女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記― 作:おかひじき
「やりすぎっす……」
「はい……」
あっちが偽の塔ならこっちは偽カテドラルだ!とばかりに、上8階下8階の広大なダンジョン作ってたらダメ出しされた。解せぬ。サイバー空間なんだしいいじゃん。
まあ確かに、こんな広大な施設作っても『盛運の社』設置スペースにしか使わないんだし、地上部と地下1階以外は手抜きのワイヤーフレーム表示だから役に立たないってのもあるんだけどさ。うろおぼえだったから再現度もないし。
「まあ、電脳空間だしあって困るようなものでもないからいいんすけどね……異界拡張と攻略の準備も終わって、皆さん揃ってるんで声かけに来たっす」
どうやら盛運の社をモリモリ作ってたらいつの間にか一晩経過して、時刻は既に翌朝9時になっているようだ。……しまった、配信休んじまったか?ヨッチがちゃんとやってくれてただろうか?
「配信はオレがフラワー騎士団ダラダラ配信で繋いでおいたから問題ないぞオレよ」
おお、たのもしいぞヨッチ。流石オレの中でも一生遊んで暮らす覚悟ではナンバー1のオレ、そのための配信継続にかけては天下一品だな。
サーバルームからミミカのアームターミナルに移動し、それを装備したミミカがヴァーチャル・バトラーでサイバー空間に入る。何だか奇妙な感覚だな。
「はー、ここがサイバー空間かー。今の所外と変わりはないか?」
「まだハチマン神社の異界内だからね。ここから佐部利メシア教会の異界に繋げるらしいけどどう?」
「ああ……もう、繋がったなこれ。仕事速いわ」
ハチマン様が拡張して接触した異界から、サイバー空間同士でオレが直近の侵入経路を繋ぐ。何か侵入対策でもあるかと思ってたけど何もない。こっち方面は素人というか対応力ないのかもしれない。
繋がると同時に、待機していた化身達が完成させ『盛運の社』がマグネタイトを吸い寄せ始める。すごい勢いで吸ってるけどこれ大丈夫だよな?パーンとはじけたりしない?
「余ったらハチマン様が溜め込むんで大丈夫っすよ。ゼロッチさんも溜めるだけ溜めとくといいっす」
お、そうか?ならばとばかりに、溜まったマグネタイトをミミカのアームターミナルや阿形さんの聖書型COMPに流しておく。いやーウハウハだな!
「しっかし良くもまあこんなにマグネタイトが溜まってるもんだな。よほどいい場所だったのか?いや、それくらいじゃないと偽タルタロス作って全能のバランサーとバランサーの群れを配置するなんて出来なかっただろうけどさ」
勢いよく吸い上げられるマグネタイトは、そのまま相手の溜め込んだ実績を表す。
「最初からってわけでもないでしょうが、良くぞここまでって感じですわね」
この場所、佐部利メシア教会がよほど美味しかったのか、それとも高い実力やリソースを持った転生者だったのか。
「そろそろ入り口で待機しといた方がいいんじゃない?」
もう結構な時間、マグネタイトを吸い続けている。そろそろ敵側も焦って雑魚シャドウを「外」に出してくるかな?
オレ達はハチマン神社側の新異界を出て、佐部利メシア教会……その電脳側にそびえ立つ光り輝く塔のエントランスに突入した。
………………………………
結論から言うと、今オレ達は既に塔を上っている。オレ達のマグネタイト吸い上げ作戦が上手く行き過ぎたのか、雑魚シャドウはほとんどエントランスまで降りてこず、降りて来たのもかなり弱っていたので遠距離からの一撃で全部ノーダメージで勝利した。
まあ、実際ゲームだと一部以外の一般シャドウはその階層から出てきたりしないからな。無理やり命令しても無理があるのかもしれない。
とにかく、こうなるとエントランスで待ち受けするのもどうかとなって、マシン部隊のうちレベル低めの……それでも50は越えている宇多田ピルクちゃんとニヒニヒ2世号さんに、こちらもレベル低めのオレの新化身5人衆とみる子をエントランスに残し、ミントさん……レベル54の「エストマ」を使って一気に塔を駆け上った。
それでもしばらく上るとレベル68の「光と闇のバランサー」に遭遇するようになったが、数が少ないのかほとんど単独で、ミミカの鎮怪符でほとんどの攻撃を防いだ後にオレ達のサンダーブラストの餌食となった。雷弱点だったのが運のつきだ。……1回こいつの奇襲でマハムド受けたけど効かなかったので泣かない。ま、マハムドの演出っていうかあの闇の魔法陣なんて怖くないんだからねっ!
「誰に強がってんだよ……ほら、もう行くぞ」
スガルはかなり調子よくシャドウを倒し、ペルソナ入手も順調らしい。そして特筆すべきことに、この塔を上る過程で『審判』のコミュニティが何度も上がってるとか。原作ゲームでもあったな、そんなの。
「もう何階目だったかな……そろそろ全能のバランサーがいる階層だったか?」
「いやあいつは……次の階でありますね。弱ってるはずですが」
階段を上り、次の階へと足を踏み入れる。そこには、今まで見つからなかったエントランスへ行き来出来る双方向ターミナルがある。
「ターミナルがあるな……全能のバランサー以外のボスが作れなかったのか、この装置の配置を最低限にしたかったのか、ここだけ『ボス部屋仕様』ってわけだ」
一応装置を稼動させて、奥へと進む。覗いた先の通路に、何か倒れていた。
「いますね……倒れてるけど間違いありません、アレは全能のバランサーであります」
時折ごそごそ動いて立ち上がろうとしているようだが、浮く事すら出来ずに倒れ伏す。
「どうする……まだ動いてるぞ」
「一斉にかかれば倒せない?」
「いや、やめとこう。あいつ人数の差が全く弱みにならないからな」
最上級の全体魔法攻撃が飛んでくるからなぁ……ここからでもオレらの全滅もありうる。
とりあえず、遠くから様子を見る。……こいつ速さが今のミミカより上なんだよなぁ。確か60以上だったはず。一撃圏内まで弱ったらとどめだけでもって思ってたけどやめだ、こいつはマグネタイト枯渇でこのまま倒す。
……それから、全能のバランサーがシャドウ特有の黒い蒸気か飛沫のようなものを出して溶けて消えるまで小一時間かかった。その瞬間、オレと化身のレベルが一気に10上がった。え、そうなるの?オレが倒したってことになんのか。ハチマン様あたりとは経験値分割してるのかも知れんけど。
「さて、この先行けると思うか?」
「行けるでしょう。全能のバランサーが倒れたということは、他のシャドウも、悪魔も全滅しているはずですわ。この塔にいたのはあとは有象無象のバランサーと、最上階の悪魔と人間……でしたわね?」
バランサー、十字の形をしたシャドウ。教会だからか?何にせよ、この塔にはもう敵らしい敵はいないだろう。オレ達は双方向ターミナルを使って一旦エントランスの人員と合流し、最上階を目指した。今回はものすごいレベル上げになったな。
不気味なほど静かな塔の中を、淡々と上って行く。時折シャドウが消えた跡らしい黒っぽい痕跡が見えたが、特に何事もなく最上階らしき階層にたどりついた。
「……りだ……オワ……終わりが来る……ヒヒ……」
室内のはずなのに夜空が輝く大広間にたった一人。ファンタジー作品で見るような、背もたれが異様に高い白の玉座に女が座っている。紫色のドレスに黄緑の髪、赤紫っぽい肌をしているので悪魔だろうか?この状況で?他に悪魔はいない。流石に生き残ってはいなかったようだ。
「こいつ、ニュクスだ……」
あ、そうだ。真女神転生2における夜魔:ニュクスの姿。こんな感じだった。そしてアナライズしてみると、悪魔ではなく「ペルソナ使い/チャネラー」という表示が出た。
「そのパターンかよ……」
どこかから何かを受信したペルソナ使い。あるいはその影響でこうなったのかも知れないが……。例が例だけに、このパターンにいいイメージはない。実際こいつもおかしくなってるみたいだしな。
ペルソナ使い/チャネラーなのに姿がニュクスになってるのは、シャドウが暴走してるのか、チャネリングした悪魔が暴走してるのか……もしこいつがオレの予想通りリアルからの転生者なのだとしたら、それはあくまでも『設定』なんだから自分を強く持ってればどうって事ないはずなんだが……。
「こう、転生するまでは『設定』に過ぎなくても、チャネラーってことはずっとどこかから何かを受信してたんじゃ……それは……」
裕奈ちゃんの思いつきで、腑に落ちた。そうか、頭の中で誰かがずっと囁き続けたような感じで、それがよりにもよって本人はペルソナ使い、囁くのはペルソナで重要な役割を果たしたニュクス。
「実際変わったのはこの見た目だし、レベルから見てもチャネリング先はただの1悪魔、真女神転生2あたりの夜魔:ニュクスだったんだろうが……そんなことを夜魔:ニュクスが説明して転生者を安心させてくれる事もなかった……んだろうな。絶対的などうしようもない存在と繋がってると思い込まされればこうもなるか」
いざ戦いが始まるかと思ったが、こいつはぶつぶつ呟くだけでろくに動く気配もない。この空間に生活感は全くないし、実際どうなってるかは知らんけど身体は夜魔:ニュクスに近づいてしまっているのかもな。このまま放置され続けたら本当に偽ニュクス降臨の真似事くらいは出来たかも知れん。危なかった。
「戦いにはならなそうですわね。ペンパトラをお願いしますわ」
「あいよー」
精神が異常をきたしているなら、ペンパトラで直るか?オレのペンパトラを喰らえ!
「お……?」
効かないかとも思ったが、どうやら効いたらしい。
「お、お前ら誰……っていうか何、何なの!?」
「何だと言われても……デビルサマナーとか?」
「ペルソナ使いもいるぞ!」
「違う、そうじゃない、お前らがそっちの業界のどういう集まりなのかって聞いてるんだよ!」
どういう集まりかって改めて言われるとそうだな、オレらは「アニマウイングス」って名乗ってる性転換リアル転生者の美少女集団で、メカ娘さんたちは警視庁第2マシン部隊でありなおかつ同じくリアル転生者集団。メシア教のSOSを受けた地元の県警の要請を受けた警視庁とハトの依頼を受けてここに来た、でいいかな?
そういう感じでミミカが説明すると、見た目ニュクスは微妙な顔で言い訳とも自白とも取れるいきさつを話し始めた。
まず、こいつの名前は美夜(ミヤ)。あの日、夜魔:ニュクスに転生させられたらしい。初期ガチャを引いたはいいが【幽鬼】とか【外道】とか微妙な悪魔ばかりで、一番良さそうな【ペルソナ使い/チャネラー】に飛びついたとか。わかる、わかるぞ。オレも一歩間違えたら悪霊とか怨霊だったからな。
そして【ペルソナ使い/チャネラー】として佐部利メシア教会の人間となり、力をつけたらてきとーに抜けるかとか皮算用していたらニュクスのチャネラーであることが即ばれて問題になり、悪魔祓いの人間を呼ぶと言われて軟禁された。……それはそう。
当然チャネリング先のニュクスと本人は焦りに焦って「こんな教会壊れちまえ!」とばかりにコストもリスクも度外視で異界化をやらかして、巻き込んだ隣の部屋がサーバルームで、この土地があまりにも良すぎる霊地だったためにごらんの有様であると。つまりほぼ単独犯。
「電霊とかそっち方面じゃなかったんですね……電脳異界方面が充実してたから最大限警戒してたんですけど」
「そうだよ偶然だよ……それにそういう能力があったり仲間がいればもっとこう……動けてるわ。ホントに」
ニュクスが自分を大きく見せようとしてついた嘘、そのせいもあって追い詰められてヤケクソ気味の暴発、事が大きくなってしまったと。はー……。
悪魔ニュクスは普通にマグネタイト枯渇で消えた。