ありふれないクラスメイトと平行世界のクラスメイトのトータス入り   作:ユラシ仮面氏

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王国の叡智が詰められた書物で多数を占める書庫では、額どころか全身から汗を出しながらも木製の脚立を使って、書物を棚に仕舞っているハジメの姿があった。

(ちっ、畜生…何が悲しくて、主犯の真央じゃなくて僕が全部直さないといけないんだー!?理不尽だー!!)

今回の件の元凶たる書物盗難を起こした真央に対して、時間を無駄に浪費させられた事。

大量の疲労が伴う運搬をさせられた事で怒りの感情を爆発させながら、何処ぞのツンツン髪の高校生の様な台詞を吐く。


(持ち運んでる時だって、何度も肩が壊れるじゃないかって心配になってたんだぞ!)

普段から、そんなに重たい物を背負ったりする経験が少ないのだ、ハジメは。

(きそうな位には重量運んでんだぞ、コチトラ!)

四十冊は2キロのマラソンを走った時と同程度の疲労感と、筋肉痛を発生させていた。

本来なら、ハジメの同級生の中でも筋力が凄まじい生徒からの協力も借りたい所だった。尚、

「良いぞ?その代わり、是非罵倒を哀れな俺に下さい!!」

ネットリとした目で筋肉モリモリの重吾に関してはもう予想通りだった。

「くたばれ害虫め!」

一縷の望みに賭けたハジメは勢いで罵倒をしてしまい、恍惚な表情で喘いでいる重吾を尻目に諦めて逃げた。

だが、ハジメは諦めなかった!

その足でシャドーボクシングを繰り返して大量の汗をかいていた龍太郎にも声を掛けた所。

「わりぃ。俺、ここ二日はトレーニングを毎日積んでたから流石に休ませねぇとだから無理だ。」

申し訳なさそうだが、絶対に譲れないラインとして語る龍太郎曰く。

何日間も連続して過酷な重労働を筋肉に強いるのは使うのは筋肉への虐待だと龍太郎は考えているのだ。

「うん…それなら仕方ないよね。」

ハジメとしても、無理強いをするのは感情的に嫌だと感じていたので大人しく引き下がるしかなかった。

と、運悪く全員が何かしらの予定で立て込んでいたので、ハジメは断念して一人で運んでいたのだ。

なので、負担が増えた事でハジメの中での真央への恨みゲージもMAXに差し迫っていた。

(グゥ…今日に限って皆予定入るとか…僕は何でこうもアンラッキーなんだ…)

ハジメは心の中で涙を流している。

だが、日本に居た頃には自分の同級生・親・知人に実害を出した人間が居れば割かし人間の心を失くしている。

グレー寄りの方法をフル動員した容赦の無い制裁を加える。


その人間の心がポックリ折れた所で、ハジメが自分の犯行だと真実を暴露!

無論、自分の手の内は明かさずだが、全ての元凶がハジメであると教えれば大抵の相手は激高する。

罵詈雑言を浴びせた上で拳が飛んでくる事だって珍しくない。

そんな時に、唯一そういった事を知らされている雫が本場の調教師よろしく鞭や色々な道具を使って捕縛!

そのまま雫の家にドナドナ誘拐されて、徹底的に反抗心を潰していく。

しかし、雫の調教も少し日数が掛かるので、一日程度では終わらない。

そうなれば親か知人が不審がって警察に通報してしまうだろうから一先ず返すのだが。

そうなれば警察に伝えられるのは必須。

なので、事実を暴露する時に懐に忍ばせていた録音機や小型カメラの映像で撮れた映像を見せる。

罵詈雑言か拳を振るう所をバッチリ録画してある。

【ハジメが暴露するシーンは当然、映像には入ってないが】

学校か或いは職場、もしくは親に伝えた上でSNSに載せて永遠にネットの晒し者にする。

と、そう脅せば大抵の人間は玉砕する。

もし、ソレでも強気の姿勢を崩さないのなら罵詈雑言をした上で、だ。

暴行を行おうとした事を警察にチクって前科を付けると脅せば、どんな強気の者でも意気消沈してしまう。

ソコからは雫の本分だがまずはプライドが保てない様に。

人前では言えない調教法で粉砕して如何に自分が矮小でゴミ野郎なのかを分からせる。 

一週間も経てば、その人間は身も心も立派な下僕ズに転身する。

敵対した人間を雫の調教欲の発散に使えるので足も付かないし、正に一石二鳥。

(普段から苦労をさせられている身の僕が何故こんな目に…。)

そんな事をしてきたツケが巡り巡って返ってきただけだと思われる。

幸運の女神様でもグーパンチを繰り出す所業が罪となって返ってきたという思考が無い辺り、ハジメも大概である。

本人に一切の自覚がないから救い難い。

(絶対後で真央には解決する程じゃないけど、地味に気になる嫌がらせをしてやる!!)

そんな業を背負ってる癖に無自覚なハジメ君は、何やら真央への復讐を心に強く誓った。

だが、そんな様子は一切外面には晒さずに棚に書物を戻す作業に徹していた。

尚、後日談となるがGと比べるのはGに失礼極まりないと言われる重吾が、真央に「罵倒してくれ!」と毎日の様に懇願したとか。

ソレが原因で、額の血管をピクピクさせて不機嫌な顔をしてる真央が見られた。

だが、下手に罵倒すれば今後も罵倒を懇願しに来るので煩わしいのを我慢して読書に集中してたとか。

さぁーて、何処のハから始まってメで終わる人が裏で暗躍していたのやら…


撲殺されたくなければ黙っとれぇ!!

 

「…ソチラの書物は上から3番目の棚…」

 

若い女性司書の指示に従って、ハジメは先程までの思考を切り捨てて、書物を棚に丁寧に直す作業に専念した。

 

女性は毒々しい紫色の髪を短く切り揃え、抜けた髪が書物や床に落ちぬ様に黒のローブを被っている。

 

目元は深く被っているフードのせいで解らないが、一瞬見えた瞼の下にはハッキリと分かるクマが出来ていた。

 

司書は声色に何の感情も乗せず、表情筋にも分かりやすい変化が見られない。

 

真央はまだ分かりやすい感情の変化が見られていたが、この司書には見つからない。

 

ハジメが書物を返却した時も、書物が戻った事に対する喜びの色は見られず。

 

逆に真央への恨み辛みの感情を抱いているのか疑問になる位に無感情的だった。

 

(失った信用ゲージをMAXか、ソレに近い状態にしておきたいけど。また掴み難いのが来たなー)

 

友好的な駒はなるべく多い方が、後々で何かしらの恩恵を預けられる。

 

例えば、なんの気に語られる話には沢山の情報が詰まっている。

 

ソレも、当人が無警戒に話すのだから嘘だという可能性も排除されるのだ。

 

他にも、多数のメリットが出てくるのだから関係修繕を試みるのは悪くないだろう。

 

「あのー、つかぬ事を伺いますが司書さん」

 

オドオドした声色を作って、ハジメはある程度の数の書物を棚に収めてから司書に話かける。

 

「…何でしょうか?」

 

当の司書本人は、機械の方が人間味溢れるんじゃないか?と思わせる無感情的な声で返答した。

 

「興味を引く書物が多いので、今後もこの書庫に足を運びたいのですがよろしいですか?」

 

「…当職には、今回の書物盗難の主犯以外を出入り禁止にする権限が無いので…」

 

後は察しろとばかりに口を閉じる司書だった。

 

(わぉ…完全にお前とは話す事はないって感じか。)

 

本当にハジメ本人には興味が一切なく、サッサと会話を切りたい意志を隠そうともしない。 

 

(うーん…会話がブツ切りにされたら、嘘を使う暇が無いぞぉ?)

 

嘘を使う前に会話自体を封殺されては、会話術も何も無い。

 

(書物関係でも感情の起伏に変化無いしな)

 

「度々で悪いのですが、もし今後も書物が減っていると感じたら僕に報告してくれませんか?」

 

そうやって親切心と身内の恥を隠そうとする切り口から近付こうとする。

 

「…解りました。是非、書庫で無礼を働いたあの者の監視は強めて欲しいモノです…」

 

反応のパターンからも悪くないとハジメは考え、ソコから更に入り込もうとする。

 

「あっ、そうだ。僕の名前を出して居場所を給仕の方とかに聞いて頂けたら宜しいのですが…」

 

「あっ僕の名前は南雲ハジメと申し「調子に乗るなよ小僧…」…ぇ?」

 

ハジメが、自分の非を全面的に使って会話数を増やしてから相手の名前を聞こうとする。

 

だが、露骨に敵意を向けられる。 

 

「…テメェん所の書物泥棒の尻拭いをしてるだけだろう貴様は…」

 

突然の口調の荒々しい変化。

 

敬語を捨て、敵意むき出しの目でハジメを見る司書の目は明らかに何人がやってそうな殺人鬼の目をしていた。

 

(なんか急に情緒が変わったな!?)

 

流石にこの情緒の崩壊ぶりには、強個性生徒達を日頃から相手するハジメもビックリする。

 

「…コレで恩を作っているつもりなら、今直ぐ額に書物の角でのアタックを敢行してやるからな…」

 

(メッチャ痛い奴を堂々とを宣言されてるんですけど!?)

 

その言葉を裏付ける様に、表紙に『撲殺するならこの本☆エスカルボ〜ルグ〜★(書物の殺戮兵〜器〜☆)』と書かれている鉄製の書物が、司書の左襟から勢い良く出るのを司書がガッシリと掴んでいた。

 

(その凶器みたいな本は何!?後、タイトルかなり物騒だなオイ!!)

 

初手から急に物理で詰められそうになっているハジメ君は混乱している!

 

司書の表情に変化が殆ど見られなかったのも、ハジメが居ない時に怒りを爆発させ過ぎてオーバーヒートさせたのか。

 

或いは失意と絶望の感情に飲み込まれたのか。

 

ドッチだったかなんて不明だが、感情とは人が生きていく上で欠かせない機能だ。

 

反面、PCやスマホの様に容量の高いサイトを何時間もぶっ通しでやれば機器自体が熱暴走で熱くなる。

 

その状態でも使い続ければ、当然の話だが壊れるとは言わずとも不具合が残ってしまう。

 

感情もその面では似ている部分がある。

 

熱くなり過ぎれば冷静な判断と倫理観をもたらす理性が一時的にではあるが無くなり、その感情のままに行動してしまう。

 

しかし、暫くその感情を発散させるとその感情は沈静化させる。

 

一度、感情が沈静化状態に入ればソレまで膨れ上がっていた風船が萎む様に感情の熱暴走状態が収まる。

 

司書の表情に変化が見られなかったのは、沈静化した反動で感情の抑制にブレーキを掛けられて、物騒な書物を持つまでは感情が動かせなくなっていたに過ぎなかった。

 

(なのに、このタイミングで感情が動き出すって僕、不幸すぎない!?)

 

来るんじゃなかったという激しい後悔が猛烈にハジメの心中を襲う。

 

ココから逆境を嘘と話術で跳ね除けたら最高なのだろう。

 

だが、その話を聴いてもらう前に本でヤラれそうな予感がハジメの中でビンビンと感じる。

 

(僕の人生ココで終わるのかな…)

 

彼の冒険はココで終わった!

 

ハジメ先生の次回作の人生にご期待下さい!

 

という風な何処かで見た事がある台詞が、唐突にハジメの脳内で再生される。




ツンツン頭の高校生←とある魔術でハーレムが出来てしまう我等が主人公
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