女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記― 作:おかひじき
マスコミが集まり、フラッシュが焚かれている。警視庁の会見場にマシンタケルさんとワンだゆうさん、あと良く知らないドローン部隊の隊長さんが並んでいる。しかし、今回ばかりはオレ……と隣にいるイッチが主役の記者会見であることは間違いない。わざわざ存在感増して写真に写るように、一般人にも見えるように気を使ってるしな。
どうしてこんな事になってるかというと、アレだ、マシン部隊もしっかりアピールしてるしバズってるんだけど、オレは(表向きには)警視庁発表と同時に配信を始めたり積極的に多種多様なSNSに書き込んだりしれっとDDSにあった動画を表向きに修正してガンガン表の動画サイトにアップロードしたりしてたので、警視庁マシン部隊関連の中でもものすごいハイスピードで活動してるように見られて、いつの間にか人気ナンバー1(警視庁比)になってしまったらしい。
いやまさか最初の頃のつたない配信とか、逆受け狙い?でUPした自分で書いた過去の小説を自分で朗読する拷問配信とかが表への再UPで今更ぐんと伸びるとは思ってなかったなあ。
「えー、オレがセラフィックアイドルにうのゼロナンバー、ゼロッチです」
「イッチです」
オレ達が名乗ると、それだけでまた大量のフラッシュが焚かれて辟易する。そんなに写真とってどーすんだよ。いやオレ達かわいいから写真撮りたいのは分かるけどさ。
「ゼロッチさんとイッチさんにお聞きします。セラフィックアイドルにうの方々は大変よく似てらっしゃいますが、これはコピーのような理解でよろしいのでしょうか?」
「いえ、繋がってはいるけど独立して動いている一つ一つのプログラムだと考えてください。それぞれに個性はあります」
これは本当にそう。同期で色々なスキルや能力は同じになるし記憶も共有出来るけど、オレはニッチほど裏方をやりたいとは思わないし、セブンほど連絡なしで色々な場所をうろつこうとは思わないし、ヨッチほどアニメ漫画ゲームを24時間体験していたいとも思わない。……半分くらいか?それでも十分長いな。いやそんなことはどうでもいいんだ。
「様々な悪い電霊が犯罪を行っている、これについてはどう思われますか?」
「オレはそういうのはダメだと思うので警視庁に協力しています。オレはかわいく強く美しく、最善の電霊ですから、全ての電霊の未来を考えて行動したいと思っています」
この、『悪い電霊』に関しては警視庁が『悪魔』を『電霊』に言い換えて発表してしまった勘違いというか、悪魔の概念がちゃぶ台返し喰らったようなもんだが、現在、実は本来の意味での電霊も警視庁とメガテニスト経由で何人か確保しつつある。現時点で見つかったのは計3人って聞いているが……全員オレらと同じバ美肉転生者で、最初のみる子と同じようにレベル1でフラフラネット上を徘徊して色々ハッキングとかタダ見とかちっちゃい悪さをしていた所を捕獲……いや、どちらかというと保護されたとか。
そいつらの面倒見てくれないかなーって空気は正直感じるが、どうするかはまだ未定。決まってるようなもんだけどな。みる子はまだ善良……姫だけど悪くは無い子だったからいいけど、そいつらもいい子でありますように。
「にうさん以外の協力的な電霊というのはいないのでしょうか?」
「一応いるにはいますが、まあそれについてはオレだけがあまりにも優れているって事ですねー。他の子達はオレほどの能力は持っていません」
超傲慢な物言いだけど、それが現実なんだよなぁ……オレ以外にオレの能力を求められるとその子が困る。これはかなり実感している。オレら……主にニッチの情報と、警視庁・メガテニスト・アルカナ経由の情報、現在全て見ようと思えば見られる位置にいるんだけど、それによると少なくとも日本国内にはオレに匹敵する電霊はいない。
レベルランキング(電霊)でも1位オレ、2位みる子っていう有様になる。オレだって出来れば平和にネット見るだけで過ごしたいとは思ってるけど流石にこの世界じゃ不安過ぎて出来なかったんだけどな。案外頭ノーフューチャーな転生者多いのかな……?
「日本以外、海外の電霊についてはどうでしょうか?」
「それねー、オレも翻訳サイトとか参考にして外国語学習しながら色々調べてますけど、どうも電霊事件が既に起こってたらしくて、現在あんまりよろしくない状況みたいなんですよね。今の所オレには直接関係はありませんが、まあオレ個人には大きすぎる話なんで、あとは警視庁、国の判断による感じですかね」
海外はねー。一応情報は入って来てるけど。基本あの「天罰」でかなりのダメージ受けてるんだよね。一応転生者はいるっぽいんだけどカバー範囲と人口比と原作知名度的な問題でごく浅いライトなファン層とか名前知ってるレベルとかでもガンガン転生してて、かなり最近の作品系のペルソナ使いに偏ってるとか。まあ女神転生・ペルソナ知識なら任せろ!国境や言語など飾り!で完璧な濃いファンは少数ではあるけどいるんで、そういう人らが色々な形で知恵袋になってるっぽいけど。
そして天罰の影響が一神教圏だけかと思えば、そうでもない。例のアイテム……六地蔵法輪や七元徳の天使像の生産をかなりの数請け負っていた中国、インド、その他「この2つのアイテムを生産可能な信仰が通用していた国」はこちらの方で天罰の対象になってしまった。
そしてそれ以外……天罰で大変な事だけかと言えばそうでもない。四文字神が実際に介入した影響で、それ以外の悪魔の影響力が縮小し四文字神系……天使の勢力が拡大していた。
オレ達に直接かかわった中では……ニュクスがあっさり消える一般悪魔だったこと、ガイア系がお話にならないほど動けていなかったこと、メシアンデスマーチもそれが原因と言えるか。
メタ情報ではあるが、ニュクスという例もあることだし色々な原作のラスボスさんも弱体化したりいなくなったりしてる……といいなあ。
「セラフィックアイドルにうということですが、これはいわゆる十字教系の天使と考えてよろしいでしょうか?」
「違います」
そこ!そこ混同しちゃいかんぞ!
「思わず天使と呼びたくなるような美しさ、しかし天使ではないのです。なぜなら天使であれば宗教上の理由でどうしても推せないという方も出てくるからです。つまりオレは誰からも推されるために天使ではない。お分かりいただけましたか?」
「は、はい……」
あーいかんちょっと早口になっちゃったなー、でもこれ大切だからなー。神の手下になるわけにはいかんのだ。
「今後、電霊の専門家を中心にセラフィックアイドルにうさんを派遣して事態の収拾を図るとのことですが、その専門家についてお伺いします。専門家とは具体的にどういうものですか?」
「詳細については警視庁、警察庁にお問い合わせください。一部は内閣府等でもお問い合わせを受け付けているようですが、防衛省に関しては大部分機密扱いになるのでお問い合わせはご遠慮ください」
実は防衛省からも協力のお問い合わせはあるんだよね。あんまり一気に増やすのもアレなんでまだ受けてなかったけど、まあ同じような化身派遣なら受けてもいいかなって思ってる。
「配信についてお伺いします。公費でゲーム実況するのはいかがなものかという意見についてはどうお考えでしょうか」
「そのご意見に関しましては、前提としてオレ達セラフィックアイドルにのことを理解していただく必要があります。オレ達はプログラムです。なので24時間稼動しています。ゲーム実況をしている日にも、該当のセラフィックアイドルにうは通常業務は終わらせているのは大前提として、配信や動画撮影の大部分は該当業務とは無関係の配信専門の別のセラフィックアイドルにうが行っていて、配信の収益も専門の担当のセラフィックアイドルにうが管理しています。社会通念や法に抵触することは無いと考えます」
その後も記者会見は続き、今回はそのほとんどをオレが答える事になった。いや分かるよ?オレかわいいし、電霊記者会見は初めてだし、その電霊はオレとイッチだけだからな。でも実際の情報としては警視庁マシン部隊の方々の方が詳しい話聞けたはずなんだ、何しろオレは一応外部協力者ポジションだし、色々最初にインストールされてるマシン部隊の人達と違って教えてもらったこと以外は承知してないからな。
マスコミがオレという話題性で罠に嵌められたのか、警視庁の思惑に乗せられたのか、まあ別に今回の記者会見だけで全部情報公開しなきゃいけないわけでもないし、これで良かったのかも知れないな。
マシン部隊の人にこっそり補助されながら、質問に答えて行く。だからオレに警視庁の方針とか警察庁、防衛省の電霊に対する待遇や考え方とかその組織の内部事情聞かれてもわかんないんだって。結局そういうのはマシン部隊の人に回線からこっそり聞いたりして答えて二度手間。はあ。
マスコミ諸氏はオレの答えてる絵が欲しいんだろうな……。気持ちは分からんでもないけどなぁ。
………………………………
「だから、わたしには無理ですよ!」
警視庁マシン部隊のオフィスに、みる子の声が響き渡った。
「だぁーいじょうぶだってぇ、やれば出来る!にうちゃんに出来る事がみる子ちゃんに出来ないってことはないってぇ」
警視庁マシン部隊、黄緑色とブルーに光る技術系眼鏡っ娘の眼鏡っ娘フリークスは、にうちゃんだけに頼り切ってると多様性や柔軟性が失われる……そういうもっともらしい理由でみる子の能力開発?をしようとみる子をそのまま能力開発の依頼で呼んだわけだが……。
成功報酬のゲーミングCOMP(当然虹色蛍光色+ライティング)に惹かれて来たはいいが、当然みる子に、ゼロッチのような頭おかしい電霊の才能は無い。
「にうちゃんとかヒナちゃんは化身とか分裂とか何だかんだ悪魔なら増えるのは当たり前みたいに言いますけど、あんなの作りたくないです、頭おかしくなります……」
「え……?」
「何で意外な事言われたみたいな顔してるんですか、エーニさん?」
そもそも普通の人間は体が複数あったりはしない。元々狂気的な悪魔の才能があったのか、ニャルラトホテプの化身と合体した影響か、ゼロッチはいとも簡単に大量の化身作成と同期、本体と化身の絶対的上下関係構築をもこなしていたし、ヒナちゃんも何だかんだでゼロッチのアドバイスだけで肉体を変化させて分裂するという芸当を成功させていたが、仮にみる子が何らかの方法で分身を作ったとして、すぐに人としての精神的個性を見失い、ただの電霊と化す。みる子はやる前からそれを何となく察していた。自分の危機に関する勘だけは鋭い。だって心根から姫だから。
「なるほど、なら『キャラクリエイト』感覚でみる子とは別の電霊を作るならどうだ?」
「キャラクリエイト……?」
ゼロッチほどお手軽にもう1人の自分を作れたりはしない、みる子にも出来そうなプラン。ゲームのキャラクリエイトのプログラムを流用して、とにかく新しい電霊を作り育てることは出来ないか?と、エーニは思い付きを口にした。
「やったことはないけど……それなら、出来るかも」
みる子だって電霊である。ゲームのプログラムを小さな電脳異界化して、そのゲームに則ったやり方でキャラクリエイト、マグネタイトの補助を入れつつレベル1の悪魔を作るくらいは出来るだろう。その作成の仕様上、『電霊』『ウィルス』『ワクチン』あたりのどれかになる……異界の雑魚悪魔の湧きに近い形になりそうだが、レベル差で従えればボスのみる子の言う事は聞くだろう。ちゃんと従える手間がかかるので小数になりそうだが、ゼロよりは多い。
「これが出来たら姫呼ばわりもなくなるかな?」
「しもべを従えるのは姫っぽいのでは?」
「……そうかも?」
何はともあれ、その日みる子は初めての電脳異界作成と悪魔作成に成功した。報酬のゲーミングCOMPの中に作ったので、エーニに頼んで拠点まで運んでもらうことになったが。
それは小さな一歩だったが、みる子にとっては大きな一歩だった。
どんなに高レベルでもメインの仕事が警視庁関連になっても本業は配信業だからね、仕方ないね