女神転生転性転生―電霊:セラフィックアイドルにうと化したおっさん転生記― 作:おかひじき
翌朝、いい朝だ。まるで今までの人生のしがらみを全て断ち切って、別人に転生して第2の人生が始まったかのような朝だ。
いや、大体そうなんだけどさ。
「やだー!絶対やだー!」
朝っぱらから、スガルが子供みたいな駄々をこねている。
その理由もアホくさすぎる。
「美少女は変なもの出さない!美少女からはファンタジーしか出ない!」
これである。一応スガルは設定上18歳で、元もオレとそう変わらないという話だった気がするのだが。身長が低くアニメかゲームのキャラみたいな幼い見た目のせいで、本当に小学生がじたばたしてるようにしか見えない。
「無理に我慢するのは良くないでしょう。私が引きずってでも連れて行くね」
ミミカが実際スガルを引きずって部屋を出て行く。
オレはちょっと暇なのでDDS.comをチェックする。
前は浅く広く見ただけだったが……通販サイトに掲示板、メッセージサイトに動画サイト、生放送にアプリ販売もあるのか。アプリのうち、インストールソフトは買っておくか?
ヒロえもんと百太郎くらいは即買いでいい気がする。
バックアッパーとかは流石に……いやある?
でも効果が違った。残念。
フツーにCOMP内のデータ保護機能らしい。
まあ、悪魔が守れるなら有用……って俺も守れるのか、これ。
これも買い、買いです。
「出ちゃった……」
「いや、言わなくていいから。そろそろ行こう。向かう先は……」
「しおさい商店街。悪魔業界関連施設として生き延びた店が多い、リアルじゃ残ってない地元商店街だ」
………………………………
街の南側、無人駅のしおさい駅前に広がる、リアル世界においてはとうに廃れて誰もいない廃屋か住居部だけ使われる元店舗が並び、さびの浮いた商店街アーチが物悲しさを誘うだけだったという、旧しおさい商店街。だが、この世界では違うようだ。
オレはあまりこの街詳しくないから知らないが、リアルでも地元民のミミカとスガルいわく、リアルではマジで駅前郵便局くらいしかなかったのが、こちらの世界では悪魔関連施設の受け皿として生き残っていたようだ。商店街アーチも一応手入れされていてさびは浮いていない。
オレのと同色……ミミカのシルバーの軽自動車でアーチをくぐる。
邪教の館の他にも、時間城はここの駅と国道の間にあるし、生体エナジー協会、回復道場、ピースダイナー、「骨董屋」にメシア教会・ガイア神殿もあることが分かっている。
「……ここか?」
色々調べた情報を元に、邪教の館と思われる施設にたどりついた。
コンクリート2階建てで、周囲がツタに覆われたいかにも怪しい施設。
看板もないが、土に石を撒いてナワで区切った粗末な駐車場はある。
そこに駐車して中に入ると……そこは見慣れた「邪教の館」だった。
「アクマがつどいし邪教の館にようこそ……」
本物だ。感動で挙動不審なオレ達に対し、館のオヤジは親切だった。
オレの「設定」の協力者でもあり、人間合体を改造して電霊になった事を知っている。
首尾よくオレが電霊となり、しかも人間の時の意識と変わらないのを確認し、呆れ半分で感心された。
でもオレの更なる悪魔合体はNG。オレもそう思う。
オレの自我云々というのもあるが、電霊の能力がレアで強すぎ便利すぎだからね。
簡単に化身作れるのも推定時間城の主の影響だろうということだし、次合体したらフツーの悪魔になってオレの強みが消えちゃうからね、それじゃこの先生き残れない。
館のシステムに関しては基本の2身・3身・剣合体・魔晶はある。
造魔に関しては理論は知ってるけどやったことないとか。ですよね。
悪魔全書もちゃんとあり、見せてもらったが、全書で呼び出した後改めて交渉が必要。
現実的と言えば現実的だがきついな。
そして精霊や御霊、その他特別な需要のある悪魔は、DDS.comでのトレード需要もあってかなり相場が高騰していて、それに引っ張られてその材料になる悪魔、つまり悪魔全書の悪魔全ての値段が高騰。ちょっと全書は割に合わなくてパスかな。
そうなると、まだ仲魔も少ないので邪教の館でやれる事もない。
「ワガハイがいれば十分だ!我がサマナーを死なせる事は決してしないぞ!」
アームターミナルの中でゴーストさんが騒いでいる。
この人真女神転生1の尊大口調のくせに、声とぼんやりと見える体系から判断すると若いっぽいんだよな。透明すぎて何も判別つかないし、だからどうしたって話だけど。
ただのゴーストだし、仲魔が増えたら合体していなくなっちゃうんだろうな。
やれる事もないし、次の場所へ向かう。回復道場だ。
回復道場は駐車場を挟んで隣にあるので、そのまま歩いて向かう。
回復道場とは、属性をニュートラルに傾ける回復施設だ。
しかし、メシアガイアの施設よりも割高になるのが欠点。
サマナーでニュートラルを維持するためならその価値はあると個人的には思っているが、メシア・ガイアの施設を均等に利用するようなやり方もあったな。
しかし、それは現実化した今ではやめた方がいいだろう。
「やっぱり……勧誘とかありますか?」
「あるな。1回や2回程度ならまだマシだが、安いからとずっと利用していると……流されるぞ。間違いない」
道場主さんは物憂げだ。きっとそういう、安さに引かれてメシア・ガイアに絡め取られる人をずっと見てきたんだろうな。
ゲームよりもかなり回復相場が高いのもそれに拍車をかけているのだろう。
HP量次第とかでは当然無く、症状で一律料金になってるので低レベルはきついだろうな。
だが、メシア・ガイアはやはりゲームとは違って、お気軽に出入り出来る場所ではないらしい。
表に出る部分には魅力に溢れたまともな人材を置き、個人的な信頼を作ってから深いところに勧誘するという。カルト宗教か?カルト宗教だったわ……。
幸いにして「設定」でオレらはアイテムの在庫はあるし、スガルがピクシーのペルソナを手に入れてディア・パトラが使えるようになったので、傷を負う=即撤退で回復施設のようなハードな状態にならなくて済むので、回復料金で困窮することにはなりそうに無くて良かったと思っている。
せっかく回復道場に来たし、はまやとたまがえりは買っておこう。
これあるとないとでは大違いだからな。
現金……日本円は元オレの貯金も使える。
何か分からんけど仲魔になるのってそんな信用あるんだろうか?
それともサマナーのミミカの信用?意外とこいつ設定盛ってる勢なんだろうか?
そういや、設定とはいえ時間城の仲間だし時間城へは行くべきだな。
悪魔と化したオレの実際の契約関係とかどうなってるのかは気になる。
まあ何となく時間城の主の都合のいいようにしてるんだろうけどな。
さて、アイテムを買い、回復道場を出て次に向かうのは、道路を挟んで向かいにあるピースダイナー……の地下にある裏ピースダイナーと、その2階に入っているカードショップ「サバトマオン」である。そういやハンバーガーとかもう何年も食べてなかったな。
メタボが気になるおっさんだったからな。
いや、この身体でもそれは同じっちゃ同じか?
霊体が基本の悪魔が太るのかは知らんけど。
ま、まぁ今日は確認というか偵察だし?
入って何も注文しないのもアレだし?
そんな言い訳を頭に浮かべつつ、オレ達は地下の裏ピースダイナーへと入店した。
見た目は普通のバーガーショップだ。ござる口調の店員とかはいない。
ちくしょう、この世界原作要素薄いぞ!
「……カードで」
モブっぽい店員にミミカがDDSカードを差し出し、ハンバーガー、チーズバーガー、テリヤキバーガーのハンバーガー黄金大三角形(自称)とバニラシェイクを注文する。
「オレもテリヤキバーガーとダブルチーズバーガーと……オレンジジュースで」
「ライスチキンと、エビカツと、あと……」
持ち帰り用も含めて注文し、席に向かう。
裏の方は、悪魔でも食べられるように悪魔召喚プログラムに登録があり、食べるとステータスアップ効果があるとDDS掲示板情報にはあったが……。
「ンマーイ!」
「おお、なつかしのこの味……!」
久しぶりのガッツリとした食事というのもあるが、これ一応オレとゴーストさん、悪魔用のやつには微量にマグネタイトも入れてあんのな。ナカナカやるじゃない?
オレはつかの間前世の若かった頃、ハンバーガーを常食していた頃を思い出し、あっという間に完食した。
「テリヤキとフィッシュとダブルバーガー、あとバナナシェイクで!」
追加注文も忘れない。追加をたかるなどというはしたない真似はせず、これはオレのカードで支払う。
ふと周囲を見渡すと、仲魔と共に食事をするサマナーらしき人はわりといる。
つまりセーフ。オレがハンバーガーお代わりしてデブドリンクチューチューするのもセーフ。
やっぱ、ハンバーガー大量に食ってシェイクで締めるのは至福のひと時だな!
おっさんはメタボでバーガーを控える、美少女は見た目が理由でバーガーを控える。
そこに何の違いもないだろうが!
いやごめんやっぱ多少ある。