女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記― 作:おかひじき
その日、オレ達は片羽葦原近くの集合団地に向かっていた。
新しく礼拝堂を建ててハトさんの居場所にする。そのための小さな礼拝堂が完成したと阿形さんから連絡があったからだ。電霊公表関連のゴタゴタで所属会派が電霊(悪魔)対策を堂々と出来るようになって、その先駆けの予算と権限をちょっと分捕れた的な話だとか何とか。
「あら、ごきげんよう。よく来てくださいましたわ」
礼拝堂だけど十字架つけただけで他の家とサイズは変わらないなとか、中も質素だなとか色々感じた事はあるが、オレらはまず阿形さんの服装に目を奪われた。
「超ミニバトルシスター服……だと!?」
簡単に言えば、アニメやゲームに出てくるような白黒だけど超ミニで露出度の高い派手派手なシスター服だ。もちろん太ももには銃のホルスターが取り付けられていて、頭には何も被っておらず阿形さんの金髪縦ロール眼鏡がこれでもかというぐらいに強調されている。
「これでシスターとか無理があるでしょ……」
「正式なシスターではないから問題ないですわ」
「え?」
オレは初めて知ったが、どうやら阿形さんの所属する会派にはシスターというのはいないらしい。じゃあ何でわざわざそんな露出度の高いシスター服を着てるんだろうか。
「コスプレですわ!」
ハトさんが見てるのに改造シスター服のコスプレとか、神をも恐れぬとはこのこと、阿形さん、恐ろしい子……!
「でも派手派手でセクシーなバトルシスターとかロマンですわ!自分がそうなれるのにそうならないのは許されないでしょう?」
「あっはい……」
阿形さん結構全体的にしっかりしてるのに趣味になるとわが道を行くになるよな……。恐る恐るハトさんの方を見るが、特に変わった様子は見受けられない。意外と平気そうか?
《子らの服装はすぐ変わるからな……それに若気の至りには自ら気付くべきでもある》
おい言われてるぞ阿形さん、若気の至りっつーか黒歴史っつーか……服装に関してはオレらもそうだけどあまりに的確すぎてなんか変な笑い出るわ。
「それで、『平和のハト』さん、礼拝堂の居心地はどうでしょうか?」
《うむ……悪くない。あとは子らの祈りで満たされれば、申し分のない祈りの家となるであろう》
感触は悪くなさそうだな。
《かくあれかし》
ん……一瞬ハトさんに後光が差したが、何かしたかな。だが相当言葉を選んだみたいだ。こうあって欲しい、申し分のない祈りの家になって欲しいなーって感じか。どうやら無難に引越しは終了したようだな。
と、その時、オレの隣で借りて来た猫みたいにおとなしくしてたスガルがいつもよりちょっと長く虚空を見上げ、口を開いた。
「お、おい、何で今審判のコミュがMAXになって……いや世界!?いま世界って何で!?」
どうも今ここで審判のコミュレベルがMAXになったようだ。そして世界?世界のコミュニティが出て来たのか?世界ってのはワイルドにとっては特別なアルカナであるはずだが。
「そのハトも含めて、ハチマン様、時間城の主、スガル達、ゼロッチは頭数多いし特に存在感大きくなってるけど、今回世界を動かした存在全部入りで世界なんだよ!」
何だと!?オレ達皆で世界なのか?
世界 is オレ達?オレ達が作る新世界イズ・ザ・ワールド!?
「そっかー、私たちみんなで今の世界なんだね、確かにそれは……納得かなー」
ワイルドの感じた「世界」、あくまでも主観ではあるが、オレらの今までやってきたことが新しい世界に繋がる……このメガテン・ペルソナごちゃ混ぜ世界にしては良い感じに一連の事件を収束出来たんだと思う。思っておこう。
「そうだな。まあ地球破壊とか悪意のおもちゃとか死の降臨とか大破壊とか……悪い例知ってるから良く見えるってのもあるけどな」
「今までの情報だと、多分、地雷要素色々消えてるよね?」
「そうだな。ゼロッチの合体材料になった奴とか、悪魔としてモブ死した塔のアレとか、穏やかになったハトさんとか、他は知らんけどそうひどい事にはなってなさそうだよな」
「確かに」
「何と言うかさ」
スガルのコミュニティで「世界」を手に入れたからじゃないけど、最近ようやくこの世界がオレ達の世界なんだなって思えて来てるんだよね。実際の期間としては短い間だけど、オレ達が色々積み上げてきたこの世界、この命、この生活、大切にして行きたいと今ようやく思えて来たんだ。
「オレ達はようやく根を張って生き始めたばかりだからな、この世界の中でよ……」
………………………………
網代 裕奈はペルソナ使いである。悪魔から手に入れたスペルカードでペルソナを作り、降魔させて戦う降魔型……最近は神社勢力の復興活動に借り出されて、ペルソナを使う機会がないのだが。
「あれ……?何だろう?」
時刻は既に深夜0時、仲間達も既に寝入っている。……眠らない電霊や夜型の仲魔達を除いて、だが。
「テレビがついてる?」
台所に置いてある少し大きめのテレビが、よく分からない映像を流している。思わず無警戒に近づいた裕奈は、唐突にテレビの中に引きずり込まれた。
「わ、わああああ!ちょ、ちょっとこれ何が……?」
裕奈の叫び声に、反応する者はいなかった。テレビの中も、外と同じように夜の帳が下りている。いや、外より暗い、真の夜の闇とでも言うような強過ぎる夜が広がっているようだ。
「ククク……わが領域へようこそ……」
「美夜さん?えっと、何でこんな事……ていうかここ、何なんですか?」
そこにいたのは、中二モード全開でイキイキとした美夜だった。
「ンモーもうちょっとつきあってよ!折角あたしも自前の電脳異界作れたから遊びたかったのに」
「電脳異界?」
色々あって美夜はミミカ達……アニマウイングスの一員になっているが、元々こういう……転生ものというのは好きなのだ。でなければそもそも転生自体を選ばなかった未来もありえただろう。
「こういうタイプのお話にも色々あるけどさ。あたしもあいつら並は無理でも世界の片隅でダンジョン運営くらいはやってみたいと思ったわけよ」
「はぁ……」
パニクっていたし本体のレベルは低いとはいえ、美夜も現実・電脳空間両方にまたがる大規模異界を作った身だ。異界を作るだけなら出来そうだったが、問題はどんな異界を作るか。アレコレ考え、相談して、迷惑がかからないように、自分で出来る範囲で努力して……警視庁や神社勢力、メガテニストやアルカナの助言を受けて、指定されたテレビに複数の出入り口を開ける電脳異界、「仮称:テレビ美夜」を造り出したのだ。
ちなみに最初美夜はヴァーチャル・バトラーを使わせてもらって現地入り?して作業した。ニュクスはサイバー空間に縁のある悪魔でもないし美夜もペルソナ使い/チャネラーとしては一般的だったから。一度作ってしまえば指定したテレビを介して自在に人を出し入れ出来るようになったけども。
「実体空間に新しい異界は迷惑だって、今の状況じゃ正論過ぎてぐうの音も出ないからサイバー空間に作ったんだよね」
実際ゼロッチやヒナちゃんその他も、実体空間に新しい異界を作ったりはしていない。異界の絶対量が増えるのが良くないのは考えれば分かるので。
ゼロッチの才能もあってサイバー空間では好き勝手しているが、ゼロッチもヒナちゃんもこの世界を異界で満たして悪魔の世界にしようなどとは思っていないのだ、多分。
「バランサー作るのは慣れてるから最初に配置するのはそれでいいと思うんだけどさ、どういうテーマの異界にするか、新しい悪魔やシャドウはどれだけ配置するか、仕掛けとか必要か、色々アドバイスくれると嬉しいんだよね。あと万が一の時の護衛みたいな?」
「あ、あの、何でボク?スガルちゃんの方が色々はかどりそうなんだけど」
「スガルさん強過ぎるし……一般的な業界人の参考にはならないし、あの人基準にしたら死人が続出すると思うんだよね」
「そ、そうかな……そうかも……」
実際、スガルを例外とすれば裕奈もわりとクソつよ才能モリモリ勢なのだが……そこは美夜も裕奈も、自分あたりが普通レベルのペルソナ使いだと思っているので、そこに突っ込む者はいなかった。
後に「仮称:テレビ美夜」から仮称が取れて「テレビ美夜」となったこの異界は、初心者から中上級者まで、テレビ番組を意識したテーマ別異界の修行場として名を馳せる事になる。
常に全力で戦って必死で探索しないと負けるハードモードな修行場、という評価と共に。
「あれぇ?」
「こんなはずじゃなかった、反省はしていない」
………………………………
瓜生 ヒナは激怒した。必ずあの邪知暴虐のゼロッチをわからせねばならぬと決意した。
「海の異界は任せるって何じゃ……いくらワシが増えられるのが分かったとはいえ無茶振り過ぎるじゃろう」
広大な大海原、面積に対して異界の数はそう多くはない。しかしそれは、異界の間の移動や探索にかなりの距離を移動しなければならないということでもある。最近ヒナちゃんもトランパをようやく覚えたのでいくらかマシになったが、それでもほぼ情報なしの海の中で未知の異界探しは無理ゲーである。
今の所、場所が判明している沿岸部や海から繋がる川や潟などの汽水域の異界、それほどレベルも高くない渋田海岸や松方湖、舟方島と隣り合った吊浜海岸、片羽葦原までは確保してお茶を濁しているが、手近な海の異界は打ち止めである。
「やはりまた分裂するしかないかのう……」
分裂には結構日数がかかるので面倒であまりやりたくはないのだが、そうも言ってられない。無茶振りだとは思っているが、同時にここがメガテン・ペルソナ合体世界なのも確かで、深海とかにぜってーやべーやついるだろうなっていう嫌な信頼感はあるのだ。
世界がどうにかなるほどのやベーやつは天罰ファイヤーやその巻き添えで弱体化したかキレイキレイされたような気もするが、そのやべーやつが沸いたり強化されたりする環境……天然で人間の認知を必要としない異界やマグネタイト湧き霊地が今もそこにあるか将来POPする可能性が、広大な海中や深海底にはあるかも知れんのだ。それのあるなし、白黒つけられるのはヒナちゃん自身の探索以外にはない。今の所は。
「ワシの分身……何人かはもう分裂に入ろうかの」
レベルは低くなってしまうが、レベルならパワーレベリングすればいい。
何だかんだで、ヒナちゃんもゼロッチのような量産体制に入ろうとしていた。
現実世界の異界はもうヒナちゃんの方が多い