女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記― 作:おかひじき
阿形さんと彼女の聖書型COMPは既に、回復道場の中に運び込まれているらしい。
本当にタイミングよく……いや良くは無いか?オレらが道場を去った後に来て、料金を払えずに困って、即座にオレ達のいるピースダイナーに行って……これは偶然か?
「い、いえ、別に皆さんだけじゃなくて、あのピースダイナーとカードショップには業界人がたむろしてるから、交渉次第で何とかなるかも知れないから行って来いって道場主さんが……」
あの道場主にねぇ。ま、結果同好の士との出会いになったし、それには感謝してもいいかな。オレ的には。
ちょっと前に出て行った回復道場に、裕奈ちゃんを連れて舞い戻る。
ただ、ハンバーガーの注文受け取りにスガルだけはあっちに残った。
「お前さん達か。その……彼女達を助ける方向でいいのか?」
私達に気づいた道場主が、道場の奥から姿を現した。
「DDSカードでいいか?」
オレは霊体で出て、オレのDDSカードで支払いを済ませる。
「……確かに」
道場主は支払いを確認すると、道場の奥に引っ込んで何やら作業と儀式を行った。
「キェーッ!」
大丈夫かな、これ。
「終わったぞ。仲魔の珍獣はしぱらくCOMPの中で大人しくさせておいた方がいいだろう。サマナーはすぐに起きて来るはず……」
「網代さん!」
道場の奥から飛び出したのは、王道も王道、だけど現代においては場違いすぎる金髪碧眼縦ロールのお嬢様だった。目の下に垂れ下がるようにかけている長方形のフチなし眼鏡が、性格きつそうなイメージを強調している。こいつ、出来るな。
「阿形さん……」
裕奈ちゃんが耳打ちすると、阿形さんはこちらに歩み寄って来た。
歩き方まで凛々しく超強気って感じで何か気合入ってる。
「ありがとうございました。ワタクシの不始末から、取り返しのつかないことになる所だったのをお助けくださり……」
「いや、いいって。こっちもこっちで色々考えがあっての事だしな」
その後、挨拶を終えた阿形さんは、即座に自分のDDSカードを利用してオレの支払った分の料金を送金してくれた。
何も言わなくても即座にこれが出来る阿形さんはとてもしっかりした大人だと思いました。
阿形さんは聖書型のCOMP。中にいるという同じ転生者で悪魔のヒナちゃんともご挨拶出来ると思ったが、ヒナちゃんはオレみたいにCOMPの機能を勝手に利用して語りかけたりモニターに自分の映像出したり霊体で気軽に外に出て干渉したりは出来ないらしい。
あれ?全部気軽にやってたけど、それ全部オレの電霊としての能力だったりするのか?
オレしか出来ないって気付けてなかったのもあるな。
案外オレツエーなのか?いやまあ便利なのはもう分かってるけど……まあ弱いよりはいっか。
まあ、仕方ないのでヒナちゃんへの挨拶はまた今度にして、スガルが待っているであろうピースダイナーへと戻る。お互いに今後について話そうと、阿形さん達もついて来た。
その席で決まった事……と言ってもがっつり決めたわけじゃないが、次の事を話し合った。
● 格上のパワーレベリング的な異界に行くなら合同で行こう。いや別にパワーレベ
リングでなくても一緒に行く?
● もしあるなら、各種依頼についても同じ。
● 双方合意の上で色々悪魔関連の融通を利かせて、トレードなんかもやる時はやる。
● 将来的に転生者組織を作るか、そういう組織に協力するか、それに売り込む手口?や実力を身につける方針に賛成。
● 元凶のやつら許さねぇけど今いる人たちはそうでもないよね?
● ワイルドなスガルちゃんのためでもあるけど、特に実益のあるなしにかかわらず交流しようね。ちなみに裕奈ちゃんはペルソナ1の「降魔式」ペルソナ使いなので悪魔交渉、コミュニティ式ではありませんとの事。そうなのか……。
あたりの事が話し合われた。
皆が注文したハンバーガーを食べ終わった後は何となく流れで2階のカードショップ「サバトマオン」に上がり、ここで売られているカードについて確認する。
まず、ここの「表」というかカバーで広く売られているのは水瓶宮とキタローカード……だと!?当然ながらU-GI-WARとMTG(マジック・ザン・ギャザービート)とポケカもあり、テーブルも多く結構表も幅広くやってるようだ。
全部微妙に名前が違うみたいだけどこれも世界を変えた代償か……(唐突な中二病)。
そして、本命の悪魔業界カードだが、非常階段の上に上がると何と異界化した3階があってそこで売ってた。
インセンスカードに、基本的な低ランクカード、メタルカードなんかも一応売ってるのか。
こういうカードの使用は作品ごとに違ってたりして、合体する時に混ぜるか使うだけで身につくとかあるけどこの世界はどうなのか。答えは両方。混在しちゃってるね。
しかし当然のように使えばスキルが得られるカードの方が桁違いに高い。今はとても手が出ない。合体の時に混ぜる系でもちょっと高価すぎる、ディアカードで15万円ってちょっと高騰しすぎでしょ。有用なカードではあるけどさ。ちょっと手が出ないな。
あと、各種依頼もここで受けられるらしい。フリーの人はここメインで依頼を受ける人もいるとか。
でもオレ達は時間城所属だし、阿形さん達もハチマン神社所属、阿形さんは他にもプロテスタントなんちゃら会派(メシアンではない)にも伝があるって言ったら、ここの依頼は色々な所の委託なんで他に伝があるならここで受ける意味はないよって言われた。
そりゃそうだ。フリーの業界人の救済措置みたいな所でどこかの所属の人が依頼受けてったら空気読めてないなんてもんじゃないよね。
とりあえずここでやることは終えた。結局、明日合同の異界稼ぎに行こうという話がまとまり、多人数いるならばとオレ推薦の「片羽葦原」に行く事になった。
その対策にと、銃器ショップ「骨董屋」に向かったオレ達だった。
………………………………
片羽葦原は、渋田海岸に流れ込む渋田川河口付近に広がる葦の生えた湿地帯で、自然公園エリアがありそこから伸びるかなりがっちりした遊歩道を歩いていく異界だ。
悪魔はその中でも今回狙ってる場所ではレベル6~9あたりの鳥系悪魔と、カニ型のキャンサーと飛ぶエビ型のデッドロブスタのみ。銃器を整えて、人数がいれば今のレベルでも勝てる。
この異界情報を調べてくれたのはやはりニッチ。いい仕事してますねぇ。
そんなわけで、オレ達はミミカ、スガル、阿形さん、裕奈ちゃんの銃器を新調しに来たのだ。
「わしらは悪魔じゃし使えんがのぉ」
今、聖書型COMPから出た声は、阿形さんの仲魔で転生者、珍獣:ホネアリクラゲの瓜生ヒナちゃんである。
実は移動時間のうちに、阿形さんの所にオレの新たなる化身「ロッチ」を派遣することになり、早々に色々中を改装中。
とりあえず今は中にいるロッチが、まーてきとーにアレしてこれして話せるようにしたのである。
電装部分が少なくて難儀したようだが、ロッチがほとんどを中継して実際にはロッチがヒナちゃんの言ってる事を喋ってる形にしたらすぐ出来たとか何とか。なるほど……出来てるならいいか、分からんけど!
ちなみにヒナちゃんの種族、ホネアリクラゲは昔話の「くらげの骨無し」に登場する、まだ骨のあったクラゲであるとか。何となく強そう。レベル1……いや微妙に上がってて2だけど。
その姿はクラゲをモチーフにした上半身美少女、下半身クラゲ。全体的に青白く半透明な体に青く光るラインが走り、下半身の触手からかなり長い2本の触腕が伸びてそれは実際腕のように動かせるという。残念ながら眼鏡はかけていない。クラゲだからな。
まさかのじゃロリわし口調だとは思いもよらなかったが。
「銃器使うのは……4人か?」
皆一応設定上鍛えて悪魔業界に入っているとはいえ、趣味的キャラメイクが過ぎる。
スガルと裕奈ちゃんは華奢で背も低いし、ミミカと阿形さんも最低限文化的にサマナータイプとはいえ見た目優先で、ゴリゴリマッチョってわけじゃない。
大丈夫だろうか。
まあ、スガルはあれでギロチンアクスを振り回してバリバリアタックしてたし、見た目通りってわけじゃないんだろうけどな。
で、結局スガルはギロチンアクスが優秀で攻撃魔法も回復もあるので銃の新調は見送り。本人もアクスと銃選ぶようになると迷いそうって言ってたしな。
そしてミミカと阿形さんは、揃ってサブマシンガンを買い揃えた。あれ、銃の名前が固有名詞じゃなくなってる。ただのサブマシンガン?何で?
「悪魔業界の改造銃に直接表の商品名使うなとの『要請』でな……」
あっふーん……大人の事情かな?ゼロッチわかんない!
「それキモいからやめて」
「ちょ……直球はひどすぎませんかねぇ!?」
とにかく、鳥と言っても悪魔、一般的な鳥撃ちとは違うゲーム知識だけど、多分攻撃回数を取るこっちの方が正しいだろう。
裕奈ちゃんはスガルとは別の意味で新調は見送り。
ただスガルとは別の理由で、力が無くて拳銃以外無理そうだから。
どうもステータスが「魔力・知恵・運」タイプっぽいな。
銃を更新したのは2人にとどまったが、弾丸の方は全員「しんけいだん」で揃えたので、少なくとも片羽葦原では勝てる、と言っていいのかも知れない。ボスに行かなければね。
あ、ちなみにボスは「スチュパリデス」複数らしい。レベル30越えてるっぽいから勝てるわけないっすね。
しかし拳銃もサブマシンガンも同じしんけいだん使えるのか……ゲームじゃそうだったけどリアルじゃそうはいかんよな?なんかもっとごっつい銃でも使えます的な説明書きあるし……全銃共通?いやそこは悪魔業界の努力を褒めるべきかもしれないな。
名も知らぬ悪魔業界の先人達、ありがとう。
現実にスキルカードあったらそら高騰しますよ