「ボク」っ娘系メカニックちゃん   作:アビ田

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マッカーサーキェェェイ!!!な31巻でした。
ありがとう金カム、ありがとうノダカムイ。そしてありがとう、姉畑先生。


[Ⅲ]
WARNING-猛犬注意-


 アイ=コールマンへの慕情がボクの中で一区切り付いた頃。

 

 魔法界の空はサンサンと、明るく陽が照らしている。

 

 

 

「キリキリ」の一件でボクが感じたのは色々とあるが、己の研鑽が足らないと感じた。能力が能力なので強くするもクソもないんだけど、改善点を見つけた。

 

 ちなみに頭の方は直してある。

 

 煙との戦いで、ケムリを出す手が何らかの形で使えなくなった場合、碌に戦えなくなることを自覚させられた。

 

 いや、魔法なしでも、あんなオッサンくらいボッコボコにできる地の力はある。ボクも発明ばかりしているわけじゃない。今でもしっかり鍛えている。あまり見た目の筋肉として出ないだけで。

 

 でも体を動かす前に、戦闘不能にされたら意味がないんですわ。

 

 ゆえに口からケムリを吐いていた煙に倣って、ボクも新たな手術を受けることにした。

 

 そして無事失敗し、管を逆流したケムリの影響で頭が「ボカン!」と破裂した。目玉も脳みそも様々なものが吹っ飛び、壁や手術台、床や医師にべっちょり付着した。

 即死だったのでこの時のことをボクは覚えていないが、後から見ようと設置してもらった映像記録で確認した。まるでチープなスプラッタ映画みたいで、面白かったぜ。

 

 

 で、何で生きているのかというと、理由はカンタン。一度死んで生き返ったのだ。

 

 担当した医者曰く、ボクの悪魔腫瘍が「超回復魔法」のケムリ瓶を持っていたのではないか? ──ということらしい。

 

 悪魔腫瘍は魔法使いの脳内に丸まるように存在しており、そのケムリ瓶を抱かせる手術があるんだそう。

 

 ボクの頭がぶっ飛んだように、手術の失敗はままある。その中でも数センチから数ミリ程度の極小ケムリ瓶を悪魔腫瘍に抱かせる手術は非常に難易度の高いもので、致死率が高いらしい。それでも手術を受ける者がいるとのこと。

 たとえ頭に大けがを負って死んでも、魔法が発動しすぐに生き返ることができる。

 

 この「超回復魔法」のケムリ瓶は、元々悪魔たちが彼らの娯楽の過程で作ったもの。

 

 そこまで聞けば誰が仕組んだのかわかる。当然ボクはこの手術を受けた記憶はない。本人に気づかせず斯様な芸当ができるのは、悪魔に違いない。ボクの身近の悪魔と言ったら、一人しかいないだろ。

 

 

 そのあと再度手術を受けて成功して帰り、テレビを見ながらバランスボールに座って運動していたハルちゃんに尋ねた。

 

『ホォー……死んだのか、キサマ』

 

 やはり案の定、犯人は彼女だった。

 

 ────え? 

 あの、その……めっ、目が、笑っていないんですが。

 

『また何を仕出かしたのだ。ゆっくりじっくり私が聞いてやろう、来なさい』

 

「いや、ちょっと自己研鑽を……」

 

『来い』

 

「は、はひ」

 

 絶対に怒っている。どうしてだ? だってボクは強くなるために手術を受けたんだ。口からケムリを吐くの怪獣みたいで、チョーカッコイイ! …って気持ちも多分にあったけども。

 

 ボクはきっとこれから言葉にするのも悍ましいような事をされ、死ぬんだ。

 さようなら魔法界、さようならホール、さようならカスカベ博士。

 

 

「きゃーっ!!」

 

 

 グリグリと悪魔の拳が、ボクの頭を攻撃した。痛かったです、ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 突然だが、ボクはカッチョいいのが好きだ。その対象にカスカベ博士の刺青も入る。

 

 本来ならボンキュッボンになってもおかしくないのに、未だ低身長、つるぺたわがままボディ(?)のボク。思い返せば13歳ぐらいの時から成長していないような気がした。何か変な物でも食べてしまったのかもしれない。

 

 それはともかく、また一つ歳をとった記念に、刺青を入れたくなったのだ。これは元より思っていた事だ。

 案としては、顔含め全身にフジツボの模様を挿れたい。

 

 

『殺すぞ』

 

 

 と、ハルちゃんに相談したら、三文字のありがたいお言葉をいただいたので、初めは断念しようと思った。

 

 でもさっきの案じゃないならいいらしい。

 

 そこで思い出したのが、魔法使い時のハルちゃんが左腕につけているトグロを巻く蛇のアクセサリーだった。ワンポイントなら問題ないだろうし、あのデザインも好きだ。それに「ハルちゃんのもの」って感じがしていいでしょ。

 

『ム……わ、私のと同じものをか?』

 

 モジモジとする彼女。何ならアクセサリーをくれるそうだが、刺青がいいんだよボクは。それにこの案なら、ハルちゃんと博士の二つの要素をうまく取り入れることができる。

 

『……よろしい』

 

 

 というわけで、口の手術に続いて、ボクの左腕にヘビの刺青が入ったのだった。

 

 博士に見せに行ったら珍しく目を見開いて、視線を逸らし頬をかいた。たぶん照れと、困惑が混ざった反応だったのだと思う。でもどこか嬉しそうだった。

 

 思えばボクの家族って、属性過多だな。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 突然だが、小夏ちゃんが着実に進化する間に起こったことを、少し話そうと思う。

 

 

 実は今まで一人で「発明家リンリン」として活動していたのだが、とある企業からスカウトがかかった。つーか、煙ファミリーだった。

 

 以前──主に「キリキリ」事件の件で思うところが多い。

 

 向こうは記憶改ざんも済んでいるからボクとのどんぱちを覚えていないが、ボクは覚えている。純粋に敵だった時の頭を持っているから、仲良くしましょ、と素直にできない。

 向こうは悪くないんだけどね。魔法使いを殺しまくってたのはボクだから。

 

 元々他企業から、業務提携などの話は来たことがある。しかしボクの性格的に誰かと連携して何かを作るのは苦手だし、コミュニケーション能力に自信がないし(万年引きこもり体質だから)、特定の相手が求めるものを作るのが非常に苦手。

 

 自由に作らせてもらえなければ、ボクは発明家として機能できない。だからボッチを謳歌している。

 

 けど向こうは自由に発明するのを承諾している。その上で、かかる材料や費用も負担すると。

 

 その代わり、技術面でのアドバイスをメインにお願いしたいらしい。それくらいならまぁ、できなくはない。解剖して調べれば、おおよその仕組みは理解できる。

 

 どうしたらよいものか、悩む。ボクとしてはわざわざ材料集めに行く必要がなくなって、その分工房にこもれる時間が増える。それに未知のものを見れるのも面白そうだし、巨大組織というのは関わりがあるだけで一定の恩恵を受けられる。

 

 例えば下っ端でも「オレは煙ファミリーの者だぞッッ!!」と、でかい顔ができる。

 

 そしてもし一つの組織に入ってしまえば、ゴマすりおじさんたちに小夏ちゃんが変な目で見られることもなくなる。というか一生工房に引きこもりたい。

 

 

 ハルちゃんからも決めるのはお前やで、という視線を送られて、悩んだ結果。

 

 時に変化を選ぶのも必要かもしれないと、話を受けることにした。

 

 ただあくまで“提携”の形だから、ボクがファミリーの一員になったわけではない。敵だった組織に加入するのは、流石に抵抗がある。だから提携だ。

 

 

 

 まぁ、でも、ちょっと舐めていた節はあったよね。

 

 マジメな時の、外行き用の真っ黒コートを羽織っての外出。

 

 はじめて訪れたそこにあったのは、ボクの屋敷が可愛く見えるレベルの城。数千人がこの中に部屋を持っていて……もはや街じゃねぇか。

 

 呆然としながら使用人に案内されて、ニコニコしているキノコおじさんに会った。

 途中で煙を模った像やら、絵画やら、キノコのオブジェやら、ここのボスの美的センスが爆発している。

 

 握手をして、色々仕事のお話をして、滞在する時の部屋などを部下に案内される。やはり皆、このファミリーの象徴である歯を剥き出しにしたマスクをつけていた。カッコいいけど、やっぱ一番はハルちゃんのマスクだな。

 

 部屋については、それなりに広かった。一人になり、自由に城の中を見ていいと言われているので、ベッドの柔らかさを確認したら探検してみようと思う。迷ったらその場にいる部下を捕まえて──とのこと。ボク自分の屋敷でも迷子になるんだよな。行方不明にならないよう気をつけよう。

 

「選手、リンリンちゃん。荷物を置き、目標ターゲットを捕捉しました。……行っきまーす!!」

 

 サイズはダブルベッド。ボクが三人に分身して寝っ転がっても余裕がある。

 

 そのままダイブするとスプリングが軋んで、宙に跳ね返された。実に柔らかい。最高のジャンプ具合じゃないか…! 

 

 

『楽しそうだな、小夏』

 

「どひゃあっ!?」

 

『「どひゃあっ」って、お前……』

 

 

 ベッドの下からニョキッと生えてきた、ハルちゃん。ハルちゃん………? 

 

「ボクの門出が喜ばしいからって、ストーキングしてくるのはどうなの?」

 

『何、少し心配だっただけだ。この間の今日だからな』

 

「ぐぬぬ…」

 

 この間とは、頭爆発の件だ。おそらくもうすでに新たなケムリ瓶が仕込まれているだろう。いくらボクがデンジャラス・ガールだからって、心配し過ぎだぜ。ヤケドしちゃうぜ? 

 

『まぁ、問題はなさそうだな。迷子になったらみっともなく泣き叫び、私の名を呼ぶのだな、愚かな魔法使い』

 

「あはは、大丈夫だよ〜」

 

 ハルちゃんはそのあと、嵐のように帰って行った。

 

 

 

 ──まさかこの時は、思いもしなかった。

 

 それから三日後、ボクがみっともなく半ベソで、彼女の名前を叫ぶことになるとは……。

 恥ずかし過ぎて顔から火が出そうだよ、まったく。

 

 

『まったくはこっちだ、言わんこっちゃない』

 

 

 お叱りの言葉をもらいつつ、ボクはママに襟首をつかまれ、お家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 それから、ハルちゃんがつなげた屋敷と、煙ファミリーにあるボクの部屋のベッドの下にある秘密の抜け道を使い、行き来することしばらく。

 

 突然現れるボクにあちらは驚いていたが、ボクが「発明家リンリン」ということもあり、何かの発明によるものなのだろう、ということで納得された。

 

 仕事については順調である。ファミリーで作っている主に機械類のアドバイスは上々で、物資についてはこちらから頼んでボクの屋敷に送ってもらう──という形式を取っている。お外に出ないだけで楽だ。

 

 でもちょいと困ったことがある。

 

 煙ファミリーは構成員に対して、幹部の数が非常に少ない。だが幹部でないにも関わらず、部下が頭を下げる魔法使いがいた。

 

 

「よっ! リンリン!」

 

 

 仕事中、お構いなく訪れる少女。この少女こそ、ボクがちょいと困っちゃう原因である。

 

 聞けば煙のいとこだそうだ。歳がおそらく二回り近く離れている。親子…と、言えなくもない。彼女はいとこを至極嫌っているようだが。

 

「なーなー、ソレ終わったら俺と手合わせしてくれよ! いいだろ?」

 

「うーん……」

 

「頼むよぉ〜!」

 

 名を「能井(のい)」というこの少女。長く銀髪に赤い目を持っていて、前髪がよく後ろに流れている。清廉とした感じで、美少女だ。かわゆいボクが言うんだから、そりゃあもう美少女なのだ。

 

 アイくんがもし生きていたら、大体同じ年齢だったと思われる。しかしボクより背が高い。どうしてだい? 

 

「リンリンが強いの知ってるんだからな! 魔法の系統、あのキノコ野郎から聞いたんだ!」

 

「やだよぉ…面倒だよぉ…」

 

「俺と戦えって!」

 

 こんなカワイイいとこだからって、ボクの個人情報勝手に漏らすなよ、あのキノコおじさん。

 

 能井ちゃんはこうやって、毎回グイグイ手合わせを願うから苦手なんだ。姿は美少女なのに中身はバーサーカーである。彼女の魔法は希少な「修復系」のケムリで、腕がぶっ飛ぼうが脳みそが漏れ出ようが、すぐに回復する。よく煙の愚痴も聞くことが多い。相当嫌いなようだ。ついでに彼女からは同年代と思われている。だからこそ、余計に距離が近い。

 

「ボクはお前の友だちじゃないんだからな! あくまで仕事上の関係に過ぎないの、理解した?」

 

「え……友だちじゃないの…?」

 

 さっきまで元気だった姿が一転して、本気でシュン…としている。ボ、ボクはそんな顔されても絆されないからな! 

 

 

「……よし! それじゃあ今から友だちになろうぜ!」

 

「………」

 

「…だめか、リンリン? 俺のこときらいか…?」

 

「あぁ、もういいよ! わかったよう!!」

 

「本当か!? やったぜ!」

 

 少女二人の会話に、周りの部下たちがほんわかしている。でもこの子が求めてるの、血みどろの戦いだからね? 肉体的にそれなりのポテンシャルがあるのはわかるけど、ボクが自分の魔法使って戦ったら、ボコボコにしちゃうよ。やだよ、そんな一方的な蹂躙。こんな美少女に。

 

「能井ちゃんは何でそんなに強くなりたいの?」

 

「ん? 何でってそりゃあ…」

 

 彼女は視線を移し、壁に飾ってある肖像画へ向ける。そこには彼女のいとこの姿がある。

 

 

「煙の野郎をボッコボコにしたいんだ!」

 

 

 そう、彼女は笑顔で言った。

 

 いったいぜんたい、このカワイイいとこに何をしたというのだろう、煙は………。

 ボクは訝しんだ。

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