三年E組にあの二色のハンカチ、仮面ライダーWが入るらしい。その一年間の成長記録 作:春瀬紫苑
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では、Kの時間、お楽しみください。
ーーある部屋の一室、スーツ姿の男女が、赤髪の椚ヶ丘の制服を着た生徒だろう者に説明をしている。
「ーー事情は今話した通りです。地球の危機ゆえ秘密の公害は絶対に禁止。もし漏らせば記憶消去の治療を受けて頂くことに」
防衛省の園川雀が、前に立って説明をする。
「……怖ッえ!」
赤髪の青年ーー精神年齢は少年と言っても差し支えないーーが、驚いたような、嬉々揚々ととしたテンションで答える。その青年は、これから暗殺任務を依頼される。
手に持っている、ゴムのような対先生用ナイフをびょんびょんさせながら、本当に先生に聞くか質問をするが、すぐにその皮に効くと言われ、殺せんせーの顔が載っている暗殺手配書のような紙に裏側からナイフを刺す。
「…へーえ。ま、人間じゃなくても別にいーか。一回さぁ、先生って生き物殺してみたかったんだ」
そう言って笑う一人の赤髪の青年は、好奇心にあふれ、それを暴力的な方向へと向かってしまう、危険な笑みを浮かべていることを、彼はよく理解していた。
場所はE組の運動場に移る。
いっち、にーさーんし、ごーろっくしっちはっち、と体育の掛け声が響き渡り、殺せんせーは平和だという……生徒の手に握られている
少し前に、新たに体育の教科担任、そして副担任(なお表では担任ということになっている)としてやってきた、あの時の烏間が先生としてやってきた。
烏間が、八方向からナイフを正しく振れるように、どんな体勢でもバランスを崩さないように、と大声で体育の指揮を取っている。烏間は隣に立っている『殺先生』と書かれた体操服と赤白帽子を着た殺せんせーを砂場に追い払う。どうやら殺せんせーまで体操服を着ていることにツッコミながらのようだ。
ちなみに、生徒からは殺せんせーの体育は不評なようで。人間には絶対できない技をやれと言ってもただの中学生であるE組にはできない。それを直接言われ、先生はひどく落ち込んでいるようだ。
前原が、当の
「勉強も暗殺も同じ事だ。基礎は身につけるほど役に立つ」
渚は困惑している。しかし、烏間は前原と磯貝を指名し、ナイフを俺に当ててみろ、と挑戦状を叩き出す。
「二人がかりで? え…いいんですか?」
磯貝は状況が理解できずにいる。がしかし、
「そのナイフは俺達人間に怪我は無い。かすりでもすれば今日の授業は終わりでいい」
と烏間がいうものだから、磯貝から攻撃を仕掛けることにした。
「え…えーと…そんじゃ」
前原が遠慮がちに突き出したナイフは、烏間が左に避け、ナイフは当たらない。磯貝が驚いた顔をするのを見て、幼少期からの仲の前原が必死の形相でナイフを振る。しかし、そのナイフは烏間が手で、前原のナイフを持った手を弾いた。
前原や磯貝が、一緒にナイフを振るが、全部烏間に避けられたり弾かれたりしていて、一切当たっていない。
「このように多少の心得あれば、素人二人のナイフ位は俺でも捌ける」
生徒は皆、烏間に感心しているようだ。ただ、二人は三人の戦いをじっくりと観察していた。翔太郎とフィリップである。探偵故の観察眼を生かしてじっくりと見ているが、生徒は知らないからそのような能力は飛び抜けている、としか分かっていない。
くっそ、と叫びながら二人は攻撃するが、二人の腕が掴まれ、体が回る。そのまま体は地面に打ち付けられた。
「俺に当たらないようでは、マッハ二十の奴に当たる確率の低さがわかるだろう」
見ろ、と殺せんせーの方を見せると、いつの間にか砂場で大阪城を建てて着物に着替え茶まで立てていた。生徒一同腹立っているようだ。
「では次は……翔太郎君、フィリップ君。ダブルドライバー無しで俺にナイフを当ててみろ。実戦経験もあり、互いの信頼関係もこのクラスの中ではダントツに高い……できるだろう? これは授業を終わりにはしないがな」
端の方で三人の戦闘を観察していた翔太郎は、自分の名前を呼ばれたことに気づき、考え事に耽っていた思考を呼び覚ます。一方のフィリップは未だ考え事をしていて気づいていないようだ。
「ああ、できると思う。……フィリップ、できるか?」
翔太郎に声をかけられてようやく気づいたのか、フィリップが頭を上げる。ああ、できるさ、と答えると、横腹ににくくりつけてあったナイフケースからナイフを取る。どうやら翔太郎も同じく横腹にくくりつけていたナイフケースからナイフを取り出し、一足先に準備運動をしていた。
「じゃ、行くぜ……」
「ああ。お好きな時に」
翔太郎が声を掛けると、烏間が一見楽に避けるというような調子で答える。が、国から聞かされた事を思い出すとあまり虚勢を張れそうにもない。全力を出すしかなさそうだ、と思いふっと笑みを零した。
「ぼくも準備ができたよ。さて、ぼくらの戦い方を見せてあげようではないか」
そう言ってナイフを持って妖美に笑うフィリップ。翔太郎で目線で会話ーーアイコンタクトをすると、二人は息を合わせたように動き始めた。
まずは翔太郎が正面からの戦闘に入った。烏間は余裕そうにかわすも、翔太郎はそれも計算内というように新たな一撃を繰り出す。その間に、背後に回っていたフィリップが、後ろから奇襲する。しかし、気配で気づいたのか烏間がそれを手で弾いた、がフィリップが正面戦闘に移る。
烏間が言っていてように、四月の初めの方に戦っていたのを生徒一同は見ており、実戦経験があるのは知っている。それも、今戦っている様子も、何回も、何十回も戦っていて、戦い慣れているような感じがした。
何十回も戦っている二人を同時に捌くのは、流石に精鋭部隊として戦っていた烏間でも難しい。しかも、並の信頼度ではなく、互いのことをよく知り、理解している。お互いの思考を理解するのも、簡単なことなのだろう。だからか、何も言葉を交わしていないのに息ぴったりに攻撃を仕掛けてくる。
(これは……こちらも全力を出すしかないな)
途端に烏間の纏う雰囲気が変わる。翔太郎とフィリップは、その雰囲気を感じ取ると警戒度を強めた。強者と戦い、強者との戦い方も熟知しているようだ。
「フィリップ!」
翔太郎が、フィリップにナイフを投げ渡す。ナイフは烏間の手の届かないところで飛び、烏間は妨害することが出来なかった。フィリップが烏間の後ろで左手でナイフを取ると、二刀流になる。しかし、そのせいで翔太郎は武器を持っていない。
「いいのか? 翔太郎君。君は俺にこの戦いで勝てないが?」
「ああ。それは承知だ。だけどなーー」
ーー俺は素手で勝負してきたからな!
翔太郎の動きは、むしろナイフを使わない方が素早かった。格闘技のように、烏間に思い一撃を食らわせ続ける。烏間も唯一ナイフを持っている、両手に逆手でナイフを持ったフィリップに意識を集中させていて、翔太郎の攻撃は問題がないレベルで受け止め続けている。
ーーそれが、仇となってしまったのだろう。翔太郎はいつの間にか戦いで烏間の体の向きを半回転させ、フィリップを目の前にさせる。その間に、翔太郎は烏間の後ろに回り、羽交い締めする。
「しまっー」
烏間が声を上げると同時に、目の前にいたフィリップが烏間にナイフを当てる。
「すまないね。格闘技は翔太郎の得意分野なんだ」
にこ、とフィリップが笑いながらナイフを押し当てる。
「フィリップ。そこまでにしてやれ」
翔太郎が言うと、フィリップはナイフを烏間の体から離し、翔太郎も羽交い締めにしていた手を離す。烏間はいきなり離されよろけたが、フィリップが手を差し出す。烏間は素直に手を借りて立ち上がり、翔太郎とフィリップに感想を述べた。