「ボク」っ娘系メカニックちゃん   作:アビ田

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暗い描写も少しずつ混入させて行きたいです。


\\キャーッ//

「というわけで、改めて自己紹介させてもらうぜ。ボクは「発明家リンリン」、本名は「小夏」だ。年齢はこの見た目だが二十歳は越えてるからな、ガキ扱いしたらブッ殺すから覚えとけ。あと魔法使いと人間のハーフで、君らのボスとはホールで過去に知り合った。彼はどうやら記憶喪失になっているみたいで、ボクのことも曖昧にしか覚えていないみたいだがね。まぁ、よろしく頼むよ」

 

 

 姿が戻ってから、ボクは再び十字目のアジトに出向いた。マスクは付けず、壊しちまった分の家具なども持って。

 

 移動が面倒だから、ワープ用のテレビも持ってきた。こちらからボクの屋敷に行けるよう設定するが、彼らには自宅が悪魔屋敷であることを告げて、来ないよう念を押す。

 

「そんな恐ろしい屋敷に行くわけないだろ……」

 

 ドン引きなテツジョーくん。過剰な反応は、ハルちゃんに殺された恐怖が肉体に刻まれているからに違いない。

 

「ねぇねぇ、リンリンは一応十字目(俺たち)と煙ファミリーのいざこざには、中立の立場なんだよね? でも俺らの情報を向こうに売る可能性は100パーセントないって、信じられる証拠とかある?」

 

 穏和な兄ちゃんに見えて、拭いきれない彼らの不安を代弁するトンくん。

 

 安心しろ、“アイくん=十字目のボス”が濃厚な以上、情報を売ることはまずない。

 

 

「だってボク、彼のこと好きだったからさ」

 

 

 壊くん…さん? ──いや、「くん」かな。

 が、いない時にぶっちゃける。

 

 お前らこの事を言ったら悪魔に突き出すぞ、という脅しも付け加えて。

 

 固まった五人はフリーズして、顔を赤くしたりどんな関係だったのか詰め寄ってきたり、お前らは色恋話が大好物の年頃な少女か? という反応を見せる。

 

「な、なぁ、ボスって昔はどんな感じだったんだ? あんたはわからんが、ホールで会ったってことは、ボスが魔法の練習に来てたってわけだろ?」

 

「落ち着けって、テツジョーくん。ボクらの甘酸っぱい青春を君らに教えるわけないだろ。聞きたきゃボスに聞きな」

 

「それがわからんから、こうして詰め寄っとるんじゃろうが!」

 

 どうやら壊くんは側近にも何も語らない、謎多きボスだったようだ。それが、彼が記憶喪失だった、と知れた今は納得が行く。でも記憶喪失だったことも五人が知らなかったって、語らなすぎだろ。

 

 

 念のため、彼が“元”人間であることは言う気はない。その他の情報も諸々。彼が自分のことを言わないでいるのだから、ボクも言わないでおくべきだ。

 

 それに壊くんに見せてもらったが、指先からかすかにケムリを出せていたので、魔法使いになったのは確か。

 

 なぜ生きているのか、という疑問はある。ボクは彼の死に際を見たけど、そのあとの遺体や葬式に出席しなかった。

 死んだのは間違いない。のちにカスカベ博士が検死した、とバウクス先生から聞いたから。

 

 であれば何らかの要因が働いて、生き返った──と考えるのが妥当。

 

 どのようにして生き返ったんだ? 知りたい。でも知るのが怖い。少なくとも、毎年参加している「リビングデッドデイ」で、遺体を識別するために体内に埋め込まれるプレート、アイ=コールマンの番号である『96925』が見つかった、ということはまだ一度もない。

 

 まずアイくんの墓を掘り起こして遺体があるのかどうか確認する必要があるが、もし、もしだ。

 

 そこに変わらず遺体があったら? 彼がいたら? 彼が死んでいる事実が変わらずそこにあったとしたら? 

 

 

 そんなの────そんなの、

 

 

 死んだと思ったら実は生きてました、なドッキリを受けたばかりなのにさ、もし死んでたらボクおかしくなっちまうよ。

 

 もう色々とネジが外れている魔法使いだが、もっと壊れたら、不良品になっちまったら、ボクは「小夏」として機能できなくなる。ボクは「小夏」ではなくなる。「小夏」に戻って来れなくなる。

 

 きっと、何もかも、大切な存在すら全部余すことなく切り離して、ボクはまた“ボク”として始まる。

 

 唯一、ボクの発明家の原点である博士との記憶だけは忘れないで。

 

 それだけは絶対に嫌だ。もうボクは取りこぼしたくない。これ以上、ボク自身から。

 

 だから彼の墓の遺体を確認することだけは、できない。

 

 

 

「顔色が悪いが、大丈夫か?」

 

 

 ボクがボスの知り合いと知って、誰よりも態度が軟化したドクガくんが心配そうにこちらを見る。

 その原因が詰め寄る自分たちではないか、と考えると彼はすぐに行動に出た。

 

「ほらお前たち、さっさと家具を運んで来い! 俺は茶菓子を出す!」

 

「そんなに叫んだら危ないよ、毒蛾」

 

「……そうだった、すまない」

 

 トンくんがドクガくんを注意した。どういうことだ? 

 

「毒蛾はねー、唾液に猛毒の成分があって、目に触れたら一時的に視力を失って、体内に入れたらなんと死ぬレベルなんだ。だから俺たちとも食事や風呂なんかは、距離を置く必要があるんだ」

 

「ホォー……ねぇ、ちょっとおいでよ、ドクガくん」

 

「え?」

 

 唾液に毒ねぇ。ケムリの特性なんだろう。どれほどの致死性があるか調べなくちゃいけないと思わない? 

 だからさぁ、少し……その体をボクに貸すべきだと思うよね? 

 

 

「な、なぜそんなに手をワキワキさせているんですか? お、俺に何をっ……な、何をする気だァ──!!」

 

「げへへ………ちょっとこの試験管に唾液を入れてね。あ、一本だけじゃないから」

 

 

 懐から常備している試験管を渡す。

 四人は死んだ魚みたいな目をした後、その場を解散して各自やるべき作業に移った。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 ボクは今、壊くんの家にいる。ベッドの上でいつもの時間に目を覚ました。朝というには遅い時間だ。

 

 隣では壊くんがまだグッスリ寝ている。もうお察しいただけた方もいるだろう。

 

 そう────小夏ちゃんは、オトナの階段を登ってしまったのだ。

 

 

 

 来るきっかけは、ダメ元での「YOU(ユー)んち行っていい?」から始まり、まさかの了承を得られたことから。

 

 家はもっと秘密の場所にあるのかと思ったが、普通のマンションの一室にあった。

 おいおい、それでいいのか十字目のボス! と、思わなくもないが、住めればそれでいいのかもしれない。

 

 ソファーなど、最低限の家具はある。冷蔵庫は……食い物がいっぱいだった。仕事で使うらしい部屋は、入らないように言われた。

 

 殺風景な印象の受ける部屋は、アイくんはアイくんでも、手術後にイカつくなっていたアイくんを思わせる。あの博士でさえ「狂気的な部分が見受けられる」と言っていた、あの時のアイくん。

 

 どれもアイくんだ、ボクにとっては。

 

 それで、物は試しに黒い粉の製造方法も聞いたが、これについては教えてくれなかった。でも作っているのは壊くんらしい。マジでどうやってんだよ。

 

 ちなみにドクガくんたちを拾ったのは約一年前のホールで、その時彼らを捨てた魔法使いを全員殺したらしい。いや、拾ったというより、ドクガくんたちが付いてきた感じのようだ。

 

 フム、記憶の最初にあるのはホールにいた、ねぇ……。

 

 目的については、最強の魔法使いを目指しているので概ね間違いない、と。意味深な含みがあったが、このボクにも話してくれないナニカがあるのだ。深入りはしないよ、君が嫌なら。

 

 ただ最大の目標は、「魔法使いをブッ殺す」ことだそう。

 

 

「へぇ、数年前のボクみたいな考え持ってんだ。これは運命的な偶然だね、壊くんもボクに運命感じちゃってない、今?」

 

「数年前?」

 

「おい、運命的な──の部分を丸無視するなよ。調べるとわかるけど、「キリキリ」なんだ、ボク」

 

「………」

 

 ご飯に意識が向いたり、かと思ったらボクの話に答えたり、忙しい野郎だ。

 

 おそろしい速さでで食べて、壊くんは大量の食べ物を消費し終えた。きったねぇぞ、机周り。

 布巾を投げつけると怪訝な顔をされたが、おとなしく掃除し始めた。

 

「「キリキリ」は、あのキリキリか?」

 

「そう、魔法使い殺人マシーンの奴。『アイクーン』って言ってね、君への弔い兼、魔法使いを全滅させたいボクの崇高な気持ちが重なって起きた事件さ」

 

 つっても、壊くんはアイ=コールマンの時の記憶がほぼないし、自分が死んだかどうかさえわからないんだもんな、言ったところで意味がない。それでも彼をアイくんと別人とは考えない。

 

 この世には似た魔法使いが三人いるとか、悪魔のイタズラであるとか、全部信じない。

 

 彼はアイ=コールマンで、今は「壊」を名乗っている。

 

 そうなんだ、そうであるはずなんだ。

 そうでなければならないんだ。

 

 そうであって。

 

 

「…風呂に入ってくる」

 

 壊くんは無駄にデケェ手をボクの頭に置いて、そのまま風呂に向かった。

 

 おい、この野郎、この大量のデリバリーのゴミを誰が片付けんだよ。ボクを気遣ったと見せかけて、残りは全部ボクに丸投げか? アイくんはそんな殊勝な性格してなかったぞ! 逆にボクがいつも押し付けていたのに。

 

 

「……うぅ」

 

 

 彼はアイくんであっても、どこかアイくんではない。でもきちんとアイくんしている。…アイくんしている、って何だ? 

 

 ともかく、温もりっていうの? 

 彼から伝わる熱が、馬鹿みたいにアイ=コールマンと同じだった。

 

 だから、だからだ。

 

 胸が痛くなる。自分の意思に反して、目も熱くなる。苦しくなる。これが夢でないことを願ってしまう。彼が彼でなかったらと、怖くなる。

 

 

 

 そしてそのままテーブルに突っ伏して蹲っていたら、気づけば肩を叩かれていた。デケェ手だ。

 

「小夏」

 

「う゛ぅー……今は顔上げられないのぉ…」

 

「小夏、大丈夫か」

 

「大゛丈゛夫゛じゃね゛ぇよ゛お゛………っ!!」

 

 抵抗ままならず、顔を上げさせられた。いくらテメェがデカくなったって、ボクが負けると思ってんのか? 身長ではもはや完敗せざるを得ない差をつけられたが、力と頭とプリティー度では、天と地ほどの差があるってことをわからせてやろうか、って──────ハ? 

 

 

 

 

「何で服着てないんだよ、君ッッ!!!??」

 

 

 

 

 オイッ!! オイオイオイオイ、オイッ!!! 

 

 まるでラッシュするみたいに「オイ」が「オイッ」しちゃうだろ! こなくそ!! イイ身体してんね兄ちゃぁん!!! 

 

「博士のだって見たことないのに……」

 

「……博士って誰だ」

 

「急に声低くするなよ…ボクのパパだけど、訳あって「パパ」と呼べない複雑な人間さんだよ………」

 

「父親、か…」

 

 両手で顔を覆うボクは、もう二度と壊くんの方を見れない。きっと彼を見る度に脳裏に眼前にあった大きな、その、……ソレが、脳内によぎるに違いない。

 

 はぁーあ、責任とって、ボクと付き合ってくれねーかな。

 

 っていうか、博士のじゃなければ、他の魔法使いやシンくんのを解剖や実験の時に見たことがあったけど、さっき聞いた壊くんの声色だと、ボクの脳が「それは絶対に言わないほうがいい」と言っている。どうしてだ? でもまぁ、そのボクの判断に従わせてもらうよ。さっきの彼、クソ怖かったから。

 

「せめてタオル巻けよ、腰に……」

 

「俺の家だ。どうしようと俺の勝手だ」

 

「おっ? その言葉、髪留めくれた時のアイくんにめっちゃ似てる〜!」

 

 脳内でキャピキャピしてたら、ボクの体が持ち上がった。持ち上がった? 

 

 最大級に気をつけて指の隙間からうっすらと目を開ければ、見える室内。腹に感じるアッツアツな温度に、腹に腕が回されていることに気づいた。彼の脇に抱えられている。

 

「………軽ッ」

 

 おっ? 小夏ちゃんへの悪口が聞こえたぞ? こんなかわゆい美少女の前で全裸を晒した男が言っていいセリフじゃないぞ? 言葉に気をつけないと、君の部下にこの事を言いふらすからな。さすれば、明日からボスへの評価に「変態」のふた文字が付与されちまうぜ? 

 

 

「ボ、ボクをどうする気だよっ!」

 

「寝る」

 

「え?」

 

「寝るぞ」

 

「ひ、ひぇぇ…」

 

 ボクと君ってまだ付き合ってすらいねぇじゃん。第一、ボク自分の気持ちを伝えられてないし、この感情が壊くんへのものなのか、それともアイくんへの面影を感じるから好きなのか、わからない。

 

 そもそもボクは今恋をしているのだろうか? 恋愛プロフェッショナルのハルちゃんに聞かなきゃわからない。

 

「ま、ままま、待って、ボク初めてで、君のはその、あの、無理っていうか、ボクがご臨終っていうか、一回お風呂に行っていい?」

 

「明日入れ」

 

「っ……!! っ………」

 

 ベッドに着いてしまった。ベッドの上に乗ってしまった。ベッドの上に寝かされてしまった。

 

 こんな形でボクは人生の初経験を捧げていいっていうの? 君との身長差、一の位で四捨五入したら60センチぐらいあると思うよ? ボク本気で死ぬっていうか、殺されるね? 

 

 おいコラ、ボクに抱きついて目を瞑ってないで答えろよ、壊くん。

 

 壊くん……? 

 

 

「……ね、寝るの?」

 

「寝るって言っただろ」

 

「こ、このまま…?」

 

「…嫌か?」

 

「い…やでは、ないけど。想像と違ったっていうか…」

 

「想像?」

 

 

 あぁ、ダメだ。ボクの考えがバレたら恥ずかしすぎて地獄に行ける。

 向こうが話す前にケムリを吐いて体を強化し、相手に手刀を落とした。彼はそのまま意識を失う。

 

 

「よし、寝よう」

 

 

 ボクはおかしくなったテンションのまま、彼の隣で眠ることにした。無論、その無駄にデカい体を抱き枕にして。大きいとハルちゃんみたいで安心する。

 

 そして男の人と一緒にはじめて寝るという、オトナの階段を登ったボクは翌日、壊くんにデコピンをもらった。

 

 彼の心配を仇で返すという、極悪プレイをかましてしまったのである。

 

 穴があったら入れてくれ。




(備考)

小夏がオトナの姿だったら危なかった。
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