女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記― 作:おかひじき
「フケイがそっち行ったぞ!」
「はい!任せてください!」
薄く潮風の漂う湿地帯に、サブマシンガンと魔法の音が響き渡る。
おはようございます、セラフィックアイドルにうのゼロッチでございます。
……基本的に素早く、ほとんど銃弱点の鳥しかいないこの「片羽葦原」で、オレは最初大して出来る事もなく、回復メインでアイテム係をしていたわけだが。
今日は約束していた通り、阿形さん達と合同での異界稼ぎだ。
ザコのレベルがレベル6~9の鳥系悪魔で収まってるこのあたりは、ちゃんと攻撃回数が多いか範囲の広い銃を用意出来れば今のオレ達のレベルアップに最適な場所なのだ。
ネット上の情報……ほぼDDS系だったが、ニッチが総ざらいして調べてくれた。
川を挟んだ上流部、スチュパリデスの縄張りから何やらオレら以外の戦闘音も聞こえるが、良くも悪くもレベル帯が違うからこっちからは手が出せないし、距離もあるから向こうから見ても関係ないだろう。結構異界ニアミスあるっぽいな。万が一の誤爆とかには気をつけないとな。
「オンモラキ4、ヒッポウ4!」
「多いな!よし、歌行くぞ!ゴーストさんはプリンパ!」
「あいわかった!」
ゴーストさんのプリンパと、オレとイッチ、ダブルの歌声が、葦原に響き渡る。
「怪音波乙!」
「怪音波言うな!……オレとイッチ、ついでにゴーストさんのプリンパで、敵計5体混乱か。悪くないな」
そう。ここでしばらく戦ってレベルが上がったら、いつの間にか「怪音波」を身につけていたオレ。最初はどう発動したらいいかイマイチ分からず、COMPから雑音を出したり奇声を発したりして色々試した結果、オレが霊体化しててきとーな歌を歌えば「怪音波」になる事が分かったのだ。クソが!
ちなみに他にもバッドステータス技としてはスガルが子守り歌、裕奈ちゃんがマリンカリンを使えるが、拳銃とはいえ銃弱点にしんけいだんをぶち込んだ方が強いので今はそうしている。ヒナちゃんはスキルがアクアとトラフーリとトラエストなんで、バトル的にはあんまり役目ないんだよな。最初のオレみたいに。
いやまあ敵の数が多すぎる時はトラフーリで安心出来るんだけどさ。低レベルなのにトラフーリとトラエスト揃ってるのは普通に凄いと思った。ホネアリクラゲってのは地上の浜辺と竜宮を行き来してたからだとか何とか。へーそーなんだー。
そうこうしているうちに、悪魔はサブマシンガンの連射で容赦なく倒され、ドロップ品回収の後にまた次の獲物へと向かう。銃での攻撃メインであまりペルソナは使わないので、スガルと裕奈ちゃんのディアで回復する。よし、無駄がないな。
ちなみに裕奈ちゃんの初期ペルソナは恋人LV1 スエノタマナだそうだ。何かフツーに半透明の活発系和装美少女って姿をしている。元ネタ分からんなー。まあ、分からなくても使えればそれでいいけどな。
この片羽葦原、例によって場所で出現悪魔が異なり、上流部、河口北部、河口南部に分かれている。河口南部には鳥ではないでかいカニのキャンサーと空飛ぶエビのデッドロブスタが出て、河口北部にはちょっと強い妖鳥ベンヌが出て、上流部はボスのスチュパリデスの縄張りになる。
当然上流部には近寄らないし、北部にもまだ近寄っていない。今日の所は比較的安全な河口南部でうろうろする予定だ。カニとエビは別に銃弱点とかではないが、サブマシンガンで十分対応出来るからな。
「というかもう昼だぞ。お前達は休んだ方がいいんじゃないか?」
「え?うわホントだ。ちょっと楽しくなって来たからっていうか、完全に時間忘れてたな。じゃあ一旦トラエストしてお昼にしようか。ヒナちゃん頼む」
「よし、行くぞっ!」
ヒナちゃんが触手もにゅもにゅすると、青白く光る渦が出現してさらにその中から触手が伸びて来て掴まれて渦をくぐる感じのトラエストだった。控え目に言ってキモイけど言うとヒナちゃんがかわいそうなので言わない程度の情けはオレ達にもあった。
………………………………
トラエストが終わった後、皆を改めて見渡すと、霊体のオレやゴーストさん以外、はねた泥がまとわりついててとてもお見せ出来ない惨状となっている事に気づいた。
「長靴用意しててまだ救われたな……」
下手に装備は変えられないが、せめて頭や靴は可能な限り沼地対応にしていたのだ。
おかげでスガルはQQメットにスク水に長靴に拳銃と、かなりマニアックな見た目になっている。
「このままでは無理ですわね。ワタクシ達の拠点で一旦水で流してからにしましょうか」
縦ロールの阿形の提案に乗り、近所にある阿形さん達の拠点で泥を落とす。
メシアではない十字教会の管理地にある裏の集合団地だ。
一軒一軒はプレハブよりはマシって程度だが一応一軒家で、集合団地の入り口に門があってチェックがあるので、装備そのまま入れるのは正直助かった。
玄関前に備え付けの水道で最低限泥を落とし、人間組は狭い風呂に交代で入る。
風呂から出たら、「スーパーふえんじ」まで昼食の買い出し。せわしないな。
オレがクソダサリュックに隠されたアームターミナルでは満足出来ず、わざわざ霊体化して駐車場に駐められた車の中から外をチラ見していると、同じようにヒナちゃんが阿形さんカーの中からこちらを見てもじもじしている。
なので隙を見てさっと。隣に寄って行った。まだあんま話したことないしな。
「何だ何だオレに興味あんのか?おおん?」
「なあ、ゼロッチどの。その……化身とやらはどうなんじゃ、どうやるんじゃ?」
「ん?化身?」
どうやら、オレが自由に「化身」を出して同期してってやってることに興味があるらしい。
「んー、どうやらこれは電霊の能力と『時間城の主』の影響があってこそこんなホイホイ使えるっぽいからなー。ハチマン様でホネアリクラゲでってのはよく分からないな」
「そうなのか……」
触手と触腕をだらんと垂らして落ち込むヒナちゃんがかわいそうになるが、こればっかりは教えられるものでもない。感覚と種族差だからな……。種族。種族ねえ。
「ホネアリクラゲって再ポリプ化出来たりしない?」
「え?何じゃ?再ポリプ化?」
「いやクラゲって繁殖形態が色々あって、クラゲの種類によっても違うからホネアリクラゲが出来るかどうか分からんけど、ポリプに戻って繁殖出来るベニクラゲみたいに再ポリプ化で繁殖出来たりしないかなーと」
「はえー……」
ただ、これをやるとポリプ化してから繁殖終了まで物理的に動きづらい状態になる可能性が高いな。今のヒナちゃんの戦闘スタイルとかスキル構成を見ると……まずトラエスト・トラフーリがあって、あとはアクアと……どくばり?
「魔法あればバトルも何とかなりそうだけど、まあマジで増えるつもりなら阿形さん達に相談しといた方がいいな。オレと違って実体メインの悪魔だとオレが分からない事もあるだろうし」
「そっかぁ、そうじゃな。一回増えられたら増えやすくなりそうじゃが、最初の一回はただ動けなくなりそうじゃしあやつらに負担がかかるのう。増えたらマグネタイトも要りそうじゃし……」
オレが気軽に増えてるのは、種族特性もあるが、オレ自身の手持ちマグネタイトもあるからだ。
野放図に増えるだけ増えるじゃ、即討伐対称になるだけ。
こう見えても必要な自重はしてるんだよね……。
「ふと思いついたが、クラゲなら海の異界運営とかどうだ?」
「えっ?」
「まあまずは1回は出来たらポリプ化して、分裂したのをボスにして、オレがCOMPの中で『同期』を教えるのもいいな。これも出来ればいいなって話だけど」
COMPの中の悪魔は、データ丸ごと入ってる場合と召喚契約だけ置いてある場合がある。
オレ達は今の所全部前者、データ全部COMPに入ってる勢だと思われる。
COMPの中で、電霊のオレが持ってる能力やスキルを教えられる可能性が……?
「まあ今のとこ全部夢みたいなもんだけど、色々試す価値はあるな」
ヒナちゃんの相談から、新しいひらめきを得た。
「まあ、出来たらいいなの話だし、オレ達が強くならなきゃ全部絵に描いたモチなんだけどな」
「そうじゃのう……」
その後、特にやる事もないオレらは、なぜかアイテム登録されていた何の変哲もないトランプで時間を潰した。……オレは自分の運が高くなってるのをまるっと忘れてたので大惨事になった。
2人7ならべで6と8ほとんどこっちとかもういじめだろ……。
ゲームじゃ正直クソステだけどリアルに影響する運ステってマジでやべーんだな……。
歌ったら怪音波になるだけで音痴ではない。これだけは真実を伝えたかった。