「ボク」っ娘系メカニックちゃん   作:アビ田

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お久しぶりです。さ、三年ぶり……?
六章を書いていた時に没にしたネタを発見したので、アニメ二期記念としていくらか手直ししたものを出します。
壊の声は昴さんなんだろうか?楽しみだ…。


【魔のオマケ】ホット・HOT・サウナ

 煙の屋敷には巨大な風呂があり、サウナもある。特に男女別でもないから、みんな好き勝手に入っている。

 

 というか元々煙専用のサウナだったらしい。中の随所にキノコが散りばめられている。

 そんなサウナの中で、ボクはゆっくりしていた。ちなみに初サウナだ。

 

 せっかくだからここはじっくりと、頭の先から爪先まで堪能したい。ノイズが混ざってこないように、わざわざ【清掃中】の看板まで立てた。

 

 先ほど風呂の中から現れたハルちゃんに聞いたが、彼女は現在この屋敷の悪魔用ペントハウスに泊まっているらしい。

 

 最近まったく現れないと思ったが、「ヘイズ」って人間と一緒にいるそうだ。ボクという魔法使いがいながら、人間にうつつを抜かすだなんて。

 そもそも悪魔と一緒にいる人間って何なのだろう。まず普通じゃないとは思うけど。そのヘイズが気になるから、近いうちに会いに行く。ペントハウスの場所はハルちゃんから教えられたから知っている。

 

「サウナには「整う」ってものがあるらしい。実践するしかないよねぇ」

 

 サウナと水風呂、そして休憩。それぞれ決められた時間をこなし、それをワンセットとする。大体2〜3セット行うのが目安と聞いた。

 整えば体が宙に浮くような、究極のリラックス効果を味わえる。初挑戦のボクが果たしてその高みに上ることができるのか? やってみるしかないね。

 

 

「にしても、脱衣所にまでキノコがあるとはなあ」

 

「まったく悪趣味じゃ」

 

 

 その時、ガラッと扉が開いた。手前にいるのが腰にタオルを巻いたテツジョーとウシシマダ。そのさらに後ろに残りの側近三名がいる。皆それぞれタオルに腰を巻いたまま中の一点、つまりボクの方を凝視していた。

 

 一応言っておくと、ボカァしっかりとビキニを着ている。本当は全裸にバスタオルを巻いていたのだが、ハルちゃんの悪魔パワーを食らって今にもバカンスしそうな格好に変えられた。

 聞くところ、彼女はヘイズにオイルを塗ってもらったりもしたそうだが、いったい何をしているのだろう。

 

「やあ、君たちも整いにきたのかな?」

 

「………」

 

 ボクが軽く手を上げると、まるで何も見なかったことにするようにテツジョーが扉を閉めようとする。

 

「まぁまぁ、座んなよ」

 

 帰ろうとした彼らを笑顔で呼び止めて、中に招いた。

 ボクの笑顔の圧に負けたのか、五人は諦めた様子で入ってきた。

 

 側近たちはひと仕事を終えて、さっぱりする目的でサウナにやって来たらしい。掃除の時間帯でないのに看板が置いてあったから、まぁもし掃除してても幹部だから大丈夫っしょ、な気持ちで着替えたみたいだ。

 

「みんな四人で固まって、そんなに隅に座らなくてもよくない? せっかく広いのにさ」

 

「…いや、俺たちはこうして入るのが習慣というか」

 

「本当かい、サジくん? 出入り口に近いところに座るのも君らの習慣というわけかな?」

 

 万が一何かあったらすぐに逃げられるようにしているみたいじゃないか。この場合、ぼっちで座っているドクガくんが最後尾になって餌食になってしまうパターンか。

 

「ふむ」

 

 ボクは足を軽く開き、組んだ両手をひざの上に乗せる。側近五人がいる現状と、サウナという場所の特殊性。

 せっかくだから一つゲームをしたい気分になった。この際「整う」のはまたサウナに入った時にでもすればいい、より面白そうな方を選ぶのは当然だ。

 

 

「そうだなぁ……よしっ。勝負しようぜ! 誰が一番長くサウナに入っていられるか!!」

 

 

 全員「えぇー…」と、ビミョーな顔をする。勝っても特に商品はないが、漢を見せた、ってことで精神的なプラスは得られるんじゃなかろうか? もしくは忍耐を鍛える修行とでも思えばいい。

 

「だが、最初に出たヤツはボクの背中にオイルを塗ってもらう」

 

「それじゃあどちらかというとご褒美じゃ…」

 

「うんうん。そこはもちろん分かっているとも、テツジョーくん。リスクのないゲームはつまらないからね!」

 

 正直に「ご褒美」と言ったテツジョーに歩み寄ったら警戒される。サウナの中でもしっかり帯刀しているなんてエライね。

 

「このゲームには誰が最下位になってもボクにリスクがある。無論最下位になった者もリスクがあるかもしれない。そのリスクは確定ではない。このゲームの結果で()がどんな反応を見せるか次第になるだろう」

 

「ま、まさかっ…!!」

 

「ふふっ…そうだドクガくん! 負けた者には、ボスの前でボクにオイルを塗ってもらう!!」

 

 状況はボクが整える。果たして彼は嫉妬するのか、それともスルーするのか。はたまた側近をブン殴るのか。

 いつも喜怒哀楽がわかりにくい上に感情の変化が乏しいから、偶にはボクで狂おしいほどの気持ちを抱いて欲しいよね。

 

「さすがに付き合ってられるか! 逃げるぞ!!」

 

「そうじゃの………ッ!!」

 

「どうしたの? 佐治、牛島……」

 

 サジとウシシマダ、それにトンが出口のところで固まる。テツジョーとドクガは、一歩遅れて曇りガラスの方を見た。

 

 

『貴様らに拒否権はないぞ、魔法使い共』

 

 

 外気浴のため外に出ていたハルちゃんが、逃げようとした彼らの退路を塞ぐ。ハルちゃんがサウナをやめたとはまだ言っていないぜ。

 

 前門のボク、後門の悪魔。

 

 子うさぎの如く震える彼らと邪悪な笑みを浮かべるボク、そして審判の悪魔は除いて始まったサウナバトル。

 

 結果として最初に出たのはドクガくんだった。

 

 意外に思われるかもしれないが、実際は彼以外が全員サウナの暑さでやられて倒れたのである。命の危険もあるから、外に出すべくドクガが一人一人を抱えて外に出た。

 ゆえに負けが最初に足を出した彼になったというわけだ。

 

 ボクも汗ダクダクで、最後の方はものが全て歪んで見えたね。ただ妙に視界は明るい。

 

 悪魔による不正行為は当然行っていない。行っていたとしても、審判が露骨にボク贔屓だからね。このサウナに入ろうと思ってしまった時点で、彼らの負けは確定していたのだ。

 

「な、なぜ………なぜ俺がオイルを…」

 

 負けは負けだ、ドクガくん。床に手をつけて打ちひしがれたって、悪魔証人のご褒美は確定してしまった。逃げることはできない。

 

 誰かを助けたのに痛い目を見るのが格式美で素晴らしいよ。感動すらするぜ。

 

 

 というわけで後日、ドクガ以外の四人になんとかボスをサウナに誘ってもらい、そこでドクガくんにオイルを塗ってもらっているボクを見せつける──という計画を実行した。

 

 最初の問題として、引きこもり気味の壊くんが部下の誘いに乗ってくれるかどうかだったんだが、ここは無事に突破した。

 

 あとは彼らがサウナに入ってくるタイミングで、あらかじめ中でスタンバッていたボクの背中にドクガくんがオイルを塗る。

 

 念のためテツジョーたちにはボスに「サウナでは腰にタオルを巻くのが礼儀だよ〜」と口うるさく言うように頼んである。

 もし巻いてなかったらね、ボクがちょっとね、うん。顔が真っ赤になっちゃうからさ。

 

「手ェ震えてるけど大丈夫かい? ドクガくん」

 

「ボスに殺されるなら……」

 

 すでに死を覚悟しているらしいドクガくんは、ボスになら殺されてもいいや…な狂信者マインドでオイル入りのボトルを握りつぶしている。

 ボクの方はこちらもまた用意しておいたマットの上にうつ伏せになって、準備OKだ。あとは二人仲良く気配を殺す。外の気配が近づいている。

 

「ぼ、ボスはサウナははじめてですか?」

 

「………」

 

 テツジョーの言葉に壊くんは無反応だった。いや反応はしているかもだが、声に出さない。ほかにもウシシマダやトンがフォローを入れているけどマジで何も喋らない。

 

(ドクガくん、今だ!)

 

(……分かりました)

 

 扉が開く。問題の壊くんのタオルは………ちゃんと巻かれている!! えらいぞ壊くん! やればできる子じゃないか!!

 

 壊くんとバッチリ目が合った。二人仲良く気配を殺していたおかげもあり、壊くんの目が丸くなる。

 さあ、ここからの君の反応が楽しっ────、

 

 

「ふひゃんっ!」

 

 

 ……………場がシンとした。

 

 自分の顔が羞恥で熱くなっていくのがわかる。ボク、人にくすぐられるとダメなタイプだったのか…。いや、事前に試しておくべきだったな……。

 

 周囲を見たら顔を赤くしたり、気まずげに視線を逸らしている。トンくんはサジの後ろで苦笑いしていた。

 ドクガくんの方は……おっと、こちらも意外と真っ赤だ。プルプル震えていて、口を魚のようにパクパクとさせている。さては君、結構な奥手ボーイだな?

 

「え、えへへ……」

 

 照れなのかそれとも冷や汗なのか、はたまたただの暑さによる汗なのか。

 ボクは滝のように体から水分をひねり出して、笑うしかない。この間の側近たちようにさり気なく出口に向かう。

 

「じゃっ、じゃあみなさんはごゆっくり!!」

 

「待て」

 

 しかし、出口のところにいた壊くんにあっけなく捕まった。テンパり過ぎて自分のケムリを使い忘れていた。ど、どどど、どうしましょう。

 

 助けを求めるべく側にいた男四人を見る。みんな視線を合わせてくれない。君たちボクを見殺しにする気かッ!? …いや、ボクが何かしらの理由で壊くんに捕まるたびに、結構見て見ぬ振りをしているな。

 

 ボクが助かるにはハルちゃんを呼ぶしかない。でも、ハルちゃんを呼ぶ気はない。……何でかって? そりゃあまあ……察してくれ。

 

 というか本当に嫌なら、魔法を使って腹でも殴ればいいし。

 

「か……壊くん?」

 

「………」

 

「なんか喋ってよ!!」

 

「……俺は出る」

 

 そう言って壊くんはサウナを中断した。側近たちはぺこっと頭を下げてそれで終わりだ。

 ボクの方はというと、壊くんに捕まったままである。お姫様抱っことかそんな甘い持ち方ではなく、脇にひょいと抱えられている。

 

 ボクはどうなっちまうのか。ドキドキしちまっている。デンジャーウーマン小夏ちゃんだな。

 

 

「………怒ってる?」

 

 

 ボクの問いに、壊くんはチラリとこちらを見て、頭をポンポンと叩いた。

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