こんな中世の世界では、まだ宗教のパワーバランスが政治を上回っている事すら珍しくない。

そんな中で宗教よりもハジメの手を取ってくれる人間をイシュタル達の目を掻い潜りながら探すのはとても難しい。

(他にコネクションを持ってない状態なら、最も最適解なのは裏社会の住人を保釈を条件にやらせる事だろうけど…)

保釈や減刑、或いは囚人としての業務と称してやらせておくのも良いのかもしれない。だが、そうなると秘密裏にやるにせよ表立ってやるにせよこの世界の法と秩序の限りを尽くす国側にバレない筈がない。

(僕達ってこの世界を何も知らない赤ちゃんだからなー。コネもないのにそんな業務を囚人使ってやろうとしても出来る訳ないよねぇ。)

武器製造をするにしてもどうしても手詰まりが発生する。邪魔な問題だが後回しにすれば簡単にバレるのだから厄介だ。

(うーん。こういう問題はやっぱり現地をよく知って法律の抜け穴と実例を確認しない事には始まらないかぁ。)

ハジメは犯罪をする事に関して抵抗感は無い。最大限の保険とバレない対策、そして明るみになっても被害を回避出来る回避策を用意すれば目的の為なら血に染めようが粛々と進める。

だが、その対策も保険も何もかもが大前提として数ある法律の中のバグとも言える不備と人の感情と価値観を利用しなければ作戦を用意する事も出来ない。

(考えれる限り、全てが後手後手じゃーん。まっ、最初はそんな物か!)

確かに悪い事実ばかりだが、だからって勝手に最悪の可能性だけを模索して絶望するのも違うだろう。絶望するにはまだ早い。

(というか、いきなり異世界転移をされたのに五体満足でまだ奴隷階級に落ちてないってだけでもラッキーと思っとかなきゃ。おや?)

前向きに考えて行く状況こそ理想と考えたハジメは不安要素は端に置いて置こうとするのと同時に、先導していたイシュタルの足が停止した。

「勇者様、並びに使徒の皆様方。ご足労をお掛けしましたが、ご到着されました。」

イシュタルの声に導かれる様にして、思考に意識を割いていたハジメは改めて目の前を見る。

美術品と見間違う程までに緻密に彫られた鷲や熊等の肉食でありながらもポピュラーで獰猛さを表す代表格の動物達が絡み合った装飾品と、部屋の天井付近まで到達する巨大さで扉よりも門と表現すべきだろう。

「おぉ…スゲェ…!」
「コレって変に触ったら絶対に死罪みたいなのよね…?」

その光景の情報量の多さのあまり、視界を一部分に注視しなければその良さと美しさに気が付けないまでに情熱を注ぎ込まれたのだろう逸品。

「この門を越えた先に、我が国の王がお待ちしております故少々門を開けるのにお時間を頂戴致します。」

一人では生涯を捧げかねない芸術の域に達したその門をハジメは別の視点から覗き込む。

(この彫られたのもタダの見栄なのか、異世界産の謎技術で動かせたり特殊な効果が付与された物なのかな?)

自らの世界での常識を取っ払い、漫画やアニメで見る様な法則を無視した魔法やソレに関連する不思議な力を防衛に使っているのではないかと目の前の扉を冷静に、尚且つイシュタルが門を挟んで左右に陣取る近衛の騎士に開けさせる指示を下している間に観察する。

(後で爺さんの部下に不自然な行動を取ってたって思われるのと爺さんに僕の行動を見られる前のちょっとの時間に、隠されているのか無いのかを判断しなきゃ。)

その場でハジメは出来る限り間抜けっぽそうに見える様に「ほへー」と軽く目の前の光景に圧倒された振りと表情をしながら、先ずは彫刻と見間違う装飾品を覗き込む。

(この装飾品も、自動で敵対者を攻撃するゴーレムみたいな自立した防衛兵器の役割が熟せるのかもね。動物をモチーフにしているのは動かす動作の幅を広くするのと、攻撃性を持たせる為?)

彫刻の様に彫られている物はファンタジーにおいては定番のゴーレムの如く、動力源を電気以外で補い簡単な命令に忠実に動く異世界版のロボットなのではないかと仮説を立てる。

もしこの仮説が正しければ、動物を象っているのも過去の国としての歴史を表した物では無く、動く場合に手足を自由自在に動かすのに最適化された結果とも見れる。

となればこの再現度の高い装飾品は美しくするのが目的では無く、生物としての動きを素早くして侵入者を無力化させるのは或いは殺害するのが狙いなのか。

(ソレか、動くんじゃなくて実はこの装飾品の動物の口から侵入者を検知したら自動で出る魔法が込められてるとか?)

または単なる装飾品だと誤魔化して、侵入者が門に触れたら魔法をマーライオンが口から出す水の様に発射するのかもしれない。

(だとするとこの地点に護衛が必要かとの疑問も生まれる訳だけど…。)

イシュタルの指示に従い、門を二人掛かりで開く近衛の存在がもしハジメの仮説が正しいとするならば必要なのかと疑問を抱く存在となる。ワザワザ王とのアクセス場所を守護する役割を持っているのだから、一般兵が束になっても敵わない手練れなのだろう。 

そんな兵士を二人も配備する理由があるのだろうか。コストと城の警備をするからには侵入者が出た場合の王の護衛として、最も近しい位置に配置しているだけなのか。

(僕の仮説がタダの妄想なのか、魔人族との戦時下だから備えられているのか…真偽は憶測の域を飛び出せない今じゃ解決には行きそうにもないね。)

ハジメの考えが間違いで門の装飾品にそんな効果がないのか。その答えは結局、今観察している時点手は出て来てはくれないのだから仕方が無い。

もし仮に仮説が正しかったとしても、不意打ち目的で侵入者の撃退をするのが製作者と依頼主の目的なのだろうから知っているのは限られているだろうし、少なくとも今は真実を知るのなんて確実に無理だ。

(今知るのが無理なのなら、また観察を続けて別の仮説を立てて悩みを増やしていきますかー。)

ならば、別の角度から新しい疑問と仮説立てになりそうな物を見つけて試行錯誤しよう。一分一秒でも無駄にしない為に先程まで考えていた装飾品に対しての疑問を一切合切消し去る。

(さてお次は…このデカい門の材質は?見た所、鉄や他の素材との混ぜ物でもなさそうだけど。)
 
ハジメは軽く鼻を引くつかせて門周辺の匂いを嗅ぐが刺激する様な鉱物特有の匂いもせず、かといって無味無臭ではない。花の様に仄かでありながら化粧品の様に嗅げば直ぐに分かる物ではない。

(一度加工された鉱物から花の匂いなんて聞いた事も無い…イヤ、僕が無知なだけで地球にもあったのかな?)

ハジメの知識に該当しないが、別に世の中に出ている情報全てを網羅している訳じゃない。例え百年生き抜こうがそんなのは誰にでも不可能だろう。

(まぁソコは置いておくとして…少なくとも世間一般では知らない加工か、それとも異世界産の鉱物で固められてるのかな?)

もし異世界産だとすれば、未知の技術たる魔法やソレに準じる兵器への耐性が高い鉱物が使用されている可能性が高い。しかもこの様な奥を守る場に配置されている扉にであれば、その耐性面も強度具合も相当高価い。

(コレから魔人族との小競り合いをするんだったら、知っておいて損はないね。まぁ、要求したら絶対に足元見られるだろうから向こう側が寄越す位の根回しはしとかなきゃだけど。)

ゆっくりと戦争は進捗されない。常に人の死体の山が築き上げられてから良いニュースも悪いニュースも駆け巡る物だ。そんな中で必要だからとハジメが魔法への耐性が高い鉱石を要求すれば当然通るだろう。

だが、渡す前に様々な条件や対価を頂戴しようとするだろうが。幾ら使徒様だと持ち上げられようがハジメが相手をするのは大方、信仰を抱きながらも神の為なら何でもする狂信者たるイシュタルだ。

小さく、しかし確実に有益な富や知識をもたらす類の物をせしめようと目論んで来るだろう。

逆にイシュタル以外と交渉しようとしても最終的な権力を持っているのはイシュタル。

そのイシュタルの指示を仰ごうとする者が普通の反応だろう。

(うーむ、非合法の商人とかなら話しは別ろうけど…。)

表の世界では禁止されている麻薬や武器密輸の様な、通常時には使用されない物品の売買を生業にする業者も探せば出てくるだろう。

悲しい話、どの時代どの国にもそんな手の連中は存在するし撲滅なんて不可能だろう。

だからこそ、このトータスでも探せばそんな商人や裏の人間が集う場所も見つかるかもしれない。

(まぁ、逆にそんな所にアンテナ張ってないとか有り得ないよねぇ…。)

そんな非合法の商人もソコに出入りする住人を敢えて長期間、犯罪行為をしていようと摘発せずに泳がすだろうとハジメは予想している。

一人や二人摘発しようが、後釜を狙ったり利益に目を眩ませた第2第3の者が現れるだけ。そんないたちごっこは不毛としか言えない。 

ならば、更なる裏社会や危険物の情報収集の為に残しておいて不要と判断してから摘発するのみ。

(あの爺さんのなら、アンテナ張る料金として取られる一般人への被害とかも全部了承する。) 

だが無論、その摘発を長期間も見逃す代わりに罪無き市民に被害が及び、食い物にされるケースが増加するがイシュタルなら簡単に優先度を付けて見捨てるだろう。

大のために小を切り捨てるのではなく、信仰する神の為に大すら平気で切り捨てられるあの老獪な男の事だ。

きっと、そんな切り捨てにより死んだ者の家族が棺桶の傍で泣いていようとイシュタルは興味を持たないだろう。

あくまで心配や心の支えになる様な言葉を取り繕って新たなる信者にでもしようとしない限り、子供が泣き叫んでいようと見向きもしない。

だが、そう考えるとハジメは困った事になる。

(アレも駄目コレも駄目ってなるとぶっちゃけ、そう考えると爺さんの思惑から100%逃げるのって難しくなるよねー。)

並べ立てれば何ともどん詰まりを感じる。魔人族との戦闘を想定するにしても、必ず教会勢力からの影響力からは逃げられない。

(あの爺さんに付け入る隙を与えるかもしれないって考えると、こういう有効かもしれない鉱物は…っと、そろそろ門が開くか。)



ニコッ!(暗黒笑み)

ハジメが考察の海に浸かってから10秒が経とうかとする時、近衛が門を開き始めた。とはいえ、開門にはまたココから一分近くは掛かる重量を誇る重さである為、門の動き自体は遅い。

 

ハジメは門を見て一度後ろを振り返り、我が愛すべき強個性(バカ)共を見渡してからイシュタルに近付く。

 

「すみませんイシュタル様。」

「以下がなさいましたかなハジメ様?」

 

にこやかな顔を作ってきたハジメにヘイyou!何か企んでない?とイシュタルは察するが、まずは出方を伺わないと何も分からないので同じく作った笑顔で対応する。

 

「差し出がましいのは分かっているんですが、王様に会う人数を厳選してもよろしいですか?」

「ほう?何故ですかな。」

 

既に王へ対面する直前まで来てのハジメの発言は、イシュタルへまた仕掛けて来たのかと本人は勘繰る。

 

(フム…?王への謁見に粗相をしてはいけないという中での、残り時間の猶予の無さから来る冷静を欠いた判断を期待してとしては少々違和感がありますな。では南雲ハジメは何を狙って?)

 

イシュタルはハジメの思惑を読み取ろうと瞼を閉じ、視界が暗闇に変わる瞬間に目で見ていた情報のリソースを全て脳のフル回転に注ぐ。

 

傍から見ればイシュタルのその姿はハジメの突然の発言に悩んでいる様にしか見えないので、長時間その姿勢を維持していても誰にも違和感を持たれない。

 

そんな最中、生徒の一人が怒り心頭の様子でハジメに詰め寄る。

 

「おい!王様に会う手前で何で今更言うんだ!」

 

光輝に似た感情豊かな人物【天之河として今後表記】は特に至極真っ当な事を述べるので、常識人を装わないといけない立場のハジメは建前の説明を求められるだろう。

 

(ウム、有り難き事に使徒様からの質問が南雲ハジメに対して出てきたのぅ。コレを餌に建前部分を突付いて、ある程度の意図を可視化させるとするべきですな。)

 

「最初にイシュタルさんが一緒に行くかを聞かれた時にそうすれば良かっただろう!?今更そんな発言をして迷惑になると思わないのか!」

 

熱血漢の様な熱量を帯びた声だが発言内容には矛盾も間違いも無く、他人を気遣った上での怒りの見せ方を天之河はしているので周りからも目くじらを立てられない。

 

「すみませぬが、私も今声を上げてくれた使徒様に同意です。一体、どうなされましたか?」

 

故に、ハジメが不誠実な対応や天之河の納得や共感を得られない解答は絶対に避けるのがベスト。そんな中にイシュタルも取り掛かる事でハジメ包囲網を構築しようと動く。

 

だが、ハジメは心の中で張った罠にイシュタルを追い込めれた事にほくそ笑む。

 

「いえ、すみませんイシュタル様。愛子先生…先程テーブルの破壊をしてしまった方に関しての不安でなんですよ。」

「ほう…我等が神を否定したあの女性が…っっ!?」

 

ハジメがチワワの様な愛嬌がありながら何処か可哀想だと思ってしまう雰囲気を作りながら謝罪をし、何故かの理由をまず最初に語った。

 

そして、自ずと神への信仰心を持つエヒトにとっては許されざる態度と隠しきれぬ嫌悪と憎悪の両方が発露したが言葉の途中で口を噤んでしまう。  

 

ソレはハジメが誘発させた感情の吐露であり、イシュタルに不利になるから言葉を途絶えさせたのだが、もう遅い。ニンマリと一瞬、裂けそうな程に広げられた口先を浮かべたハジメはその隙を逃さずに畳み掛ける。

 

「いやー、イシュタル様がソコまで不信感を抱く人をこの国のトップである王様に合わせるのは不敬以外の何物でも無いですのに、遅れて申し訳御座いません!」

「…ホッホッホッ。確かに、その様でありますな。」

 

周りの兵士や給仕にも、或いは開きかけた扉の向こう側に居る王本人にも聴こえる様に話すハジメに対し、静止させるべきかと思案したイシュタルだったが、直ぐに諦めた。

 

「あの愚か者が下がるのは僥倖だな…。」

「我等が神への侮辱…本来なら死を持って償わせたいというのに…。」

 

護衛として付き従っていた兵士達はヘルム越しでも分かる程、最後尾で借りた猫の様に大人しくしていた愛子への憎悪を滾らせていた。

 

一兵士としては恥晒しも良い態度だが、神への信仰心の高さ有の発言なのもあって注意する者は居らずにむしろ同調している有様。本来なら有り得ない態度すら、信仰する神に関連するだけで全て正当化されるのだから、一種の神による独裁国家の従順なる下僕とすら言えよう。

 

「王へ会わせようだなんて…。」

「今直ぐにでも隔離するべきよ…あの女は。」

 

ヒソヒソと話し合っているつもりの給仕達も、神を冒涜した態度も発言も許されずに罰するべきだ!とでも主張した気な雰囲気を醸し出している。ココから逆に、イシュタルが強引にでも無理を突き通して愛子を王へと謁見させればイシュタルへの不信感が芽生えるだろう。

 

(既に南雲ハジメの意見が通るのが当たり前の雰囲気が構築されておる…コレは、下手に反発せずに流されるべきであるが、私の思惑もこの様子じゃと勘繰られているな。)

 

ハジメの意見が事実上、神の使徒以外の者達の総意に成りつつある現状に見切りを付けると同時、イシュタル自身の考えも露見していると見ていた。

 

対するハジメも、微笑む表情の裏ではほくそ笑みながらイシュタルに対して優越感を覚えていたのだ。

 

(どうせこの狸爺さんの事だから、愛子先生やその他のバカ共の暴走で心象悪くした所を爺さんが諌める姿を僕達のソックリに印象付けさせておきたかったんだろうねぇ。) 

 

ハジメの制御の効かぬが故に愛すべき馬鹿とも呼べる面々を思い浮かべながら、イシュタルは王の御前で粗相をすると確信付いていたのだろう。その予測は正しく、例えお偉いさんの前でも自重の二文字を生徒達は覚える気は微塵も無い。

 

その姿を、ハジメ達と同じ姿をしているが別者の生徒達が見ればどう思うだろう?懲りずに自分達と同じ立場なのに肩みの狭い思いをさせる行動を取り、ヘラヘラと笑うのを止めるイシュタル。

 

まず間違いなく、この世界に連れてこられてパニックになっている生徒達の心情を良くするだろう。そして、同時に強個性組との対立の誘発もさせる。

 

(さっきの愛子先生が取った選択に巻き込まれるのはソックリさん連中は嫌がる筈。その時点で僕達に対してプラスの感情を持っているのは少ないだろうね。)

 

大前提として、最初の段階でハジメ達は間違った選択を取った事で良い目で見られていなかったのだ。他人が本気で憎悪する様子を見せられ、自分達は悪く無いのに同じ目で見られるかもしれないとなれば、誰だって発端の原因への心象は悪くなる一方だ。

 

(ソコで追い打ちを掛ける様に、更に僕達の内、誰かが暴走すればソックリさんからの嫌悪の目が憎悪に変わっちゃう。その場面で颯爽と問題を解決しようと爺さんは動いていた訳だ。)

 

面倒を掛ける場面で何も行動を取らない者(実際は取らせる前に解決されるが正しいが)と、堂々と問題解決に動く者。そうする事でファーストコンタクトの負の印象を消し去るだけでなく、強個性組への悪感情を残させようと盤面コントロールに移ろうとしていた。

 

(僕からすれば単なるマッチポンプだけどそんなの、一時的にしろ長期的にしろ思われない期間が出来れば、その期間に印象アップを積み重ねれば良いだけのお話だからねー。)

 

だからイシュタルはワザと、問題を犯した愛子の除外も言わずに王の御前へと参ろうとした。連れてきた者の責任なんて、王の口を噤ませるだけで解決するのだから安い被害だ。

 

ソレよりも神の使徒との友好関係を築くのが先決。故の行動だったのはハジメには筒抜けだったが。

 

(いやー。最初に爺さんに全員で行く話された時に断っても、また迷惑を掛けてるって目でソックリさん達に見られるからタイミング計ってたけど…どうやら爺さんも神様関係が地雷だとやらかすんだね!)

 

弱点等皆無だと思っていた相手の隙を付いた上で一歩リードした感覚で脳内麻薬が生成され、大量に放出される快楽物質に浸りながらハジメはにこやかに言う。

 

「じゃあ、決まりましたねイシュタル様!愛子先生を含む一部メンバーは除外させていただきますが、数分で終わるのでご安心下さい。」

「ホッホッホ、ソレならば陛下にお姿を拝見させるするまでのロスも少なくなるのでご安心ですな。」

 

笑いながらも「余計な事はするなよ?」とイシュタルに手を差し出しながら目線で凄むハジメと、そのお手並み次第ですな?と掌で握り返すイシュタルだったが表面上は仲良く握手している様にしか見えない。

 

だがその瞳には、何処までも相手を一編たりとも見放さずに捉え続ける無機質な目玉と悪意と悪戯心を秘めた目が映り合い続けていた。

 

(本っ当にあの二人の間には挟まれたくないわね。何処の物好きが、あんなに殺意も憎悪も純粋な圧に変換して睨み合う間に割り込みたいのよ。)

 

一見、笑っている様にしか見えない両者だが、状況を理解する雫には虎同士が睨み合っている様な錯覚を受けるだろう程の圧を漂わせていた。

 

誰だって睨み合う百獣の王と熊が相対する場面に割り込みたくないだろう。




長年の未投稿申し訳ございません!
仕事を初めて、小説投稿を放置しておりましたが2年目ともなりある程度は余裕を持ててきました。なので、今後もゆっくりとではありますが投稿致しますのでどうかよろしくお願いします!

※ポーツマス様、感想で24年内に投稿を目指すと発言しておきながら遅れて申し訳御座いません!
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