TS転生美少女 音虎玲子は寝取られたい(旧題:TSクソビッチ少女は寝取られたい)   作:二本目海老天マン

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138.ライブ中に目星を付けている女

 ――都内某所のライブハウスにて。

 怪我から復帰したアキラを混じえて【放課後Holic】二回目のライブ演奏が終わる。

 

「――ッ!」

 

 ステージで荒くなりそうな呼吸を必死に抑え込みながら、俺――神田(かんだ) 光一(こういち)は醜態を晒さないように平静を装う。

 隣の音虎を覗き見ると、彼女も額に少しばかり汗を浮かべていたが、まだまだ余力を残している様子であった。学校の勉強はともかくとして、演奏まで上を行かれてるのか……

 そんな不甲斐ない事実に少しばかりの悔しさを感じていると、鋭敏になった聴覚が観客の話し声を拾っていく。

 

「へぇ……知らないバンドだったけど、悪くなかったな」

「特にギターの女の子が凄かったね~。このバンド来るんじゃない?」

「ちょっと粗いところも有ったけど、一生懸命な感じがして俺は好きだなー」

 

 拍手と一緒に漏れ聞こえる声に、なんとも言えない充足感を感じていると、アキラがマイクを握って締めの言葉を告げる。

 

「えー、以上! 【放課後Holic】でした! 最後まで聞いてくれて、本当にありがとうございました!」

 

 ***

 

「いやー、初めてのライブにしては中々上出来だったんじゃね?」

「初めてなのはアキラだけだぞ」

「ツッコミどーも。まあ二回目にしても悪くなかったと思うぞ? ぽっと出の無名バンドの演奏なんて、ちゃんと聞いてくれるだけでも上等だって」

 

 ライブ終了後。俺とアキラが撤収の準備をしながらそんな話をしていると、音虎が興奮した様子で会話に割って入ってくる。

 

「そうそう! 演奏が終わった後に『良かったよー』って言ってくれたお客さんも居たし!」

「あー……そうだな」

 

 俺は音虎が話す光景を思い出して、なんとも言えない曖昧な表情を浮かべてしまう。

 純粋に演奏を称賛してくれた人間も勿論居たが、正直なところ音虎に絡みに行った人間の半分ぐらいは、彼女目当ての下心が滲み出ているのを感じていたからだ。

 人の悪意に鈍感な彼女は気づいていない様子だったが……まあ、そんなことを話して彼女の気分を害することも無いだろう。俺は音虎の言葉に曖昧な同意を示して受け流した。

 

「そんじゃ、音虎さんはカレシさんが迎えに来てることだし、反省会はまた今度っつーことで。お疲れさん!」

 

 ライブの観客には、俺や音虎の応援にやって来た立花や来島達も含まれていた。

 そうなると必然的に、音虎は立花と一緒に帰るのが順当な流れなのだが、彼女はアキラの言葉に困ったような顔を浮かべる。

 

「別にそんなに気を遣わなくてもいいんですよ? 打ち上げや反省会があるかもって、彼にはちゃんと話してるし……」

「まあまあ、ぶっちゃけ俺等も結構疲れてるし、ここからミーティングやるにはちょっと体力的にもキツイからさ。なあ神田?」

「そうだな。アキラの言う通り今日は解散させてくれよ」

 

 俺やアキラの言葉が方便だと言うことは音虎も察しているだろうが、同時に厚意である事も理解しているのだろう。それ以上は追求せずに、笑顔を浮かべて俺達の言葉に頷いた。

 

「それじゃあ、反省会は今度の練習の時だね」

「おう。あんまりモタモタしてると保護者が心配するから、さっさと撤収すんぞー」

「……保護者ってユウくんのこと? 一応ユウくんよりは私の方がしっかりしてると思うんだけどなぁ」

 

 俺の軽口に音虎は頬を膨らませると、背負っていたギターケースを俺に押し付けてくる。

 

「ちょっとお手洗い行ってくるから預かってて」

「へいへい、ごゆっくりー」

 

 ギターケースを受け取った俺は音虎を見送ると、アキラとダイチが思い思いにライブの感想を口にする。

 

「なあなあ、今度はいつやる?」

「あん? 練習か?」

「ちっげーよ。ライブだよライブ。早く次のライブやりてえな~」

 

 のん気な事を言い出す二人に、俺は大きなため息を吐く。

 

「気が早えよ。……ぶっちゃけ、音虎以外は技術的にかなり甘いぞ俺達。んなことより練習だ練習」

「もちろん練習もやるけどよぉ……せっかく調子良いんだし、ガンガン露出増やして固定ファン増やしたいと思うのは普通だろ?」

「……焦んなくても、地道にやってりゃあ聴いてくれる人は増える。下手に急ぐよりも、今しか出来ない俺達の音楽をちゃんと楽しもうぜ?」

「やだ神田ったらイケメン……」

「流石ウチのバンドのビジュ担当。よっ! 顔ファン製造機!」

「ぶん殴るぞ」

 

 人が真面目な話をしているというのに、茶化すような軽口を叩いてくるアキラ達を睨みつける。

 そんな雑談と軽口の応酬を続けながら、会話の途切れたタイミングで俺は首を傾げた。

 

「……ってか、音虎のやつ遅えな」

「女子は化粧直しとか色々有るんだろ? あんま急かすなよ」

「別にそんなんじゃねえよ。ただ……」

 

 ……妙な胸騒ぎがする。

 音虎とはそれなりに長い付き合いだ。こういう時のアイツは大抵……

 

「……ちょっとギター預かっててくれ」

「えっ、おい神田?」

 

 アキラの声を無視して、俺はライブハウスの通路を早足で進む。

 別に杞憂なら、それはそれで構わない。

 だが……

 

「いやー、マジで演奏凄かったよ! レイコちゃん、だっけ?」

「ど、どうも……あの、人を待たせてるので……」

「それじゃあバンドの人達も一緒でいいからさ、打ち上げしようよ打ち上げ! もっとレイコちゃんと音楽の話したいな~」

 

 通路の向こうで、音虎が二人組の男に囲まれていた。

 ……あの顔はたしか、今日のブッキングライブに参加していたバンドの連中だったか。

 どう見ても友好的な空気ではない光景に、俺は頭を抱えそうになりながら音虎に駆け寄る。

 

「――あっ、神田くん!」

 

 こういう時のアイツは大抵、何かしらトラブルに巻き込まれているのだ。

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