女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記―   作:おかひじき

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 隠し玉があっても無理なものは無理


一撃でクリア

 翌日。何か意義有りげに盛り上がった割には特にこれといったトラブルもなく……いや、オオトリアン・フォースの奴らにとっては身の破滅ではあったが、一撃。たった一撃で大体の決着はついた。

 

 いやまあ事前の情報収集があった上で相手が既にメガテニストにやられて敗走済み、レベル差もあってこっちがアホみたいな失敗しなければこうなるよなって感じだったけどさ。

 

 まず奴らの無防備スマホや端末に侵入したオレの化身達が一斉にアラーム機能やら未使用の着信音を鳴らして隙を作り、ミミカが最速で禁凝符、次いでスガルが呪殺貫通の検証ついでに放ったマハエイガオンで全員倒れた。

 

 あー……エイハ系も呪殺貫通の恩恵受けちゃったかーそら終わるわな。一応インストールソフト活用して奴らの耐性見てたオレはしっかり奴らが呪殺無効以上の耐性揃えて埋めてたのが見えたので、まあ何だ、侘びさびを感じる?かわいそうって気は全く湧かないけどな。

 

 呪怨属性なので周囲を全く破壊しないのも良かった。一応森林管理施設だか異界管理施設だかの建物の中だったからな。条件には入ってないけど壊さない方がいいだろう、多分。

 

「これで……いや、今更何が変わるわけでもないんだけどさ」

 

 ミミカは倒れた奴らを見渡して何とも言えない顔をする。ああうん、結構大きな目標なのにあっさり片がついたからね、そんな感じするよね。

 

「レベルMAXだ……」

 

 そんな中、スガルのコミュニティ「愚者」が初めてのレベルMAXになったようだ。カマクラゴンゴロウがフツーに作成可能になったらしい。

 

 そしてオレ……正直こんなもんか?って感じだな。ゲームならたとえ弱い敵でもラスボスなら第2形態とか強い真ボスを召喚したりとかあるものだが、まあリアルだからな。こんなもんなんだろう。

 

「おーいゼロッチさん、何か捕まえたよ」

 

「ん?」

 

 念のため周辺の通信やらサイバー空間を監視してたオレの化身とみる子が何か捕まえたみたいだ。

 

「サイバー空間でみる子と化身が何か捕まえたみたいだ、ちょっと見てくる」

 

 ミミカ達に断って、ミミカのアームターミナルからサイバー空間へ入る。みる子とオレの化身達と、見たことのない悪魔が1体。既に瀕死だ。外道:ドッペルゲンガー LV41。何か変だな。ドッペルゲンガーにしてはちょっとレベル低いか?

 

 いや、ドッペルゲンガーらしく影みたいになってるが、その姿はついさっき見た奴らの1人。一番偉そうな服を着てた奴。

 

「ひょっとして……教主の?」

 

 アナライズしてみるとオオトリアン・フォース教主……?ドッペルゲンガーが?いや、なんかそれにしてはマグネタイトの感じがおかしい、まるで人間みたいな悪魔、それこそオレがこっちに転生した初日みたいな……。そうか。

 

「こいつ……入れ替わったな?」

 

 ドッペルゲンガーに出会った人間は死ぬと言われているが、なぜ死ぬかというとドッペルゲンガーと入れ替わって、だ。

 

 憑依系の技術には事欠かないこいつらだ、ドッペルゲンガーの入れ替わりを利用して万が一の時に逃げおおせる隠し玉を教主が確保していた、とか。

 

「やれるならやるよなぁ?」

 

 ここで逃げおおせて何とか再起を図る、もしくは流石に教主の身体は蘇生して情報収集に使われるだろうから、その時……再チャンスが来るだろう、という読みでもあったのかも知れない。

 

 でもこのドッペルゲンガーが捕まったら意味ないよな。

 

「お前らに何が分かるっ!!」

 

 んあ?

 

「受け継いで、まとめて、今まで積み重ねて来た何もかもが、神の怒りとやらで全部御破算だっ!懸命に生きる人間の努力を気分次第で無に帰す神など存在していいはずがない!貴様もそうは思わんのかっ!」

 

 なるほど、なるほど?努力?オレらの世界に死の呪いをばら撒き、リアル世界のオレ達を苦しめ、得られたはずの全てを掠め取り、最後の最後の天罰の瞬間まで止まらなかった数々の悪行が、努力?

 

「努力が貴様の免罪符か」

 

 何というか。こういう奴いるよとしか申し上げられない。不正や犯罪をやるのが賢いとか思ってんだろうなー。

 

「ど、どうやらお前らはこの地方の神社勢力の再興を試みるようだが、あんな姫巫女では頼りないだろう?実はな、あの姫巫女は元々中年の男で親にも先立たれたニートの怠け者だ、今からでも我らオオトリアン・フォースの者達を拾って組織をきちんと固めた方が……」

 

 怒りで脅してこちらが平然としてるのを見ると懐柔に来たか。下手くそな悪魔交渉を聞く悪魔ってこんな感覚なのかな。

 

「お前も悪魔として自由に生きたいのなら我らに従った方がいいぞ?全くメガテニストの連中と来たら、我らに従って六地蔵法輪の再開発に手を貸せば安楽に生きられたものを……」

 

 その瞬間。オレと周囲を囲むオレの化身が一斉にフラッシュした。その「ドッペルゲンガー」は、ただの写真と成り果てた。

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!?」

 

「あ、フォトンショットが出ちゃった。あんまムカつくこと言うから……」

 

 何か重要な情報でも漏らすかと思ってちょっと話聞いたけど、ダメだ、もう依頼終えて引き渡そう。後始末には県警が来るって言ってたけど最終的には警視庁に引き渡されるみたいだし、いまこいつ悪魔ならさっさと警視庁に直通で通信回線から引き渡した方が有効活用されるでしょ。結構レベル高いから県警だと不安もあるしな。

 

「フハハハハ!我が名はファントム!ロード!」

 

「うわ!びっくりした……何だファントムさんか」

 

「ファントムは不滅!」

 

 何となくファントムさんが見守る中、化身達に回線経由の護送を任せて、一旦アームターミナルに戻る。

 

「ま、待て、もっといい提案が……」

 

 写真になってもまだ何か言ってるようだが、どうせ聞くだけで気分が悪くなるような提案だろう。無視無視。さて、ミミカ達に報告しないとな。

 

「何だった?」

 

「教主がドッペルゲンガーと入れ替わって逃げようとしてた。オレらで捕まえたけど」

 

「うわ、マジかよやべーな。捕まって良かった」

 

 そこらに転がっていたオオトリアン・フォース残党どもが、サラスヴァティのリカームで最低限文化的に息を吹き返している。

 

 元教主の体は入れ替わりの影響からか「DEAD」状態だったので、仕方なくオレのサマリカームで復活させたところ、即座に土下座してミミカ様の仲魔にしてくれと懇願して来た。あーうん、元ドッペルゲンガーから見たらそうなるかもな。

 

 ドッペルゲンガーとしての念願かなって人間になったのはいいものの、その人間は追い込まれた裏の重犯罪者、DEAD状態だった所を復活させてもらったわけだからな。この様子を見るに扱いも悪かったようだし、こうなるのも当然といった感じかな。

 

「もうあなたほぼ人間みたいなものだし仲魔には出来ないけど……ちゃんと『おつとめ』を終わらせたらいいよ、人として雇っても」

 

「おい、いいのかミミカ」

 

「様子は警視庁経由かにうちゃんが見てればいいし……この元悪魔さんはそれほど悪くはないしね」

 

 そりゃそうだ。ドッペルゲンガーとして本懐を遂げただけだもんな。罪っちゃ罪だけど悪魔としてはフツーだ。

 

 ただそれで表向きの教主の罪……色々背負わせるのはやりすぎな気もするしな。悪魔の方がマシに見えちゃうのはアレだが、これもまたそんなもんなんだろうなって思いました。まる。

 

「失礼、県警の者ですが……」

 

 おっと、スガルがいつの間にか県警の「後始末」の人を連れて来たな。スガルはいつの間にかスク水からいつものTシャツとミニスカ……いつもよりは若干女の子寄りの服に着替えていた。今日のTシャツの文字はSaGaだ。これも生き物のサガか……。

 

 阿形さんもさっさと事務員風の地味な仕事着になっていた。ミミカはまだメイドバニー装備だが、オレに武器を預ける程度で着替える気はさらさら無いようだ。ある意味潔いな。

 

 後始末も終え、スガルとヒナちゃんの魔法でさっさと帰る。今日は結構な大業を成した気分だ。

 

「隠者コミュニティが上がった!」

 

 お、おう。てっきり審判コミュニティが上がると思ってたんだけどな。そうか隠者、ミミカのコミュニティが上がったか。まだ何かあるのかもな。

 

 オレはいつも通りデスクトップCOMPに戻り、化身達と配信の準備をする。表に出たしバズってるしいきなり知名度が上がって大変だな。

 

 例の発表に当たって新しく作ったアカウントの登録者数が既に80万人に達する勢い。すぐ100万人も突破するだろう。DDSの方も23万人行ってる。わーすごーい(思考停止)。

 

 まあ、人が増えてもやることは変わりない。オレはオレだ。

 

「今日は宝石クエストします」

 

 コメントがものすごい勢いで流れて行く。これが80万人パワーか。フフフ……怖い。

 

 宝石クエストは大蜘蛛に乗った魔法使いが世界をウロウロして街を占領して行くゲーム(偏った知識)である。捕まえたモンスターを乗り物にしたりモンスターで魔法の研究をしたりも出来る。戦闘が全部宝石パズルなのが大きな特徴だ。

 

「ラスボスさん強すぎるんだよなぁ……」

 

 クソ強いけど、とりあえずラスボス倒せるまでやろう。オレはリスナーそっちのけで、何度も何度もラスボスさんとの対戦に熱中した。しかしどうやらそれがリスナーさん達には面白かったらしい。なぜだ、ラスボスさんは結局最後の1回しか倒せてなかったのに。

 

「まあ、セラフィックアイドルにうちゃんはかわいいからな、見るだけで幸せなのは仕方ないよな?」

「ぬかしよる」

「まーた始まった」

「思い上がって行く」

 

 配信も既に終わり、化身や仲魔さん達との雑談のんびりタイムだが、唐突に最近見なかったセブンが帰って来た。

 

「Very No!!」

 

 ……なんか翻訳サイトを参考にして英語?らしき何かを身につけたらしい。なお英語クオリティ=翻訳サイトや自動翻訳。英語での配信に挑戦しようと思いついたとか何とか。

 

「まあ……やれるならやってみようか」

 

「イエス、アイドー!」

 

 大丈夫かな……これもオレと同期するんだよなー。まあ、警視庁経由で情報が入るようになったとはいえ、海外の裏の状況を知るには英語くらいは……とも思うし、いつかはやっといたほうがいい事ではある。

 

「なるようになるかー」

 

 やることが増えれば化身増やせばいいし、どうにかなるだろう。オレは一日の終わりの同期のやり取りと同時に、スリープモードに入る。明日の予定は……その次の予定は……と、積み重なる未来に思いを馳せながら。

 




 オーバーキルされて心が折れた11人の幹部+妙に素直なドッペル教主を引き渡された県警さんの心情=プライスレス
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