仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ MIRACLE FESTIVAL!   作:大ちゃんネオ

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執筆 大ちゃんネオ 監修 正気山脈さん


最強メイドチーム結成!~必殺陣萌え萌えキュン~

 仮面ライダー。

 数多の世界に存在する戦士の称号である。

 ここはそんな仮面ライダーが存在しない世界である。

 だが、この世界を蝕む悪と戦うためにあらゆる世界から仮面ライダーが訪れていた。

 

 喫茶Hameln。

 ひょんなことから別世界からやって来た仮面ライダー達が集まることとなった極々普通の喫茶店である。

 そう、極々普通の。

 

「更なる集客には……うーむ……」

 

 喫茶Hamelnのマスター、藤堂権兵衛が電卓を叩きながらそう呟いていた。

 それを四人がけのテーブル席に座っていた三人の男子が聞いており、権兵衛に聞こえないように小声で話し始める。

 

「最近、お客さんあんまり入ってないっぽいね」

 

 口火を切ったのは御剣燐という至って普通の少年。

 そんな普通そうな少年であるが彼は仮面ライダー。

 仮面ライダーツルギ。

 ツルギの世界からやって来た仮面ライダーである。

 

「確かに……最近はあまり……お客さんが入っていないようでした……」

 

 和装の少女……に見えるが少年である。

 彼の名は夜舞薫。   

 ビャクアの世界のライダーにしてその名は仮面ライダーマイヤ。夜に舞う蝶である。

 

「経営難、というやつか……」

 

 三人目の少年は行雲紫乃。

 仮面ライダームラサメ。ムラサメの世界から訪れている美少年。

 女装が映えそうな、美少年である。

 

「俺達にどうこう出来る問題ではないな……」

「まあ、そうだけどさ……。泊めさせてもらってる身だし、なんとかしてあげたいよ」

「そうですね……。そういえば、前は結構人が入っていたんですよね? 燐さんが、お手伝いした時とか……」 

「なんというか一過性のブームみたいなものでさ……。あと、最近手伝ってなかったからかもう追っかけの人とかも来てないみたい」

 

 はじめて自分がこの世界に訪れた時のことを思い返していた。仮面ライダーデュオル、双連寺ムゲンと共に少しだけだが店を手伝った時はすごいお客さんだったのだが……。

 また手伝えば人が戻ってくるだろうかと考えていると、権兵衛が大声で何かを叫んだ。

 

「こ、これだぁぁぁ!!!!!」

「お、おやっさん? どうかしました……?」

 

 燐がそう伺いを立てると、権兵衛はカウンターから燐達の座るテーブル席へと歩み寄り、テーブルの中央に一枚のチラシを置いた。

 チラシは、メイドカフェのもの。

 メイド服を来た女性達が笑顔で宣伝していた。

 

「……まさか、ここをメイドカフェにするつもりか?」

「しかし、女性の方がおりません……。雇うのですか?」

「いいや。ただのメイドカフェでは駄目だ! 差別化しなければいけない!」

「差別化、というと?」

 

 三人の顔を見た権兵衛はよしと力強く頷く。

 それを見て、燐は嫌な気配を感じていた。

 

「今日から、お前達三人がうちのメイドだ!」

「はぁ……?」

「やっぱり……」

「お前達三人は顔がいい。薫に至っては常に女装してるだろう。男がメイド。これはウケるぞ……!」

「ふざけるな。誰がメイドなど……」

 

 案の定嫌がる紫乃。

 女装させられた苦い思い出があるのだ。

 それは燐も同じくで……。

 

「僕もちょっと……」

「なんだい。さっきこの店なんとかしたいと言ってたじゃないか」

 

 聞こえていたのかと内心で驚く燐はそれを言われると弱るといった感じで、権兵衛も燐の人の良さと押しに弱いことを理解した上で押し切ろうとする。

 

「助けると思って頼むよ~。薫はどうだ? やってくれるか?」

「私は……いいですよ……」

「本当か! そりゃあ助かる」

 

 薫の返答に驚く燐と紫乃であったが、すぐに薫なら断る理由もないかと納得した。

 生まれた時より理由あって男でありながら女として育てられ、振る舞ってきた薫にとって衣服の男物、女物などは関係ないもの。

 そして、なにより……。

 

「一度、着てみたかったのです……」

 

 にこりと笑顔を浮かべてそう言う薫に誰も文句は言えない。

 男と女の両性をとことん楽しむというのが夜舞薫のモットーなのだ。

 

「では決まったな。メイドは薫がやる。俺と御剣はやらない。以上だ」

「なに言っとるんだ。メイドは三人と言ったろう」

「なら他を当たってくれ。オレはやらん」

 

 断固として拒否を貫く紫乃はひとまず置いといてと権兵衛の標的は燐に向かう。

 

「なあ、頼むよ。薫もやるんだ、みんなでやればきっと楽しいぞ~。困ってる俺をなんとか助けてくれ~」

「うっ……」

「駄目だ御剣。惑わされるな」

 

 揺らぐ燐を救おうと紫乃が声をかける。

 だが、魔の手は思わぬところから忍び寄ってくるのだ。

 

「そういえば、この高級スイーツバイキングの招待券をどなたかに譲ろうと思っていたのですが……どういたしましょう……」

「高級スイーツバイキング、だと」

 

 その甘美な響きに誘われて、紫乃が思わず立ち上がった。

 

「あ、あの、紫乃くん?」

「紫乃さん……欲しい、ですか……?」

「あ、ああ……!」

「では、代わりにこちらのメイド服を……」

「ああ、着る。オレはメイドだ」

 

 紫乃、陥落。

 こうして一人残された燐はもう諦めるしかなかった。

 

 

 

 

 

「喫茶Hamelnで~す……。今ならメイドが接客……してます……」

 

 店頭でビラ配りをする燐。

 彼は今、メイド服を着ていた。

 茶髪のゆるいカールのかかったウィッグを被り、スタンダードなメイド服を着た彼はまさしくゆるふわ系なメイドであった。

 

 喫茶Hamelnは寂れた商店街の端にある。

 人通りはまばらではあるがそろそろ夕方。

 学校帰りの学生なんか捕まえられたりしないかと燐は考えていた。

 しかし、人は入らない。

 怪訝そうな目で見られるだけである。

 

「……泣きたくなってきた」

 

 悲しくなってきたところ後ろのドアが開く音がしたので振り向くと、ちょこんと薫が頭を出して外の様子を伺っていた。

 

「どう、ですか……?」

「どうもこうも……不審がられてるよ……」

 

 燐が今にも泣き出しそうな声で返事すると、店内でやることもないのでと薫も外に出てチラシを半分受け持ち二人で呼び込みをすることに。

 普段あまり大きな声を出さない薫であるが、宣伝ならばと声を張る。

 すると、薫効果か分からないがちらほらチラシを受け取ってくれる人が増え、ようやく二名様ご案内することに。

 外は薫がやった方がいいかもしれないと燐が店内にお客をご案内。

 

(そういえば中には紫乃くんだけか。紫乃くん大丈夫かな)

 

「お客様二名様でー……」

「やるんじゃなかった……」

「紫乃くん!?」

 

 店内では、お盆にひたすら頭を打ち付ける紫乃が異様な空気を醸し出していた。

 それにしても紫乃のメイド服だけスカートの丈がやけに短い。そもそもあれはさっき薫くんがどこからともなく出したやつだよな? えっ、まさか持ち歩いてるの? などといろんなことが一瞬で燐の脳裏を過った。

 

「夜舞に乗せられてしまった……くっ……」

「し、紫乃くんお客さん!」 

「ッ……! 何故来た!」

「紫乃くん!?」

 

 お客様が来店したら普通は「お帰りなさいませご主人様」だろうによもや何故来たと問われるとはと度肝を抜かれた客二人、だったが……。

 

「これはこれでありだな……」

「ああ……」

 

 とりあえず、なんかウケた。

 

 

 

 

 

「外は薫くんが、紫乃くんは接客中……。大丈夫かな……」

 

 チラリと様子を伺う。

 先程出来上がったオムライスを運びに行った紫乃であるが果たして上手く出来るのだろうか。

 

「お待たせしました、オムライスです」

 

 そつなくテーブルの上にオムライスを置いた紫乃であるがそのまま立ち去ろうとした。

 そう、紫乃は知らないのだ。

 この先にやらなければならないことを。

 

「あ、ちょっとメイドさーん。あれやってよあれ。オムライスにLOVEって書くやつ」

「なに……?」

「メイドさんなんだからやんなきゃー。しっかり愛情込めてねー」

 

(大丈夫かな紫乃くん……ここは僕が行った方が……)

 

 不安がる燐であったが、紫乃はやたら勢いよくケチャップを手に取り……。

 

(これはあくまでスイーツバイキングと店のため……)

「お、お前達のためにやるんじゃないんだからな……!」

 

(まさかのツンデレメイド!?!?!?!?)

 

 紫乃が意図せず発した言葉は伝統芸能ツンデレの中でも特に有名で、それゆえに逆にあまり聞いたことのないレアな言葉。

 王道のツンデレを女装男子ツンデレメイドから浴びせられたオタク達は……。

 

「「は、はい……////」」

 

 オタク達は、性癖が歪んだ。

 

 

「お客様、入ります……」

「あ、はーい。お帰りなさ……」

「ここが冥土ぉ?」

(メイド違いしてるおじいちゃん来ちゃったぁ!?)

 

 杖をつく手も震えるようなお爺さんの来店に戸惑う燐を見て自分が接客した方がいいと判断した薫はアイコンタクトを送る。

 

「おじいちゃん。あちらの席で、私とお話しましょう」

「んん? ああ、ええよぉ」

「地元のお爺さんやお婆さん方と、お話し慣れておりますから……」

「あ、ああ、うん……よろしく……」

 

 手持ち無沙汰になった燐は薫に変わって再び外へ。

 

「はぁ……なんかいまいち僕って没個性だよなぁ……」

 

 紫乃や薫と比べるとこういった時に弱いよなぁと頭を掻く燐の耳に遠くから「燐兄ちゃん!」と呼ぶ声が。

 学校帰りの章太郎である。

 権兵衛の甥にして、ライダーファン。

 

「大変だよ燐兄ちゃ……なんだよその格好! 燐兄ちゃんそんな趣味あったのかよ!」

「ち、違うよ! これはお店の手伝いで……。それと、人の趣味を馬鹿にしたら駄目だよ。僕の趣味じゃないけどねこれは」

「わ、分かったよ……。それより変な怪人が!」

 

 怪人という単語を聞いた燐の表情が変わる。戦う男の顔に。

 鏡の中から愛車であるスラッシュサイクルを呼び出し、メイド服のまま乗り込み現場へと急行する。

 

「どうした?」

 

 スラッシュサイクルのエンジン音を聞いた紫乃と薫が外に出て章太郎から事情を聞いた。

 

「なるほど。相変わらず勇ましい奴だ」

「私達も行きましょう……!」

 

 燐に続いて、紫乃と薫も出撃。

 三人を見送った章太郎はこれで一安心と笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ご奉仕ボーシ! ご奉仕ボーシ!』

 

 現場に到着した三人がまず耳にしたのはそんな鳴き声であった。

 

「……なんか、聞いたことある気がする鳴き声」

「……恐らく、つくつくぼうし、かと……」

「それだ。でもなんか、ご奉仕とか言ってなかった?」

「話はそこまでだ。来るぞ」

 

『ご奉仕ボーシ! む、メイドが三人も!』

 

 現れた怪人はセミに似たような姿で、メイド姿の三人に興味津々。

 怪人の名はご奉仕ボウシ。

 人にご奉仕されるのが大好きな恐るべき怪人である。

 そんなご奉仕ボウシなのでひとしきりメイド三人を見定めると、唐突に両腕から円状の光線を放った。

 

『くらえ! ご奉仕マインド!』

 

 回避した三人。

 怪人に明確な攻撃の意思ありと警戒態勢から戦闘態勢へと移り、それぞれの変身アイテムを手に取る。

 

「ぶっ倒してやるぜセミ野郎!」

「か、薫くんいきなり男口調にならないでよ……びっくりしたぁ……」

「申し訳、ありません……」

「おい、いきなり大人しくなるな。びっくりするだろう」

「どうすればいいんですか……」

 

 燐と紫乃からのツッコミに戸惑う薫であったがともかく変身。

 ムラサメとマイヤが駆け出し、ご奉仕ボウシに剣と拳を叩き込む。

 

「オレ達の敵ではないな」

 

 ムラサメは自身の得物であるAウェポンを銃形態であるGモードと太刀形態であるTモードを自在に使い分けてご奉仕ボウシに攻撃の隙を与えない。

 

『ご奉仕ッ!?』

 

「どうした、張り合いねぇぜ? オラァッ!!!」

 

『ボーシッ!!!』

 

 マイヤの右ストレートがご奉仕ボウシの顔面を捉える。

 殴り飛ばされたご奉仕ボウシは地面を転がり、立ち上がろうと顔を上げると目の前には白き太刀の鋒が置かれていた。

 

「……」

 

 振り下ろされる太刀はご奉仕ボウシの顔面を切り裂く。

 

『ご奉仕ボーシッ!?!?』

 

 痛みにのたうち回るご奉仕ボウシをツルギ、マイヤ、ムラサメが取り囲む。

 勝敗は明らかであった。

 

「トドメだ!」

 

 マイヤが技を発動させようと構える。

 だが……。

 

「待て! 夜舞!」

 

『くぅぅぅ……ご奉仕マインドッ!!!』

 

 ご奉仕ボウシは再び両腕から円形の光線を放つ。今度は狙いなどつけず、空目掛けてである。

 怪光線は一定の高さまで到達すると地上へ向かっていき……。

 

「いやほんとマジなんだってー!」

「マジならヤバいってそ……」

 

 怪光線に当たってしまった人々が意識を失い倒れていく。

 だが、即座に立ち上がると人々はある場所へ向かい移動を開始していく。

 その場所とは、ご奉仕ボウシのもとである。

 

「な、なんだあの集団は……」

「ドンドン集まってくる……」

 

『ご奉仕ボーシッ! 俺のご奉仕マインドを食らった者達だ。奴等は俺の奴隷。俺の言うことならなんでも聞くのだ! ご奉仕ボーシッ! さあ、仮面ライダーを殺すのだ! あ、そこのギャルは俺の治療をしてお願~い。俺を癒して~』

 

 ご奉仕ボウシの命令により、人々が三人のライダーに襲いかかる。

 当のご奉仕ボウシはギャルに膝枕をしてもらいながらその様子を鑑賞していた。

 

「人を、操るなど……!」

「くっ……」 

 

 マイヤは太極拳に似た武術に切り換えて、人々からの攻撃を受け流していく。

 ツルギは得物を納め、徒手でやり過ごしていくが数の暴力には敵わない。

 

「灰矢ほどではないが……!」

 

 AウェポンをGモードにし、銃口を向けてご奉仕ボウシを狙撃しようと試みるムラサメ。

 だが、銃口とご奉仕ボウシの間に操られた人々が盾となって立ち塞がる。

 

「なに……!」

 

『手も足も出ないとは正にこの事。そのまま守るべきはずの人間達により殺されてしまえライダー! ご奉仕ボーシッ!』

 

「くっ……。こうなったら、二人にはリスキーだけど!」

 

 迫る人の群れを掻い潜り、ムラサメとマイヤの二人に合流したツルギは二人の手を引き、ビルの鏡の中へと消えていく。

 こうなってしまっては一時撤退するしかないと判断したツルギにより、ミラーワールドを用いての撤退が遂行された。

 

 

 

 

 

 

 

 喫茶Hamelnに戻った三人の周りは重い空気で支配されていた。

 倒せると思った相手にしてやられたこと、街の人々を操られ今も危険に晒しているのだ。仮面ライダーとして、気が気でない。

 

「ここでこうしていても仕方ない。オレは行くぞ」

「待ってください……。闇雲に戦ったところで、意味がありません……」

「そうだよ。もし被害が出たら……」

「では、どうしろと……」

 

 悩む三人。そこへコーヒーを運んで権兵衛がやって来る。

 

「なんだなんだへこたれて。そんなんじゃ勝てる相手にも勝てないぞ」

「それが……」

 

 燐が権兵衛にご奉仕ボウシのことを説明すると、権兵衛はなにやら考えこみ、あっと何かを思いついた。

 

「いいか、ご奉仕にはご奉仕だ」

「……は?」

「え?」

「……なるほど……」

「ご奉仕返しだよご奉仕返し。こう、萌え萌えキュン! みたいな感じにさ~」

 

 権兵衛の萌え萌えキュンという発言に内心ドン引く紫乃と燐だが、薫は何故か目を輝かせていた。

 

「萌え萌えキュン、ですか……」

「そうだ」

「萌え、萌え、キュン……」

「か、薫くん……?」

「夜舞……?」

 

 立ち上がり、萌え萌えキュンを何度も口にする。

 そうして、薫もなにかを思い付いたようで声を弾ませた。

 

「萌え萌えキュン。これです、お二人とも。ご奉仕と萌え萌えキュンがあればご奉仕ボウシに勝てます……」

「待て待て待て待て」

「薫くんワールド全開過ぎて分かんないよ!」

「私のザ・ワールド……ふふ……」

 

 今、薫のザ・ワールドが発現する……!

 

 

 

 

 

 

「「お帰りなさいませ、ご主人様」」

「もっと、気持ちをこめて」

「「お帰りなさいませッ! ご主人様ッ!」」

「運動部ですか」

 

 薫指導のもと、紫乃と燐にメイド指導が行われていた。

 メイドの所作、メイドの心構え、メイドの魂。

 メイドというものを、肉体と精神に叩き込む。

 そうして気が付いた時には喫茶Hamelnの店内は大勢の客で賑わっていた。

 

「し、紫乃きゅんグヘヘ……」

「ええいっ! そのだらしのない笑い方はやめろ!」

「あぁんっ! 厳しさの中に愛ッ!」

 

 紫乃はその美貌とツンデレ、ツンギレキャラによりオタク客から高い支持を集めていた。

 

「えーその髪型かわい~」

「ふふ……ありがとうございます……」

 

 薫は女性らしさを活かし、女性人気を集めていた。

 そして燐は……。

 

「ね、ねえ燐ちゃん……」

 

 一人の、目に光が灯っていないOLを相手にしていた。

 

「なんですかご主人様?」

「ご主人様なんて呼ばないで……名前で、呼んで……」

「いえ、それは……」

「私達を縛り付ける主従なんてそんなもの……!」 

 

「おい、御剣のとこだけ空気がおかしいぞ」

「いけません……ガチ恋勢です……!」

 

 燐の客は、何故か重い客が多かった。

 大体出禁になった。

 

「燐さんが接客をすると色々と大変なことになるので……掃除をお願いいたします……」

「うん……ごめんね……」

「店の前で掃除しているだけでも宣伝になる。大事な仕事だろう」

「紫乃くん……。ありがとう!」

 

 薫から手渡された箒を受け取り、店の前の掃き掃除を始める燐にそういえばと薫は伝え忘れたことがあると言葉を続けた。

 

「実はその箒には、刀が、仕込まれております……」

「どおりで……手に馴染むと思った……」

「刀が仕込まれていることへのツッコミはないのか……」

 

 仕込み刀を抜いて、どれどれと鑑賞する燐は掃除の仕事などすっかり忘れていた。

 刀に目を奪われているメイドの姿はSNSに写真が投稿されてバズり、オタクや外国人観光客を集めることになるのであった。

 

 

「紫乃きゅん! あれやってよあれ!」

「帰れ」

「そっちじゃなくてぇ、萌え萌えキュンでござるよ~」

 

 古のオタクファッションに身を包んだオタクが紫乃にリクエストをする。

 それを聞いた紫乃は当然苦い顔となる。

 

「紫乃さん……ご奉仕の心、です……。愛情を、こめて……」

「紫乃くん大丈夫。みんなでやれば恥ずかしくない!」(やけくそ)

「くっ……わ、分かった……やろう……」

 

「「「萌え萌えキュン♥️」」」

 

「あー! ありがとうございます! ありがとうございます! これで拙者成仏出来るでござる!」

 

 それがオタクの最後の言葉であった。

 オタクは金色の粒子となって、空へと消えていったのだ。

 

「よかったね、成仏出来て……」

「はい……。きっと、メイドカフェに行けなかったことが未練となり、現世を彷徨っていたのでしょう……」

「いや待てあの客幽霊だったのか!?」

 

 このように様々なことを乗り越えて三人はメイド力を高めていき、そして……。

 

「さあ、行きましょう……。ご奉仕ボウシを倒しに……。奉仕の心を学んだ今なら、打ち勝てます……」

「そうだね……!」

「本当か……?」

「勝てます……。いいですか、奉仕の心と、萌え萌えキュン、です……。あとは、私の作戦どおりに……」

 

 ご奉仕ボウシ打倒のため、再び三大ライダーが立ち上がる!

 

 

 

 

 非常に見覚えのある採石場。

 ご奉仕ボウシが操った人々にご奉仕させていた。

 

『ご奉仕ボーシッ! 他人に全て世話してもらうなんて幸せなことこの上ない!』

 

 そう宣うご奉仕ボウシに向かって歩く三人のメイドがいた。

 

『む! お前達、性懲りもなく現れたか! 今度こそ倒してやる!』

 

「いいえ、ご奉仕ボウシ様……。私達は、ご奉仕ボウシ様にご奉仕しに参りました……」

 

『なんだと!? よし、どんなご奉仕をしてくれるのかお手並み拝見といこう。ご奉仕ボーシッ!』

 

「かしこまりました……。それではまず、お耳掻きなど……」

 

 薫がご奉仕ボウシのもとまで行き、慣れた所作で正座するとご奉仕ボウシを膝枕して、耳掻きを始める。

 

「どうでしょう……」

 

『ご奉仕ボーシッ! き、気持ちいい! ご奉仕ボーシッ!』

 

「ああ、あまり動かれては……」

 

 薫はご奉仕ボウシの耳元に口を寄せ……。

 

「だめですよ……」

 

『ご奉仕ボーシッ! ASMR!』

 

「いかがでしょう……。私達三人を雇っていただければいつでも、なんでもいたします……。燐さんは、掃除が得意ですし……紫乃さんは……ツンデレでございます……」(ASMR)

 

 燐は箒をしっかりと握りしめ、紫乃はツンデレと言われたことを否定しようとするも頑張って堪えた。

 

『たしかに……この三人だけで事足りるやもしれん……。ええいっ! 他の奴等は解雇する!』

 

 解雇する。その発言がトリガーとなり、操られていた人々の洗脳がとけた。

 

「あれ? 私なにしてたんだっけ?」

「ここどこ?」

「岩船山」

「帰るか~」

 

 ぞろぞろと帰り出す人達。

 あたりにはご奉仕ボウシとメイド三人のみとなった。

 

『うーむ、人が大勢いたからかなんだか汚いな。そこの、燐ちゃんだっけ? 掃除してくんない?』

 

「かしこまりました」

 

 掃除を言い付けられた燐は箒を携え、ご奉仕ボウシの方へと向かう。

 ご奉仕ボウシはすっかり耳掻きの虜となり、リラックス状態。

 うとうとと船を漕ぎ出したその瞬間、膝枕が強制終了し顔面を刀で斬りつけられた。

 

『ご、ご奉仕ボーシッ!? お前達、俺にご奉仕するんじゃなかったのか!?』

 

「誰がお前なんかにするか」

「ああ、そんなことしてもらえる身分だと思っていたのか?」

「人を操り、奴隷とする怪人ご奉仕ボウシ。私達が、倒します……!」

 

『お前達……なんなんだお前達は!』

 

 三人はそれぞれの変身アイテムを手に取り、一斉に変身を開始する。

 ご奉仕ボウシへの問いに、言葉ではなく行動で答えるのだ。

 

 薫はマイヤの怨面を手にし、唱える。

 全身に浮かびあがる蝶のような紋様の痛みに耐えながら。

 

「オン・ビシャテン・テン・モウカ。舞え、マイヤ……」

 

《レリックドライバー!》

《サンダー!》

《ハウンド!》

 

 紫乃はベルト、レリックドライバーを巻き付け、二本のモンストリキッドを装填する。

 

「お前を塗り潰す色は決まった」

 

 燐は構えていた刀を地面へと突き刺し、その刃を鏡としてデッキを映す。Vバックルが腰に巻かれると、腕を居合のように回しご奉仕ボウシを睨み付ける。

 

 そして、三人は叫ぶ。

 

「「「変身ッ!!!」」」

 

 並び立つ、三人のライダー。

 白い剣士に挟まれて紫の蝶の戦士が中央に。

 

「御伽装士、仮面ライダーマイヤ。あなたのような魔を倒す夜の蝶で、ございます……。お前を倒すのに、躊躇はしねぇ!」

「仮面ライダームラサメ。お前を調伏する」

「仮面ライダーツルギ……!」

 

『くぅぅ……ご奉仕マインドッ!』

 

 先制攻撃と放たれた洗脳光線。

 これを前に躍り出たツルギとムラサメが切り裂き、二手に分かれた光線は三人の背後に着弾。

 爆炎が三人を飾り付ける。

 

「ハッ!」

 

 舞い上がるマイヤがご奉仕ボウシへと蹴りを放つ。

 ヒールがご奉仕ボウシの顔面に突き刺さる。

 

『ご奉仕ボーシッ!?』

 

 強烈な痛みに襲われるご奉仕ボウシに更に畳み掛けるマイヤ。

 掌底による打撃をご奉仕ボウシの胴体へと打ち付けていく。

 

『おのれぇ!!!』

 

 ご奉仕ボウシが武器である錫杖を装備し、マイヤへと反撃するが舞を踊るかのように一撃一撃は回避、受け流されていく。

 そして、上段から力いっぱいに振り下ろす攻撃はムラサメのAウェポン、ツルギのリュウノタチにより阻まれる。

 交差する三本。

 弾きあい、膠着を終わらせるとムラサメがまず斬りかかるも錫杖に阻まれる。続くツルギの斬はご奉仕ボウシの手甲に受け止められるが息のあったムラサメとツルギはご奉仕ボウシを蹴り飛ばし、駆ける。

 追い抜きざまに白き斬撃が二閃。

 

「合わせますよ……! 必殺陣……萌え萌えキュン。萌え……!」

 

 集まった三人。

 マイヤの指示に合わせ、駆け出したマイヤを追いかける形でムラサメとツルギが続く。

 

「退魔覆滅技法 蝶絶怒涛」

 

 マイヤの手から放たれる無数の蝶達が群れを成し、ご奉仕ボウシの周囲を取り囲む。

 

『おお……綺麗だな……』

 

 蝶がつくる絶景に手を伸ばしたご奉仕ボウシ。

 一匹の蝶に触れた瞬間、爆発。

 

『のわぁぁぁぁ!?!?』

 

 一匹の爆発が連鎖していき、爆発を引き起こす。

 

「急々如律令」

《ハウンド!》

 

 蝶の次に現れるは白き霊犬。

 黒い爆煙の中に飛び込んでいき、ほどなくご奉仕ボウシの悲鳴が響き渡る。

 爆煙の中から飛び出たご奉仕ボウシは尻を霊犬に噛まれたままであった。そうして飛び出した先にはムラサメが立っており、斬り伏せられる。

 

「萌え……!」

 

 地面を転がったご奉仕ボウシがへろへろになりながら立ち上がると今度は目の前にツルギが太刀をだらりと下げて立っていた。

 

『ご、ご奉仕ボーシッ!(挨拶)』

 

「きゅん!」

 

 容赦のない縦一閃、唐竹割り。

 ライダー達の攻撃により最早、ご奉仕ボウシに勝ち筋はなかった。

 

「退魔覆滅技法……千蝶一蹴!」

 

《Last Calling!》

《サンダーハウンド・クロマティックストライク!》

 

【FINALVENT】

 

「「「ハァァァァッ!!!!!!」」」

 

 跳躍する三大ライダー。

 マイヤは蝶を、ムラサメは雷を、ツルギは斬撃を纏い放たれるトリプルライダーキック。

 着地した三人は残心の後、変身を解除する。

 

『も、萌え萌えキュンはなにか関係あったのかぁぁぁ!!!!!!!』

 

 それが、ご奉仕ボウシの最期の言葉。

 爆炎を背にする三人のメイド達は戦いの終わりを感じていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~終わった終わった」

「なんだか、やけに疲れた気がする……」

「ゆっくりと、休みましょう……」

 

 三人は喫茶Hamelnへと戻り、もうお店は終わる時間なのであとはゆっくりしようと会話しながら店内へ。

 だが、店内にはまだ客がいた。

 客は客でも、三人が見知った人達である。

 

「やっほー薫~」

「咲希……!」

「ゆ、行雲くん……」

「ロ、ロゼ!? 何故いる!?」

「……」

「み、美玲先輩……」

 

 それは、非常に気まずい空気であったと章太郎は語った。

 見られたくところを見られてしまった時に感じるの例のアレだと……。

 

「なんで言ってくれなかったのさー! メイドやってるなんてー!」

「それは、その……咲希に見せるのは、恥ずかしかったから……」

「なんで私に見せるのは恥ずかしいのかなー? どうしてかなー?」

「う、うるさい! あっち行け! 帰るぞ俺達の世界に!」

 

 あれほどノリノリだった薫も、咲希の前では恥ずかしかったようで男口調が出てしまっていた。

 

「行雲くん、その……」

「み、見るな! 忘れろ! 決してオレの趣味ではないぞ!」

「とても似合ってるわ!」

「違う。これは……違うッ!」

 

 口では否定しても、紫乃の今の格好ではまったく説得力がなかった。

 

「うぅ、美玲先輩……。あんまり見られると……恥ずかしいですよ……」

「……」

「そんなじろじろ見ないでくださいって……。って、美玲先輩? もしもーし? あれ?」

 

 美玲の顔の前で手を振る燐だが美玲の反応はなし。

 訝しんだロゼが美玲を調べる。

 

「……気を失っているわ。恐らく、御剣くんのメイド姿を見て」

「そんな!?」

 

 ひとまずこれでご奉仕ボウシ事件は終わり、燐と紫乃は今後一切メイド服に袖を通すことはしないと固く誓ったのであるがなんやかんやと今後も着ることになってしまうのはまた別のお話……。




ハージェネキャラクター説明

夜舞薫=仮面ライダーマイヤ

ビャクアの世界の御伽装士(ライダー)で御守衆に所属し岩手県沿岸部の小さな町とその周辺地域の守護を使命とする。
とある事情から女として育てられてきた。
同じ高校一年生の紫乃や燐と行動することが多く、紫乃とロゼの関係を進展させるべく自分が悪役令嬢になるべきかと最近真剣に考えている。
燐の恋愛関係についてはめんどくさそうなので触れないつもりでいる。
夜舞家という旧家の生まれで厳しく育てられたためか反動で自由人キャラに。
人を振り回すことが多い(主に燐と紫乃)

https://syosetu.org/novel/261255/

御剣燐=仮面ライダーツルギ

ツルギの世界のライダー。
ライダーであること以外は普通の男子高校生なので仮面ライダーであることが個性みたいなところがある。
しかし他の人達も大体仮面ライダーなので没個性的なのでは?と最近考えている。
だがその普遍性が人を寄せ付け、ガチ恋勢の客を生んだりしてしまう魔性の男。
紫乃や薫とつるむことが多く、薫に振り回されたり紫乃を宥めたりと実はお兄さんポジションだったり。
戦闘時は一変して無口で容赦がなくなる(怪人に対して)
なお決め台詞や必殺技を叫んだりしないので他の人達に合わせた方がいいかなと色々考えてたりする。

https://syosetu.org/novel/216700/

行雲 紫乃=仮面ライダームラサメ

ムラサメの世界のライダー。
LOT磐戸支部に所属する封魔司書の一人であり、戯我の魔の手から人間を守る使命を帯びている。
一見すると人当たりが悪く冷たい人物であるように思えるが、何だかんだで面倒見が良く、時折その奥底にある優しさを垣間見せる。いわゆるツンデレ。
口では「友人ではない」と否定しつつも、薫や燐の事も大切に思っている。
甘党。特にエクレアが大好物。それ故、薫などから甘い物をエサに振り回される事がままある。

https://syosetu.org/novel/277206/
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