三年E組にあの二色のハンカチ、仮面ライダーWが入るらしい。その一年間の成長記録   作:春瀬紫苑

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Kの時間/暗殺者磨き

「…………計算外です」

 そう呟きながら、校舎の廊下をとぼとぼと歩く。どうやら財布を開いてブツブツ言っているが、財布の中身が小銭しかないので、金欠らしい。自炊するしかない、と言いながら教室に入ってきた。

 

「おはようございます」

 しかし、教室の空気はかなり険悪だった。険悪というより、気まずいというのだろうか。なお、本に夢中なフィリップは無視しているようだが。なんならもしかしたら一回も視界に入れてないのかも知れない。実際、今日は翔太郎が引っ張って校舎まで来たようだ。

 先生は険悪な空気を察し、自ら口を開いた。

「…ん? どうしましたか皆さん?」

 

 教卓の上には、赤くて、鮮度の高そうなタコが、人間用のナイフに貫かれて置かれていた。そして、カルマが舌を出し、タコを指差しながらそれの言い訳をした。

「あ、ごっめーん! 殺せんせーと間違って殺しちゃったぁ。捨てとくから持ってきてよ」

 

 殺せんせーはタコを長らく見ると、分かりました、と返事をして触手で拾う。すると、持っていない触手をドリルにして、回転させた。ギュルルルル、と大きな音が立つ。その音に、フィリップは驚いて本から顔を上げると、状況に戸惑い、近くにいた翔太郎に状況説明を求めた。

 

 しかし、殺せんせーはミサイルと紙袋を持って、教室から校庭に移動した。

「見せてあげましょうカルマ君。このドリル触手の威力と、自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を」

 殺せんせーの手元に炎を立てて飛び立とうとしているミサイルがあった。流石にこの光景に驚きが隠せないのか、カルマが呆然と先生を見ている。

 そして、ミサイルの炎を上にして、殺せんせーがドリルをマッハで動かし、何かを作っている。

 

「先生は、暗殺者を決して無事では帰さない」

 目を光らせ、口を開けて、まがまがしい表情をする先生。しかし、その次にはカルマの口に焼き立てホヤホヤのたこ焼きが挟まっていた。出来立てだからか熱く、あっつ!!、と叫びながらカルマは吹き出してしまったが。

「その顔色では朝食を食べていないでしょう。マッハでタコヤキを作りました。これを食べれば健康優良児に近付けますね」

 カルマが口を押さえながら、黙ったまま殺せんせーに向かって強い殺気を含んだ視線を投げつける。

「先生はね、カルマ君。手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を」

 空気が少し重苦しいような気がする。先生がたこ焼きを口の中に入れ、鋭利に尖ったとは言えないが中々恐怖を生み出す歯で噛み潰す。

「今日一日、本気で殺しに来るがいい。その度に先生は君を手入れする。

 放課後までに、君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう」

 カルマと殺せんせー、両者の視線に強い意志が見える。殺せんせーは、生徒をピカピカにさせる、つまりは殺させないという意思を込めた、カルマは、プライドが潰されたような気持ちを含めた表情で、絶対に先生を殺す、という意思を視線に込めた。

 

 翔太郎は、その視線ーーその視線を向ける人によりけりだが両方ーーに慣れを感じつつ、その光景を眺めていた。フィリップも一緒である。

 今日の授業は大変だな、とクラスメイトを心配しつつ、翔太郎はその光景から目を逸らした。特に意味はないが……強いて言えば、誰とは言わないが言い争いをしている二人の姿が重なり、居た堪れなくなったからだろう。そのまま、その視線はハードボイルド小説に向かい、現実を見ようとはしなかった。

 

 

 

 

 

ー一時間目・数学ー

 カルマは銃を取り出し撃とうとすると、先生の触手がそれを強い力で抑える。ググググ、と両者の力は互角だが、殺せんせーの方がカルマの力に合わせているような気がした。しかし、翔太郎とフィリップの位置から黒板を見るのに触手が微妙に邪魔だ。翔太郎が邪魔、と意思を込めて放った弾丸の意思が伝わったのか、触手が退いた。

 そして暇だからとネイルアートされるカルマの爪。カルマは若干不服そうだ。男子中学生がキラキラのネイルなどしたくないだろう。

 

ー四時間目・技術家庭科ー

 スープがトゲトゲしている、という不破優月に作り直したら、と鍋を対先生ナイフを持った手で思いっきり中身を地面にぶち撒け……ようとした。そのまま先生を刺そうとしたカルマは、フリフリのエプロンと可愛らしい絵柄の三角巾をつけていた。ちなみに鍋の中身は先生がマッハでスポイトで吸い取ったので無事だ。ついでに砂糖も加えて味をマイルドにさせて。

 ちなみにその後翔太郎とフィリップ達の班に呼ばれ、殺せんせーがすぐにいなくなったため、あまりカルマは愚痴を言えなかった。

 カルマは恥ずかしさが故に、三角巾を乱暴に取る。本人的にも少し恥ずかしかったらしい。……渚君に着せた方が可愛いかも、と思い立ちフリルのエプロンをーー後に分かると思うがーーコスプレセットに入れたのはまた後の話だ。

 

ー五時間目・国語ー

 先生が赤蛙を音読しながらカルマのすぐそばによる。カルマは腕を振りかざして、袖の中に仕込んでいおいたナイフを使おうとしたが、額を触手で押さえつけられたことで動けなくなった。ーー原理はよく分からないが、重心が関係することだろう。それにより無防備になったカルマは、殺せんせーの触手により髪が整えられていく。カルマは目を見開き驚きながらその光景を呆然と見ているしかなかった。翔太郎の隣の席なため、それを翔太郎が見ていた。が、到底あの髪の整え方は人間ができることじゃないよな、と自己完結して見るのをやめた。

 

 

 

 

 

 校庭の崖に面した一角。崖の先には倒れた木があり、カルマはその木の中腹あたりに爪をかみながら跨いで座っていた。どうやら今日はだいぶ精神にきたらしい。

「…カルマ君。焦らないで皆と一緒に殺っていこうよ」

 そんなカルマの様子を見て、渚が口を挟む。

 

「そうだ。殺せんせーに個人マークされたら…どんな手を使っても一人じゃ殺せない。普通の先生とは違うんだ」

 そこに、音も気配もなくフィリップが口を出す。どうやら翔太郎を置いてけぼりにしてやってきたらしいーーフィリップは放課後だが荷物を持っていないのでそのうち翔太郎が持ってきてくれるだろうーー。カルマは振り返らず、黙ったまま目つきを鋭くさせた。

「……やだね。俺が殺りたいんだ。変なトコで死なれんのが一番ムカつく」

「「……」」

 フィリップも渚も、その気迫に黙りこくる。何かを言っては、すぐにカルマに殺られそうだ。

「さてカルマ君。今日はたくさん先生に手入れをさせましたね。まだまだ殺しに来てもいいですよ? もっとピカピカに磨いてあげます」

 先生が舐めた時の縞々模様の顔になる。それを見ると、カルマはーーフィリップと渚を怯ませたーー殺気をより一段と濃くする。

 

「確認したいんだけど、殺せんせーって先生だよね?」

「? はい」

 カルマの質問の意味がわからず、殺せんせーは一度迷ったそぶりを見せてから返す。

「先生ってさ、命をかけて生徒を守ってくれるひと?」

「もちろん、先生ですから」

「そっか良かった。なら殺せるよーー確実に」

 銃口を上にし、木を蹴って背から崖へ落ちていく。渚やフィリップはもちろん、遠目からフィリップの鞄を回収してやってきた翔太郎も驚いていた。

 確実に殺せると思っているからか、カルマの顔が狂ったような、殺気に満ちた顔になる。

 

 

 

 しかし、先生がマッハでカルマの下に行き、何か蜘蛛の巣のような物を作り出す。カルマはそれに気づくと、え、と驚いた顔になった。そのまま、蜘蛛の巣のようなネットにカルマの体は柔らかくキャッチされた。

「カルマ君。自らを使った計算ずくの暗殺、お見事です。音速で助ければ君の肉体は耐えられない。かといってゆっくり助ければその間に撃たれる。

 ーーそこで先生ちょっとネバネバしてみました」

 上から覗き込んでいる三人にもわかるように、本当にネバネバしているようだ。まるで本物の蜘蛛の巣か。

 

「これでは撃てませんねぇヌルフフフフフフ…ああちなみに。見捨てるという選択肢は先生には無い。いつでも信じて飛び降りて下さい」

 

 カルマが、諦めたように鼻で笑う。そして、それを合図とするようにカルマと殺せんせーは崖の上に戻ってきた。翔太郎はカルマが勝手に落ちていってまた戻ってきたことにとても安堵しているようだ。

 渚が無茶をしたね、というと、大人しく計画の練り直しかな、とカルマがつまらなそうに言う。ネタ切れですか、と言った殺せんせーは手入れ道具を大量に持って「チョロい」と煽る。

 

「殺すよ、明日にでも」

 イライラしたカルマが、首を親指で切る動作をしてそう告げる。健康的で、爽やかな殺意のようだ。殺せんせーが何かでいいことがあったのか顔の色を赤い丸にしてニコ、と笑った。そして、先生が去っていく。何か満足したようで、顔はホクホクした顔だった。

 

 

 

「ところでカルマ。お前はなんで落ちてまで暗殺しようと思ったんだ?」

 翔太郎がカルマの近くに来て、問いかける。それにカルマは少し唸ると……まるで安心できる大人に話すように、過去を語り始めた。

「うーん……去年、俺に期待してるって言ってた先生が勝手に失望して、俺の中で先生が死んだ。絶望したら俺にとってのそいつは死んだも当然なんだって初めて気づいた。……だから、今度は先生としての殺せんせーか、普通に超生物の殺せんせーを殺そうと思っただけ、かな」

 話し終わった後に、なんでここまで話してしまったのだろう、とふと我に帰ったようだ。まあ話してしまったものはしょうがないと、割り切ったようだが。

「そうか……ま、否定できなくはないな……」

 翔太郎が過去の自分を思い出したように、物思いに耽る。カルマと似たような経験があったのだろうか。

 

「あ! そうだ。翔太郎君、フィリップ君、俺がこのこと喋った代わりに、渚君と一緒に君たちの家行かせてよ!」

 カルマが思いついたように悪びれもせず家に入れてくれ、と頼む。翔太郎とフィリップは少しだけ顔を見合わせる。

「ああ、構わない。だがうちには誰も来たことはないし、少々散らばってるかもしれないが、それでもいいのなら」

 フィリップが了承の意を示すと、カルマは校舎の方に去っていく。どうやら鞄を取りに行くらしい。渚もカルマの言動にしょうがないな、と言いつつ本人は乗り気だ。

「お、磯貝に前原、杉野に…茅野。どうしたんだ?」

 この位置からは草木に隠れて見えにくい場所に、四人が隠れていたのを翔太郎が見つける。

「いや……カルマが暗殺してるの覗き見してただけだから……」

 茅野が申し訳なさそうに胸の前で手を小さく振る。磯貝も前原もちょっと申し訳なさそうだ。杉野は申し訳なさか草木の間に隠れた。

 

「じゃ、磯貝、前原、杉野、茅野ちゃん。申し訳ないと思ってるなら、翔太郎君とフィリップ君の家に一緒に遊びに行こうよ」

 後ろから来たカルマが、突然爆弾発言を落とした。




特に意味はない翔太郎の居た堪れなくなった理由。もしかしたら伏線になるかもしれないが伏線にならないかもしれない。

次回からの1エピソードはオリジナルエピソードとなる予定です。
どうでもいいですが原作作中で触れられていた三者面談は学期終わりに実施している、と解釈していますがもし公式で言われていれば教えてください。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=285045&uid=397986
↑活動報告になります。是非ご一読下さい。リクエストを考えている人はこちらにて承っております。
 更新が滞り、申し訳ありません。新作投稿も考えておりますが、詳しくはリンク先に書かれております。
 いつも応援してくださっている皆様、本当にありがとうございます。
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