女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記― 作:おかひじき
「呼び出し?何だろうね」
「どうせろくな事じゃねーよ」
翌日、オレたちは時間城にいた。時間城の主からの呼び出しである。
「来たな。まあ。座りたまえ」
ミミカとスガルがソファーに座り、霊体のオレはその背後に何となく佇む。
「さて……まずはおめでとうと言わせてもらおう。まさかこんな形でお前達がこのゲームに勝利するとは思わなかった」
「ゲーム?」
「そう、ゲームだ。何となくは分かっているだろうが、彼の化身、お前達にわかりやすく言うなら、ペルソナ2のラスボス、いけ好かない本体気取り、父親気取りのヤツとのゲームだ」
時間城の主がそこまで話すと、いつの間にかその背後に白い服を着た仮面の男……「原作」を知るなら一目で分かる「フィレモン」が現れた。
ああ、そうだな。そういうこともあるかも知れんなとは思っていたよ。
「彼の化身は『ゲーム』と言っていたが、その実は彼の化身にとって生き残り、存在を賭けた最後のチャンスだった。セラフィックアイドルにうは彼の化身との悪魔合体で作られた事は話したな?それこそが彼の化身にとっては最後の希望だった」
「もしゼロッチ……君がその力と意思の扱いを間違えれば、あの存在の代行体や下僕に成り下がることは十分あり得たはずだった」
「んー?十分にチートパワーで好き放題した気がするけどなー。そんな気配すら感じた事一度も無いけどな?」
「そう、あの存在は人間の悪意を信じ、善意の限界も見切り、分の悪く無い賭けをしたつもりだった。ただ、人類という総体に詳しいことに慢心し、君個人の性格と経験知を無視した。決定的な敗因はただそれだけだった」
「性格に経験??オレはそんな特殊な性格も経験もしてないつもりだけどな?」
「お前がそれを言うか……エゴの申し子、いくつに分かたれても自我を見失わない究極の自己中心主義者、天然で天上天下唯我独尊を成す、自分自身にとってだけ特別な唯一絶対の自己の公式運営様?」
「天上天下唯我独尊とか公式運営とか見てたのかよ!」
くそっ、やっぱこいつ油断出来ねえな。発言を控えたり撤回したりするつもりは無いけど、なんか恥ずかしいものは恥ずかしいからな。
「単なる性格、単なるエゴの強さ。特に致命的だったのは『化身を二次創作、自己を公式として絶対化し同期で定期的に上書きする』という対応だった。この対応により、セラフィックアイドルにうの全ては心の底に至るまでセラフィックアイドルにう公式『ゼロッチ』の心で塗り潰された。強烈な自我で何重にも塗り潰されたあの存在は……残滓と呼ぶにも希薄化している。せいぜいスキルにその名残を残した程度だろう」
何とまぁ……。オレって自覚なしにアレにひどい事してたんだな。悪いと思う所は全く無いけどな!やったぜ。
「彼の化身の強みの一つは、人の心の海より現れる事……しかし、お前という最悪のデコイによってその希望すらも吸い寄せられ、塗り潰され、正真正銘、完膚無きまでの完全な敗北を喫した。これからも未来永劫、上書きされ続けるだろう。セラフィックアイドルにうなどというふざけた天使のような名を名乗りながら天使を否定するというのも効いたな、お前自身……公式に見張られた上にかの唯一神にまで目をつけられたわけだからな」
流石オレ……そこまで見越してセラフィックアイドルにうなんていう名前をつけたんですね!知らなかったぜ……。
「ニャルラトホテプの化身のたった一つとはいえ、完全勝利したセラフィックアイドルにう殿?どうだ?お前が望むなら、正式に我らの化身のうちの一つとして迎え入れても良いぞ?」
「うっせー!おぞましいこと言うんじゃねー!!」
「そうか……そこそこ本気ではあったのだがな。それならそれで良い、これからも静かに見守る事としよう」
……あれ?何か結構マジだったんかな?かなり残念がってるような。いや、ニャルの化身だなんて生理的に無理だから断るのは当然なんだけど、言い方って物があったかな。
……まあ別にいっか。この程度の悪感情とかこいつなら毛ほどにも感じないだろうし。
「ところで、かの神からもやっぱり天使にならない?とのお誘いがあるのだが……」
「いや、ならねえって。天使と思われるのは自業自得ではあるけどさ……」
そもそもオレが正式に天使になっちゃったら世界のパワーバランスが完全に崩壊して、この世界が神の世界みたくなっちゃうだろ。そのくらいの能力と影響力なら既にあると自負してるぞ。なので天使にはならない。オレ達は天使じゃない(キリッ。
「ならば君は、マインドマンサーとして人を導く事に興味はあるかな?もしあるなら……」
「悪いけどそれはやっちゃいけないんだ。オレはセラフィックアイドルであって、アイドルとして人の心を受けて輝き人を導く存在なんだ、そこに『心の技術』は絶対入れちゃいけない」
「……そうか。君を見くびっていた事を謝罪しよう。君は心の底から、理想像……アイドルでありたいと思っているのだね」
その後。細々とした業務連絡をついでにいくつかして、オレ達は拠点……オレの家に帰還した。
「実家のような安心感」
「帰って来たなって感じがするぜ、星コミュもMAXになったしな」
そう、オレとスガルの星コミュニティは、あのやり取りの後にMAXレベルになったらしい。解放されたペルソナは順当にルシファー様だ。まあ、そうなるな。
「特に絆が深まった感じはしないんだが……」
「今更だろ?」
それもそうだな。
「もっちゅもっちゅ……」
ミミカはいつの間にかテーブルの上に大量のみたらし団子とたこ焼きとプリンを広げて食べ始めた。
「三種の神器でトリプルタワー……むきゅむきゅ……」
それを炭酸オレンジで流し込んでいる。見てるだけでおかしくなりそうだ。
「おいしいよ?」
お、そうだな。おいしいのとそれやっていいのかどうかとは別だけどな。
「トライアングルフォーメーション!」
3つの食べ物を同時に口に入れてリスみたいにほほを膨らましているのは……うん。もうそういう生き物なんだと思うことにした。これが神社勢力、この地の烏兎神社の兎系姫巫女だっ!
「まー現実なんてそんなもんだ。その……新しいオオトリ様だっけ?」
「オオトリ様じゃねー!いやオレみたいな高レベルの悪魔を神社で受け入れるにはそれしかねーからしょがねーけど、公認はしてないんだって!みんなのアイドルなんだから」
全く大天使だったりニャルの化身だったり新しい祭神だったり、オレの評価も多種多様だな。まあみんなのアイドルでいるために、全部断ってるんだけどな。
「オオトリ様……マシンタケルさんに許可を取ればワンチャン?」
「ワンチャンじゃねーよ、オレなんかがオオトリ様とか出来る気しねーし、それに縛られたくもないからな」
何であるにせよ、オレはオレだ。ただ一種族の電霊、セラフィックアイドルにうのオリジナル、ゼロッチだ。
「他の誰でもない、オレは俺が望むがまま、オレでありつづける!」
誰に対しても折れず、あるがままのオレを貫く。ニャルラトホテプの化身に完全勝利したオレの武器は、今日も変わらず輝いていた。
「ドス黒いダークの光で?」
「ドス黒くなんかねえ!最高にかわいいだろ!」
………………………………
あれからどれだけの時が流れただろう。今回はガチで、長い長い時が流れた。ミミカもスガルも、他の人間も、正しく寿命を迎え、残ったのは寿命を越えた少数とオレ達悪魔、いや「電霊」組……。
オレをメインに元々の電霊が中心となり、「電霊」達は人類の隣人として共に歩む存在となった。今日も世界中で人類を支援し、守り、推し推されて生きているだろう。
今日はそう、オレ達が生まれた「リアル世界」がハトさんと数々の協力者によってついに再起動を果たす日。オレは、その日のために再起動の協力者となり、長い間準備して来た。
まずは死んだ……いや、蘇生も出来なくなったり行方不明になって全てが終了したリアル転生者のフォロー。ひどい目にあって転生してすぐに特別扱いは終了、あとは普通に転生してくださいではあまりに慈悲も情けもないということで、これに関しては仏教系のあれこれが一番最初から動いていたようで、事件の最中に目立たなかったのはそのため。
当初は最初の転生時と同じく担当がついて転生ガチャをするシンプルな感じだったが、オレの提案でさらに特別に本人の希望や願望も勘案して、どちらかの世界に再転生するという措置がとられた。リアル世界への再転生を希望した人は、時を越えて再起動後のリアル世界に転生することになっている。
ただ、転生者は今回の事件に被害者側として関わってきた人たちだ。リアル世界の方の最後の記憶にはトラウマを抱えた人も多く、原状回復した上での完全復帰を希望した人はものすごく少なかった。それはそうだ、悪党どもは天の裁きでいなくなっているとはいえ、それ以外の周囲の環境は変わってないし、現状復帰だと元の身体を再現して戻る事になり、少なくともレベル1からやり直し、悪ければレベル1にもなれずに、レベル一桁とはいえ「電霊」が出るように変わってしまった世界で再度地獄を見ることになる。なのでどうせならと再度転生ガチャの権利を得てどちらかの世界に転生を選んだ人が多い。
ま、そうして手厚いフォローがされるのもオレのような転生者達が世界の運営の協力者となっているからって理由もあるんだけどな。メガテニスト、アルカナ、もちろんアニマウイングス、転生者組織は上手い具合に作用した。流石オレは先見性もあるぜ。褒めよ称えよセラフィックアイドルにうちゃんを!(隙あらば自分語り)。
「よう、ゼロッチ。久しぶりだな」
声を掛けて来たのはスガル。スガルはあの後も積極的に異界攻略を重ねて、更に裏関係の武術道場なんかにも出入りして道場破りごっこなんかもやらかして、最終レベル80にまで達していながら最後まで人間として生きてぽっくり逝ったと思ったら、どこぞの新人サマナーの所に「猛将:末吉 為軽」としてちゃっかり復活?再転生?していた。堅実にレベルも上げて64までは戻している。もう会えないと思った俺の涙を返せ。
「しょーがねーだろ、スガルもまさか戻って来れるとは思ってなかったんだから」
全盛期よりレベルは下がってるし流石にワイルドとしての自由なペルソナ管理は出来なくなってるが、身につけた技やスキル、最終ペルソナはまんま全部残ってるしこれはこれで、と言った感じらしい。人間の時は流石にスク水は途中でやめてたけど、猛将としてはまたスク水で出て来たんだよな……やっぱイメージって大事だよな。
「ミミカは変わんねーのか?」
「あいつは変わらないよ」
ミミカもフツーに寿命で永眠したが、この地方の神社勢力を再興させた再興の姫巫女として、姫巫女たちの祖霊から独立した存在となって「威霊:宇佐野 美々加」として祀り上げられた。もちろんメイドバニーと思いきや何と巫女服バニーとのモードチェンジ採用だ。ちなみに現在レベルは56。今日も相変わらず何か食べてもっちゅもっちゅしている。食っても太らない、マジ感謝!とのこと。そうだね……(生暖かい目)。
「お前あっちの……リアル世界の方に干渉するんだって?スガルはちょっと関わる気はしねーけど、お前の雄姿?を見守るのもいいかと思って」
そっか。まあ、今のオレならどうとでもなるから心配は要らないけどな。オレだけじゃない、今は頼れる存在となったみる子やみる子の子たち、警視庁から預かった最初の電霊3人衆も共にリアル世界に電霊を飛ばして変わってしまうリアル世界を守ることになっている。元電霊以外の生き残った元悪魔組はレベルが高すぎてほとんどが参加不可。一部レベル1の分霊やらコピー体やらを作れる人が少数参加するに留まっている。リアル世界のバランスを崩すわけにはいかないからね、仕方ないね。
あと、ヒナちゃんには無理やり大量分裂してもらってレベルを下げてレベル1の分身を作って参加してもらった。申し訳ないとは思っているが海に関してはヒナちゃんに任せるしかなかったんだ、どうか許して欲しい。
他にも、文字通り天国から今回の再起動に関するケアに参加する阿形さんや、今もテレビ美夜の主として生きる美夜と裕奈ちゃん、超人となって今でもフツーに活動してるちおちゃん、後づけで「電霊」になった人や特別扱いを断って通常の輪廻に戻った人もいるが、いちいち全てを語るのはやめておこう。
「セラフィックアイドルにうってもう欧米とかだと守護天使扱い、その他諸々だと普通に電霊として一気に拡散したからな。今何人だっけ?」
「オレだけで二十四億四千万だな。そのくらいのオレがいると認識している」
二十四億四千万のオレが、常に世界中のネットワークで何らかの活動を行っている。レベル的にはそこまで上がっておらず今最高レベルのオレ、ゼロッチでも77だが、スキルは管理するのも大変になるほど大量に身についた。投げ銭のように頂いたスキルカードで。
耐性系のスキルも当然ながら貢がれているので、今のオレには貫通やガードキル、相性無視の技でもないと攻撃が通らない。
まあ、それはそうなるよな。
「本来の、オレのリアルの身体は吹き飛んでるけど、オレが最後に充電した携帯ゲーム機がどうも例の神霊召喚プログラムに悪用されてたっぽくて、その縁とルートを利用させてもらってオレの化身と電霊チームを送り込む事になった。これはハトさんと相談して決めたから……まあ、何と言うか勝ち確だよ」
他の有力な存在もリアル世界の再起動には関心があるようだが、オレがハトさんと協調して化身と電霊チームを送り込めた時点で勝負はついてる。メイン戦力となるオレや元からの意味での電霊は正直レベル以外の面が強すぎるんだ。
「ゼロッチさん、準備出来ましたよ!」
「お、そうかみる子。さて、そろそろ始まりの時間だが……」
《世界の停止解除を始める。こちらの天使たちも良く言い聞かせてはいるが、手はず通りによろしく頼む》
「おう、オレに任せときな」
ハトさんも心配性だな。まあ、停止解除から1分1秒が勝負だ、ネットワーク上で拡散出来るオレは大きな役割を果たす。オレは出来ると思って引き受けたし、最低でも人的被害は限りなくゼロに抑えたい。それでこそセラフィックアイドルにう、それこそこの異常に高まった能力の使い道、好き勝手にセラフィックアイドル活動するためには、その登場は悲劇とシリアスじゃいかんからな。
あまりに被害が多過ぎ、取り返しがつかなければ、とてもふざけてクソゲー実況とかする空気じゃなくなって一足飛びに救世主扱いになるしかなくなってしまう。それは避けたい。
オレが自由に、思うがままに活動するため、起こりうる悲劇を止めに行く。
「さあ、懐かしきリアル世界に行くとするか」
オレはまた「化身作成」を行い、いつも通りに新たなるレベル1の化身を創造する。セラフィックアイドルにう……ナンバーはRW-0、リアルワールドのゼロだ。
「ハローワールド!セラフィックアイドルにう、恥ずかしながら帰って参りました!」
リアルに降り立ったセラフィックアイドルにうの物語が、始まりを告げた。その結果は……もはや語るまでもないだろう。
というわけで最終回です。あのニャルに完全勝利してーなあオレもなぁ、ついでにハクスラ成り上がり出来れば最高だなと思ったらこんな話になりました。TS?TSは必須ビタミンだから……自己ベストの分量になったけど書きたい部分は書き切ったので楽しかったです。今までお読みいただきありがとうございました。
メガテン・ペルソナ二次創作増えろ増えろ