死なない政治家~転生した女の子は不幸に耐え抜きながらも、治安最悪の街を何とかしたい 作:あいく
眼を開けると、知らない顔があった。
「おはよう、アシュリー。お目目パッチリ開かせて、いったいどうしたの?」
「なんでもない! まぶたかっぴらいてみただけ!」
「かっぴらいたなんて言葉、どこで知ったのかしら。賢いのね」
「パパがおさかなシバイてるとこみてたら、うかんできたの!」
「シバくって言葉は?」
「いえからそとみてたら、オトコノコがボコられてたのみてたら、うかんできたの!」
「・・・あなたはとってもかわいいし、かしこいけれど。汚い言葉をあんまり覚えるのは感心しないわね」
「あ、あははは。おしっこー」
「水は流すのよー!」
あたりをきょろきょろと見まわして、トイレに入る。腰を下ろして、ため息を吐いた。ああ、あぶない。ばれるところだった。私が、普通の子とは違うんだって。
生まれなおしてから、六年が経過した。大変だったなあ、この六年間。私が生まれなおしたこの国は、発展が遅れている国だった。水も水道から出る、電気もコンセントから出る。だが、安全がない。産業が進んでいない。警察は、地元のマフィアと仲良く共存する。国民の大半は、農業や産業で職を持つ。私の知識にあるような、大学に通っている人や、会社に勤める人は非常に少ない。
パアン! 銃声。思考から意識が浮かび上がる。まただ、最近は銃声が多い。どうやら、ギャングの抗争が起こっているらしい。
「大丈夫かー、アシェリー。ちびってないよな!」
「しね! くそあにき!」
「せっかく心配してやってんのになー。やっぱかわいくねえな、お前」
「はやくドアからはなれろ!」
「音聞かれるの恥ずかしいのか? 別にどうでもいいだろ」
「バーカ! バカにはわかんないんだよ!」
「六歳にバカって言われちゃあおしまいだな」
ゲラゲラ笑いながら、遠ざかっていたのが、くそ兄、サンゴ。私より十歳上のろくでなし野郎。彼女に振られたからって私で憂さ晴らししてくる、ノミみたいに器の小さい男だ。私は、前生きていた年を覚えていないが、絶対あいつより精神年齢は上だと思う。幼稚すぎる、馬鹿ガキ。絶対私のほうが大人。
「大きい声が聞こえたけど、大丈夫だった?」
「メイズおねえちゃん! きいてよ! あのバカあにきがさ!」
「あららら、大変だったね。サンゴには、デリカシーってものがないからね。恥って概念もないわ、だって、あの子のやってきたことすべて恥なんだから」
「いや、そこまではおもわないけど」
「やられたら徹底的にやり返すのよ。甘いわ、アシェリー。大体あなたね」
どういうわけかくどくどと説教し始めたのが、メイズお姉ちゃん。外見はおしとやかに見えるけど、中身は口の悪いお局おばさんである。バカとおなじ年で、口調はあまり強くないが、バカみたいに気が強い。だけど、頼りになるお姉ちゃん。
なぜか泣くまでこっぴどく叱られた私は、勝手にトイレの扉をあけられて、メイズお姉ちゃんに優しく抱きしめられた。お姉ちゃん・・・DVとか上手そうだね・・・。
「ごめんね、最近イライラしちゃって・・・。ほら、彼氏に振られちゃって・・・」
お前もかい! と、泣かされた相手に言えるはずもなく、自分史上最高の笑顔で許した。
「うわ、何その顔。ピエロの真似するにはハロウィンまで遠いわよ」
「そうだよねー。とおいねー」
「アシェリー、ピエロの格好して、曲芸しながら物乞いしてみたら? これってたぶん天性の才能だわ。絶対に儲かるわよ」
「だま、だますようでわるいからいいー」
「そうなの、残念。じゃあ、もうすぐご飯ができるから、早くリビングに来るのよ。なくなっちゃうかもしれないから、早めにね」
メイジお姉ちゃんとサンゴは双子だ。鈍感なところが似てるのも当然だ。おちつけ、わたし。ビークール。カラカラと無心でトイレットペーパーを引っ張り、鶴を折った。
エへへへへ。鶴を眺めて癒され、意気揚々とリビングに向かった私は、空の皿を見つけた。
「弱肉強食さ。姉さん。意味は分からないけど」
「ごめんね、アシェリー。ベスったら、あなたの分のお皿を一番に狙って・・・」
「遅いのが悪い。疾風迅雷さ、たぶん!」
「お姉ちゃん、アシュリーの分守りたかったけど。やっぱり、忠告したのにでてこないアシュリーの自業自得かなって」
「メイズ姉ちゃんを、申し訳なさそうにさせた罪は大きいぞ! 姉さん! 謝るんだな! メイズ姉ちゃんと、ついでに僕に!」
「ちびっこ、俺のでよければやるぞ」
うちの家族、クズしかいないわ。