「ボク」っ娘系メカニックちゃん   作:アビ田

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10月になったら頭がゴールデンになってジョジョになって一護になって入間くんでチェンソーでモブサイでその他色々…………死ぬ(岸部見るまでは死ねん)


コレは君を殺す呪文。

 十字目が動いた。

 

 

 煙の屋敷を占拠するにあたって、多くの部下が殺されていった。たった六人で無双していく様がカッコよかったね。多勢に対して寡勢で挑むのが、それこそ映画みたい。ちなみに夏木ちゃんは戦力外だ。むしろ戦っている彼らの近くにいると危ないから、ボクの助手として撮影用のマイクを持ってもらった。かく言うボクはカメラ兼監督である。これを編集して【Mans of the Cross-Eyes gang】として、映画業界で覇権をねらう。

 

 いや、覇権は嘘です。本当に、単純に彼らが戦っている姿を撮りたくなったからカメラを回しただけ。ボクの琴線に触れたんだよ。撮影用の道具は探せば煙の屋敷にあった。

 

 でも映画にする価値はあるだろう。煙ファミリーを魔法界のてっぺんから引きずり下ろし、天下取ったる(トータル)な十字目。

 

 煙ファミリーの支配の裏では、魔法の使えぬ者たちが貧困層として暮らしていた実態が存在する。それまで優遇されていたのは、力の強い者──エリート魔法使い。

 

 今回煙が死んで、スカッとしている連中も多い。そんな奴らが覇権を取った十字目に流れ込む仕組みだ。

 

 夏木ちゃんから聞いたが、彼女が“マステマ”って街で黒い粉の売人をやっていた時も、高値で粉を売ったり、不純物を混ぜ込んで売っている者もいたそうだ。

 

 その点彼女は、十字目が弱い魔法使いの味方であると信じ、金は二の次で働いているのだから立派である。

 

 ボクの行動原理なんて、ほぼ私利私欲だ。夏木ちゃんの垢を煎じて飲んだ方がいいのかもしれない。

 

 

 で、もし映画にしたら十字目の脅威を知らしめる上で役立つし、戦闘シーンのカッコよさに「ぼくのしょうらいのゆめは、じゅうじめです!」なんてボーイ&ガールズが生まれるかもしれない。

 

 ストーリーなぞ後付けでいいのだ。というか都合上、別撮りにせざるを得ない。

 

 はじめは街に悪のキノコ怪人が現れて、襲われていく民衆。彼らを救うべく立ち上がった六人の男たちはナイフを振るって──みたいな。

 

 側近はみんな大根役者な演技しかできなさそうだが。それを言ったら壊は絶対参加してくれない。まぁ、そこはボクの愛のムチ(暴力)を使って強制的に演技させればいい。

 

 

「ん〜〜ナイスですねぇ!」

 

「………私、段々アネゴという人がわからなくなってきました…」

 

「その角度、ローアングルから見えるナイフ使いに吹っ飛んだ生首、そして噴き出る鮮血! さらにこの躍動感! 実にエクスタシィー!」

 

「あ、あの、アネゴさっきからボスばっかり撮ってて、ドクガのアニキたちが全然映ってないですよぉ」

 

「魅力的なケツだぜぇ!!!」

 

「ヒェ………」

 

 その巨体でよく身軽に動けるよな。いろんな角度で撮っているけど、個人として大臀筋に目が奪われる。服の上からでも引き締まっているってわかるし、実際に引き締まっている。

 

 思わず触りたいそのケツが動いていると、気になってしまう。

 

 至近距離で撮影しているボクを無視し、ボスは凶悪な笑みを浮かべながら次々に魔法使いを殺していく。派手に動かれるとナイフが当たりそうになるけど、自身のケムリで強化しているから問題ない。マイクは途中から追いつけなくなったので置き去りにした。音も後付けできるにはできるから、カメラだけは回さないと。

 

 どさくさに紛れて尻を触ったら、ナイフが振りかざされた。避けたボクを見て「!?」となっているボス。

 何をやっているんだ、役者がカメラに露骨な視線を向けちゃダメなんだよ! 

 

 

 その後、あらかた屋敷の魔法使いの掃討が終わって撮れた映像を確認していたが、見事にボスしか映ってなかった。それもケツのドアップが多い。おかしいなぁ…。これじゃ映画は作れそうにない。

 

「すごく…すごくそーいう盗撮っぽいですよ、アネゴ」

 

「そういうのって?」

 

「えと、その……え、えっちな方の…」

 

「つまりボスのお尻はエッチだったってこと……!?」

 

「いや、単にアネゴがお尻フェチなだけな気がします」

 

 そっか、ボクって彼のお尻が好きなんだな…。

 いやでも、胸筋だって好きだよ? 恥骨にできる鼠径靭帯だって好きだ。背筋の棘下筋も────あれ? 

 もしかしてボクお尻が好きなんじゃなくて、魅力あふれる筋肉が好きなんじゃ。

 

 ボクが男の人の筋肉見たのって、ハルちゃんが雑誌で勧めてきたから……あれ? 

 

 見事にハル色に染められてるじゃん。

 

 

 筋肉に、乾杯(ルネッサンス)

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 屋敷は現在、至る所に魔法使いの死体が転がっている。屋敷自体は煙が死んでから管理がおざなりになっていたみたいで、すでに荒れていた。それが十字目が占拠したことで、さらに悪化。

 

 壁や床が血まみれなのは当然で、物が壊れてより荒廃具合が増した。

 夏木ちゃんは煙の彫刻にツバを吐いたり、ペンキで肖像画に落書きしたり、お宝探しに躍起している。やっていることが子どもで微笑ましい。

 

 ドクガたちはその間に魔法使いの頭を回収。それをボスがいる部屋に届けている。

 

 

 彼らから教えられたけど、壊の部屋に入るときはノックして、許可を得ないといけないんだって。何も反応がない場合は入ってはいけない。

 その場合、ボスが一人で()()()()()()()から入ってはいけないのだ、と。

 

 いったいぜんたい、何をしているのだ。教えなさい、ボクに。

 

 黒い粉の製造方法を作ったのも、他人から魔法を移植(?)する手術を編み出したのもボス。

 彼が行っているその「何か」には、魔法使いの頭が材料に使われているのは間違いない。

 

 煙の魔法が使えるようになっていたことを踏まえても、使っているものの目処はついている。

 

 おそらく魔法使いの悪魔腫瘍と見ていい。魔法使いの最も重要な器官がソレだから。

 

 壊は屋敷を占拠してから部屋にこもっている。その中はムダに広いらしい。中に入ったことはないから知らないけど。

 

 ボクはというと、屋敷の探索を行っている。側近たちから「テツダッテ…」な視線を送られたこともあった。だがボクは探検に忙しい。

 

 ボスがかまってくれるならやる気になったケド。屋敷を襲う作戦を立てていた頃からだから、もう随分とボクをほったらかしなんだぜ? イチャイチャした相手をだよ? 

 

 ボクより魔法使いを殺している方が楽しいんだよ彼は、どうせ。そもそもまだ恋人になっていないし。

「愛してる」とか「好き」とかも言われてないしね。聞いたのは「お前が欲しい」だけだよ。

 

 いいさ、そっちがボクをほったらかしにするなら、ボクも好きにする。

 

 

 ちなみにボクの部屋は、小さなワンルームにした。場所はまだ夏木ちゃん以外にしか教えていない。

 遺体の腐敗臭の被害に遭わないよう、死体がほぼない場所を選んである。

 

 そこで寝起きして、適当に飯を食べて徘徊する。元の部屋主は女性で、しかも貧乳だろう。部屋の中には胸を大きくする方法が載った雑誌やビデオがあった。

 

 そして、真夜中。

 改造して見れるようにしていた「地獄放送」を暗闇の中で見ていた時。

 

 唐突に扉が開いて、不審者がやって来た。ソファーに横になり、ポテトチップスを食べていた自分。ここ最近は夜中に面白い地獄放送のチャンネルを見て、気を紛らわすのが日課になっている。

 

「どうせワンナイトラブだったんだろ。ボクの純情を持てあまして楽しかったか、この野郎」

 

 吐き捨てるように言ったらちょうど、電気がつく。突然の明るさに目を瞬かせていると、黒い物体はのしのし歩いて、人の体に腕を差し込み持ち上げる。

 

 ふーん。お姫さま抱っこしたって、ボクの怒りは収まらないのだ。

 

 

 ギィ、どころか、ミシミシミシッ、な音を立ててベッドが軋む。

 

 女性の、それもかなり小柄な人物が使っていたらしいベッド。ボクの体でギリギリな大きさなのに、約150キロもある男も乗ったら壊れるだろ。

 でもギリギリ耐えている。壊れてしまえばいいのに、そしたらさらに怒ったフリをして部屋を出て行ってやる。

 

 本当に、何で自分を捕まえているこの腕を振り解けないんだか。

 

 何で君が、親に捨てられた子どもみたいな表情を浮かべてんだか。

 

 ……しょうがないね。ボクの方が大人ってことにして、ボクをここ最近無視していたのは不問にしてあげるよ。

 

 

 

「そういやさ、この間突然現れた四つ目の異形って何なの? ヤツが君に殺された、って言ってたから、「呪い(カース)」かとも思ったんだけど。その関連の魔法って、弱点が悪魔の歌っぽいし」

 

 あの呪い避けに、防犯ブザーだって作ったんだ。

 

 悪魔の音源はハルちゃんがアルバムやCDを出しているから簡単に入手できる。

 

 その音源を「呪い」の魔法に反応するようにして、それが近づくとハルちゃんの歌が流れる設定にする。聞いても死にはしない(多分)。もし地獄に召されてしまった場合は、「あまりにもハルちゃんの美声が凄すぎて…!!」とでも言って、蘇生を願おう。

 

 形はチョーカー型にした。ワンポイントにドクロもあしらってある。これなら「ボクのもの」って感じも出ている。我ながら完璧だ。付けたら外れないようになっている。

 

「っていうことで、付けてあげるよ」

 

「いい」

 

「大丈夫大丈夫、死にはしないから(多分)」

 

「いい、って言ってる」

 

 拒んだボスと、絶対付けたいボク。押し問答の末、チョーカーが吹っ飛び、開けていた窓から落ちてしまった。

 

「…オラァ!!」

 

 怒りに任せて壊の腹を摘んだら、摘めなかった。ぐっ…、な表情を見れたので、コレで良しとしてやる。

 

 

 

「ヤツは確かに「呪い」だ」

 

 ポツリと、彼が話す。

 

 

「俺はヤツ──栗鼠の力を求め、殺された」

 

「…え? 殺…………えっ?」

 

「武器の類は一切利かない。殺され……そこからは覚えていない」

 

「…どうやって生き返ったんだよ」

 

「お前こそなぜ生き返った」

 

 大きな手が、シャツの上からボクの腹に触れる。布一枚しか遮るものはなく、相手の体温がイヤというほど伝わる。

 

 じっとりと汗が流れて、恐怖が胃酸と共に迫り上がってくる。思い出してはならないと自分の本能が告げる。

 

 彼は──そうだったね。ボクが壊れているのを、まだ伝えていなかった。側近からも教えられていないだろう。知っていたら敢えて踏み込んでくるはずがない。

 

「ボクは君の知っている「ボク」じゃない。そのボクはもう切り離されて、新しい「ボク」がいる。でも一番大事な「ボク」の根幹が変わることはないから、安心してよ」

 

 記憶がない、と伝えれば黒い目が丸くなる。

 薄々と気づいてたんじゃないかな。会話していれば、覚えているはずの記憶がないことに気づくだろうから。

 

 ボクが壊れた理由が彼にあるのはわかってんだ。それで壊が悔やんで勝手に苦しんでくれるならそれでもいいし、割り切れるならそれでもいい。

 殺される覚悟はできているから、ボクにはどれでもいいんだ。

 

 むしろ愛する人に殺されるなら、綺麗な終わり方だ。

 

 ボクは彼になら殺されていいって思える。

 思えてしまう。

 

 何度も失ってきた小夏ちゃんは今、そんな思考回路になるんだ。

 

 

「君が何をやっているのか気にもなるよ。でもボクにでも教えてくれないでしょ?」

 

「………」

 

「あはは、秘密主義な男だね。どこかにフラッといなくなるのも気になってるんだよ、ボク。それもあるから不機嫌だったんだ。もし他の女のところ行ってたら、手足をもいじゃってもいいかなって」

 

「…おい」

 

「ウソウソ、もがないよ。大好きな人の体を傷つけたりしないよ。心にわからせてやるだけだよ」

 

 女々しい小夏ちゃん。女々しいが過ぎて、「姦」になっちゃう小夏ちゃん。そんなボクは何を仕出かすかわからないぜ? 

 

「……俺は」

 

「…何さ」

 

「お前を壊した」

 

「そうだね」

 

「俺も壊れている」

 

「……そうなの?」

 

「明日の俺が、お前を殺しているかもしれない。それとも明後日か、一秒後か」

 

「…そう。でもボクを殺したくないんだよね」

 

「あぁ。だがその感情は本当に俺のものなのか、わからない」

 

「……え?」

 

「俺は誰だ。俺の感情は俺のものなのか。俺はだから────曖昧だ」

 

 

 抽象的で、壊が何を言っているのかてんでさっぱりって感じだ。

 

 壊は壊じゃないのかよ。それ以外の何だっていうんだ。何者にもなれないだろ。だって君は君にしかなれないんだから。例えば彼がボクになるなんてこと、あり得ないんだから。

 

「だが、お前への感情は本物だ」

 

「ボクへの感情って何」

 

「………お前への感情だ」

 

「だから、それが何なのか聞いてんの」

 

 何、その言いたくなさそうな顔。眉間に皺寄せちゃってさ。

 ボクへの想いを告げるだけで噤んじゃうの? それでもボスですか、あなたは。

 

「ほら言ってみてよ、「す」って」

 

「………」

 

「すぅー」

 

「………す」

 

「好きだ愛してるぜ俺の可愛い子猫ちゃん」

 

「寝る」

 

 お互い横になってエラく密着している中、ボクの胸に顔を埋めるボス。上着だけはボクをベッドに置いた後に脱いでいる。

 

 

「お前は、記憶を失う自分をどう思う」

 

「寝るんじゃなかったの? …そうだねぇ。壊れてるなぁ、くらいしか思わないかな。たまに怖くなるけど。失うって行為が」

 

「…同じか」

 

「何が同じなの?」

 

「俺も、失う。俺は自分で奪って、失う。だったら最初から関わらなければいい、お前と」

 

「あは、君が逃げても無理やり関わるから」

 

「……そうか」

 

 少し嬉しそうに彼は笑い、目を閉じた。明かり、点けっぱなしなんだけどな。まぁいいか。もう動けないし。

 まぶたの裏に眩しさを感じながら寝るのもいいだろ、偶には。

 

 

 

「もしお前を殺そうとした時は殺せ、俺を」

 

 

 

 何も聞こえない。ボクはだって、寝てるんだから。

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