領域展開『呪術短編集』!   作:岬サナ

3 / 7
唐突に書きたくなったのだ。

今回は真希とオリ主の2人の少女達だけですね。
オリジナルの呪具とかも出してますけど、特に気にしないでください。


一人の少女の結末

まだ平日の昼上がり、太陽がほぼ真上に存在しているにも関わらず、1人の少女の視界には一定の範囲が真っ黒に染まっている球体が写っていた。

 

『帳』と呼ばれるそれに少女は近付いていく。

 

誰も通さない帳が、かの最強も、呪いの王の器も、一級などの実力者たちを通さなかった帳が…………今、1人の少女を通した。

 

帳には条件などを決めることで外部からの干渉を防ぐ手立てがある。

この帳は張った本人とこの少女以外の存在が触れることすら禁じて張られている。

 

そして少女は──禪院真希は帳の中に入り、その中心部へと歩く。

 

真希は中心部に近付き、そこにいる帳を張り、今ここに自分が来た原因の存在を視認した。

 

「来ちゃったんだね……真希」

 

「テメェを止めるためにな……侑」

 

その存在こそ、呪術界に絶望と失望をし、腐った上層部を皆殺しにし、特級呪詛師と認定された少女──不知火侑であった。

 

「何でこんなことをした」

 

「言ったでしょ……もう、全てが無意味だからよ」

 

不知火侑は特級呪術師であった。理由は勿論実力もあるが最大の理由としては侑が独自で呪具を………それも特級呪具を製作できるからである。

 

それ故に不知火侑は特級呪術師に認定されたのだ。それを腐った上層部の連中は目を付け侑に無理難題に近い呪具の製作を依頼し続けて侑はそれを拒否していたが、上層部のクズ共があることをし、侑の我慢の限界を突破し凶行に走らせた。

 

「この世界には救う価値なんて………ない!」

 

侑は自身が持つ2本の刀の特級呪具である五月雨と気炎(きえん)の二刀流を構えた。

 

「テメェを止めて連れて帰る」

 

真希も腰に着けているポーチであり、収納型の呪具から取り出した刀と短剣の特級呪具である叢雲と菊花(きっか)を構える。

この4本に真希の持つポーチも含めた呪具は全て侑が製作したのだ。

 

真希と侑はどちらともなく動いた。

 

先に仕掛けたのは真希だった。真希は持ち前のスピードを生かし、侑に向かって刀を振るい斬撃を放つ。

しかし、それは簡単に防がれてしまう。だが、それで終わりではない。

真希は更に攻撃を加える。斬撃だけではなく蹴りや拳なども放ちながら。

しかし、それでも全て防がれる。まるで自分の手の内を知っているかのように。だが、それは侑だけでなく真希もだった。

 

「流石に互いに相手の手の内は知り尽くしてるものね。お互いに」

 

「そうだな」

 

真希も侑も互いに何度も模擬戦や鍛練をしていたのだ。そんな2人にとって互いの動きを先読みするのはそう難しくはなかった。そして、2人は一旦距離を取った。

 

「菊花っ!」

 

真希が短剣を地面に突き刺して起動認証をした。

侑の製作した特級呪具には全てに何かしらの力を使うための起動認証が存在する。

 

侑はそれを止めようと真希に接近するが、

 

「チッ!?」

 

『菊花』の能力は一定空間による短距離転移である。

真希はそれを使い侑の背後へと回るも、それに対抗するように侑も。

 

「気炎!」

 

『気炎』は強制行動の能力を持ち、侑はその力によって背後の真希の攻撃を防いだ。

 

「やっぱり防がれるか」

 

「……一切の躊躇なしね。私、泣いちゃうよ」

 

「お前に手加減は必要ねぇだろ」

 

強力な特級呪具である反面、ある程度の制約もある武器であった。

菊花は刺した場所から一定空間のみであり、気炎も無理矢理に動かすため身体への負担が大きい。

真希は地面に刺した菊花の代わりの呪具をポーチから取り出す。真希が新しく取り出した呪具は小太刀だった。

 

「行くぞ」

 

真希が疾走する。

 

「来なよ」

 

侑も同じ速度で追従する。2人が交差する。ガキンッ!!と互いの2本の刀で鍔競り合う。

 

「おらっ!!」

 

「この!」

 

真希の左肩と侑の右頬が互いの斬撃で切れ、血が流れる。お互いに振るう刀が互いに少なくない傷を付ける。

真希は小太刀を振るい、侑は五月雨で受け止め、気炎を振るい、真希は叢雲で受ける。

 

「いいねぇ!楽しくなってきた!」

 

「くっ!?」

 

侑の二刀の斬撃を真希は躱し剃らし、時に蹴りを放ち応戦する。

その繰り返しが何度も続きながらも互いに一歩も引かない。

 

「……グッ!?」

 

真希の小太刀による振るいを身体を思いっきり剃らして回避する侑。

だが、そこへ真希は叢雲の振り下ろす。

 

「おらぁぁ!!」

 

「っ!?」

 

咄嗟に気炎と五月雨の2本で防ぐが伝えきた振動が強く侑は気炎を手放した。

 

「ガフッ!?」

 

その隙を突いて、真希は踵返した小太刀の斬撃を侑に浴びせ……腹に一閃の傷を負い、膝を着いて吐血する。

 

「もう終わりだ侑」

 

「まだよ!!」

 

負った傷に吐いた血を見て真希は終わりだと思った瞬間、侑はまるで傷を負ってないかのように立ち上がり叫ぶ。

 

「ッ!?」

 

その気迫に真希は驚く。

そして侑はその気迫を醸し出しながら残っている五月雨で我武者羅に振り下ろし真希に襲い掛かる。

 

「はぁ……はぁ……ついでにいいことを教えてあげる!この帳は私達のどちらかが死なない限り私自身にも解けないようにしてるの!」

 

「チッ!」

 

侑から伝えられた事に舌打ちをして答える真希。

 

2人の動きは激しく、キン!!キン!!キン!!と真希と侑の2人の剣撃は響き渡る。ガキン!と真希が侑の残っていた五月雨を弾き飛ばした。

 

「ハァァ!!」

 

それを侑は一瞬の内に新しい呪具の片手剣を出してカバーした。

 

「この程度でじゃあ……終わらない!!」

 

「………お前」

 

上からの振り下ろしに真希は叢雲と小太刀で止め、侑の重みある言葉を聞いた。

 

「……………」

 

「……ガフッ!?」

 

侑の片手剣を受け止めた状態から転がり真希は一端距離を置いた。

侑は腹に負った傷の影響で口からも血を吐いてしまう。

それでも尚、侑は毅然とした姿で立ち、真希の方に身体を向ける。

 

「はぁ……はぁ………はぁ………」

 

真希と侑は互いに傷を負っているが傷の深さは侑が酷く、傷の深さはそこまでだが薄くとも傷が多い真希。

相対的に見れば傷が深く、時間が経てば倒れるであろう侑が不利なのは明白なのに、それでも倒れる姿を見せない。

 

「………」

 

真希はそんな侑の姿を見て、ゆっくりと立ち上がる。

 

「私の全存在を賭けて………お前を倒す」

 

侑を真っ直ぐ見つめながら真希は宣言した。

その言葉に込められた想いと真実に侑は嬉しくなり笑う。

 

「アハハ……ハハハ……ウッ……フフ……………来なさい!!」

 

その言葉を合図に真希と侑は距離を一気に詰める。

真希は叢雲と小太刀を侑は片手剣を振るいぶつけ合う。

脇腹に腕に足に肩に顔に2人の振るう剣と刀の速度が上がり傷を付ける。真希は大太刀と小太刀の2本に対して侑は新しい呪具を出さずに片手剣の1本で互角の剣撃をしていた。

 

「グッ!?」

 

ついに真希も右脇腹から左肩にかけて一線の傷を負い、深く斬られたのか服の色が変色するくらいに血を流す。

 

「まだぁぁ!!」

 

「こんのぉぉぉ!!!」

 

それでも2人は止まらずに互いの呪具をぶつけ合う。

 

「叢雲!」

 

「しまっ…!?」

 

真希は叢雲の能力を使い、侑を吹き飛ばした。

 

「ゲホッ……ゲフ!?……ゲホッゲホッ!?」

 

吹き飛ばされた侑は血を吐きながらも真希の方を確認する。

 

真希の手には小太刀と叢雲がなく、いつの間にか三節根の遊雲に変わっていた。叢雲の能力は呪力が一定量ある物を何かと入れ替えることが出来る。但し、東堂のように人には対しては使えない。

逆に人以外ならば片方が呪力を持っていなくても入れ替えることが可能である。

 

「やるねぇ……真希」

 

「当たり前だ」

 

侑は製作者であるが故に知っていた。だから遊雲に変えられた瞬間に自分と遊雲の間に盾代わりに呪具を差し込み威力を抑えたのだ。

もちろん、その呪具は粉々に砕けてしまったが。

 

「これよ!……この感覚よ!」

 

「………」

 

「生と死が交じりあい、覚悟と覚悟が交ざり合う!これが私が求めた最低で!最高な時よ!!」

 

侑は遊雲による打撃でふらつきながらも立ち上がり叫ぶ。もう、立っているのもおかしいくらいの傷を負っているのにだ。

 

「ハァァ!」

 

ガキン!と音がした。真希が侑の剣を止めたのだ。

真希の手元には小太刀が2本あり、先程まで持っていた遊雲は地面に落ちていた。

 

真希は侑の持つ片手剣の能力を知っていた。だからこそ遊雲を手放して小太刀を取り出したのだ。

 

「全く、貴女となんて出会わなければ良かったのかもね」

 

「もしかしたら……そうかもしれねぇな」

 

グッと侑が真希の方へと力を加える。

 

「……もう会わないわよ」

 

その言葉と供に更に力を加えようとする侑。

 

「………チッ!?」

 

真希は自身の持てる力の全てを出し侑の片手剣を上に押し返し、その勢いで侑は両腕を上げてしまう。

そして、真希は歯を噛み締めながら自身の持つ2本の小太刀を振り下ろした。

 

「ガハッ!?………」

 

ドタン!と倒れる侑。

 

「はぁ……はぁ……」

 

最後の攻撃に致死量を越える量の血を流して倒れている侑に近付く真希。

 

「あ~……ここまで、ね」

 

「………あぁ」

 

互いにそれが最後の会話になると分かるからこそお互いを見つめる。

 

「何、泣きそうに……してるの」

 

「……してねぇ」

 

「してるわよ……ケホッ……強情なんだから」

 

「……うるせぇ」

 

「ふふ」

 

それはまるで死にかけているとは思えないような雰囲気がそこにはあった。

 

「真、希……貴女は………私の、ように……止まっちゃ、ダメ……よ」

 

「分かってるよ」

 

「さっきは……出会わなければ、よかった……とか、言ったけど……」

 

「…………」

 

「わた、しは、出会え……て、よかったって…間違えて、なんかない……って、思うから」

 

侑は真希を含む同級生たちや後輩たちに学長の事を思い返していた。

 

「そうだな。私もそう思うよ」

 

真希も高専で侑と出会ってからの思い出を思い返していた。

 

そう聞いた侑は優しく微笑み、ゆっくりと目を閉じる。

そして先程まで張られていた帳が役目を終え、ゆっくりと消えていく。

 

 

 

 

「お前は、本当にバカだよ。…………侑」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。