女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記―   作:おかひじき

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 TSが見たい、ハクスラが見たい、メガテンペルソナごった煮が見たい、
じゃあ全部、全部乗せだ!


プロローグ:オレが異世界で電霊転生
序章 俺と時間城の主


 40年ちょっと生きて来た。不況下で大学を出て介護職に転がり込み、あんのじょう身体を壊してフルタイムでは働けなくなり、彼女いない歴=年齢。特筆するべきこともなく、特に何の前触れもなく老いた母親がおかしくなった。

 

「だから、オオトリ様に全てを捧げるのよ!」

 

 特別何か凄いとか悪いとかいうこともない両親だった。あれよあれよという間に3年、3年前にやろうかなと少し準備した配信活動、それも何一つ進展させることが出来ず生きるだけで精一杯、そのたった3年で俺と家族の日常は壊れた。

 

 母親が新興宗教にハマり、俺が貯め、あわせて受け継ぐはずだった家の資産だけでなく、借金まで背負い込んで家にあるものを勝手に売り払い始めて……。同居していた祖父母は田舎へ引っ込み、婿養子だった父はもううんざりだと完全に縁を切って実家に戻った。

 

 俺自身も、今日をもって祖父母のいる田舎にある家のはなれに引越し、俺の産まれて育った家は消えてなくなった。

 

 何か色々な手続きや面倒ごと、田舎での仕事の世話まで祖父母が済ませておいてくれたようだが、俺にはもう、細かいことを気にしている余裕はなかった。今はもう、金切り声でちょくちょく泣き喚く生き物をこれ以上母と呼びたくなかった。

 

 

 

………………………………

 

 

 

 今まで住んでいた県庁所在地から車で数時間。縄を地面に打ちつけて区切っただけの急ごしらえの駐車場に車を駐めた俺は、祖父母に挨拶だけして早速はなれへと向かう。引越しや各種手続きのためにもう何度も行き来しているので、慣れたものだ。

 

 はなれと言っても、家に隣接した畑の一部を利用して建てたもので、電気ガス水道が共通していたり、分岐したりしているだけの別棟みたいなものである。まあ祖父母と隣り合って住むことには変わりないが。

 

 本来なら、維持するのもきつくなってきたので、こっちの家は売るかという話も出るくらいだったのだが……今こうして、また祖父母と俺が住む事になるなんて、ホント人生って分からないものだな。

 

 ひと心地ついて、都会のなごり的な気分で買ってみたペットボトルのそば茶を飲みきった俺は、今までとにかくといった感じで運び込んだダンボールの開封作業を始めた。

 

 俺の大きな家具や日用小物は既に開封は終わっていて、今日開封するのは売ったり捨てたりするには惜しい、手荷物として最後に運ぶほどには重要じゃない、そんな荷物だ。

 

 アニメ、ゲーム、漫画などのオタグッズ、存在を忘れていたアルバムやUSBメモリその他の記録媒体、これでもうあっちの家に俺のものは残っていないはずだ。

 

「ああ、なつかしいな……」

 

 最初に開けたダンボールには、各種ゲーム機が入れてあった。一番熱心に遊んだのは学生時代なので、かなり昔のゲーム機とゲームソフトが中心となっている。

 

「久しぶりにやるか……」

 

 どんなにつらい時でも充電だけは欠かさなかったので、今でも使えるはずだ。

 

 祖父からは「とりあえず今は何も考えずに休め」と言われているので、しばらくはこれで思い出に浸っていよう。そう考えて、とりあえずゲーム機は改めて充電して、据え置きゲーム機とテレビを接続する作業に入る。

 

 この判断が俺をある意味救い、ある意味生死の境に放り込むことになろうとは、この時は知るよしもなかった。

 

 

………………………………

 

 

 

 気がついたら、何やら狭い部屋にいた。いや、赤黒く光を放つ不気味な部屋だ。

ソファーとテーブルと、大きなテレビが置かれた客間?だろうか。

 

「ようこそ、我が領域へ……と言ったところか?」

 

 今まで誰もいなかったはずのテーブルの向かい側、中央のソファーに男が座っている。白い髪に赤い服、モノクルをつけた特徴的な姿は……!?

 

「時間城の主?」

 

「ほう……この姿を知るか。それほど知られた姿ではないが」

 

 忘れるわけがない。俺が一番ゲームをやり込んだ時代、ペルソナ2に登場したキャラの一人。アンティーク時計店の店主だが、噂の力によってマジックカードや装備を取り扱うことになる人間。

 

 と見せかけて実はニャルラトホテプの化身の一つという、結構美味しい立ち位置のキャラだったりする。

 

「あれ……?」

 

 いつのまにか周囲はアンティーク時計に囲まれている。

 

「さて……時間は有限。特にお前達にとってはそうだろう。今お前を我が城に招いたその意味……説明するとしよう」

 

 

 

………………………………

 

 

 

 その説明は、あまりにも規模の大きな、救いのない話で。

 

「……は?」

 

 としか、言葉を発することが出来なかった。言葉を失うとはこのことだろう。

 

 まず、俺の生きていた「リアル世界」があり、その近くに「メガテン・ペルソナ風世界」もあった。

 

 通常交わることのない世界だが、今この瞬間メガテン・ペルソナ風世界がリアル世界に干渉を行い、リアル世界がマグネタイト大量流入からのオカルト儀式の処理でエラーを出し、停止……ハングアップかシャットダウンのような状態になったと。

 

「は?何だよそれ……」

 

 よくある感じの、モンスター……この場合は悪魔がリアルに現れたとか、ダンジョン……異界が出来たとか、超常能力を持つ者が現れたとかそういうのではなく、初手でいきなり世界が止まり、干渉も受け付けなくなったと。

 

 時間城の主のように時に干渉できたり、概念的なものを得意とする存在なら干渉も可能だが、何よりこの結果に全知全能の神がぶち切れた。

 

 リアル世界の方には、影響を出さないために今まで直接手出しは控えてきたのに、それでも神を信仰してくれる信者さんたちや異教徒ながら善良な人々は多くいた。即座にリアル世界を救う決断がなされ、メガテン・ペルソナ風世界の方は……。

 

「天罰で世界ごと滅ぼすには、犯人の数が少なすぎる。仕方なく全知全能をもってして、個別に大量に罰を下すということになったが、遥か前からこの火種はくすぶっていて、リアル世界への干渉は大きく分けて3度目。国家機関がタネをまき、ガイア教がそれを育て、メシア教が全てを終わらせた……見ものだったぞ?」

 

 そりゃそうだろうな。あんたにとっては。思う存分人の愚かさを嘲笑える最高のショーだったでしょうね。

 

 時間城の主が語る所によると、まず如来像というアイテムがあった。これはメガテン原作ゲームに登場したアイテムで、死んだ時に所持していれば復活できる……ただしカオス・ニュートラル属性専用、というアイテムだった。

 

 これが魔改造されて、六地蔵法輪というアイテムが産まれた。何と6回+最後に砕け散る1回で計7回も効果を発揮できる優れもので、しかも悪魔業界人だけではなく一般的な人間でも効果がある、画期的アイテムだった。

 

 まあ、ロウ属性のメシアンはすぐにパクって七元徳の天使像なるものを使うようになったので、実質ほとんどの悪魔業界関係者が使うようになったわけで。

 

「だが、それが全ての悪徳の始まりだった事に気がついたのは、全てが手遅れになった後だったというわけだ」

 

 このアイテム、ただの復活アイテムというわけではなく、改造の結果、アイテムの6人の行者を最後の破壊で7人として、破壊の直後に六地蔵の表す六道……異世界へと死の呪いを内包した7人の行者が向かう、という呪い儀式の効果が隠れ潜んでいたのだ。

 

「おい。7人って……」

 

「七人同行。それをお前の『リアル世界』に押し付け続けていたというわけだ」

 

「あきれて言葉もでねぇよ……」

 

 リアル世界が、オカルト、マグネタイトに関する一連の現象に対して、無防備だったのは確かだろう。しかし無防備だからと言って、かなり凶悪度の高い七人同行を、一つのアイテムを使い切るごとに1回ずつ送りつけ。押し付けていたというのだ。

 

 しかも話の最初にこれということは、これから話が広がるわけで。

 

「元になった如来像が伝統的なアイテムだったことが被害を広げた。詳細な検証が行われ、事実が判明したのは、コンピュ-ター解析が悪魔業界でも実用化され、また悪魔召喚プログラムやターミナル技術による異世界の観測が可能になった、20世紀も終わりになってから。その時点で、七人同行の被害者数は取り返しがつかないほど膨れ上がっていた」

 

 罪の羅列は続く。この事態を知ってしまった国家機関は、隠蔽に走る。元々、悪魔関連の国家機関は、悪魔と戦える能力者が中心となった組織だ。どうしても非能力者を下に見る風潮があり、その世界ごとオカルト能力を持たない『リアル世界』は、脅威ではないゆえに優先度が低い、とされた。

 

 いわゆるメガテン・ペルソナ風の世界にとっては、定期的に都市や国や世界をゆるがすような悪魔事件が起きていた事もあり、優先度が低いという判断はこの世界にとっては間違いではなかったのかも知れないが。

 

「そして、異世界に呪いを飛ばせるという点にガイア、メシアが目をつけた」

 

「ホントろくなことしねえな!」

 

 ガイア教は迅速に個人単位での悪用をもくろみ、リアル世界にゴーストやポルターガイストなどの手軽な霊体悪魔を送り込み、人間に憑依させ、傀儡として乗っ取ったり、超常現象で脅したり、高ステータスの人間は逆にガーディアンとして知らぬ間に使役したりもしていたようだ。

 

 傀儡にはカルト宗教をリアル世界でも布教させたり犯罪をさせたりとやりたい放題。そしてその様子を知ってメシア教が黙っているはずがない。

 

 呪いなどではなくリアル世界の神を目覚めさせると称して、自分達の改造品である七元徳の天使像をさらに改造、アイテムの破壊と共に神霊召喚の儀式の準備がリアル世界で行われるようにした。

 

「リアル世界の強制停止の原因はこれだ。急速に、無数に行われた神霊召喚の儀式、しかもその召喚対象が全て同一の最高レベル悪魔、『全知全能の主』だったことから、リアル世界の許容量と処理能力をオーバーした」

 

「アホかな?」

 

 何というか……本当にどうしようもないくらいアホらしくて救えない現実だな。

 

「そしてお前個人の話だが、まず学生時代に出会うはずの、パートナーたる女性が七人同行の犠牲になっているな。そしておまえ自身は気付かぬ間にゴーストに憑依され、ガーディアンとして使役されていた。なるほど、お前の運は未覚醒の状態でも11あったようだ。これに目をつけられ、強制的に他人のガーディアンとされて運を使われていたと。母親の宗教狂いもガイアのカルト宗教関連だな。この上とどめに世界ごと強制停止の憂き目にあって……いやはや全く。人間の悪意というのは底知れぬものだな?」

 

「何だよ、それ……」

 

 素の運が測定値で11というのは、例えば人生の道を求めればまあ数日ぐらいでよき指導者にめぐり合える、宝くじを買えば累計数千枚程度で最高額当選する、ネットで適当に調べた知識は大体当たってて、ヤマ勘は十中八九的中する、運だけで成功をつかむのに十分な値だったと言う。

 

 実際、俺をガーディアンとして使役していたガイア教徒は測定レベル40程度の、ガイア教地方支部の幹部に成り上がったとか。

 

「利用されているのにも気付けず……人生は不運なものと諦めて、掴めたはずの喜びを知らずに生きあがくお前の姿はなかなか楽しめたぞ」

 

「うるせーよ!見てたのかよ!」

 

 黒幕みたいな物言いだが、絶対こいつは楽しんで見てただけだ。たしかそんな奴だったと思う。

 

「さて、その罪ある人間達は全知全能の神の怒りを買い、全ての悪縁と共に既に消されるか、力を失いでくのぼうと化した。今回の事件全体が丸ごと神の御業で排除されたわけだが、問題が生じた」

 

「何だよ」

 

「お前達リアル世界の人間と、リアル世界そのものだ」

 

 被害を受けたリアル世界とリアル世界の人間は、取り除かねばならない悪縁とマグネタイトその他に汚染されている。憑依や傀儡化の犠牲となった者は、悪行に加担させられた者もいる。それにあの一瞬、あまりに大規模で厳格な措置を必要としたために、縁の深い被害者は肉体ごと浄化され、無垢なる魂の形となって、その存在を維持している状態だという。

 

「マジかよ……マジだった……」

 

 今の俺は、真女神転生で見た白くぼやっと光る、いわゆる白ハゲ状態だったことを自覚した。

 

「マジかよ……」

 

「かの神にしては繊細な天罰を下した方だとは思うが、リアル世界の方は復旧に相当な時間がかかる見込みだというし、復旧後は人間だけの世界というわけにはいかないだろう。何しろ神の天罰と復旧作業によって復旧したという結果が残ってしまう。測定レベルにして一桁程度の悪魔は発生する世界になるだろうな。無策でいれば復旧直後にモンスターパニック物のような混乱が起きることになる。今時は現代ダンジョン物の方が流行りか?」

 

「マジかよ……」

 

 何度目だこれ。

 

「リアル世界だけではない、メガテン・ペルソナ風世界の方も問題はある。言った通り、悪魔業界人のうちかなりの人間が例のアイテムに手を出していた。悪魔業界は混乱の中に置かれると思っていいだろう。残されたのは例のアイテムを使った事がないかほんのちょっと触れただけの新人や変人、事件にかかわりのない者たちだけだ。悪魔も天罰の影響は受けたとはいえ、今後こちらの世界も混乱する事になるだろう」

 

 何かもう、めちゃくちゃでしょ。救いはないんですか!?

 

「他の『生き残った悪魔達』もそうだろうが、私にもいい考えがある」

 

 嫌な予感しかしない。嫌だって言っても逆らえそうにもないけど。

 

「お前は憑依を受けてガーディアンとして強制的に使役され、つまりその守護する相手に憑依していたことにもなる。そして今は霊体になってここにいる。そのままガーディアン使い、霊体の悪魔、応用してペルソナ使いとなる才能もある」

 

「……なるほど?」

 

 いや、急に言われても実際は困るが、説明されてる間は相手に合わせるに限る。混ぜっ返して説明が中途半端になったら困る。

 

「転生体……分かりやすく言うなら『キャラメイク』をして。まず彼のメガテン・ペルソナ世界に潜り込み、世界の危機を生き残り、この事態を収束する側となって動かないか?という提案だ。人生の観賞を楽しませてもらった……返礼品と言うのだったか。人間は」

 

「あのさぁ……」

 

 本当にニャル様らしい提案だなこいつ!さすが公式で化身を出してこれも私だごっこしてる奴は違うな!

 

「いいよ受けるよ……」

 

 何より、白ハゲとなった今の状態で断る選択肢はない。こんな不安な状態じゃ3分後に生きていられるかも分からんからな。いやおう無しに、俺は時間城の主、ニャル様の提案に乗ることになるのだった。

 




 白ハゲスタートはロマン

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