「ボク」っ娘系メカニックちゃん   作:アビ田

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もう削らないで。

 最後の首を斬られ、崩壊する巨大な肉体。

 吹き飛んだアイの首を、小夏は拾った。

 

 

 一方で、仲間と再会を果たした面々。喜ぶ者もいれば、生首を抱え蹲った女を見て、複雑な表情を浮かべる者もいる。それぞれ状況を確認し合った。

 

 ニカイドウは能井に傷を治してもらった川尻と、カイマンがホルマリン漬けから生き返ったことを話す。

 

 煙ファミリーでは心が“奴”に操られていた際に分かったことを説明する。

 曰く、“奴”はこの部屋に魔法使いを集めていた──と。

 

 ついでに心は煙と行動していた時に、消の頭を発見している。

 

「妙に嫌な予感がすンだ。早くここから脱出した方がいい」

 

 心がそう言う。しかし魔法界はホールの雨でとてもではないが、留まってはいられない。

 煙の方もニカイドウを諦めていないようで、鳥太と一悶着あった。

 

 

「……お前本当にニカイドウなんだよな?」

 

『あぁ、そうだぞカイマン』

 

 笑顔が固定のニカイドウ。

 そんな彼女は栗鼠がここで体験した出来事を知るため、悪魔パワーを使用する。そして得た情報を川尻やカイマンとも共有。

 

 結果、今のカイマンがいったい何なのかより分からなくなり、四人仲良く首を傾げた。

 

『しかし本当に、これで終わったのか?』

 

 栗鼠の体はまだ、呪いの力が解けていない。

 そこでふと、女が抱えるアイの頭へ視線を向けた。

 

『何だ? 会川の目に何かが……』

 

 瞬間、笑い出す生首。

 

 

 ────お前たちはもう、この場から逃げることはできない!! 

 

 

 アイ=コールマンの爛れた皮膚の下から覗く赤い色。その目元の部分には、赤い十字の模様が存在する。

 

 生首は準備が整っだのだ、と悍ましい声で告げる。

 室内にあった棺のような、黒いドロドロとした液体が詰まった箱。その箱の残りは一つ。それもすでにヒビが入り、今にも割れそうである。

 

 アイ=コールマンの命の象徴でもあったその箱がすべて壊れた時、“奴”はサナギから成虫へと最後の進化を遂げる。

 

 最後の首を刎ねれば終わるというのも、アイ自身がそれを「自分の意思で行っている行動」だと信じていただけで、実際は“奴”の手のひらで踊らされていただけだった。

 

 その言葉を間近で聞いていた栗鼠は、絶句する。

 

『どこまで貴様は会川を侮辱すれば気が済むのだッ!』

 

 生首をつかみ、怒りに任せ床に叩きつけようとした栗鼠の手は空を切る。

 女によって高く掲げられた少年の頭。

 それが少しずつ圧縮され、バキバキと異様な音を立てて潰れていく。

 

『お、前……』

 

 

 小夏はその黒い液体を顔面に浴び、恍惚と笑う。

 狂ったように笑い、そして真に狂いながら限界までその頭を小さくする。

 

 身の毛のよだつ姿であるはずなのに、栗鼠は不思議と目が離せなかった。恐怖以上に、黒いドロドロに顔を穢され悦を浮かべるその姿に、妖艶さを感じた。

 

 同時にこれまで回り続けていた女の頭のネジが、キュキュキュ、と異様な音を立てたかと思えば、硝煙を上げて爆発する。

 

 そして極限に小さくされたその頭は、女の口の中へと収まった。

 ゴクリと、その喉が上下する。

 

『……っ、ニカイドウたちに伝えなければ…!』

 

 我に返った栗鼠は、宙に浮いていた状態から突如落下した。

 それと同時に最後の棺の一つが割れる。現在カースの包丁を持ったままの右手が先行して、地面に落ちんとする。

 

「うわわわっ!」

 

 が、無用に男が地面と熱いベーゼをかますことはなく。

 代わりに2メートル越えのその巨体を軽々と持ち上げる、女の顔が間近にあった。ところどころ黒い液体で汚れている、その顔が。

 

 

 ────トゥンク。

 

 

「…え?」

 

 

 不自然な胸の高鳴りに、心臓の部分を手で押さえる栗鼠。

 女性にお姫様抱っこをされて乙女のような反応を示す男の姿が、そこにあった。

 

 対し小夏は男の手からストアの包丁を取り返すと、ポケットにしまう。

 

『何してるんだ、栗鼠』

 

 そこにニカイドウと川尻がやって来る。

 そうだ、と栗鼠が先程の内容を話そうと思った矢先、部屋が停電したかのように暗闇に包まれた。

 

 ついで周囲から悲鳴が上がる。

 お姫様抱っこされている男にはわからないが、どうやら足下に強い酸のようなものが流れているらしい。それが魔法使いたちの足を溶かし、激痛を与えている。

 

 混乱する場に、煙が黒い家にいるチダルマに助けを求めたが、救いの手ならぬ悪魔の手は貸してもらえず。

 

「お、おいっ、大丈夫かよアンタは!」

 

「ギャハ」

 

「「ギャハ」じゃねェーって!!」

 

「ギャッハハハ!」

 

 小夏はケムリを吐き扉を作るが、開けてもそこに魔法界の景色はない。暗い空間が広がるのみ。

 煙が扉を作った際はまだ移動できたようだが、すでにできない状態にあるようだ。

 

 彼女はついでポケットを探り、一つの発明品を取り出す。その間栗鼠は足が落ちたことで酸に浸かりそうになったため、両足を浮かせて女の首に腕を回しガッツリ抱きついた。

 

「ギャハ、「穴虫(ケッチュウ)くん」!」

 

「ケッチュウ?」

 

 暗闇で見えないが、ワームの形をした虫。人工物でできており、生物ではない。だが一見すれば普通の生き物にしか見えまい。

 サイズにして1メートル程ある機械虫。その感触や匂いもリアルであり、若干ガソリン臭さもある。

 小夏が片手で持つそれがビチビチと動き、栗鼠の体に当たった。気色悪い感覚に、男は悲鳴を上げる。

 

「何かすごく気持ち悪ィんだが!!」

 

「ケッチュウくんよ、ボクらを体内に取り込むのだァ──ッ!!」

 

「え?」

 

 発明品「穴虫」、言い換えれば「虫の穴」。その力はワームホールである。その虫の体内に入れば、望む場所へと移動できる。これは語呂で、虫の「ワーム」と、穴の「ホール」がかけられている。

 

 しかし体内に入る場合、虫の口から──ではなく、別の場所から入る必要がある。

 

 小夏が言った「穴虫」の「ケッ」からお察しいただけるだろうが、グパァッと、まるで食虫植物のような動きを見せるオケツの方から取り込まれる。出た後は全身ビショビショに。また全身から異臭──ではなく、フローラルな香りに暫く包まれる。

 

 この発明品で失敗した場合は、そのまま腹の中で溶かされ死ぬ。死ぬかどうかは虫の気分次第。

 

 

「おい、「グパァッ」ってイヤな音がしたんだけ………ぎゃぁぁぁぁ!!」

 

 

 暗闇の中、栗鼠の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

「ハァー、ハァー……死ぬ゛かとお゛もっだ…」

 

 二人が機械虫の口から出された場所は、壁も天井も床も、余す所なくすべてが真っ赤に染まっている部屋。

 

『ナナァ?』

 

 そこで作業をしていた一匹が、突如現れた魔法使い二人に首を傾げる。一匹は全身の皮膚が剥がれた状態の魔法使いと、解体した悪魔の肉を仕分け中だった。

 

「ギャハハッ! ストアさんだァ!!」

 

『ナーナナ!』

 

「えっ、ストアって包丁の奴か?」

 

「ストア()()だ、栗鼠。頭を垂れよ、不敬であるぞ」

 

「え、えぇ…?」

 

 と言いつつ、女の圧に押され地面に頭を付ける栗鼠。

 しかしすぐに顔を上げる。女の手の部分からケムリが垂れ流しになっており、口元からも微かに漏れている。

 

「どうしたんだよ、それ」

 

「コレ? ボクの頭がぶっ壊れて、体内でケムリが急速に生成されてんのさ。その影響で体内温度が上がって、その熱に耐え切れず体が崩壊し始めている」

 

 確かに小夏の体から赤く火照り、汗がひっきりなしに流れている。うっすらと湯気のようなものも上がっていた。

 

 ストアに抱きついていた彼女は名残惜しげに離れると、辺りを探し出す。

 呻く魔法使いが助けを求める声を上げるが、彼らの前で足を止める様子はない。

 

「うぅ……その声はハルのお気に入りか…」

 

「そーだよ。お母さんどこ」

 

「ハルの居場所を教えるやる代わりに、我々を助けろ…」

 

「そもそも何であなたたちが解体されてるか、ボクちゃんわからない!」

 

 すると、ダストンだった魔法使いが状況を説明する。

 

 曰く、彼らはチダルマとの賭けに負けて魔法使いに戻されたのだ、と。

 

 その賭けの内容とは、“奴”と魔法使いのどちらが勝つかというもの。チダルマは“奴”がその体内に魔法使いたちを飲み込んだことで、自身が勝ったと確信し、彼らを魔法使いに戻した。この賭博はチダルマVSその他悪魔全員というもの。

 

 最強の悪魔はすでに悪魔に飽きていた。念願叶い、ようやく羽化した“別のオモチャ”へ接触を果たす。

 彼が「ホールくん」と名づけた、その存在に。

 

 

「教えてくれないならいいよぉ、ボクの発明品を使うまでだー!」

 

 時間にして僅か数秒。活性化するその肉体は腕力も素早さも増し続けており、家の素材を剥いで発明家はあっという間に発明品を作り上げてしまった。

「家」が文句を言うが、その声は悪魔でない彼女には届かない。

 

 発明品の形はゴーグル。それと繋がるプラグ部分を対象の頭に突き刺すと、記憶を覗くことができる。ゴーグル内に映像化された記憶が映し出され、その人物の視点から見ることができる。VRゴーグルのようなものだ。

 使うともちろんデメリットが発生する。

 

「なるほど。悪魔を解体する前に邪魔になるから、チダルマが移したんだね。理解したよー」

 

「ヒッ」

 

 ブチッと、小夏の目玉が取れた。ゴーグルに引っ付いたそれの、ブラブラと眼球の裏につながる筋肉のスジが揺れる。

 痛がる様子もなく、取れた目玉を元の場所に戻し、小夏は震える栗鼠を残して床でビチビチ動いていた機械虫を拾う。

 

「死にかけている我々を救わないとは、なんて悪魔のような奴なんだ…」

 

「悪魔じゃないよ、発明家だよ。治してあげればいいんでしょ」

 

 吐かれたケムリが元悪魔たちを覆う。彼らの治癒能力を強化させた彼女の目はすでに、常では考えられない異常な速度で強化され、回復する。

 

 そして彼女が虫を使い移動しようとした折、別の部屋から一匹の悪魔と川尻、カイマンが姿を現した。

 どうやら彼らも川尻の瞬間移動で窮地を逃れたようである。

 

 ニカイドウの方は完全な悪魔へと変貌し、顔にアスデザインのマスクを付けている。否、顔とマスクは完全に結合した状態。

 

 ちなみに彼女とカイマンの前に現れた謎の悪魔が、今の姿になったニカイドウである。

 未来から助言のため、二人の前に現れたのだ。また、生き返ったカイマンについても悪魔の彼女が犯人である。

 

『…! 生きていたのか、なっちゃんに栗鼠』

 

「お、お前ニカイドウか…?」

 

『そうだ。お前がストアの包丁を持っていたはずだが、今どこにある?』

 

「包丁だったら発明家の女が…」

 

『そうか。なら貸してくれ、なっちゃん』

 

「ギャハ? 君が悪魔だからしょうがなく貸してあげるけど、返してくれなきゃ許さないぞ」

 

 ポケットに手を突っ込んだニカイドウは、一回吸い込まれ、すぐにストアの包丁を手にして戻った。

 

「んじゃボクは、ハルちゃんのところに行くからバイビー」

 

 ワームのオケツから食われた小夏。虫が一度大きく飛び跳ねると、発明品もろとも姿を消した。

 

 

『………』

 

 ニカイドウはストアの包丁を握りしめ、未来の己がカイマンを生き返らせたことに何か意味があると考え、外の“バケモノ”に視線を向ける。

 

 黒い家の外では、産声を上げたホールの闇が、魔法使いの殺戮を開始したばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 小夏が出た場所は見知った病院の中だった。

 ホール中央病院。その病室の一室に彼女はいる。

 

「だ、誰だ貴様!?」

 

 部屋には煙ファミリーの下っ端もいた。一部が現在消失した廃物湖で幹部たちの身を案じている一方で、残りはこうして病院に留まっている。むしろ幹部がいない事もあり、羽を伸ばしている者が多い。

 バウクスの方はサーティーンと共にジョンソンに連れられ、廃物湖にいた。

 

 ゆえに病院内にいるのは煙ファミリーの下っ端と、彼らが魔法使いであると知らされていない魔法被害者のみ。

 それとチダルマに患者は病院だろ、ということで飛ばされたハルに、小夏など。

 

 病院の前で倒れていたハルを見つけた下っ端の一人が、怪しみつつ彼女をベッドに寝かせた。

 誰かが置いて行った人間か? ──などと思いつつ。そして水など用意している最中に、小夏が現れたわけである。

 

 もしハルを手荒に扱っていたら、下っ端全員の命が無くなっていただろう。

 

「退け。でないと殺す、オマエを」

 

 殺気を感じ腰を抜かした下っ端は、赤べこのごとく首を動かし慌てて逃げて行った。

 小夏がベッドに近づけば、呻き声が上がり、包帯の下の瞳が開く。

 

「小夏の気配が…する……」

 

「ハルちゃん!!」

 

「ん? ……! 生き返ったんだな、って────いたたたたっ!!」

 

 重体の魔法使いに遠慮なく抱きつく小夏。母は一瞬地獄を幻視した。

 

「うぅぅ………お母さん、お母さん…」

 

「みっともなく泣くな。自分が何歳だと思ってるんだ、愚かな魔法使……いや、私も今は魔法使いか」

 

「アラザーでず……」

 

 ハルに頭を撫でられ、そのままベッドに頭だけ乗せて小夏は泣き始めた。

 何があったのか分からないまでも、ハルは随分と大きな子どもをあやした。

 

 

 辺りが暗くなった頃には、寝息が室内に聞こえていた。ベッドをビショビショにした女の腹が緩やかに上下している。小夏の精神も限界だったのだろう。頭の装置が壊れていることからも、精神に極度の負荷がかかったのは想像に容易い。

 

「しかし私が魔法使いに戻された後に、いったい何が…。悪魔(奴ら)とチダルマの戦いはどちらが勝ったのだ……?」

 

 もし“奴”がデパートにいた魔法使いを殺し終えたなら、チダルマの勝利となる。

 ホールから生まれた、人間の闇。そんなものが解き放たれれば、魔法使いも無事で済むまい。

 

「ん?」

 

 その時、病院内で轟音が響いた。振動するその音に、ハルは眠る娘を抱きしめる。何かが起きている。

 ついで悲鳴も聞こえ、病院は一瞬にして地獄絵図と化す。

 

「まずいな…逃げるべきか」

 

 しかしハルも万全な状態には程遠い。魔法の暴走が多少収まった小夏も、肉体はともかく精神面が不安定である。

 床でビチビチ動いている発明品に頼らざるを得ないか、彼女が逡巡するその間に起こった異変。

 

「なっ………雨!?」

 

 廊下から伸びてきた雲が天井に巡らされ、そこから黒い雨が降り始める。すると全身の力が抜けていく。

 

「寝ている場合じゃない! おい、起きろ小夏!」

 

「んえっ…?」

 

「お前ならまだ動けるだろう、私はもう、ダメだ…」

 

 ぐったりと倒れてしまったハル。

 小夏は慌てて彼女の後ろから手を滑り込ませて運んだ。

 

「うわ、何これ…」

 

 廊下にも同様に雨が降っている。ひとまず階段に移動したところで、階段で倒れている複数の下っ端を発見した。どれも呻きながら外へ逃げようと這いずっている。

 

 だが全員を救う余裕も小夏にはない。下のフロアへ降りたところで、彼女は目撃する。

 

 床から頭を生やしている、白い物体。それはさらに下のフロアから床を突き破り顔を覗かせているようだ。顔は目の部分に穴を開けた布を被っているような見た目で、頭部に数本のツノが生えている。

 

 

『魔法使いは殺す』

 

 

 床を壊し二人に接近する白いバケモノ。否────チダルマ命名、「ホールくん」。

 廃物湖の周囲にいた煙ファミリーの下っ端を殺し尽くしたホールくんは、次の獲物を感知しこの場所へ襲来したのだ。

 

『おっ、新しいエモノを見つけたか、ホールくん』

 

 チダルマもホールくんの活躍を見るため、現場に駆けつけている。ホールくんがえぐった床から顔を覗かした最強の悪魔と、ハルの視線がかち合った。

 

「っ……! 負けたのか、奴らが…」

 

『おっ、まだ生きてたのか、ハル』

 

「ということは、コイツが“奴”か!」

 

『いや、オレが名付けた「ホールくん」って名前がちゃんとあるんだぜ』

 

 絶体絶命の状況。床を破壊して腕を出し、魔法使いなど容易に切り落とせそうな長い爪を振るうホールくん。

 小夏は咄嗟にハルを守るように抱きしめた。

 

 

「お母さんッ!!」

 

「小夏、ちゃ……」

 

 

 ドンと、押されたのは小夏の体。

 目を丸くした彼女の瞳に映ったのは、頭と胴体が離れる母の姿。

 

 かつての血に塗れた母の幻影と、その姿が重なる。

 

「あっ」

 

 母の頭が、地面を転がる。

 

「うあっ」

 

 “奴”が爪で、ハルの頭を串刺しにした。

 

「あ、あっ」

 

 バケモノが、大きな口を開けて、母を。

 

 

 

「あ゛あ゛あ゛ああああああぁぁぁっ!!!!!」

 

 

 

 瞬間、小夏の中で起こった感情の爆発。

 

 それは彼女の脳を、骨を、肉を、皮を、すべて溶かすほどの熱を引き起こし、彼女の肉体は一瞬でドロドロの液状へと変化した。

 

 残ったのは、黒いケムリ。それと熱に晒されてなお燃えることのなかった彼女の発明品。

 

 黒いケムリの一部が手の形に変わり、ポケットを握りしめる。

 そのまま大口を開けるホールくんに突っ込むと、無数の手が現れハルの頭を引き抜いた。

 異形がそれを振り払うが、形を一瞬崩すのみですぐに一つのケムリの集合体へと戻る。

 

 そして黒いケムリが人型になった物体は、病院から姿を消した。

 

 

『ホォー…』

 

 

 最強の悪魔は目を細め、長い舌を出し笑う。

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