三年E組にあの二色のハンカチ、仮面ライダーWが入るらしい。その一年間の成長記録   作:春瀬紫苑

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Hへの憧れ/彼は何処を目指す

 とある日の朝。春の心地よい風が森の中を通り抜けている。少し違うのは、どことなく殺意が交わっているところか。

 それを間近で感じられる校舎裏のとある場所、そこに向かうと……。

 

 殺せんせーが、朝早くから校舎裏で、ハワイでの英字新聞を読んでいた。

 翔太郎がそれに気づくと、バッグから対先生用の銃弾が常に入っている小さな銃を取り出す。しかし、意識がこちらに微量ながらも向けられていることを第六感の様なもので名前はつけられないが感じ取り、銃を鞄にしまった。

 

「翔太郎?」

「いや? なんでもねぇぜ。標的(ターゲット)がそこにいたけどガッツリマークされてただけだ。……それなら、不意打ちの方がいいだろ?」

 しょうがないね、とフィリップは肩をすくめる。寺坂達が暴れ回ったあの件以降、二人は要注意人物として先生に目をつけられていた。

 本来の彼等の職業は探偵だ。そのような視線に気付かないわけがなく、ひしひしとその視線を感じ取っていた。

 無論、生徒達の視線もどことなく変わった気がするのにも言葉にはできないが二人とも感じ取っている。

 

 そこに、違う生徒が現れたようだ。気配で感じてそちらの方を見ると、野球が得意と聞いた杉野と、それに同行してついてきた形だろう渚がいた。杉野の方が、野球のボールを投げる。

 しかし、杉野と渚の後ろに殺せんせーがいつの間にかいた。どうやら、グローブを倉庫から持ってきたようだ。何か話しているが、翔太郎とフィリップはHRの時間に間に合うように、少し早くこの場を離れた。

 

 

 

「〜〜〜〜」

 先生が授業を話している。正直、一応高卒の翔太郎はともかく、知識欲の権化とも言えるフィリップは授業はあまり聞いていない。でも一応生徒として登録してあるし、授業中の暗殺は認められていないので、至って真面目に授業を受けている。抜け出していないだけマシだと言ってほしい。

 

(今日杉野の元気ないなあ……)

 杉野は今日溜め息ばかり落としている。なんだか心ここに在らず、というような感じだ。

 翔太郎が杉野のことについて考えている最中、フィリップはいつの間にか暇すぎていつもの()()()()を取り出して机の下で読んでいた。

「おい! 授業中は読むなって言っただろ!?」

 翔太郎が他の人の邪魔にならないように小声で注意する。今度は『文法』について調べているようだ。どうやら、翔太郎とフィリップにはその白紙の本に何かが見えているようだ。

 

「いいじゃないか。別に、」

「フィリップ君、何を読んでるんですか? 没収です」

 殺せんせーが触手を伸ばして白紙の本を取り上げる。あ、とフィリップが小さく声を漏らしながら、右手を白紙の本の方に向けた。

「何読んでんだ? フィリップ。落書き帳じゃないのか?」

 前の席に座っている千葉が正論を投げる。翔太郎が、フィリップの本を取り返そうとしながらそれについて弁解をした。

 

「あー……なんて言ったらいいんだろうな。俺等のお前等と違うところのお陰でそれに映し出されている文字が読めるんだ。ちなみに変えようと思えばいつでもコロコロ変えれる。ま、これで悪用された試ししかないから詳しく話したくないがな……」

 あまり話したくないと、また二人の隠し事が増えていく。この教室に来るならあまり仕方のなかった物かも知れなかったが、生徒たちの不信感は確実に増えていく。二人ともいつかは話さないとな、と覚悟するが、今はそんな勇気などなかった。

 

「ということだ。殺せんせー、早くそれを返してくれないか?」

 フィリップは殺せんせーのそばに近寄り、本を返してもらうことを要望する。声色は怒っていることが簡単に読み取れる。しかし、触手を器用に使い、フィリップの手を払い除け続ける。フィリップは、それをナイフを使い奪い返そうとしたが、授業の妨害になると気づいたのか、ナイフをすぐにしまった。

「うっ。……あとでちゃんと話を聞きがてら暗殺しに行く。だからそれに落書きとかしないでくれ。それはぼくにとってとても大事な物だ。殺せんせーに請求することも視野に入れるだろうね?」

 クエスチョンマークがついているが、落書きしたら請求することは確実だろう。それくらいにその本は大事なものなのだろうか。

 

「じゃ、授業続けてくれ。邪魔して悪かったな。こいつには厳しく言っておく」

 とぼとぼと歩いてきたフィリップの頭のてっぺんを拳でくりぐりとしながら言う。そんな翔太郎にさらに気分を悪くしたが、翔太郎が最後にぽん、と頭を優しく叩く。フィリップは俯いていた頭をあげ、ほとんど同じ高さの目線を合わせた。

 しかし、翔太郎はその目線をすぐに逸らすと、すぐに自分の席に座った。恥ずかしいのかどうかは、少しばかり人間の心情に疎いフィリップにはあまり簡単にわかるものではなかった。

 

 

 

「今日の放課後の予定知ってる? ニューヨークまでスポーツ観戦だぜ。マッハ二十で飛んでく奴なんて殺せねッスよ」

 生徒が呟いた殺せんせーのその行動は、ある生徒の未来を育てるため。それに気づくのは、いつ?

 

 

 

「はぁ…」

「杉野。昨日は大変だったな」

 芝生の上で座り込み、今日何回したか分からない溜め息をまた落とす。そこに、いきなり気配もせずに翔太郎が話しかけてきた。

「わっ! 翔太郎か……。昨日の暗殺、見てたのか?」

 杉野が大声を上げながら振り返ると、そこには翔太郎だけでなくフィリップも翔太郎の背後に隠れて立っていた。

「ああ。俺も暗殺しかけてたがいくらかこっちに意識が向いてたから辞めてた。強行突破した方が良かったか?」

 翔太郎が杉野を慰めようとしてるのだろうか。杉野の隣にパーソナルスペースなど気にしないようにドカンと座る。フィリップも、それに続いて翔太郎の隣に音を立てずに座った。

「いや、どっちでもきっと変わらなかっただろうな……」

 杉野はそういうとすぐに溜め息を再び落とす。昨日の暗殺の失敗はかなり杉野のメンタルにきたようだ。

 

「磨いておきましたよ、杉野君」

 翔太郎が座っている方の反対から、殺せんせーの触手が伸びてくる。その触手の先には、布で触手に被害が行かないように防御されてある対先生用BB弾の埋め込まれた野球ボールがあった。

「…殺せんせー、何食ってんの?」

「昨日ハワイで買っておいたヤシの実です。食べますか?」

 バリバリと音を鳴らして食べられているヤシの実を見て、杉野が思わず突っ込む。飲むだろフツー、とぼやきながら、信じられないような目で殺せんせーを見つめる。

 

「昨日の暗殺は良い球でしたね」

「よく言うぜ。考えてみりゃ俺の球速でマッハ二十の先生の当たるはずねー」

 殺せんせーが翔太郎の逆側、杉野の左側に座る。相変わらずヤシの実をバリバリと食べているようだ。

「君は野球部に?」

「前はね」

「前は?」

 前は、という部分に引っかかった殺せんせーが質問をする。翔太郎は、あまり杉野の過去については知らないので、黙って聞いていることにした。その間、翔太郎は校舎からの渚の視線に気づき目を向けるも、すぐに目線を逸らした。

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