女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記― 作:おかひじき
「あの……」
ミミカとスガルが席に着き、オレが傍らのアームターミナルの中で久しぶりのまとまった「食事」をしている所に、声を掛けて来たやつがいた。
見た目はオレ達と同世代の女の子だ。
しかし真珠光沢というか、白っぽい桃色ベースに虹の光が走るような、見たことが無い色をした髪と瞳、まるで当然のようにその目には標準的な形のべっこう縁の眼鏡をかけている。
その髪は胸部辺りまで伸びているので、2次元に限れば正当派美少女ってイメージだ。
実はこの世界ではそこそこ見るが、純粋な日本人でもド派手な配色をした人がいるのだ。
今ここにいる彼女のように。
そのおかげか、スガルが街を歩いていても全く目立たなかったのは助かったが。
設定的に考えると、悪魔が歴史的に徐々に人間に浸透して行った結果、なのだろうか。
しかしこの子、この見た目、そして縁もゆかりも無いオレ達に声を掛けて来たって事は多分。
「あの、ぶしつけな質問ですけど、メガテンかペルソナで初期ガチャを引きましたでしょうか、その……」
それ単体だけだと訳の分からない言葉。だがそれを今ここでオレ達に問いかけるということは。彼女もそうなのだろう。
「お前もスガルたちと同じ、メガテンかペルソナ転生してここに来たな。ついでに姿も変えてるだろ?」
スガルの言葉にほっとしたように頷くと、ちょっと緊張を解きながら、彼女……網代 裕奈(あじろ ゆうな)は席に着き、話し始めた。
彼女の説明によると、彼女もオレらと同じようにこの世界に転生して来た人間で、同じように姿も変えた同好の士でもあるらしい。
それだけでなく、ペルソナ使いの彼女裕奈ちゃんに、サマナーの阿形さん、悪魔のヒナちゃんと、3人組で異界アタックもして来たとか。
似たような編成で先攻して異界アタックか、上手く行けばよいけどそれは……。
阿形さんを中心にSNSで連絡を取り合った彼女たちは、今日現地集合で異界アタックに挑んでいて、ついちょっと前まで異界「西山寺分校廃校舎」で悪魔狩りをしていたという。
「ゾンビだらけの異界情報を見て、回復道場でたまがえりを用意して狩ってたんですけど……」
トイレ近くには花子さんやブキミちゃんも出るようだが、そこは避けて非常口付近で狩っていた。これはオレらと同じようなやり方で、たまがえりで特化した対策取ってるだけオレらより安全度は高かったとも言える。しかし、事故は起きた。
「バックアタックで阿形さんがゾンビちゃんから麻痺を受けて、ヒナちゃんと多分ボクが魅了されて、気がついたらヒナちゃんがいなくて……後で確かめたらDYINGになってCOMPにいたんですけど、何とか正気に戻った僕が初期アイテムでもらった開扉の実を使って逃げて、回復道場まで来たはいいんですけど、ボクその、お金あんまりなくて……」
あー、回復料金ね……。
俺も知ったのはついさっきだが、この世界瀕死・死亡の回復は云十万、重バッドステータスで十万はかかる。彼女たちは対策アイテム買い込んだのもあるが、もしかして……。
「ボク……そんなにお金ないです……」
申し訳なさそうに言う裕奈ちゃん。そうか、支払いの問題か。
DDS.comはサマナーでもペルソナ使いでも悪魔でもアカウントは作れるが、
ごった煮集団の場合COMPを絶対持っているサマナーがアカウント保持者になる可能性がちょっと高いらしい。実際オレ達もまだスガルのアカウント作ろうとは思わなかったし、裕奈ちゃんたちもそうだったんだろう。
他人のアカウントで……もう何日も仲間でいれば、いざという時のためにパスワードまで教えたのかもしれないが、ほぼ初日で初対面からすぐでは無理な話。
「設定」上レベル1のペルソナ使いが現金持ってるかってのもね。裕奈ちゃんペルソナ使いなら人間だし、どう見てもやっぱ設定ギリ成人の18歳だよね?
「普通の回復アイテムショップのドラッグストアとかもないし……持ってたお金とか他の色んなアイテムも魅了中にばら撒いたり巻き上げられてて無くしちゃって、車も阿形さんのやつだし……これからどうしようかと……」
あー……ゲームじゃホントゲームにならないから出来ないけど、リアルの魅了じゃそりゃやるよねそれ。色々悪条件が重なってやベー状況に追い込まれてるのはよく分かった。
しかし、その中でも開扉の実を確保したか再度見つけたかして使ったのか。意外とやるな。
「ミミカ、スガル、ちょっといいか?」
「ん?」
「何だよ」
「オレはこいつらを助けようと思うんだがどう思う?」
オレの、COMPを光らせながらの提案に、驚きを持って答えたのはスガルだった。
「マジかよ!?流石に即日云十万はきついだろ!」
「いやまあなんつーか、オレはそういう面じゃちょっと余裕あるんだよね。一般独身サマナーの経歴があるからちょっと貯まってるのよ」
リアルでも3年前までは似たような感じで貯まっていたが、こっちはそれよりも増して貯まっている。現金によらないポイント系やDDSのあれこれが予想外に多かった。サマナーの分散隠し資産的な?時間城の主が気前がいいと思うべきか、裏家業の命を張った稼ぎなら当然だと誇るべきか。設定だから今ここにいるオレが実際やったわけじゃないけど。
「まあ設定上とはいえゼロッチさんの財産だし止めはしないけど、何か理由でもあるの?あっさり決めたけど」
「そうだな……まず同志だからかな?」
「同志だから?」
そう。いかにも新しい方のアトラスゲームに登場しそうな派手な髪色の美少女。
メガテン・ペルソナごった煮の危険な世界に転生するというのに、キャラメイクでこうするのは狂気レベルのバ美肉……いや、リ美肉趣味と言う他は無い。
「あと……裕奈ちゃんは誰に転生させられたんだ?」
「えっと、ボク達3人はハチマン様に転生させてもらいました」
「ハチマン様?あの白ハゲの?」
「は、ハゲじゃないです……ヒナちゃんがそれ言って怒られたんで勘弁して下さい、普通に古代日本っぽい姿でしたよ?」
なるほど、やはり様々な悪魔が転生者を送り込んでるっぽいな。
「それが関係あんのか?」
「まあ、そうだな……」
どれだけの数がいるのかは未知数だが、オレ達転生者は無視出来るほど少なくはなく、大軍となれるほど多くは無いだろう。
そしてゲーム的な考えでも、リアルな考えでも、一番死に易いのはまさに今、転生スタート時だ。
「ここで数を削られると、後で困る事になるかも知れない」
今の所は、一部メシアンの「神託」以外には把握されていない、急に才能のある新人や覚醒する業界人、有力な悪魔が増えた程度の状況把握だろうが、いつか必ず、リアル世界から転生した集団がいるという事実は、バレる。
「バレてどうなる?」
もしバレたら……それまで何もしなければ、それはただの異分子だ、必ず叩かれる。
そしてただ聖人みたいにこの世界に奉仕しても、ここメガテンとペルソナが合体した悪魔世界じゃあまりにも不安すぎる。
「だから、リアル世界転生者の集団を作る。もしオレらの他にいるなら協力体制を作るでもいいし、ただの手口の拡散、でもいい」
オレらがガッチリ組織を作るのはあまりやりたくない。確定とまでは言わんが、オレにもスガルにもミミカにも無理だ、多分。協力体制はもちろん様子を見て。そして協力体制をもし作るなら、その時点でのオレらの実力と手口の確保が問題になる。
「組織、協力、手口、ってなんかマフィアみたいな……」
大体合ってる。裏組織だしな。
「あの……」
ああ、ちょっと脱線しすぎたな。
「今重要なのは、結局オレは彼女達を助けた方がいいと考えてるってことだ。今ちょっと言った通りの事にはなると思うが……」
「いんじゃね?」
「うーん、私は最初どうかと思ったけど、そう言われたら助けた方がいいかなって思う。特に私達はリアル世界がどうこうだけじゃなくて転性的にも少数派になるだろうし、ね」
あ、そうだよな。リアル世界云々だけじゃなくてこの姿に変わった的な意味でも少数派か。そうだよな、それは気付かなかった。あまりにもオレは自然に適応してて……。
「んじゃ決まりだな、麻痺した阿形さんと、COMPの場所に連れてってくれ」
「は、はいっ!」
白ハゲハチマン様の威光