TS転生美少女 音虎玲子は寝取られたい(旧題:TSクソビッチ少女は寝取られたい)   作:二本目海老天マン

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57.常日頃、治安の悪目な場所を通る時は仲良しアピールをしてました

 

 

「ユウくんっ! お皿早くっ!」

「待って待って! お客さん並んでるからっ!」

「うおー! 火事起きてるぞ! 誰か消火しろーっ!」

 

 昼食後。

 皆で食器の後片付けを済ませると、俺――神田(かんだ) 光一(こういち)は、フユキが持ってきたゲーム機をテレビに繋いで、プレイヤー同士で協力して飲食店を切り盛りするゲーム等に興じていた。

 

「み、みんな……あんまり大きな声出したら神田くんのお母さんがビックリしちゃうよ?」

 

 お茶を飲みながら観戦していた白瀬が困った顔でゲーム組を窘める。ちなみに俺も白瀬と一緒に観戦に回っていた。

 

「あー、まあこれぐらいなら大丈夫だろ。あんま気にしなくていいぞ白瀬」

「そ、そう?」

「おう。それよりも、コップ空じゃねえか。おかわり要るか?」

「う、うん。ありがとう、神田くん」

 

 白瀬とそんなやり取りをしていると、テレビ画面では音虎達の経営するレストランが全焼して廃業になっていた。

 

「あちゃあ。もう少しだったんだけどなー」

「ってか疲れたわー。光一~交代!」

「はいっ、ユリちゃんも交代ねっ」

 

 フユキと音虎がコントローラーをこちらに渡してくる。俺は素直に受け取ったが、白瀬は何だか及び腰だ。

 

「えぇっ、わ、私このゲームやった事ないし、何だか難しそう……」

「大丈夫大丈夫。簡単だし、私が教えてあげるから」

 

 音虎はそう言うと、二人羽織みたいな感じで白瀬の背中に身体を密着させた。

 

「これで料理して、こっちのボタンで――」

「あ、あわわわ……レ、レイちゃん顔が近いよぅ……ふひ」

 

 ……俺に対しても大概だが、相手が同性だと尚更距離が近いなこの女。

 音虎も白瀬も美少女と言って差し支えない容姿の持ち主である。

 そんな二人がくっついてると、空気が華やぐというか、なんか怪しげな雰囲気になるというか……

 

「……なあ、光一、ユウキ」

「ん?」

「どうしたの、フユキくん?」

 

 フユキが俺と立花の肩にガッと手を回して、内緒話をするように小声で耳打ちする。

 

「あの二人、なんかエロくね?」

「は、はぁっ!?」

「……アホか」

 

 正直、同感だった。

 

 

 ***

 

 

「お邪魔しましたー」

「おう、またな」

「またいらっしゃい。気をつけてね」

 

 夕暮れ時。

 玄関で俺とお袋が、音虎達を見送る。

 

「神田くん、今日は本当にありがとうっ。とっても楽しかったよ!」

「……ん」

 

 音虎がキラキラと瞳を輝かせて、そんな事を言う。

 相変わらず大袈裟な奴だ。あまり向けられることの無い、異性からのストレートな好意の視線に照れくさくなった俺は、ぶっきらぼうに返してしまう。

 軽く手を振って音虎達がエレベーターへ向かうのを見送ると、俺とお袋も家に入ろうとしたのだが……何か忘れ物でもしたのか、音虎が一人だけでこちらへ駆け寄って来た。

 

「どうした? 何か忘れ物でも――」

「神田くん、また私の部屋にも遊びに来てね! 待ってるからっ」

「ぶっ!?」

 

 凄まじく誤解を招きそうな発言に俺は吹き出すが、音虎は気にも留めずに「ばいばーいっ」と手を振って立花達とマンションのエレベーターへと向かってしまった。

 ……お袋がすげえ眼でこっち見てる。

 

「……光一。その、音虎さんとは、そういう(・・・・)関係なのかしら?」

「ちっ、ちっげぇーよっ! 前に今日と同じメンツでアイツの家に集まっただけだっ!」

「………………そう」

「なんだよその間はっ!? くそっ!」

 

 照れ隠しをするように――否、照れ隠しそのものなのだが、俺は悪態を吐いて自室へ戻ろうとする。

 

「光一」

「んだよっ!」

「……良い子達ね。あなたのお友達」

 

 

「……知ってるっての。んなこと」

 

 それだけ返して、俺は今度こそ自室へと戻るのだった。

 

 

 ***

 

 

「光一。少し良いかしら?」

 

 お袋がドアをノックする音に、俺はスマホから顔を上げると扉を開けた。

 

「なんだよ、お袋」

「リビングに落ちてたんだけど、きっとお友達のよね?」

 

 そう言ってお袋が手渡してきたのは、黒い手帳型のカバーに入ったスマートフォンだった。

 ……確か、これは音虎の奴だったな。

 

「あぁー……そうだな。連絡しとく」

「ええ、お願いね」

 

 お袋からスマホを受け取ると、俺は写真を撮ってグループトークへと送信する。

 

 

【kou1:リビングに落ちてた。これ、音虎のだよな? ――xxx.jpg】

【fuyuki:うーわ。マジかよレイの奴】

【yuri:レイちゃんのスマホだね……本人は全然気づいてなかったみたいだけど……】

【yu-ki:レイちゃん、あんまりスマホ見ない人だから……】

 

 

「……チッ、仕方ねえなぁ」

 

 

【kou1:流石にスマホが手元にねぇのはヤバいだろ。家の場所は知ってるし、今から届けに行くから音虎の家電知ってる奴居たら、連絡しといてくれ】

 

 

 俺は手早くメッセージを送ると、外出の準備をする。

 

「お袋、ちょっと音虎の家に行ってくる」

 

 

「…………こんな時間に女の子の家に?」

「ちっげぇーよっ! スマホ届けに行くだけだ馬鹿っ!」

 

 

 ***

 

 

 自宅から音虎の家までは、歩いて15分程度の距離だった。一駅程度は離れているが、まあまあ近所の部類だろう。

 

「……あー、くそっ」

 

 俺は小さく悪態をついて頭を掻き毟る。

 別に忘れ物を届けに行くだけだ。

 大した用事じゃないってのに、好ましく思っている女子の家に行くと思うと、どうしても心が浮足立ってしまう。

 

「失恋前提の片思いなんか、してんじゃねえよ。クソダセェ……」

 

 音虎は誰に対しても――いや、多少はそこら辺の奴よりも、俺に対して親しいと思う程度の自惚れは有るが。とにかく、音虎はどんな奴にでも優しい。

 

 ……その優しさが、正直キツイ。

 

 もしかしたら、俺にもチャンスが有るのかもって夢を見るたびに、立花と音虎の仲睦まじい様子を見せつけられて、頭がぐらつくような現実を知ってしまう。

 

 

 ――いっそ、初めから音虎と出会わなければ、こんな苦しまずに済んだのだろうか? 

 

 

 そんな思考が脳裏をよぎった次の瞬間、薄暗い路地の向こうから微かな声が聞こえた。

 

「……どいてください」

「えー? そんな冷たい事言わないでよー?」

「ってか、近くで見るとマジでかわいいねー君」

 

 ……聞き覚えのある少女の――音虎の声に、俺は背筋に嫌な汗が流れるのを感じながら、路地へと向かって走った。

 

「だってさぁ、コーイチくんと仲良くしてるんでしょ、君。ひょっとして彼女?」

「……違います」

「恋人でもない男とあんな仲良くしちゃってるの? だったら俺らとも、ちょっと付き合ってよ~」

 

 人気も無く、静かな路地だからか。声がよく響く。

 あの馬鹿……! 女が何でこんな所に一人で居るんだよっ。

 

 

「つーかさ、あんな奴と付き合うの止めた方がいいよ?」

 

 

 …………っ。

 軽薄な男の声に、駆ける足が鈍った。

 

「そうそう。あいつ滅茶苦茶ヤバい奴だから。気に入らない奴は女でも平気で殴るらしいぜ?」

「学校サボって怪しい店に入り浸ってるとか聞いたなぁ。ほんと、一緒にいても良いこと無いよ?」

 

 全部適当な出任せだ。

 ……だが、根も葉もないとまでは言わない。学校をサボっていたのは事実だし、外見だって不良そのものなのだ。馬鹿なことを言われても仕方ない。

 

 ……そんな男が、どの面下げて音虎の友達ヅラしているんだ――

 

 

「……あなた達は、神田くんのお友達ですか?」

「はぁ? そんな訳ねえじゃん」

「……私は、神田くんとお友達です。ですから、あなた達よりも神田くんの良い所、いっぱい知ってます」

 

 震える声。それでも、彼女は続けた。

 

「か、神田くんは、見た目はちょっと怖いかもしれませんけど、とっても優しくて素敵な男の子です。

 ……だから、あなた達の言うことなんて信じませんし、私の友達の悪口を言うのは……止めてください。……ムカつきます」

 

 

「……あ~あ、アンタ可愛いから大目に見てやろうかと思ったけど……やっぱ駄目だわ。気に入らねえから、殴っちゃお」

「……っ!」

 

 

 ――次の瞬間、俺は音虎と男の間に割って入り、その拳を受け止めていた。

 

「て、てめっ……なんで……!」

「……か、神田、くん?」

 

 音虎に絡んでいた男達の顔を見る。

 ……誰だ? 

 ああ、だいぶ前に絡まれて喧嘩になりかけた男が、こんな顔だった気がする。まあ、どうでもいい。

 ……そんな事より、俺の後ろで怯えている音虎の顔を確認して、彼女にそんな顔をさせた男達に対して、俺は信じられない程の"怒り"を向けた。

 

「消えろ」

「――ひぃっ!」

 

 男達は俺の爪が食い込んだ拳を慌てて引き剥がすと、一目散に路地から逃げていった。

 

「フン、だっせぇの」

 

 その情けない姿に、俺は多少溜飲を下げる。すると背後の音虎が俺に抱きついてきた。

 

「か、神田くんっ! 大丈夫っ!?」

「へ、平気だっての。別に殴られた訳じゃねえし……」

「で、でも……」

 

 伝わってくる彼女の柔らかい感触に、俺は視線をフラフラと彷徨わせる。

 

 ……まあ、とりあえず音虎に何もなくて良かった。

 俺は安堵のため息を吐くと、路地裏に座り込むのだった。

 

 

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