「ボク」っ娘系メカニックちゃん   作:アビ田

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終わりが見えそうで、まだ見えないくらいの執筆状況。
なるべく終わらせられるよう頑張ります。


首斬りロケンロール。

 自分の部屋で寝ていたら、妙な騒がしさに目が覚めた。

 

 人の眠りを妨げるヤツは誰なのか。部屋の外に出て、どこかへ向かい走っていく連中の会話を聞く。

 ちなみに十字目の刺青をいれていないボクは、幹部の別枠として捉えられている。

 

 すると、どうやら侵入者が現れたらしく、ソイツと側近たちが戦っているらしい。この屋敷って、そう簡単に部外者が侵入できる造りになっているか? ボスが一度ここに侵入して煙を殺したくらいだから、秘密の通路とか探せばいくらでもありそうだけど。

 

「行ってみるか」

 

 野次馬根性である。

 

 

 しかし行ったものの、すでに戦闘は終わっていた。すれ違いで側近たちが歩いて行くのが見えた。

 近くにいた野次馬に話を聞いたら、夏木ちゃんが侵入者の討伐に一役買ったそうである。

 “殺意”を伴う攻撃を跳ね除けてしまう侵入者。ナイフや魔法の通らぬ相手の攻撃を、彼女は防御魔法によって跳ね返し、倒した。

 

 というか、侵入者は栗鼠だった。

 

 また壊を殺しに来たのか。やっぱりボスに対栗鼠用チョーカーを付けておいた方がいいよ。鎖も繋げれば、ボスも逃げられなくなるでしょ。マジで彼、勝手にどこに行ってるんでしょうね。ボクは訝しんだ。

 

「栗鼠ってどうなったの?」

 

「それなら、幹部たちが窓から吊るしてたぜ」

 

 首を吊らされている感じかな。人をかき分けて窓の下を眺めると、黒い布を羽ばたかせている呪い野郎(カース)の姿が見えた。これは魔法がかかっている状態だから、本来の栗鼠の姿ではない。

 

 黒い布にフックがかっていて、首は吊っていない。まだ息がある。

 

 ここから釣り上げるんじゃ周囲の目に晒されるから、下の階に行って回収すべきだな。見た時に栗鼠の隣に窓があったから、そこから中に入れられる。

 

 夏木ちゃんたちも栗鼠にトドメを刺していなかったし、別にボクが貰ってしまっても構わんのだろう? 

 

「呪い」を調べる実験か。腕が鳴るね。解体して内部の構造を知りたいから、修復系のケムリを用意しておかないと。

 

「ぐふふ……待っててね、ボクの実験体ちゃぁん」

 

 だが、下には栗鼠ドロボーがいた。

 

 

「コラァ! ソレはボクの実験体だぞッッ!!」

 

 

 ドロボーは三人組。

 

 パンダ顔の女装した少年と、やたらサイズの大きいパーカーを身につけた女性と、ガスマスクを付けた大漢。呪い野郎の姿から戻ったらしい栗鼠は、ガスマスクの男にお姫様抱っこされている。

 

「えっ、なっちゃん!?」

 

「あ、ハルのお気に入り!」

 

 金髪の女性がボクを指差す。記憶にないがボクの知り合いなのだろうか。パンダ少年の方もボクを知っているみたい。「ハルのお気に入り」って、ハルちゃんのお気に入りってことだよね? 

 対しガスマスクの男は警戒心マックスで、栗鼠を抱え直す。

 

「博士から居なくなったって聞いたものだから、心配してたんだが…ひとまず無事みたいでよかったよ」

 

「誰だい、君。悪いが栗鼠以外は、はじめましてなんだけど」

 

「え……?」

 

 まさか記憶が……? と、彼女は呟く。女はパンダ男に視線を送り、ボクに魔法の影響の是非があるか聞いた。

 別にボクは魔法にかかって記憶を失ったわけじゃない。忘れる何かしらの原因があったから、忘れてしまっただけである。

 

「その原因って何なんだ?」

 

「知るか。それより、その男ちょうだい」

 

「おい、そこのテメー!」

 

 ガスマスクの男が女性(ニカイドウと言うらしい)に栗鼠を渡し、一歩前に出る。

 見たところ武器を身につけていないが、素手で挑む気か? 身体を強化できるボクに武器の一つもなしじゃあ、ヤケドするぜ。

 

「さっきから聞いていれば……オレのパートナーに手出しはさせねぇぞ!!」

 

「黙れデブ!!」

 

「なっ………オレはデブじゃねェーーーッ!!」

 

 向かってくる相手にケムリを吐いて体を強化し、その視界から消える。

 

 ……と、思ったんだけど、驚いたな。ニカイドウの方はボクの動きに目が追いついていた。

 

 男の横に移動したら、ガスマスクに拳を叩きつける。ぐえっ、と間抜けな声を出して野郎は壁にめり込んだ。

 

 

「うわー……えげつない音がしたぞ」

 

「えっと、ニカイドウくんだっけ? よくボクの動きが見えてたね」

 

「え? あぁ、まぁ……ちょっと色々あって、修行してるからかな?」

 

「修行?」

 

 その疑問には、ニカイドウではなくパンダ野郎、「川尻」という少年が答える。

 

 この少年、どうやら元悪魔らしい。悪魔時の名前は「アス」だったんだそうな。ニカイドウとは悪魔になる前の知り合いとのこと。

 それで、ニカイドウは自分の魔法を正確に操るために悪魔試験用の修行中らしい。

 

「煙が殺された日に、アスが煙のパートナーだった私を助けに来てくれてな。その時にそこに転がっている会川とも出会って…」

 

「え…? 屋敷に、それもまだ煙が存命の時にどうやって侵入したの? アスとそこの会川さんは」

 

「アスは瞬間移動の魔法の持ち主なんだよ。会川は別でいたんじゃなくて、最初からアスと一緒だった」

 

 

 川尻は魔法使いに戻された後に、死にものぐるいでベリスで崩壊する地面からトカゲ男を助けた────はずだったが、起きてみれば彼の前にいたのはガスマスクの男。もちろん頭はヒト。

 

 トカゲ男が負っていた傷もなく、別の人物を持ってきてしまったのだと、川尻は考えたそう。

 その理由として、土壇場もいいところで魔法を行使したから。実際、魔法を使った直後に川尻は気絶している。

 

 またニカイドウを助けなかったのは、すぐ側に煙がいたから。

 

 でも川尻がニカイドウを助けに行った時(オマケで会川は着いてきてしまった)、彼女は目にしたのだと言う。

 

 会川のガスマスクの下の顔が、彼女が最後に見たトカゲ男のニンゲンに戻った顔と同じだった──と。

 

「んで、なぜあなたたちはここに?」

 

「会川は栗鼠を追って来たらしい。私たちは私の魔法を使う上で欲しい本があってな。それを取りに来た」

 

「ふーん…ニカイドウの魔法って何なの?」

 

「え? えーと……時の魔法だ」

 

「え?」

 

「ほ、本当に覚えていないのか……」

 

 時を操る魔法? 時を操るって伝説の魔法なんじゃなかったっけ? 夏木ちゃんの防御とか、煙の魔法とか、キクラゲちゃんの生命の魔法とか、それと比べられないくらい超希少なヤツなんじゃなかったっけ? 

 

 いや、待てよ。そういやドクガたちが見ていた幹部のリストに、この女の顔も載っていた気がする。

 

 すごぉい。解剖(語彙力)

 

 

「決めた、ニカイドウ。君も解剖する」

 

「えっ? 何で私?」

 

「する。アスの方も、元悪魔だった魔法使いの肉体が普通の魔法使いと同じ構造なのかとても気になるので、解剖する。しなくてはならない、ボクの好奇心のために」

 

「……アス、逃げる用意を頼む」

 

「わかった。本当に相変わらずだな、ハルのお気に入りは」

 

 瞬間移動か。流石に高速で動いても、一瞬でA地点からB地点に移動されるんじゃ勝てない。

 

 まぁその一瞬でも相手の意図を考えれば、つぶれている会川を回収したいはずだ。移動の条件にはおそらく魔法使用者との接触が必要になる。となると、川尻はニカイドウと共に移動する際にわずかな時間を要し、そこからさらに会川のところへ移動して、男を掴むときにまたわずかな時間ができる。

 

 なれば、ボクは最大限の速さをもってして、会川の場所に移動し────、

 

 

「オラァッ!!」

 

 

 頭に凄まじい衝撃が起こった。自分の体が吹っ飛ぶのを感じる。そのまま窓に突っ込んで、視界に星が見えた。

 

 唸りながら自分の足と足の隙間から見える光景に目を凝らす。世界が逆さまだ。

 

 男の足が見えて、その上……いや、下?に視線を移すと、頭から血を流している男の顔が見えた。

 ガスマスクが割れて隠れていた顔が見え……

 

 

「え?」

 

 

 あれ、なん……あれ? 

 

 おかしいな。頭に衝撃を受けたせいで、ボクの脳が異常を来しているのかも。

 見覚えがあるのは気のせいだ。見覚えしかないはずがない。会川って名前、はじめて聞いたし。

 

「あれ…」

 

 ちょっと待てよ、違う。男の顔がブレて、いく。

 

 だれ、お前。

 

 

 

 ──────小夏。

 

 

 

 キャップをかぶった少年が見える。無愛想なツラを長い前髪と、帽子でさらに隠す。

 見えない。見えなくなる。お前、お前は、お前……。

 

 

「栗鼠を頼む、ニカイドウ!!」

 

「だが、カイマ……いや、会川」

 

「いいから行け! 三人ともこの変態に解剖されんぞ!」

 

 

 川尻がニカイドウの手を引き、三人の姿が消える。

 残されたのはボクと、マスクのぶっ壊れた男。彼の名前は、彼の、

 

 起き上がって世界が元に戻っても、やっぱり顔は変わらない。

 

「カイ……君はカイだろ」

 

「…違う、オレは会川だ」

 

「違わなくない、お前は十字目のボスだろ」

 

「違うッ!!」

 

 彼は頭を押さえる。ボクもボクで頭に刺さっていたガラスを抜いたら、ドピュドピュ血が噴き出してきた。

 その状態で歩く。いや、ちゃんと歩けてんのかな? 真っ直ぐに歩こうとしても、勝手に斜めに進む。結局壁に衝突して、そのままズルズルと滑る羽目になった。

 

 何がいったいどうなってるんだよ。何で十字目のボスが別の名前を名乗ってんだ。瞳の十字目のあざはないが、絶対に壊だ。見間違えるはずがない。

 

 つーか栗鼠のパートナーって何だ。どうしてボクを差し置いて他の男とパートナーになってるんだ。フリンだ! 

 

 …いや、男だからフリンじゃないか。フリンじゃないってことは何? 何でボクとじゃなくて栗鼠とパートナー? 

 

 わからない、そろそろ死にそう。寒いぜ体が。

 

 

「君はアイ……アイカワって言うなら、誰だよ」

 

「ハァ? 何がだよ…」

 

「だれだ、ボクの頭の隅でチラチラ動いているこの少年、だれだ。知ってんだろ、ボク」

 

「……お、おい、お前血がヤベェって」

 

「知ってるじゃん、ホラ、君は」

 

 

 

 君の名前は、アイ=コールマン。

 

 

 

 血が噴き出る。ボクの頭から? 違う、目の前の男が苦悶の声を漏らしたと思ったら、首から黒い血が噴き出した。ビチャァ、と天井にまで届く。血が、滴り落ちる。

 

 頭と繋がった脊椎が伸びて、男の首が力なく垂れる。そして、首の断面から出てきたもう一つの頭。ぶら下がっていた頭は逆に断面の中へ収まる。

 

 そこまでで立っていられなくなって、倒れた。

 

 すげぇ、自分の頭からビチャビチャ言ってるのがわかる。

 とめどなく溢れるボクの血液。風流じゃん。映像に誰か納めてくれないかな、後で見たいのに。

 

 

「……れ、きみ」

 

 ボクを見下ろすように立つ男。目にあざがある。やぁアイくん、何でそんなにデカくなってんの? 

 

 まって、アイ=コールマンって誰? 

 

 

「「壊」だ」

 

 

 そう言った。そっか、やっぱり会川でもアイ=コールマンでもなくて、壊じゃないか。

 ほれみろ、言っただろ。

 

 ははぁ、と笑ったら血が出ているところを強く押さえられて、いつも凶悪な顔が近づいて、呼吸ができなくなって。

 

 そのまま、視界がブラックアウトした。




・小夏認識図

カイマン→デブ
会川→デブ
壊→筋肉
アイ→普通

一番好きな部位はボスの大臀筋。
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