ありふれないクラスメイトと平行世界のクラスメイトのトータス入り 作:ユラシ仮面氏
HRは何も起きずに終わり、授業の時間に入った。
授業中は、個性が強すぎる問題児達も驚く程大人しく勉学に勤しんでいる。既に高校に入れば、就職活動か大学に入る為に勉学は人一倍努力する時間。だから、生徒の誰もが真剣にやる。
休憩時間はガス抜きも兼ねて、各々の持つ個性を好きに開放しているが、重吾の様な周りを巻き込むタイプの対処にハジメや雫を筆頭に動くのだから、教室の光景に飽きが来る事は無い。
そのせいもあって、別のクラスからも何だ何だ?と様子を見に来る生徒達も続出している。誰が対処するかに関係無く、個性が強ければ周りをその意志に関係無く、巻き込んでくる。だが、周りの雰囲気は刺々しく無い。
そんな時間も早々に過ぎていき、今は昼休みに入った。
眩しい位に輝き、太陽の光が容赦無く振り続ける屋上にて、香織がソコから見える風景をスケッチブックに描いていた。その絵は素人目からしたら上手いが、本職のイラストレーターや漫画家と比べると見劣りするレベルだった。
実際に鈴の書いた絵と見比べたら、悲惨の一言が付くだろうと香織は感じていた。それでも、日に日に僅かずつではあるが、絵描きの上手も確実に上達してきている。
「ハジメ君!この絵はどうかな、かな?」
「どれどれ?」
香織が自信満々に、隣に立っているハジメへ手渡して見せた絵は、この屋上から見えるグラウンドや町並みを描いたデッサン画だった。風景や色並みは一つ一つ正確で、絵の構成も崩れておらず、悪くない。
その分、絵単体のクオリティには拘ったのだろう。朝早くから学校に来て、荷物だけを教室に置き、屋上に上がっていたからハジメが最初に教室に来た時に、香織の姿が見えなかったのだ。
香織は絵を1ミリという細かいズレであっても、面倒くさいという職人の一番の敵を押し殺しながら何十回も修正し、一度でも何かが違うと書いている絵に感じればその原因を探して直す。線の強弱も意識し、太い線は鉛筆。細い線はシャーペンで書いた。
そして、本当に心の奥底から傑作だと言えるまでトライ・アンド・エラーを繰り返す。指が痛くなり、何回も何十回ももうコレで妥協しようと誘惑されたが、全てを振り切って絵を最後まで書ききった。
そんな自信の傑作は__
「コレ、ビル一つ一つ正確に書くのは良いけど返ってスペース圧迫してるよね?香織が町並み書きたいコンセプトは伝わるけど、コレだけだとアニメとか漫画の背景画としては良い」
例えばバトル漫画の背景に出てくる建物で、建物が出てくるがそのどれか一つでもビルの形が崩れてしまえば、漫画というストーリーから一気に現実に戻されてしまう。その点からすれば、コレは最高だろう。
だが違う。この絵は背景画か?ビルが主役か?否。香織が描きたいのは、屋上から見える景色であってビル群では断じて無い。
「この絵単体が主役であって、ビルは脇役でしょ?それならビルよりも、もっと目立つグラウンドをもっと大きく描くべきだね。勿論、拘るのは良い事だよ?でも、変にリアリティを追求し過ぎて配置が偏っちゃうのは、もっと駄目なんだよ。だから、こういう場合は自分の立ち位置を変えて、見える景色を変えるとかだね」
主役に見据えたのは何か?もし、町並みの再現のみであれば、授業の一貫としてであれば百点満点の花丸だろう。しかし香織の場合は、不特定多数に絵を見せるサイトに出すのだから、一定以上の評価を得るつもりならソレだけでは不十分。
「見る人にとって、クオリティの高さは当たり前。その絵を描く為に苦労した絵描き側の視点は持ち合わせないし、風景を再現だけして一つも装飾が施されていなければ見劣りもする。こういう最高のクオリティの絵が並ぶ中で、ひと目見たらもう少し魅力のある何かが無いと、他の絵を見られてユーザーにこの絵があった事自体を忘れられる」
「だから、今は太陽が出ていても夜の景色を書いて、街灯に照らされる町並みという普段目にされる機会が少ない景色を描くのも、一つの手だよ」
リアルな再現は素晴らしいが、昼の光景を細部まで書かれても普段からよく見る光景だけならば、魅力に欠けてしまう。だから、夜という勤務の疲れが溜まり景色をよく見ない時間帯を描く。
そうするだけで見える景色はガラリと変わり、一種の魅力として読者の記憶に留まりやすい。
「むむむっ!そんなに問題が…」
ハジメの指摘により、ドンドンと問題点が上がっていくのに額から汗を流して、思わず唸ってしまう。だが、まだハジメの指摘は終わらない。
「木の葉っぱが風で動く表現は良く書けてるね!でも、風による動きを変に再現しようとして、とっくに風向きが変わっているのが並んでいたりして返って崩れてるよ。こういう場合は、想像で景色を補填して書くのが最善策だよ?」
ココもリアリティ重視の欠点だ。既に変わってしまった景色も描き、直ぐ真横の絵と矛盾が生じる。絵を書く時はそういう考えは予め決めておかないと、絵を書くのだけに集中している時に思い付かない。
「風向きが変わる前に早く描き切るなんて、絵のクオリティを下げる行為だから難しいし。あっでも今回の場合、期限はまだまだ有るからとっても良かった選択肢かもね。まぁ、僕から見ての欠点は以上!」
「うーん…改めてハジメ君から問題点を聞かされると、この絵ぜ~んぶが不自然に見えて不思議だよー」
要改良すべき点を忘れない様に、心の中でメモを取ると、その場で床に横たわると大の字のポーズを取る。欠点を聞かされて辟易している様に見えてしまうが、実際は絵を書くのに集中しすぎて脳がオーバーヒートしたのだ。
(この様子だと、5時間目と6時間目の授業を受けるのに支障が出そうだな。念の為にと購買で買っといたチョコパンを用意してて良かった)
ついでに購買で購入した、冷蔵庫でキンッキンに冷やされていたバナナジュースを額に着けると「ひにゃーっ!?」と可愛らしい声で言う。
「ちょっ、ちょっとー!ハジメ君ったら、急に何するの〜!」
頬を餌でパンパンになるまで貯蔵するリスの様に膨らませて、私怒ってますよ!アピールをしてもソレをするのが香織だと、ただただカワ(・∀・)イイ!!と言う感想しか生まれない。
「ハハッ!ゴメンね、頭を冷やしてあげようと思ってね?」
「物理的に冷やさなくても、甘物摂取すればマシになるのが解ってる癖に〜。もうぅぅ!」
__
一通り、香織が文句を言い終えてからチョコパンを口にして、脳を一時的にも回復させていた傍ら。ハジメは香織の描いた絵をずっと眺めていた。
ハッキリ言って、絵に関してはその道のプロである漫画家の鈴に見てもらうべきだろうが、鈴は最初から絵を書くのが上手だったので工夫すべき点や、上手くなるアドバイス関係が苦手なのだ。
なので鈴の画力には劣りはするが、漫画家である母の手伝いで鈴の次に絵を書くのが優れているハジメが指導役を行っている。
ココまで香織が本気で絵を書き、ハジメに見てもらっているのは将来の為なのだ。ソコまで驚く事ではないが、香織はハジメに結婚を前提にしたお付き合いを申し出ていた。
当然ハジメの将来の設計計画もある程度把握していて、ハジメが父のゲーム会社に就職するというのを聞いていた。だから、専属イラストレーターとしてサポートをしようと思い、前から興味を持っていたがやってこなかった絵の練習をした。
ハジメは最初、自分の為にワザワザ将来を合わして香織の将来を潰さなくて良いと言っていたが、香織はハジメと職場でも共にいる事を望んでいたので、香織の説得もあり絵の上達の為の先生になってもらっていた。
「ねぇ、ハジメ君。私の今の実力でイラストレーターになれるかな、かな?」
その率直でありながら、答えを正直に言い辛いであろう質問を、真剣に考えてからハジメは数秒経ってから口を開く。
「今の実力なら、十分行けるよ。でも、何処かで壁にブチ当たる可能性は大だね」
先程話した、リアリティを求め過ぎたのが良い例だろう。
例えばとある企画の関係で、想像上の衣装を纏ったキャラを書いて欲しいと言われても、肝心のその衣装を想像力を働かせても思い浮かべなかったり、浮かび上がってもソレを絵に落とし込めない可能性もある。
「そっか…うん、そうだよね」
他にも確率の大小問わずに、様々な可能性の壁は点在する。だからこそ、その確率の壁自体の数値を0にして徐々にステップアップさせているのだ。
「気落ちはしてる暇は、今の私には無い!頑張るのみだね!」
「うん、その調子だよ香織!」
香織は最初こそ気分を落ち込ませたが、直ぐに明るい雰囲気に切り替えて、今起こした失敗を踏まえて絵を書こうとチャレンジする。が、そんなハジメと香織を覆う様に、床に複数の紋様が施された陣が光を出しながら展開された。
「なっ!?」
「えっっ」
昼休みという休憩時間だったのもあり、反応が遅れた二人はその場から一歩も動けずに陣から放たれる光に包まれ、その場に食べたパンの袋やジュースと香織の描いた絵を残して、忽然と消える。
ソレと同時期に、散開していたハジメ達のクラスメイト全員が同じ陣を足元に展開され、陣から絶え間ない光が発生したかと思えば忽然と手に持っていた物をその場に残して消えてしまった。
偶然にも消える時の姿を他のクラスの生徒や教員の誰にも見られなかったが、担任を合わせた30名近くが行方不明になったのは事実。
後に集団神隠しと呼ばれる前代未聞の事件として、世間を壮絶させた。
スマン。絵の下り、思いついたから書いたのであって専門知識あった訳では無いです。
ですからハジメの指摘も、間違いが多々あると思います。
ん?つまり、言ったハジメに全部罪を被せれば私が無罪に?待って、香織さん違うんですこれは、ギャァァァ!??
南雲ハジメ 二つ名腹黒ペテン師
オタクという理由だけで虐められたせいもあってか、人は一つの印象次第では平気で暴力を振るう生物と思い、他人を思いやる気持ちが欠如してしまった。
それ以来。人を騙し、家族以外は一切信用しない生活を送っていたが高校に入学して、今のクラスに入ってから人生が一変した。
好きな事:手の平で誰かを踊らせる事 相手を騙し切った時の愉悦 香織とのデート 家族との団欒
白崎香織 二つ名ヤンデレガール
雫の虐めを気付けなかった事実にショックを受け己自身を責めて、他人を救うヒーローである雫や龍太郎、そして光輝の役に立てない日々に鬱々とした感情を浮かべたいた日々を送っていた。
しかし、当時中学生の時。不良に絡まれていた少年とお婆さんをハジメは救った。しかも自分の様に力が無いのに己の知恵のみで人を救ってだ。その人柄と、その時にハジメが助けられたお礼を言われて浮かべた笑顔に惚れた。
好きな事:ハジメ君観察 絵描き ハジメ君を悪く言うゴミの排除
ハラハラッ!オマージュ集〜
ハジメの二つ名『腹黒参謀』 ログ・ホライズンに登場するシロエのあだ名を参考にさせて頂きました。