小人族の聖女   作:柔らかいもち

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 レベル7以上のステイタスの敵と打ち合えるガレスの力ってなんなんだ。
 アイズの【エアリエル】しかり、バーチェの【ヴェルグス】しかり、ランクアップで『スキル』や『魔法』が劇的に強くなったりすることあるよね。



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十一話

 全員の能力が前衛、中衛に寄っているにもかかわらず、階層の基準を大幅に超えた【ステイタス】のごり押しで役割を分けたベル、リリ、ヴェルフの新生パーティの『中層』進出は順調だった。

 

 迷宮の難易度は『上層』と比べて格段に上がっているものの、『下層』まで経験しているリリがいるおかげで心に余裕が生まれ、落とし穴程度の罠には引っ掛からない。『サラマンダー・ウール』も準備したので『ヘルハウンド』によって焼き尽くされる可能性は大きく下がった。何より本当に危なくなればリリが対処する。

 

 13階層のルームで初のモンスターである『ヘルハウンド』でリリがやったことは小石を弾いて一瞬意識を逸らすだけに留まり、兎に似た(ベルそっくり)モンスターの『アルミラージ』の群れも大部分を引き付けながらベルとヴェルフに一匹ずつ処理させて経験を積ませることができた。

 

「ベルといるとアルミラージを仕留め辛くなる気がしますね……ん?」

 

 件の少年にとって非常に理不尽なことを呟きながら殺人兎の集団を適当に相手していたリリの耳がこちらに向かってくる複数の足音を捉える。振り向けば六人組のパーティが自分達に対して必要以上に接近しながら走り去ろうとしていた。

 

 優れたリリの目は彼等の余裕のない表情、抱えられる瀕死の少女、ベルと視線を絡ませる青紫の泣きそうな瞳を明確に捉えた。そして過去に妬みや悪意から散々やられたその動きを思い出す。

 

「ベル、ヴェルフ! こちらへ来てください!」

「え……?」

「なんだと?」

「『怪物進呈(パス・パレード)』です! 簡単に言えば今のパーティが私達にモンスターを押し付けました。すぐにでもこちらに来るでしょう」

 

 慌てて戦闘を終わらせようとする二人を尻目に担当していたアルミラージを引き裂き、『魔石』や『ドロップアイテム』を手早く回収する。12階層に続く階段のある入り口側に走って来るベル達にバックパックを渡しながら、ルームに姿を現したモンスターの群れに突っ込んだ。

 

 真っ先に厄介なヘルハウンドの頭部を斬り裂き、アルミラージは石突きで殴り殺すか投擲された石斧を掴んで投げ返して顔面にめり込ませた。鎧鼠(アルマジロ)のモンスター、ハード・アーマードの頑丈な装甲を活かした突進も難なく貫いて終わらせる。天井や壁から襲い掛かったバッドバットやダンジョン・ワームは見向きもせず薙ぎ払われた。

 

 秒殺。瞬殺。Lv.1のヴェルフはもとよりLv.2のベルも残像すら追えない。暗黒期を迎えていたかつてのオラリオで畏怖の象徴として君臨していた少女の力を垣間見た男達は、息をすることも忘れて佇んでいた。

 

 ――慢心はなかった。

 

 先程のパーティや自分達の戦闘音を聞き付けたモンスターが次から次へとやって来るが、中層のモンスターがどれだけ束になろうともリリに攻撃を当てることはできない。仮に当たったとしても、それは致命傷には程遠い。それでも万が一を考えて本気で殲滅を続けた。

 

 ――油断もなかった。

 

 色ボケ女神が懲りずに何か仕掛けてくることも考えて常に周囲に意識を向けていた。幹部陣の誰が来ようと、有り得ないだろうが全員が協力してかかって来ても迎撃できるように気を張っていた。

 

 しかし。

 

 ダンジョンの生み出した『未知』は、冒険者を嘲笑うように想像を上回る。

 

 ビキリ、と。硬質な何かに罅が入った音が響く。怪物達の最後の一匹を始末したリリはその音がモンスターが産まれる前兆だと知りながらも、嫌な予感から今も音を立てながら何条もの亀裂が走る天井を見上げた。

 

「――」

 

 大岩と土砂が降って来る。それは予想していた。だからベル達には落石に巻き込まれない所まで離れるよう指示を出していた。だが、現れたのは大量のバッドバットなどではなかった。

 

 それは女の人の姿をしていた。双眸に不気味な緑を宿していた。髪と身を包む衣は鮮血のように紅かった。顔は何の感情も浮かんでいないと一目でわかるほど冷たかった。

 

 そしてその身に宿す力は、各階層を隔てる岩盤を屈服させてしまうほどに暴力的だった。

 

 女の手が開き、その中から刀身が砕け散った剣の柄が零れ落ちる。女は何もなくなった手を握りしめると、欠片の躊躇もなくリリに振り下ろした。甚だしい威力を孕んだ拳は咄嗟に防ぐのに使われた槍を半ばから圧し折り、掠めただけで少女の兜を砕く。振り抜かれた拳は床に直撃してダンジョンを盛大に揺らす。

 

 女は攻撃を防がれたことに驚かなかった。何故なら偶然避けられる可能性を考えていたからであり、避けられようがどうとでもできる自信があったからだ。故に戸惑って動きを鈍らせるということもなく、再び手を開いて少女の顔を鷲掴み、そのまま地面に叩き付ける。

 

「ッッッ!?」

 

 背中で途轍もない衝撃と痛みが爆発した。小さな肺から空気が残らず引き摺り出され、短い四肢が無様に痙攣する。

 

 同時に夥しい量の亀裂が地面を駆け巡る。階層一つ分の落石に加えて尋常じゃない力で殴打され、今の衝撃がトドメとなった。少し前の光景を再現するかのように限界を迎えたダンジョンの床が抜け落ちる。今まで浴びたことのない強者の威圧に動けなくなっていた鍛冶師も、無詠唱の『魔法』を人に使うことに躊躇ってしまった少年も等しく巻き込まれた。

 

 それを最後に、中層に進出した新生パーティは全員が意識を手放した。

 

 

 

 ♦♦♦

 

 

 

「ぐ、ぁ……!」

 

 淡い燐光に照らされる灰色の迷宮に彼女の漏らす呻吟が響く。

 

 彼女の身体は徹底的に()()されていた。腕を握り潰した時の反応で彼女が頑丈だと見抜いたのだろう。四肢は全て手首から先や足首から先が欠けており、片方の目も指を突っ込んで抉り取られた。尖った瓦礫によって肩や太腿を壁と縫われ、身体は僅かにしか動かせない。胴体も岩が貫いており、赤い雫が地面に滴り落ちている。

 

「あの……糞小人族(パルゥム)め」

 

 狩る側であったはずの自分を一方的に叩きのめした小人族(パルゥム)の煮えたぎる溶岩(マグマ)の如く輝いていた瞳を思い出しながら、怪人(クリーチャー)レヴィスは呪詛を零し身体の再生を待ち続けた。

 

 

 




 使い込まれていたので槍は折れました。初めてフィンと邂逅した時に《フォルティア・スピア》を拳で折ったんだから、年季の入ってたリリの槍も壊れるよね。
 あとリリは今まで格上には自分から挑みに行っていて、完全な奇襲を受けたことがあんましなかった。

 今回のレヴィスの【ステイタス】はLv.7カンストを想定しております。毎度言ってますがダンまちの【ステイタス】は難しい。レヴィスは特に。
 最初はロキ曰く「フィンとリヴェリアの二人がかりで辛勝」、次はLv.6のアイズにボコボコにされ、怪人の魔石食べて【エアリエル】使ったアイズにギリ劣る程度にパワーアップ。二ヶ月くらい魔石を食べまくってLv.7を遥かに超える。
 そうするとこのレヴィスと打ち合えたガレスの力はどうなってんだってなるんだよね……。


 あまり関係ないが、実はリリの魔法はロンゴミニアドにしようと思ってた。
 あとめっちゃ強いけど可愛がられまくることが不満な小人族とか見たい。書きたいと言わないのは忙しいから。
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