ありふれないクラスメイトと平行世界のクラスメイトのトータス入り 作:ユラシ仮面氏
快晴の朝。時刻は朝の6時という、起きている人も居れば寝ている人もいる微妙な時間帯。
そんな朝から職務を全うしている者は多い。今日お出しする献立を脳裏に焼き付けながら料理に使う包丁や、料理を乗せる皿を洗う所から始める料理人等が、最たる例だろう。
特に王宮務めの料理人は何百人と居る城務めの人間の朝食を、最高級の美味しさと栄養を考えて用意しなければならないのだから毎日が正に戦場と呼ぶべき有様だった。
「料理長!野菜類が全然足りないです!」
「なら今から付近の八百屋にダッシュで行って、必要分を買ってきなさい!コレは最重要任務よ!」
「神よ…!何故こんな試練をお与えになるのですか!?」
「フフッ…後何百回切れば開放されるの?もう良いよね、ゴールしても?許してくれるよね?」
「肉類の搬入完了です!えっ、まだ足りないんですか!?」
「早くしないと場内の連中が起きちまう…!急いで盛り付けを終わらせな野郎共!!」
「今から50人分の料理なんて、どうやっても間に合わないだろ!!上は何を考えているんだ!?」
「他国からの使者が来るんだから仕方ないだろが!泣き言言ってる暇あるんだったら、お玉を動かせ!!」
「もう…お家帰りたい…ママ、パパ助けて…包丁を見るだけで震えが止まらないよ…」
「…私…ブラックな王宮務めの料理人なんだけど、もう駄目かもしれない…」
一部の料理人は既に極度の仕事で心が折れる
どうやら今日は、元々修羅場になる数の料理を作っている最中に追加オーダーが来たらしく、誰も彼もがその対応に追われていた。
そんな新米から徐々に消えて(過労で倒れて)行く戦場で、二人の少女が気合のタスキを巻きながら愛用の包丁片手に参戦した。
「足りない分の食材の購入と搬入済ませました!後2分で、他のメンバーが食材を持ってきます!」
「もし不足分あったら今の内に言って!高ステータスだから早めに目的地に付く買い出しメンバーが、今回特別に参戦してくれたわよ!」
この国トータスに召喚された使徒である園部と優花の登場に、殺気立っていた厨房はシンっと静まり返った。だがその静かな空気も数秒後には爆発的な圧倒的感謝!と、コレでまだ戦える!という空気に変動した。
召喚された一日目や二日目こそ、料理人達も使徒様に手伝ってもらうのは…と否定的だったが今現在では必要不可欠な人材だと認識されている。
「やったァァァ!!コレで料理が完成する!」
「ゆっ夢か幻でも見てるんじゃないか俺は?」
「おおエヒト神よ!我等をお救い下さり、感謝の極みです!!コレで安心して、次の昼食の用意が出来る!」
「ガハハッ!勝ったな、風呂入ってくる!」
「何作業中に風呂行こうとしてるのよ!大人しく肉を切りなさい!」
「嫌だぁ!俺はこの厨房から逃げて、風呂場でユックリ湯船に浸かるんだァァァァ!!」
「駄目です」
「園部様と優花様バンザァァァイ!!!貴方様方は紛う事なき女神様です!!我等料理人の女神様なのですぅぅぅ!!!」
何やら一部の料理人は園部と優花を女神と仰ぎ、深い感謝の念と共に祈りのポーズを取られるのは両人共に流石に気恥ずかしいと感じている。
しかしその二人は知らない。後に食の女神様として信仰される事を。そして、その事実に悶え恥ずかしくなる自分達の未来を、まだ彼女達は知らない。
「感謝する暇があるなら手を動かして!食材が来ても、料理が完成しなけりゃ結局一緒なのよ!全員気張りなさい!」
「皆さん、辛いでしょうけどこの作業が終われば休憩が出来るんです!諦めずに頑張りましょう!」
その言葉に全員が気合を入れ直し、料理長が園部と優花両名を次の料理長に指名したいと思わせる周りへの叱咤力。しかも、飴と鞭をちゃんと使いこなしているのだから、現場指揮は完璧。
飴だけだったり鞭だけだったりで、軋轢を生む心配も無し。更に料理の腕も完璧と来たら、ソレはもうプロと呼んで差し支えない。ソレが強個性組の優花と並行組の園部がトータスで行う日常だった。
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朝の戦争を乗り越え、作り終えた料理を手に取って食べてもらっている時間を祝福の時間と捉える料理人は意外に多い。
自分の作った機械を使用している人を思わず注目してしまう職人や販売員の様に、料理人は食べている者にプレッシャーを与えない程度にチラ見をする。
食べていてもその人の表情は変わらないだろ?と思われがちだが、微細に変化するのだ。ソレが料理をした者に満足感や、次はこうするべきだったという反省点を産ませて次の料理が変化するのだ。
そんな光景を幼き日から知っていた優花は、「その私が今同じ立場に居るってんだから感慨深いわね…」と内心で黄昏れる。
ソレは優花の両親が経営する店に対するホームシックか、朝食を完成させた達成感による物なのかは判別しづらいが。
因みに園部は、疲れを少しでも取る為に仮眠を取りに自室に戻った。
今日はこの後にも訓練が控えているのだから、その判断は優花も間違いないと考えている。とはいえ、優花にはこの後の仕事が残っている。
「ファ〜、朝から駆り出されて眠いよぉ…」
「ホラ、頑張って目を開けなさいよ。この後訓練があるんだし、その目をシャキッとさせときなさい」
朝の食材買い出しの為に普段よりも早起きした生徒達が寝不足を訴えるが、雫にこの後の訓練もあるのだから早く目を冷ます様に、と諭されていた。
「さぁて、皆には別メニューを用意しなきゃ…!」
雫達の登場で満足感に浸っていた優花は忘れない内に、故郷である地球の料理とよく味に似た食材で持ってあしらった和食定食モドキと洋食定食モドキを提出しようと動く。
「そんな皆の報酬として用意されたのが和食と洋食よ〜!存分に堪能して頂戴!」
早速その単語に釣られた生徒達が眠気も知った事か!とばかりに食堂のカウンターまで行き、優花の言った和食と洋食をその目で見た。
「コッ、コレは紛う事無きハンバーグ定食!?」
「嘘だろ?コレって味噌汁じゃないか!」
「焼きおにぎりもあるよ!!」
予め生徒達に見られる事を想定して、優花がカウンター越しからでも覗ける位置に料理の一部を配置したのだ。
地球人の生徒達でもひと目見て分かる料理の見た目。その見た目の為だけにも、試行錯誤をして何度も失敗作を生み続けていたが、今日その苦労が報われたのだ。
出来上がった料理の姿に全員が釘付けとなり、驚きと喜びの感情がひしめく顔をしている。
(フフン!頑張った甲斐のある反応してくれるじゃない)
既に生徒達はメニュー表に目を奪われて、隣の生徒や仲の良い友人と何を頼むかを談笑していた。
(他の皆がこの料理を見た時の反応を知りたい。特に、普段は腹黒いから表情が掴みづらいハジメの驚き顔を見たいし、ドMゴキブリの性癖以外で喜ぶ顔を見てみたい!)
ソレは一重に、頑張ったご褒美を求める心の声だった。
普段の姿からは想像が付きにくい喜びと驚きの表情を見せてもらえると考えただけで心が躍るし、その味を確かめて本家との完成度に驚く顔も残っている。
そして、何よりもその味を楽しんでくれる表情も見れるのだから、今日程の喜びは当分来ないだろうと。
(だからこそ、存分に楽しむのが筋ってもんでしょう)
生徒の反応に純粋に喜ぶ優花の微笑みを見た料理人達は老若男女関係無く魅了され、「女神様…」「天使様…」と思わず拝んでいたのを食事を終えて、皿を戻しに来た兵士や給仕が目撃したらしい。
「さぁ!今回は朝早くから手伝ってくれたんだし、存分に食べていって頂戴!」
優花の言葉に、メニュー表から何を食べるかを思案していた生徒の一人が声を上げる。
「あっ俺、味噌汁と白飯で!」
「あいよっ!味噌汁とご飯一つずつね!」
白飯の原材料は比較的簡単に見つかり、ウルという今現在優花達が暮らしているハイリヒ王国内のとある町で売られていた品だった。
味噌汁は、白飯の原料とハルツィナ樹海で自生する大豆の代替に使った食材(正式名称はハルツィナビーンズというらしい)を発酵させて完成させた品だ。
「じゃあ、私は鯖味噌とご飯を!」
「あいよ鯖味噌とご飯一つずつね!」
鯖は最初こそその存在は生態系が違い過ぎるこのトータスでは存在しないと思っていたが、亜人族の中でも自治権を認められた海人族で構成されたエリセンという町で収穫される魚の中で鯖があったのだ。
正式名称はラングロフィッシュと呼ぶ。トータスではよく好んで食べられているらしい。その魚を原料にして味噌を染み込ませた品だ。
「コッチも頼む!」
「アタシは_」
ココからが正念場で、全員故郷の味を食べられる事実に興奮して順番関係なく注文をしてしまう。其れ等を聞き分けてから記憶し、更に料理をしなければならないのだから優花はとても大変なのだ。
「はーい!焼きおにぎりと野菜スープ一つずつね!」
だが、優花はそんな状況でも笑顔を忘れずに接客を熟して料理を作る。本心からその環境を楽しんで、今も彼女は包丁を動かす手を止めない。
遠藤 浩介 二つ名:影薄コスプレイヤー 見た目変更点:片目に眼帯
どれだけ努力をして、勉強やテストを頑張ろうと親兄弟にさえ気付いて貰えずにいる生活で「何をしても見てくれない」と心折られて引き籠もっていた。
そんな折に、ステルスアクションという隠れるのを個性にしたゲームに引き込まれた。ソコで自分の影の薄さをマイナスじゃなく、プラスに捉えて生きていこうと決意。
今では某スネークの傭兵をリスペクトした格好で、折り畳んだダンボール片手に進行する謎な存在になっている。
好きな事:段ボール箱の中に居る事 ○島監督の作品を遊ぶ事