TS転生美少女 音虎玲子は寝取られたい(旧題:TSクソビッチ少女は寝取られたい)   作:二本目海老天マン

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祝日だったので曜日感覚が狂いました。


91.ユウくんはどう生きるか

 

「………………んん」

 

 ――朝。

 窓のカーテン越しに薄っすらと陽射しを感じて、僕――立花(たちばな) 結城(ゆうき)は目を覚ました。

 

「くぁ……まだ7時じゃん。土曜日なのに、無駄に早起きしちゃったな」

 

 枕元に置いてあるスマートフォンで時刻を確認すると、僕は二度寝を決め込もうと布団に潜り込んだ。

 ……しかし、意思とは裏腹に眠気は全くやってこない。

 寝起きのぼんやりとした頭に過るのは昨日の――僕がレイちゃんに告白した場面が、脳内で繰り返し再生されていた。

 

 

『私で良ければ、よろしくお願いしますっ』

 

『私も、ユウくんが大好きですっ!』

 

 

「~~~~~~っ!!」

 

 喜びと気恥ずかしさが綯い交ぜになった、なんとも形容し難い感情の波に襲われた僕は、布団を被ってジタバタと身悶えしてしまう。

 ……とてもじゃないが、二度寝出来るような心理状態ではなかった僕は、諦めてリビングへと向かう。

 

「おはよー……」

「あら、おはようユウキ。今朝は休みなのに随分早いじゃない」

「んー……」

 

 コーヒー片手にテレビを見ていた母親に生返事を返しつつ、台所でコップに水を汲む。

 

「朝ごはん食べるなら、用意するけど?」

「いや、大丈夫。お腹すいてないから……」

 

 水道水で満たされたグラスを呷っていると、母親が怪訝そうに僕の顔を覗き込んできた。

 

「そう? ……大丈夫? 顔色がわる……くは無いわね。むしろ調子良さそうだけど、何か良いことでも有った?」

「ごぶっ!」

 

 不意に見透かされたようなことを言われて、僕は思わず口に含んだ水を吹き出してしまった。

 

「うわっ! 朝から何やってんのよ、この子は……はい、タオル」

「えほっ! ごほっ! なっ……べ、別にっ、無い! 何もっ!」

「分かった分かった」

 

 母親からの呆れたような疑うような視線に耐えられなくなった僕は、受け取ったタオルで吹き出した水を拭くと、そのまま自室へと踵を返した。

 

「……レイコちゃんと何か有ったのかしら? まあ、あの感じなら深刻なことでは無さそうだけど……」

 

 

 ***

 

 

「あぁ~~~~~~………………」

 

 自室に戻った僕は、ベッドに倒れ込むと熱い湯船にでも浸かったような呻き声を漏らした。

 ……改めて、今の自分の状況について思いを馳せる。

 

「……恋人になったんだよな。レイちゃんと」

 

 言葉にした瞬間、昨日のことを鮮明に思い出す。

 緊張でカラカラに乾いた喉の痛み。

 激しく脈打つ鼓動にクラクラと目眩すら感じたあの感覚。

 ……レイちゃんの光り輝くような笑顔。

 

「……なんだか夢みたいだな」

 

 ただし"夢みたいに幸せ"ではなく"夢みたいに現実感が無い"の方である。

 10年以上拗らせてきた初恋が実ったのだ。それもお互いに両思いの末にである。

 本来であればもっと浮かれた心地になっても良いものなのだが……あまりにも自分に都合が良すぎて、現実感が無いというのが正直なところであった。

 まるで誰かに仕組まれた脚本のように感じてしまうのも仕方ないというものだろう。

 

 そんなことを考えて悶々としていると、不意にスマートフォンから通知音が鳴った。

 ディスプレイを確認して、メッセージアプリを開く。

 

【reiko:おはよう! ユウくん、もう起きてる?】

「レイちゃん……!」

 

 レイちゃんの――恋人からのメッセージに、僕の心臓が跳ね上がる。

 受信して秒で返信するのはおかしいだろうか、文字数はどれぐらいが適切なのだろうか、等と無駄に緊張しつつ、結局は当たり障りのない返事を送信する。

 

【yu-ki:おはよう、レイちゃん】

【reiko:あっ、起きてた! いつも休日はもう少し寝てなかったっけ? もしかして起こしちゃった?】

【yu-ki:いや、大丈夫だよ。なんとなく目が覚めちゃっただけ。レイちゃんは?】

【reiko:私は日課のジョギングが終わったところ。ユウくんちの前も通ったよー】

 

 ……僕はこんなに悶々としているのに、レイちゃんは至極いつも通りだった。

 もしかして、昨日のアレで恋人関係になったと思っていたのは僕だけで、レイちゃんは今まで通り僕と友達のつもりなのでは? 等という恐ろしい考えが頭を過り、背筋に悪寒が走るのを感じてしまう。

 レイちゃん、昔からそういう天然なところ有るし……小学校中学校と、彼女に好意を持たれていると勘違いして玉砕した男子の数が10や20じゃきかないことを僕は知っていた。

 

【reiko:それでね、ユウくんと一緒におでかけしたいなって思ってるんだけど……ユウくん、空いてる日って有るかな?】

【yu-ki:僕はいつでも大丈夫だから、他の皆に合わせるよ】

【reiko:……他の皆?】

【yu-ki:フユキくんや神田くんの予定、聞いておこうか? サトリさんも誘う? 確かレイちゃんと連絡先交換してたよね?】

 

 

【reiko:ユウくん】

【reiko:今電話して大丈夫?】

【reiko:大丈夫だよね】

【reiko:電話するね】

【yu-ki:え】

 

 僕が返事をする前に、ディスプレイが着信表示に変わる。発信元はもちろんレイちゃんである。

 

「えっと、もしもし?」

『ユウくん。私こういうの本当に良くないと思う』

「ええっ!? え、えっと……な、何が?」

 

 電話越しに感じるレイちゃんの怒気に、思わず怯んでしまった僕にレイちゃんが続ける。

 

『どう考えても会話の流れ的にデ……デートの話だったよねっ! もうっ、もしかして私のことからかってる?』

「あっ」

 

 確かに。

 ついいつもの癖で、グループで遊びに行く流れで動いてしまった。これはどう考えても僕が悪い。

 

「ご、ごめんレイちゃん! つい、いつもの癖で……」

『もうっ! ……別にみんなで遊ぶのが嫌って訳じゃないよ? ……でも、その、ようやく恋人同士になれたんだし……ユウくんと二人きりでお出かけもしたいよ』

「レイちゃん……」

 

 憂いを感じさせる彼女の声色に、僕の胸がギュッと締め付けられる。

 ――恋人同士。

 レイちゃんもそう思ってくれていることに、ようやく僕は彼女との関係を現実のものとして実感した。

 

「……そうだね。うん、ごめんレイちゃん」

『べ、別にそんなに謝らなくてもいいよ。……ユウくんのそういうちょっと天然なところも好きだし……』

「レ、レイちゃんに天然って言われた……!?」

『ちょっ、それどういう意味かなっ!』

 

 じゃれ合うような軽口の応酬に、なんだか胸の奥が暖かくなる。

 ああ、会いたいなぁ。

 ちょっと電話で話しているだけなのに、どうしようも無いぐらい彼女の顔が見たくなっている自分がいた。

 

「それで、空いてる日なんだけど僕は本当にいつでも大丈夫だよ」

『本当? えっと、無理しなくてもいいんだよ?』

「あはは、大丈夫だよ。レイちゃんに合わせるから。いつでも都合の良い日で構わないよ」

 

 僕の言葉に、電話越しに彼女の躊躇うような気配を感じた気がした。

 

『え、えっと……そ、それじゃあ、その……今日、とか……』

「え? 今日?」

 

 僕の言葉に、レイちゃんが慌てて発言を撤回しようとした。

 

『ご、ごめん! やっぱり今の無し! い、いくら何でも急だったよね! あはは――』

「うん、いいよ?」

『えっ……?』

「どこで待ち合わせする? それともレイちゃんの家に迎えに行こうか?」

『ま、待って待って! ユウくん、気持ちは嬉しいけど、本当に無理しなくても――』

「無理なんてしてないよ」

 

 僕は彼女の言葉を遮って続ける。

 

「……実は僕も今、レイちゃんに凄く会いたかったんだ。だから、今日デートが出来るなら僕は凄く嬉しい。……その、レイちゃんは?」

『ぁう……う、うん、私もユウくんに会いたいよ』

「じゃあ、決まり。初めてのデート、楽しみだね。レイちゃん」

『う、うんっ! ありがとう、ユウくんっ!』

 

 その後、デートはお昼に現地で待ち合わせということになり、僕は慌てて身支度を整えた。

 行き先は電車に乗って都内のショッピングモールへ。細かいことは何も決まっていない成り行き任せのノープラン。

 それでも、レイちゃんと一緒なら、きっと忘れられないデートになるだろう。

 僕は鏡で入念に身だしなみをチェックすると、期待に胸を弾ませながら彼女との待ち合わせ場所へと向かうのだった。

 

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