害悪貴族(モブ)に転生した俺はインチキ宗教で成り上がる ~ウロボロス教団へようこそ! 今ならあなたも平民から貴族に!~ 作:鴉目かおる
さらに明日からはアニメやゲームなどであるあるな学園生活が始まる。
今日はその学園に必要な教材、制服などを買いに行かなくてはならない。まあ、一応貴族なのでメイドもいることだし、買い物を任せようかとも思ったが、メイドの一人が口うるさくて仕方がないからな。「あなたに必要な物なのですからくるのは当然です」とか「一緒に出掛けなければ、クズト様をこれからお守り致しませんよ」とか言ってるし、なんで俺はよりにもよってこんなややこしいメイドを雇ってしまったんだよ、と嘆きたくもなってくる。おまけに元暗殺者だぞ。
出会った時は任務で失敗したのか、衣服はボロボロで身体は傷だらけで本気で俺を殺しにきてたしな。はぁ、あの時は怖かったな。背筋がヒヤヒヤしたし、身体中から冷や汗も止まらなかったし。
だが暗殺者っていうのはあいつを見てれば納得ができる節もある。しかしだ、あいつは実年齢と比べて精神年齢が低く感じるのは俺だけなのか? 俺の年齢が十六だから、あいつは俺より五つほど年上らしいから二十は超えてるのか。でも本人がそう言ってるだけで、実際はどうなのかはわからずじまいか。
言ってることがホントガキだもんな。普段、人前であまり喋らないくせに俺と二人きりになった途端、口うるさいメイドに変わるからな。もしかして俺は主人として見られていない可能性も最近は感じる。主従関係というよりなんでも言い合える親友のような関係のほうが近いような気が……。
なんてことを考えていた俺だが内に秘めていた理想が思わず口から漏れ出てしまう。
「もっと優しくて、可愛らしくて、いざとなったら頼りになるメイドを雇いたかったな」
そう言いながら書物だらけのベッドから立ち上がると、
「今、なんとおっしゃいました?」
「うわっ‼ いきなり目の前に出てくるのはやめろって何回も言ってるだろ。ビックリするからさ。ああ、心臓が痛い」
いきなり目の前に現れたこいつが元暗殺者で俺の専属メイド、アスカ・リーズベルトだ。この世界では特徴的な白銀の髪に燃えるような深紅の瞳、常にメイド服の下には暗器を持ち歩いている。「物騒だから持ち歩くな」と俺が言っても「クズト様を守るためです」と言っていつも話を流される。
本当に俺を守るために持ち歩いているのかは定かではない。正直言ってアスカの過去は謎に包まれている。
このレオドール家で雇う前に情報屋から情報を仕入れはしたが、たいした情報は得られなかった。得られた情報といえば《死線《しせん》》という異名を持つこと、そしてアスカだけは敵に回してはいけないという暗殺を生業している同業者からの情報だけだった。しかし同業者が口を揃えて敵に回してはいけないというほどなので相当恐れられている人物なのは確かだ。
でもいざ話してみれば、話がわかる奴だし、人間性に関しては一切問題がないことは理解できた。ということは、暗殺業のほうで恐れられているということになる。相当な実力者なのだろう。
前職が暗殺者だけあって何事も完璧にこなし、今は俺の専属メイド兼屋敷のメイド長も務めてくれている。
なぜ、そんな恐ろしい奴を雇ったのか? そして俺の専属メイドにしたのか? 色々と疑問点が出てくるだろう。
まあ、そこについては俺の単なる自己満足だ。
一つ目は困っている女性は誰であろうと助ける。これは男なら誰しもが理解できることだろう。
二つ目は今の俺の立場なら側に戦闘経験が豊富で実力もあるアスカが味方でここまで心強いことはないと思ったからだ。要注意人物には危険が付き物だ。盗賊や野盗から命を狙われたり、道ですれ違った何者かに鋭利な刃物で刺される可能性もある。いわゆる通り魔だ。
後は些細なことだが、俺が何か頼みごとをしたくても他のメイドだと気を使ってしまい言えないことも多々ある。しかしこいつアスカが相手だとなぜか遠慮せず言えることがわかり専属のメイドになってもらったというわけだ。まあ、メイドらしくないからっていうのもあるからだけど。例えば言葉使いとか堅苦しくないし、本人は努力しているみたいだがたまにボロが出ることもあるしな。