「ボク」っ娘系メカニックちゃん   作:アビ田

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ジョジョ新作ゲー熱すぎるだろ!


真夜中の悲鳴。

 ボクがハルと出会ったのは、記憶を失って目覚めた初日の夜だった。

 

 しかもその日はドクガから後から聞いたが、『真夜中』という日だったらしい。

 

 

『真夜中』というのは、ベリス出身の悪魔たちが故郷に帰ってくる日のこと。悪魔はそのついでに魔法使いたちの願いを叶えてくれる。ただし全員の願いが叶うわけではない。その上、悪魔はイタズラ好きで気まぐれ。さらに善人ぶった考えが大の嫌い。

 

 例えばドクガたちが実践しようとしていた「豚と鉄条を助ける」という願いも、そのまま祈っても叶えてもらえない。だから叶えてもらうためにも、間接的な願いをする必要がある。

 

 ケガを治すためには金が必要だから、フザけた内容で金になる願い──「植毛治療をしたいから高額な金が欲しい」とか、「人の胸に邪な視線を向ける男どもの目に、金ののべ棒を突き刺してやりたい」とか。

 

 テツジョーとトンを除く四名で対策会議も何度か行ったそう。

 その結果は失敗に終わったんですが。ボクがちょうどその時、ベッドの中で願ったからですね。

 

 ────「“あの声の主”に会いたいなぁ」って。

 

 いえね、その日は色々と情報を頭に詰め込んで疲れたボクに、わざわざドクガたちも『真夜中』について話さなかったわけです。

 

 その代わり『真夜中』になる前に寝るよう、早目に床に就くように言われた。

 

 ボクもすぐにぐっすり寝た。内心ではボクに関する会議をひっそり行ってるかもなぁ、なんて思ってたよ。でも実際は『真夜中』直前の、最後の会議だったんだろう。

 

 

 

 それで、夜もいいところな時間に起きたボクは、朝同じベッドで寝ていたナツキちゃんがまだいないと思いながら、窓の外を眺めていた。

 

 そしてやけに地響きがすると思ったら、悪魔のご登場。

 その悪魔はハルちゃんではない。一つ目だったし。

 

 その全身がアジトよりも大きく、一つ目悪魔は屈んで窓の外から中を覗いた。「ただいま〜ただいま〜」と繰り返し言うソイツがボクの願いを読み取って、次の瞬間には作曲セット共に現れたハルちゃんが部屋の中に現れたのである。

 

 彼女は「!?」みたいな反応をして、ボクも「!?」と同じ反応をした。

 

 

 ちなみにドクガたちはその夜、彼女がボクのいる部屋で披露した悪魔ソングで気絶したらしい。翌日にみなが、失敗したか……なムードを漂わせていた。ボクの願いが叶ったのは言っていない。

 

 かく言うボクも、悪魔ソングで一度気絶してハルちゃんに叩き起こされている。悪魔の所業だ。

 

 彼女曰く、ボクは記憶を何度も失っている。今回で三度目。

 

 向こうがボクの知人ヅラをしていたのが疑問だったが、彼女はボクが子どもの頃からの知り合いのようである。

 

 その詳細は省くとして、ボクは端的に、自分がかつて行った悪行について(ホールでの実験に、「キリキリ」の件など)を教えられた。魔法界で発明家をやったりホールで修理屋をやったりと、かなり忙しい人生を送っている。

 

 ボクが煙を殺そうとベリス温泉の場所にいたのか質問したが、その返答はもらえず。

 

 ところどころボカした言い方を彼女がしていたのは、記憶を失う原因になる導火線に火をつけないように、配慮しているからのようだ。

 

 

『グフフフ! ……そうかそうか、お前はこの“ハルちゃん()のもの”だと覚えていたというわけだな!』

 

 

 その時のハルちゃんは実に上機嫌だった。最初は歌い終わった後、負のオーラがヒシヒシとボクの体に突き刺さっているのを感じていたけども。

 ボクが彼女を覚えていたというだけで、ハルちゃんにとっては嬉しいことだったみたい。

 

 些かボクを贔屓しすぎな気もするけど。

 

 

 

 

 

 そして今宵もまた、一匹の悪魔がやって来た。

 

「そう言えばハルちゃんは、話に聞いたあなたよりボクに肩入れしてない気がするね」

 

『それは…言われたんだよ、チダルマに』

 

 そろそろ自立させたらどうなのか云々──の話をされたみたいだ、そのチダルマとやらから。

 ハルちゃんはこれまで何度もボクを守ったりしてきたから、いい加減…なオーラを出されたらしい。

 

『それとトカゲ男が死んで、事が動き始めたのだ。チダルマの関心が“()()”に向かっている以上、私もヘタに動けなくなってしまった』

 

「事? よくわからないんだけど」

 

『キサマが深く関わるべきことでは………だが、どの道……』

 

「ハルちゃん?」

 

『…いや、何でもない。本当に危険な時は私が止めるさ。ただお前を過保護にし過ぎた節は否めん。これでは子離れできていないのは私の方だな』

 

「………んえ?」

 

 子どもって何? ハルちゃんが幼いボクを見つけた的な話はしていたけど、もしかしてボクって悪魔に育てられた的な? 

 

『さて小夏よ、今回も寝る前に私と本を読もう』

 

 先の今でガッツリ子ども扱いされているのは置いておいて、彼女は懐から雑誌を取り出す。もしナツキちゃんがいた場合は悪魔の力で眠らせるのだろう。悪魔って何でもできるっぽいし。

 

 

『今日はこれだ』

 

 

 雑誌にはムキムキマッチョの半裸なお兄さんが、ポージングしている姿が載っている。

 

 筋肉特集……? 

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 会議の末、煙が死んでから二日後、ボクらはベリスを離れてボスの自宅がある場所に向かった。途中までは盗んだ車で、ね。

 

 場所はドクガが知っているらしい。さすが中ボス。

 ボクも覚えてはいないけど両想いだったらしい相手に会いに行くから、少し身なりを整えている。

 

 いつもはサイズ近い男どもの服を、袖を捲るなどして着ている。ナツキちゃんのは少々小さい。べっ、別にボクがデブなわけじゃないよ…? お、お尻とか胸とかキツイんだ。

 

 それに彼女も着の身着のままでアジトに来たから、彼女自身持っている服が少ない。それを借りるのもどうかというもの。けれどビンボーな十字目には、新しい服を買うお金も無いのだった……。

 

 というわけで、ハルちゃんが用意してくれた服を着ている。

 

 チューブトップの上は黒いジャケットで、ハルちゃんとオソロ。下はジーンズにロングブーツ。グローブも付けている。随所に銀のアクセサリーだったりチェーンだったり、悪魔なデザインが施してある。

 

 

「ボスが現れてコソコソする必要がなくなったからって、魔法使いを襲って服を盗んでくるのはやめろよ」

 

「ボクを何だと思ってるんだ、テツジョーくん」

 

 車の座席の位置だと、運転するのがサジで、助手席がウシシマダ。そして運転席の後ろがテツジョー、その隣にナツキちゃん、ボクと並んで、さらにその後ろがトンとドクガ。

 

 ボクの後ろにいるドクガは、以前ボクが吐くきっかけとなったナイフ一式を布に包んで抱えている。どうやらそれをボスに渡すらしい。彼の瞳からはゼッテーにボスに渡すぜ…!! っていうスゴ味を感じる。

 

 ちなみにナイフの本体が見えても、触らなければ体調に支障は来さないみたいだ。

 

 

 

 それからしばらく移動して夜になり、ドクガの提案で一度ボスの家に電話してみることになった。

 

 時間が経つごとにボクの方も自分が好きだった相手の姿を思い描くのが楽しくなってきて、心臓もドキドキし始めている。

 

 ただ汗と手の震えもあって、それは皆にバレないよう隠している。何だろう、漠然とした恐怖と嬉しさが同居し合っているこの感じ。記憶を失うトリガーがイマイチわからないから、このまま感情が昂り過ぎてまたリセットされそうな気さえする。何事も平常心だよね、平常心。

 

「ボス…!?」

 

 子どもみたいに頬を赤くして、大きめの声を出したのはドクガ。

 その直後、電話の取り合いがボク以外のメンバーで勃発し、彼はその下敷きになる。

 

 ボスの声は聞こえなかった。終始無言だったようだ。

 

「……ひとまずここからは車を置いて歩いて移動しよう」

 

 ボロボロになったドクガは、そう言った。

 

 

 

 その後、途中で繁華街を通った時にエリート魔法使いに絡まれるハプニングもあった。奴らは魔法をろくに扱えぬ集団である十字目を卑下し、見下しているそうだ。

 

 最初は無視して通り過ぎたけど、連中が後ろからナツキちゃんに魔法をかけようとしたのよね。

 

 ボクの大事な子分を傷つけさせるわけにはいかない。その隣にいたボクはケムリで体をブーストして、彼女をお姫様抱っこして飛び退いた。

 

 結果、彼女の前にいたテツジョーに魔法がかかり、小さくなった。手のひらにサイズになった彼は驚きを隠せず、異変に気づいた四人が後ろを向く。

 

「貴様ッ、鉄条に…!」

 

 四人とも怒っている。フライドチキンを貪っているお肌ギトギトの肥満エリート魔法使いが何を言うのか興味があって待っていると、一様に「十字目ザーコww」と、総合してそのようなことを話す。

 

 思ってはいたけど、差別ってどこにでもあるんだろうね。

 魔法使いが人間を差別しているけど、魔法使いだって同じ魔法使いに、逆に人間も人間同士で差別し合う社会があるんだ。

 

 めんどくさい社会構造だな。全部ぶっ壊したらきっと綺麗になるのに。

 

 

「えいっ」

 

 

 側近たちが動く前に、先ほど拾っていた石を荒めに粉砕して、石のカケラを作る。下ろしたナツキちゃんの視線を横から感じつつ、それを振りかぶってエリート魔法使いたちに当てた。

 

 カケラの一つ一つが散弾銃のように魔法使いどもに当たり、即死させる。蜂の巣になった死体から視線を外し、小さくなったテツジョーの肉体構造を確かめるべくウキウキとした足取りで近づいた。

 

 手をワキワキさせていたら、すでに彼は元に戻っていた。──そうだ、ケムリをかけた魔法使いを殺したら、その魔法も解けるんじゃないか。

 

 

「キャァーーーッ!!!」

 

 

 服は都合よく小さくならないため、全裸になった彼がボクに気づくなり股間と胸を隠す。

 はたして男の胸って、隠す必要があるのだろうか。

 

 ちなみにナツキちゃんは「はわわ…」と顔を真っ赤にさせて両手で顔を隠しつつ、しっかり指の隙間からテツジョーの肉体を見ていた。

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